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社会主義協会提言の補強
 
 
 
*2002年3月開催の社会主義協会第35回総会で決定。出典は2002年7月発行の単行本(社会主義協会出版局 2002年7月1日)。
 
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はじめに
 
 現在の「社会主義協会の提言」(当初の正式名称は「社会主義協会テーゼ−社会主義革命の道−」)が採択されたのは、一九六八年九月の社会主義協会再建第二回大会(湯河原)においてであった。さらに、それを補強するテーゼ第二部として、一九七一年に「労働組合運動と統一戦線」、一九七二年に「農民運動と統一戦線」が採択され、小冊子として刊行された。その後一九七七年のいわゆる「協会規制」をうけて、一九七八年二月の第一一回大会(総会)で、「テーゼ」の名称を「提言」と改め、若干の字句修正をおこなったが、テーゼの基本部分に変更はなく、この「提言」が長らくわれわれの理論と運動の指針となってきた。
 
 だが、現「提言」(テーゼ)が採択されていらい、すでに三〇年以上の歳月が経過し、その間に世界でも日本でも著しい情勢の変化が進展した。たとえば、七〇年代にはドル・ショック、石油ショックと相つぐショックのなかで、従来資本主義の安定と成長を支えてきた枠ぐみが大きく崩れ、日本の高度成長も「終焉」を迎えた。八○年代以降は、その体制立て直しのために市場原理万能の新保守主義、新自由主義が横行し、そのむきだしの資本の非情な論理のもとに、労働者をはじめとする勤労大衆に多大な犠牲が強いられた。また九〇年前後には、ソ連・東欧の社会主義崩壊という予期せざる事態が発生し、従来の米・ソを軸とする冷戦構造が崩れて、世界経済のグローバル化が進展し、その大競争時代といわれる状況のなかで、冷酷な資本のリストラの嵐が吹き荒れることになった。そしてこうした世界と日本の情勢の激変は、当然、労働組合運動、社会主義運動にも大きな影響をあたえたのである。
 
 このような現「提言」採択後に生起した国内外の大きな変化は、われわれに「提言」の見直し、ないし補強という課題を課すことになった。この課題にこたえるために、一九九八年二月の第三一回全国総会の決定をうけて、同年三月、提言作成委員会が設置された。
 じらい同委員会で討議が重ねられてきたが、その討議に当っては、その前提としてまず、現「提言」の序章にうたわれている戦前以来の労農派の伝統を堅持し、その科学的社会主義理論にもとづいて日本における社会主義革命をめざすという根本原則が確認された。またその社会主義への道については、現「提言」第一章第三節にのべられている「国家権力の平和的移行−日本における社会主義革命の形態−」の規定、すなわち「反独占、民主主義擁護、反帝国主義戦争の統一戦線」の形成、強化をつうじて、平和的な形態での社会主義政権の樹立をめざすという基調を、基本的には継承することを確認した。
 
 こうした基本路線の確認の上に立って、委員会は現「提言」を基本的に踏まえつつ、それを補強するという方針をとった。そして当面する見直し作業の重点を、現「提言」採択後大きく変動した世界および日本の情勢の分析と運動の総括におくこととし、その作業を進めてきた。その報告をまず「第一次草案」、ついで「第二次草案」として出したが、それに寄せられた全国の同志の意見をうけて、ここに原案を提出する。この原案の第一章から第五章にいたる諸章は、現「提言」後の情勢の分析と運動の総括をおこなっている章である。その序章として、現「提言」の「序章 社会主義協会の歩み」にその後の変化を加えた文章を付した。さらに最後の「むすび」の所では、この報告の分析の上に立って、当面するわれわれの課題を簡潔に指摘している。
 
 以上の内容からなるこの原案は、現「提言」に取って替わるというものではなく、現「提言」を補強し、現「提言」とあわせて「社会主義協会の提言」をなすものである。

  二〇〇二年三月二〜三日
第35回社会主義協会全国総会
 
 
 
目次
 
序章 社会主義協会の歩み
 一 前史   
 二 労農派   
 三 社会主義協会の成立と発展   
 四 再建後の発展と逆流   
 五 再度の分裂を克服し、再建へ   
 
第一章 世界情勢の基本的特徴
第一節 第二次大戦後の世界資本主義   
  I IMF体制とその崩壊
  2 新保守主義の台頭と矛盾の累積
  3 世界資本主義の現段階
第二節 冷戦終焉後の世界政治   
 1 アメリカ主導の帝国主義的支配の拡大と対抗勢力
 2 核軍縮の国際世論の高まりとアメリカの核戦略
第三節 第二次大戦後の発展途上国   
 1 政治的独立の波
 2 非同盟運動
 3 「開発独裁」の崩壊、動揺と民主化
 
第二章 国内情勢の基本的
第一節 第二次大戦後の日本資本主義   
 I 戦後の高度経済成長
 2 高度経済成長後の再編と競争の激化
第二節 独占資本の支配とその矛盾   
第三節 日本資本主義の構造   
 1 独占資本
 2 中小零細企業
 3 農民と農業
 4 労働者階級
 
第三章 日本の労働運動
第一節 七〇年代以降の日本資本主義と労働者支配   
 1 体制的合理化の進展
 2 思想攻撃の激化と労働者間の分断
 3 階級矛盾の蓄積と運動の新たな模索
第二節 総評解体とその教訓   
 1 大衆的戦闘的労働運動の担い手としての総評
 2 階級闘争の後退とその教訓
 3 総評と社会党支持
第三節 連合運動の総括と労働運動強化の視点   
  1 連合運動の性格と運動の現状
  2 大競争時代の到来で問われる労働運動の改革
  3 労働運動強化と社会主義協会員の役割
 
第四章 日本社会党の総括とわれわれの課題
 第一節 反独占国民連合政府から社会主義政権を追求   
  1 政権構想が全党の議論になった時期
  2 七四、五年不況を境に、社会党内の空気も変わる
  3 社会党内の対立拡大から「協会規制」へ
 第二節 「社公合意」から総評、社会党の解体へ   
  1 日本資本主義の変化に対応できず
  2 社会党の社会民主主義への転換
 第三節 新党運動と社会党の党名変更   
 第四節 階級・階層の運動、国民運動と政治   
 第五節 労働者の政治運動における社会主義協会の役割   
 
第五章 二〇世紀の社会主義体制−ソ連・東欧社会主義崩壊の総括と現存社会主義国
はじめに 社会主義の必然性   
第一節 ロシア革命と社会主義体制の成立
 1 ロシア革命の歴史的位置
 2 社会主義建設の模索
 3 社会主義世界体制の成立
第二節 六〇年代改革の必然性と意義   
第三節 七〇年代以降の停滞から体制崩壊ヘ
 1 ソ連における経済停滞と危機の深化
 2 ペレストロイカからソ連解体へ
 3 東欧諸国の体制転換
第四節 現存社会主義国−中国、朝鮮、ベトナム、キューバ
 1 中国の社会主義
 2 その他の現存社会主義国
第五節 今後も引きつづき研究を
 
むすび