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第四章(後半)
 
問 総評や総評傘下の主な単産か、社会党支持を機関決定してきた理由や意義についてもう少しくわしく説明してください。
 
答 労働組合と社会主義政党が、相互に協力しあうことの原則的な意義については、まえにのべたとおりですが、総評および各単産がそれぞれの運動方針で社会党支持を決定するというやり方は、その原則の日本の運動への具体的適用の形態だといえます。
 
 総評が、社会党単独支持という方針をとるようになったいきさつについては、さきにみたとおりですが、つぎに総評およびいくつかの単産の一九六〇年(安保と三池の年)の運動方針をみながら、なぜ日本の主要な労働組合が、社会党支持をきめてきたかを考えてみましょう。
 
  まず総評の運動方針を要約してみます。
 
 (1)総評の政治路線の基調は平和四原則であり、日本社会党の基調と一致する。
 
 (2)日本社会党の政治闘争の基調は、国民の多数と大衆的政治行動に依拠して民主的議会政治をまもるとともに国民の政治的・経済的要求を実現しようとするものであって、総評の基調と合致している。
 
 (3)したがって、政治闘争を強化するために当面とりうる最善の方向として日本社会党を支持する。
 
 (4)日本共産党については、多くの労働者がかつての誤りにたいする危惧を解消していないし、反共宣伝にまよわされているので、個個の問題での協力にとどめること。
 
 ここから、総評が社会党を支持する根本的な理由は、政治闘争の路線における共通性にあることがあきらかになります。
 
 また、国鉄労働組合の一九六〇年の運動方針は、政党と労働組合の組織原則のちがいなどにふれたうえで、政党支持問題についてつぎのようにいっています。
 
  「(1)国鉄労働組合は、組合員個人の思想・信条の自由を拘束してはならないし、組合員の政党支持自由の原則は保障されなければならない。(2)国鉄労働組合の機関が特定の政党と支持協力関係を結ぶのは、組織の強化、団結保持、組合の諸要求の前進、解決を政党政政治の分野で達する必然性から行なうものである。(3)国鉄労働組合は、国鉄労働者の諸要求を積極的に支持し、その解決に協力をもとめるために支持政党を日本社会党とする。また民主社会党とも要求をとおし解決のために協力関係をもつ」。
 
 さらに翌一九六一年の運動方針になると、
 
 「労働組合がもっている諸要求を解決するために政治活動を強化しなければならないことは明らかですが、私たち労働者階級全体の目標である社会主義社会実現のために政党との協力関係を明らかにしてゆくことがきわめて必要なことです」。「したがって国鉄労働組合は、国鉄労働者の諸要求を積極的に支持し、その解決に協力をもとめるとともに、社会党の民主・護憲・中立の政治路線を支持し、支持政党を日本社会党とします」。
 
 というように、なぜ日本社会党を選ぶかが、より鮮明にうちだされています。
 
  合化労連の一九六〇年の運動方針は、まず労働組合の政治活動が、いよいよ、重要になってきたことを強調し、ついで安保闘争にさいして西尾一派が民社党を結成したことによって「スッキリした活動と、指導性をしめした」日本社会党を「労働組合の要求と政策と活動の観点にたって」支持することをあきらかにしています。なお、合化労連は、前年の運動方針で「(1)社会党の平和革命方式や運動のすすめ方が、組織内の大多数の組合員に支持されていること、(2)社会党が国会に二百数十名の議員をもち、国会闘争において社会党の協力なしには闘えないこと」の二点を社会党支持の理由としていましたが、六〇年度はこの考え方を継承・発展させているわけです。一九七〇年代にはいり、突如として「政党支持自由論」に変身した現在の合化労連からは想像もつかない筋のとおった方針をかかげていたといえます。
 
 全電通の一九六〇年の運動方針は、政府・独占の攻撃が、はげしく巧妙になっていることをふまえ「組合がその機関において、民主的方法によって支持政党をきめることは誤りでないばかりか、むしろ必要なこと」とのべています。さらに「日本社会党を支持し、政治啓蒙を積極的に行ない、組合員の理解をふかめ、すすんで入党するなど社会党を強化することに努力します」とひじょうに積極的に、社会党支持を表明しています。なぜ、日本共産党ではなく、社会党を支持するかについては、一九五九年の運動方針にある「……全電通が支持する政党は、平和革命方式を政治改革の唯一の路線として、現に国会内に多数の勢力を有しており、われわれの綱領や諸方針に適応する政策と行動を行なっている日本社会党であることを確認する。日本共産党は、現在平和革命方式をうたっているが、過去の武力革命方式への疑惑、国際共産主義運動への追従にたいする批判をぬぐいきれず、大衆から積極的に支持されるにいたっていないので、全電通の組織としては支持しない」という文章にあきらかにされています。
 
 以上、総評および国労、合化労連、全電通の方針を具体的にみてきましたが、いずれも日本社会党支持を運動方針で明記し、機関で決定している理由は、
 
 (1)政治闘争の路線で日本社会党と共通する。
 
 (2)労働者の究極的解放を達成するうえで平和革命方式を支持する。
 
 (3)組合員の多数が日本社会党を支持している。
 
 の三点に集約することができます。(自治労、全逓など社会党支持をきめている他の組合の多くも、ほとんど同じ理由をかかげています)。
 
 このように、総評や、各単産が、社会党支持をきめているのは、労働者階級の政治闘争を強化・発展させていくという観点からであり、複数の社会主義政党のなかからとくに社会党単独支持をきめているのは、社会党の平和四原則(これは現在でも非同盟・中立路線となっています)と平和革命路線とが、労働組合の政治闘争路線と一致しているからにほかなりません。
 
 シュツットガルト決議にしめされた社会主義政党と労働組合の関係に関する原則の日本における具体的な適用が、社会党支持というかたちをとってきた理由は、以上のとおりです。
 
問 これまで総評が、日本社会党を支持し、協力して運動か発展するように努力してきたことはわかりましたか、現実には政党支持問題が年に一度の大会の論議だけにおわったり、また社会党自身か、数年前のように停滞したり、というようなことをみて、活動家のなかにいろいろな疑問かおこっているようですか。
 
答 今日でも、総評の政治闘争路線にかかわりはなく、したがって機関として社会党支持をきめることを変更するなんらの理由もないことは、これまでの説明でおわかりのことと思います。ただ、いま指摘されたようないくつかの問題が、労働組合の政党支持をめぐって、でてきていることは事実です。
 
 まず第一に、最近の総評大会や各単産大会が、社会党支持をきめるにあたって、なぜ支持するかについて十分な討論をおこなうことなく、「政党支持の自由」という理論的にまったくナンセンスな反対論にたいする形式的な反論しかしないで、多数で決定するという安易なやり方に傾斜していることです。いわんや政党支持問題についての下部討議などはまったくといっていいほどおこなわれていないようです。
 
 われわれは、当面する軍国主義復活阻止のたたかいをどうすすめるのか、国鉄運賃値上げ反対や健康保険改悪反対のたたかいをどうすすめるのか、など労働組合の政治闘争をいかに発展させるかという観点から、社会党支持の問題を具体的に提起しなければなりません。それが不十分にしかおこなわれていないことが、今日、労働組合の政党支持の「形骸化」といわれる現象をまねいている大きな原因だといえます。
 
 第二に重要なのは、社会党支持の基本的な理由はかわらないにしろ、毎年の大会で、そのときどきの具体的な政治闘争との関連で、社会党と協力しておこなってきた闘争について、きちんと総括することです。たとえば、安保闘争、沖縄闘争、軍事基地撤去闘争、反自衛隊闘争、四次防反対闘争などのような政治闘争はもとより、春闘、体制的合理化に反対する闘争、年金・物価・酷税などにたいするたたかい、公害・住宅問題などをめぐるたたかいなどで、日本社会党とどのように協力しながらたたかいをすすめ、成果と欠陥がどのようにあったかを大胆にあきらかにし、全組合員の討議に付すことは、指導部の最低限の義務でありましょう。あるいは、日常の政治学習がどのようにすすめられたかについても総括されなければなりません。
 
 このような総括をふまえ、具体的な闘争課題との関連で社会党支持の今日的必要性をつねにあきらかにしていくことがなければ、総評や各単産の社会党支持路線は、かりに多数決で採択したとしても、形骸化の一途をたどることはとうぜんであるといえます。
 
 第三に、日本社会党員である幹部・活動家の態度についてです。数年前にみられた総選挙の敗北や党の体質的欠陥について、自分が党員でありながら、あたかも他人事のように日本社会党について語るような態度は、げんにいましめられなければなりません。職場の労働者は、自分のところの幹部や活動家の思想と行動を基準に日本社会党のことをまず考えます。その意味では、職場で社会党支持者が減少するようなことがあれば、その最大の責任は社会党支持を機関できめながら、まじめに実践していない幹部や活動家にあるといわなければなりません。
 
 第四に、労働組合と社会党の支持・協力関係が、その形骸化を防ぎ、より永続的に強化されていくために重要なのは、労組内の党員が結集して、職場支部を結成していくことです。「職場に党をうちたてよう」(指令四号)をたんなるスローガンにとどめるのではなく、全党員が手がかりのあるところから実践に移し、それをつくる条件のないところでは、党員の拡大をはじめとして職場支部結成の条件をつくることを目的意識的に追求しなければなりません。
 
 職場における資本の攻撃がこれまでみられないほどつよまっている今日、職場支部に結集した党員が意志統一にもとづき先頭にたって一般組合員の政治的意識を鼓舞し、思想的にも組織的にも団結の要となる必要があります。労働組合の社会党支持が、労働組合運動を真に前進させるためには、組合員が身近に感じる職場の党の日常活動が不可欠です。
 
 さいごに、政党支持問題に関するマスコミの主張についてふれておきます。
 
 マスコミは、この問題について、労働組合内部で社会党支持者が減少し、特定政党を支持しない人たちがふえていることを主たる理由に、機関で政党支持をきめることはまちがいだといっています。この主張は、結果的には、日本共産党や太田薫氏らの「政党支持自由論」につうじるものですが、マスコミの真の意図は、労働組合員の「脱政治化」「脱政党化」をいっそう促進し、政治闘争を放棄する「中立」的労働組合をつくりだそうという策謀であることはいうまでもありません。
 
 われわれは、マスコミのこういう意図を正しくみぬき、それを思想攻撃としてはっきりとらえるとともに、政治闘争のとりくみの弱さを克服し、政治学習をつよめ、労働者意識の変革への努力をねばりづよくつづけなければなりません
 
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