*社会主義協会第三一回総会に参加しなかった役員・会員が3月21日、22日に東京都内で開催した「再建総会」の宣言と、その準備文書。この総会により別の社会主義協会が作られ(再建協会または代表が坂牛哲郎氏であるので坂牛協会と呼ばれる)、まもなく機関誌『科学的社会主義』を発行、社会主義協会は一九六七年以来再び分裂した。出典は両者とも『科学的社会主義』再建創刊号(1998.5)。管理人は「社会主義協会再建運動に合流しよう」の三一回総会をめぐる事実経過には異議があるが、ここでその内容を述べることは控えたい。当サイト転載にあたっては、再建協会より転載許可を得た。(管理人)  
●総会宣言
 一九九八年三月二一〜二二日両日、全国各地から東京に結集した三六都道府県一六〇名の仲間は、社会主義協会再建総会を成功させた。
 総会では、労農派の伝統と『社会主義協会テーゼ』の精神を継承し、今日の新たな情勢に立ち向かうことのできる社会主義協会の再建の第一歩を踏み出した。旧社会主義協会の轍を踏まないために、理論と実践の統一、民主的運営を重視することもあわせ確認した。
 ソ連・東欧が崩壊し、科学的社会主義の権威が世界的に揺らいでいる。世界的な大競争時代のもとで、日本独占資本の多国籍化がいよいよ本格化しだした。多国籍企業本位の国内体制の再編にともない、かってない厳しい攻撃が政治、社会、労働の各分野にわたって展開されている。
 私たちは、これまでの社会主義協会の精神を引き継ぐとともに、新たな情勢の変化に機敏に対応する理論的分析作業を進め、実践的な方針を提起しなければならなくなっている。変化を恐れる者に、未来を切り開くことはできない。
 現実と切り結ぶ積極的な研究活動と、実践に裏打ちされた同志的な討論によって、再建された社会主義協会を大きく発展させていこう。
 総会では、秋に予定されている次回総会までの、当面する活動の重点を次のように決めた。
 第一に、科学的社会主義の理論研究、学習会の再開にただちに着手することである。
−−積極的に新しい仲間を誘い、とりわけ青年層の結集につとめ、科学的社会主義思想によって理論武装された活動家を大量に生み出していこう。
 第二に、会員と機関誌の拡大である。−−‐再建された社会主義協会を、組織として維持・発展できる基盤を向こう半年の間につくりあげることが、当面する死活的な課題である。目標を定め、会員と機関誌の拡大を進めよう。
 第三に、不況が深刻化し、合理化、首きり・失業が増大しているもとでの、当面する労働運動にたいする活動の強化である。
−−新社会党党員協との有機的連携をはかり、職場闘争の再建、企業を越えた地域での共闘態勢を再構築し、反撃に転じる決意を固めあおう。
 これらの課題を成功させるためにも、差し追っている参議院選挙において、新社会党の勝利を確かなものとする闘争態勢の構築を急がなければならない。
 社会民主党に、今日のなし崩し改憲攻撃と闘うことを期待することは難しい。日本の階級闘争を日本共産党だけで担なうことも不可能である。したがって、日本の階級闘争の帰趨は、ひとえに新社会党の手に委ねられている。
 参議院選挙において、新社会党が政党要件を回復し、現有議席を確保する条件は十分に存在する。協会員は、新社会党の勝利をめざす闘いに全力を上げよう。
 私たちは、この再建総会で決定された諸方針を全協会員の討論で深めあおう。
 会員の意志統一と団結の力で、社会主義協会の再建を成功させることを宣言するものである。
一九九八年三月二二日
  社会主義協会第三一回再建総会
附:
●全国の同志に訴える 社会主義協会再建運動に合流しよう
社会主義協会再建準備委員会
石河康国、岩中伸司、今村稔、上野建一、沖田和夫、近江谷左馬之介、長船俊雄、小林義昭、坂牛哲郎、柴戸善次、下藤芳久、千葉常義、塚本健、津野公男、津和崇、灰原茂雄、原野人、細川正、横堀正一、吉原節夫、渡辺和彦、阿部秀吉、吉井健一
 佐藤保代表の個人的招集による協会「総会」なるものが、私たちの反対にもかかわらず二月一四日に強行されました。そこで選ばれた役員は、社民党と民主党に所属する人たちです。私たちは、話合いによる合意がはかられるまで総会が延期されることを期待しておりましたが、努力はなされないままでした。
 ことここにいたれば今後、話合いによる事態打開の余地はなく、私たちに残された道は佐藤代表のそれとは異なる社会主義協会の再建を決意することでしかありません。
 私たちは、全国の仲間に対し、現在の事態についての見解を表明するとともに、社会主義協会再建運動に合流されるよう呼びかけます。
 強行された「総会」を認めることはできない
 第一に、二月一四日に強行された「総会」を正当なものと認めることはできません。総会開催については、一二月六日の運営委員会と地方代表者会議、一月二八日の運営委員会のいずれの会議においても、正当な手続きを経てはいません。さらに、九七年の第三〇回総会で選ばれた「再建委員会」の権限を、代表や運営委員会といえども勝手に奪うことはできません。民主主義の基本さえ踏みにじられています。
 第二に、「総会」で採択された方針では「協会の原点」が乱暴にすり替えられています。「創立五周年宣言」は本来、「会員は党内派閥や右派的勢力の制約を受けず闘う」という決意を表明した誇り高いはずのものです。これが、「会員はどの政党に所属してもよい」という後退的・サロン的気分にあわせて、まるで敗北宣言であるかのように歪めて解釈し直されています。さらに、宣言が発せられた後に、六〇年の安保と三池の闘いがあり、その闘いを経て社青同が結成され、『まなぶ』が発刊され、社会主義協会の思想的影響力が飛躍的に発展し、協会組織も大きく拡大してきたといいう歴史が抹殺されています。二月「総会」で採択された決定は、輝かしい協会の歴史と、苦難ななかに闘いを進めてきた会員の献身にたいする冒涜以外のなにものでもありません。
第三に、「総会」強行に反対している運営委員が連名で行った「一五人の同志の訴え」にもかかわらず、これをまったく無視し、一方的に「総会」を強行するという、組織分裂をも意に介しない佐藤代表の行為は組織の責任者として断じて許されるものではありません。
 また、あろうことか、佐藤、川口両代表が呼かけた「向坂先生生誕一〇〇周年集会」が特定の人たちを排除し、しかも「強行総会」とセットで開催されるという悲しむべき愚挙も行われています。この集会での講演者の顔ぶれは、協会をとっくに脱会している経済学者と、社会党の右傾化に抗する闘いの足を引っ張り続け、「現代社会主義は社会民主主義である」との見解を表明している山本政弘氏らであり、向坂先生の功績からけっして消し去ることのできないはずの三池闘争を結果として排除するというものでした。佐藤代表の「協会」が今後めざす方向を示唆したものと受けとられても仕方ないでしょう。全会員が尊敬する向坂先生の功績を汚すような行為を許すことはできません。
 今日の事態を引き起こしたものはなにか
 社会主義協会は突然、今日の分裂の事態を迎えたのではありません。政党問題で急に対立が深まったわけでもありません。ましてや、一部の人たちの誤解や意図的な吹聴にあるように、再建委員会がつくられたから対立が激化したわけでもありません。
 今日の事態を導いた過去の歴史があります。すでに、全電通闘争のときに激しい意見の対立が起きていました。福田問題や「新宣言」、国会議員への代議員権付与などをめぐって、また総評解散・連合結成をめぐって激しい意見の対立が協会内に醸成されていました。これらの意見の対立に直面して、本部は結局、組織全体として総括も集約もすることができず、「地方の特殊事情の尊重」なる逃げ口上であいまいな運営をしてきました。当然、組織は徐々に分散化傾向を拡大させていき、理論グループの活動は停滞し、意見対立でほとんどの反合理化研究会は機能麻痺(ちなみに新社会党の労働委員会では実践に結びつくことで生き生きとした、討論か展開されている)という末期的状態を迎えていました。危機がすでにかなりまえから拡大していたにもかかわらず、厳しい討論を覚悟しなければならない抜本的な総括や方針確立作業は回避され、ずるずると無為に日々を送ってきたといっても過言ではありません。
 そして、分散化傾向に最後のとどめを剌したのが社会党の解体でした。社会党解体攻撃をはねかえすための有効な闘いを組織できなかった協会が、解体後にいっそう激しい意見の対立を引き起こしたのは当然のことでした。このとき本部が「護憲の社会党の基本路線」を真に継承する立場をとっておれば、今日起こっているような事態の展開はありえず、新社会党の旗挙げももっと容易であったにちかいありません。残念なことに当時の本部事務局長の見解は、「社民党に替わる新しい政党をつくってもどうせつぶれる」からだめだという、すでに立ち上がっている仲間に冷水を浴びせかけるようなおよそ、マルクス主義理論とは無縁な、愚にもつかないものでした。このときをもって、本部(専従者の多く)は、全電通闘争に批判的(あるいは非協力的)、党内闘争において妥協的(あるいは闘っている仲間に対する背信的)な態度をとって、協会の現実主義化をもとめて圧力をかけてきた流れに飲み込まれ、一体化を遂げたとみなければなりません。
 この路線のなしくずし転換に失望して、多くの協会員か集団的に、あるいはさみだれ的に脱会していき、機関誌も減少し、財政的にもたちゆかなくなりました。「再建委員会」は、危機回避の最後のチャンスであったのです。再建委員会がつくられたから危機が深まったかのような主張に対しては、社会主義運動の先達が述べた「火事と半鐘」のたとえをもって反論すれば足りるでしょう。
 私たちの決意
  再建する協会の性格と任務                               
 再建される社会主義協会の性格や任務は、正式には再建総会で民主的に討議され、採択されるべきものですが、これまでの協会活動の総括のうえに立って、必然的に明らかになると思われる「素案」について、再建準備委員会では次のように考えています。
@再建される協会は、科学的社会主義の思想集団であり、山川均、大内兵衛、向坂逸郎を代表とした労農派の伝統と『協会テーゼ』(テーゼ第二部も含まれる)の精神を継承する。
A科学的社会主義思想の普及・宣伝を強化するため、「現代帝国主義や国家、階級闘争」「ソ連・東欧社会主義の総括と日本の社会主義像の確立」「社会主義政党のありかた」等についての理論研究を深める。
B三池闘争や全電通闘争、国鉄闘争等の労働運動の闘う伝統を守り、「社民系」協会が自分たちの現在の活動を正当するため、歪めようとしている優れた闘いの歴史を研究し、教訓に学ぶ。総評・社会党ブロックの崩壊の総括作業進め、また党建設の優れた経験を交流、研究し、労働運動と社会主義運動の融合の道を明らかにする。
C何よりも誕生したばかりの新社会党の強化と発展のために全力を傾注する。
D労働運動の階級的強化のために、活動の諸課題についての研究、資料の提供をおこなう。
E各都道府県の社青同や労働大学、まなぶ友の会の仲間が進めている青年の組織化、学習運動を支援し、若い活動家の育成が新社会党や労働運動の発展に結びつくよう系統的な努力をつみあげる。
 想定される活動と運営方法
@再建総会後にただちに、第一線の労働者を含めた理論グループの強化を図るとともに、再建協会外の理論家、専門家の協力も得て、「機関誌」(毎月発行)を発行する。
 思想集団の生命は思想を広げるための出版活動です。永らく、新しい仲間に自信をもって購読を呼びかけることができなかった苦痛の時代に終止符を打とうではありませんか。
A これまでのようなサロン的な運営を排し、経験交流と活動の集約、総括ができるよう、徹底的な民主主義的運営を追求する。とくに、労働運動や党活動の場において、当面している現実の問題を時間をかけて討論、交流することを重視し、理論と実践の統一を図る。
Bしたがって、東京に少数の活動家を集めるのではなく、各ブロックでの全員参加型の理論研究活動、各分野の活動の交流に重点をおいた運営となります。
 なお、さまざまな事情のため社民党に残っている仲間にたいしては、所属政党の違いによる垣根をつくらず、労働 運動・社会主義運動の発展という共通の目標に向かって進むことができるような配慮の行き届いた運営に努める。
全国の仲間に呼びかけます。
 趣旨に賛同をいただき、協会再建運動に合流してください。
 あらたに出版する機関誌を購読し、活動の糧として活用してください。
 協会再建総会に結集しよう。
一九九八年二月         
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社会主義協会第三一回再建総会宣言(附:社会主義協会再建運動に合流しよう)
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