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四 現段階における日本資本主義の階級関係

1 階級関係
 こんにち、日本の有業人口は約四千三百万人、そのうち資本家階級〇・四%、労働者階級五四%、農漁民三〇%、小経営者一三%、知識人その他三%である。
 わずかひとにぎりの資本家階級が圧倒的多数の労働者、農漁民、小経営者などを支配している。安保条約によってアメリカ帝国主義の極東潮路に共同の義務を負い、沖縄を占領され、さらに国内にアメリカの軍事基地をもち、種種の治外法権をあたえている日本の国家は、みずからの主権をアメリカ帝国主義によって制約されている。しかしこれは、内外にわたる治安維持の安全保障として、日本独占資本との利害を代表する国家が、みずからその主権の一部をアメリカ帝国主義に譲り渡しているということであつて、日本国家の主権が基本的にアメリカによってにぎられているということを意味しない。したがって、アメリカ帝国主義への従属下にありながら、日本の独占資本と国家は、基本的に日本の国民を支配している。

2 国家  こんにち、日本国家は、資本の蓄積と集中を促進し、独占資本支配の体制強化をはかり、さらに官僚、軍事力の増強による権力基盤の拡大と、思想、教育などの統制をくわだて、一方、社会保障などをある程度に促進し、他方、労働者階級の意識の高揚を弾圧して、アメとムチの政策を兼ねおこない、資本主義体制の没落を支えることをその基本的性格としている。
 国家は、国鉄、電信電話、道路、地域開発、郵政などの公共事業を支配し、全国土面積の約1/4(九万平方キロ)を所有し、みずから林業を経営し、さらにそれ自身金融機関として投融資活動をおこなっている。また日銀はほとんど政府の統制下におかれ、民間金融機関を規制している。

 国家は経済諸関係に直接介入することによって、独占体間の過当競争を排除し、独占価格の維持をはかり、あるいは「体制金融」によって、直接に大資本の独占体制強化にのりだしている。過当競争的体質をもつ日本の独占体にたいする調整においては、国家の権力的介入は不可避である。「新産業秩序」はそのあらわれであり、経済にたいする国家的統制への方向をしめすものである。
 国家は、中小企業にたいする「中小企業基本法」により、一部上層企業の選別的上昇をはかるとともに、大多数の中小企業を整理し、農業にたいする「農業基本法」によって大部分の農家を切捨て、プロレタリア化させるための構造政策をとり、さらに労働者階級にたいしては「雇用対策法」によって、労働力の流動化、効率活用を実施しようとしている。いずれも独占資本の要求する低廉な労働力供給を、国家権力の介入によって確保せんとするものである。

 財政政策においても、税制、財政支出、財政投融資政府事業など、あらゆる面にわたって、独占資本の蓄積促進がはかられている。その反面、高度の大衆租税が課せられ、しかも教育、社会保障、生活基盤の充実は、まったく名目だけのものにおわっている。地方財政については、工場の地方への進出にともなって、一方で公害、住宅難などがひきおこされても、他方、道路、港湾、工業用水などの財政を増大させて、地方財政負担を加重させ、それだけ地域任民の生活に必要な教育、保健衛生、住宅、社会保障への支出を圧迫し、料金引上げなどをとおして、住民負担を重くしている。地方財政への国庫支出金は、住民の生活に必要なものにたいしてはきりつめられ、資本の進出に必要なものにたいして重点的におこなわれることによって、地方住民の生活を圧迫するとともに、地方の中央への直結による国家的統制の強化をもたらしている。

 すでに膨大な過剰生産力をかかえているこんにちの独占資本にとっては、政府の公債発行にもとづくインフレ政策は、まさに、必要不可欠な方策となっている。公債発行による財政需要増大は、こんにち公共投資の名のもとにおこなわれ、直接的には大企業製品にたいする需要を増大して、その価格低下を阻止し、また産業基盤を整備することによって企業の流通諸経費削減に寄与している。しかも公共投資など財政支出の増大は公債発行によっておこなわれており、公債の直接、間接の日本銀行引受けをとおして通貨を膨張させ、一般的な物価騰貴をひきおこしている。大企業は、これによってその製品価格低落を回避し、また過剰な生産設備の償却をはやめて生産力過剰のなしくずし的な処理をはかっている。しかし、その反面、中小企業や農業においては、低賃金労働力、低利資金の大企業への吸収によって供給力の制限をこうむり、その製品価格は騰貴しながらも、経営は不安定で不断に動揺しながら没落せざるをえない。そして労働者階級にとっては、中小企業、農業の供給力減退に起因する製品価格の上昇によって、あるいは公共料金値上げによって、実質賃金の切下げをこうむっている。大企業における綱織労働者は、闘争によって獲得した賃金の上昇も、消費者物価上昇によって実質的に削減され、未組織の、とくに中高年齢層においては、それによってきびしい生活難におちいっている。しかも老人、失業者などは、社会保障費などの実質的削減によって、その生活はきょくどに貧困化している。インフレ政策はけっきょく国家の介入による国民大衆の搾取と収奪のうえにおこなわれる大企業蓄積促進策であり、国家独占資本主義を特徴づける典型的な方策である。しかもこうした政策の推進は、安直な財政需要拡大の手段として、あるいはさらにこんにち要求されている対外的競争のための技術革新を国家の研究投資によって実現するための手段としても、軍需生産拡大への方向にむかわざるをえないであろう。
 しかもかかるインフレ政策を不可避的に採用する日本資本主義は、こんにち貿易の自由化、資本自由化に対処してきびしい合理化を強行せざるをえない。こうして政府は一方でインフレ政策をとりながらも、大企業の合理化を促進させ、あるいは独占体制の強化に積極的にのりだす。そしてさらにはインフレ政策による物価上昇とそれによる賃金上昇を抑制するために、いわゆる所得政策によって、資本と労働との関係に直接介入しようとしているのである。

 このように現在の国家は、休制的合理化によって独占資本の維持、強化をはかり、労働者階級をはじめ、中小零細企業者、農民を、はげしい収奪と搾取のもとにおくことよってその体制維持をはかっている。しかも国家は、官僚機構の強化による行政権力の拡充によって憲法を空洞化し、議会制民主主義を形骸化させ、あるいは裁判権をも規制して、ブルジョア独裁体制を強化しようとしている。
 国家は約二〇万人の警官、保安関係職員によって、国内治安の確保をはかり、労働者、国民の民主的運動を抑圧し、さらに思想統制をくわえようとしている。さらに国家は、欧米諸国に匹敵する近代兵器を装備した陸、海、空三軍約二六万人の自衛隊をもっている。安保条約によって「極東における平和および安全の維持」をはかり、「継続的かつ効果的な自助および相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力」を「維持し発展させる」義務をもつ日本の自衛隊は、みずからアメリカの極東戦略に積極的に協力することによって社会主義諸国に対抗し、アジアの新植民地体制維持をはかりながら、他方「局地戦以下の侵略」に対抗して国内治安維持をはかり、資本主義体制を維持する役割をになっている。兵器国産化の推進、ドル防衛への協力による海外への進出は、いよいよ日本独自の軍事力強化をもたらすであろう。そして自衛隊員の不足による兵力増強の制約は、徴兵制実施への要求をつよめている。

 資本の自由化への対処として宣伝されている国益優先主義の思想攻撃は、労働者国民の階級意識を喪失させて、国民全体を企業および国家利益に従属させ、もって資本の蓄積強行と帝国主義的進出へと総動員させようとするものにほかならない。国家は種種の思想攻撃、教育制度への介入、低俗な文化のおしつけ等等、あらゆる手段をつかって、労働者階級、国民を懐柔し、その体制内化をはかろうとしている。
 日本の労働者階級を中心とする全民主勢力の基本的課題はこれを抑圧し、ふたたび反動と軍国主義への道を歩みつつある日本の独占資本と国家を打倒し、社会主義革命を実現することにある。

3 独占資本
 わが国において、戦後急激に成長した重化学工業をはじめ、ほとんどあらゆる産業部門にわたって法人企業総数の一 %にもたっしない独占的大企業が、生産、雇用、市場を支配している。また金融機関においても、巨大銀行が預金、貸付の大半を支配している。こうした産業における独占的大企業と巨大銀行は、系列融資関係株式保有・人的結合関係などをとおして相互に癒(ユ)着し、金融資本を形成している。

 植民地市場喪失、アメリカ経済への従属という市場の転換によって、軽工業製品輸出による原料、機械輸入をとおして蓄積をおこなった戦前型の日本資本主義は、欧米の重化学工業との直接的競争戦に投げだされ、それ自身欧米の技術、新産業の積極的導入による重化学工業化を遂行せねばならなかった。一九五五(昭和三〇)年にはじまるいわゆる高度成長過程において、国家の種種の蓄積促進策により、あるいは貿易・為替管理に保護されながら、日本金融資本の蓄積構造は急速度に重化学工業中心の構造へと転換していった。それとともに、三井、三菱、住友などの旧財閥系独占体も、旧来のよるな流通部面を主とする系列支配間係から、石油化学、合繊、電機、電子さらには鉄鋼、自動車、原子力あるいは軍需生産部門などの電化学工業部門に進出した。この過程で巨額な設備資金調達の必要から、たんに同系列金融機関からの融資のみならず、興銀、長銀などの長期信用銀行、開銀などの国家的機関からの融資が拡大し、あるいは他の系列金融機関からの融資も増大した。鉄鋼はじめ合繊、石油化学、自動車、電機、電子部門などでは、旧来の財閥系系列からの独立化の動きもみられ、たとえば八幡製鉄、富士製鉄、あるいは日立製作所、トヨタ自動車などにみられるように関連傘下企業を結集し巨大な産業トラストが形成された。こうして現在では金融資本は、重化学工業を基盤として、生産過程の技術的関連にもとづいた系列支配関係をきづいており、その支配力は強大なものに発展してきている。
 金融独占資本は、経団連、同友会などによってたがいに結束をかため、財政政策をはじめとするあらゆる側面において政府の政策を左右し、さらには日経連などをとおして労働者階級にたいする弾圧にのりだしている。

 とくに一九六五(昭和四〇)年の不況をきっかけとして、さらには資本の自由化およびドル防衛にともなう帝国主義諸国間のはげしい市場争奪戦に対処するため、現在独占資本は各各その部門内部における合理化を強行し、あるいは大企業同士の合併、業務提携などをとおし、さらには関連部門、下請企業の再編、整理をとおして、系列支配関係をつよめ、強固な独占体制を構築している。国家は、その税制、財政支出の側面から、あるいは「体制金融」をとおして独占体間の調整をはかり、より強固な寡占体制実現による国内支配体制の維持と、対外的資本進出をはかっている。そして外資に対抗するための国益優先主義の宣伝によって労働者の意識を休制内化させ、あるいは反共防衛意識の高揚をはかることによってその独自の軍事力増強への基盤を着々とかためつつある。

4 中小零細企業
 わが国の法人企業の九九%は中小零細企業である。中小零細企業のかかる膨大な存在は相対的過剰人口を基盤とする低賃金労働によって支えられている。
 中小企業者はそれ自身資本家として労働者を搾取している。しかも労働者にたいし低賃金ときびしい労働条件を強いている。そのかぎりで中小企業者は、労働者階級に対立している。ことに独占資本の系列下にくみこまれた中小企業では、独占資本への従属の強化をその利益とし、独占資本と一体化して労働者階級に敵対している。中小企業の一部比較的上層の企業も多かれ少なかれ、独占資本体制維持を自己の利益としている。

 しかしながら、中小零細企業は、独占資本の搾取と収奪のもとにおかれ、企業所得はきわめて低く、経営はまったく不安定で、倒産、新設をくり返しながら、ことに零細企業経営者においては賃金労働者化されている。独占資本による独占価格のおしつけ、支払条件の切下げ、さらに系列再編成にともなう系列からの排除などにより、独占資本との対立をふかめている。また系列外の中小企業においても、従来主に中小企業がもっぱら担当していた分野への独占資本の進出あるいはまた外国資本の進出によって大きな打撃をこうむりそれへの対立関係をふかめている。
 国家の中小企業対策は「中小企業基本法」にしめされているように一部上層中小企業の蓄積促進をはかり、大多数の零細企業にたいしては逆に整理、没落を強制するものでしかない。しかもこんにちおこなわれているインフレ政策は大企業製品価格の下落をおさえるばかりか、中小企業製品価格をいっそう上昇せしめている。しかしこうした中小企業製品の価格上昇は、基本的には中小企業の存立基盤たる低賃金労働力の不足と、資金不足による供給力の減退にもとづくものであって、けっして中小企業の経営を安定化させるものではなく、製品価格上昇のうちにかえって経営を悪化させ、没落を余儀なくさせているのである。かくして、独占体制の強化と国家権力の介入による体制的合理化のなかで、中小零細企業は一部上層の企業と大多数の零細企業との分極化を強制され、こうして、大多数の小企業と零細企業は、労働者階級、農民とともに独占資本と国家にたいし、利害の対立をふかめざるをえない。

5 農民
 独占資本はこんにち直接に農業をもその支配下にくみこんでいる。農地改革によって、寄生地主制はほとんど解体され、自作農の比重はたかまったが、しかし農業経営はぜんたいとしていぜん零細であり、独占資本の搾取のもとで、そのまま経営をますます悪化させている。
 農民それ自身は小土地所有者であり、小生産者である。その立場からすれば、農民はとくに上層富農においては資本主義に利益を感じ、資本家階級の政治的影響のもとにおかれやすい。しかしながら現在、農民は独占資本と国家により生産物を買いたたかれ、肥料、農薬、飼料、農機具など生産手段と消費手段の多くの部分は独占価格をおしつけられ、さらには食糧の低価格維持による低賃金確保のための食糧輸入によって、まさに零落しつつある。

 大部分の農民はもはや農業自体では生計を維持しえず、出かせぎにでるか、あるいは恒常的に賃労働者化させられている。しかも、都市大企業への雇用は、もっぱら若年低賃金労働に限定されていることから、若年労働力は農村から流出し、農業経営はもっぱら高年齢層によって担われざるをえず、またその農外への出かせぎも、きわめて劣悪な労働条件と低賃金およびきわめて不安定な雇用関係のもとでしかおこなわれえない。
 農業協同組合は独占資本の代理店と化し、零細な農民の貯蓄を独占資本に供給する機関になっている。政府の農業基本法やそれにもとづく農業構造改善事業は、一%にみたない上層農家を多少うるおすことはあっても大部分の農家を育成するものとはならず、逆にそれを没落させ、独占資本にとっての低賃金労働力確保の役割を担っている。米価維持政策にしても、直接には農民を保守政党の地盤とせんとする農民懐柔政策であり、けっして貧農の救済には役だっていない。たしかに米価の引上げあるいは農産物価格の上昇は、消費者としての国民大衆にとっては農民の利害との対立をまねきかねない問題である。しかしながら、労働力の大企業への流出と経営の近代化のための投資をおこないえない農業において、費用価格の上昇はとうぜんに農産物価格の引上げをまねかざるをえないばかりか、その価格引き上げによっても農業の経営、農民の生活はけっして安定するものとはなっていないのである。したがって、すなわち米価上昇あるいは農産物価格の上昇については、たんに独占資本による直接的搾取の問題のみでなく、まさに国家のインフレ政策による大企業蓄積優先策が、その元凶となっていることを十分にばくろせねばならない。

 こうして農民の大部分は、独占資本と国家の搾取と収奪下において農業経営を危機的状態におとされており、したがって独占資本と国家にたいしはげしい利害の対立をしめしており、資本主義体制批判の意識が成長する。また賃労働者化した農民は、ますます労働者階級上の利害の一致を感じとり、階級意識を自覚している。

6 労働者階級
 就業人口の過半数をしめる労働者階級は、数百万におよぶ膨大な潜在的過剰人口の存在によって、低賃金におしとどめられ、体制的合理化のもとにきびしい労働条件におかれている。
 この低賃金、劣悪な労働条件が、独占資本の国際的競争力、対外進出の基盤となっており、日本独占資本の存立条件となっている。しかしそれは不可避的に労働者階級の独占資本にたいする階級的対立を激化させ、階級意識を高揚させずにおかない。

 わが国では、相かわらず大企業労働者と中小企業労働者とのあいだに、いちじるしい賃金格差、労働条件の格差が存在している。民間大企業、官公庁労働者においては、なお年功序列型賃金による終身雇用制が支配的である。これじたい過剰人口の存在にもとづく低賃金を基盤としてなりたっているものであるが、これによって大企業は労働者を企業内に封鎖し、企業意識をうえつけ、さらに労働組合の御用化、体制内化をはからんとするものである。しかも不況を契機とし、さらに資本の自由化に対処するために独占体制の再編強化が進行するなかで、独占資本は労働者階級にたいするはげしい合理化攻撃をくわえており、人員削減、配置転換、労働強化、あるいは職務給・能率給の採用、新労務管理方式の導入などが、民間大企業を中心としておこなわれている。これが大企業労働者の側においても、企業の安定性、賃金、労働条件その他の経済的条件の比較的よい大企業への雇用に固執し、企業意識におちいるといういわゆる右傾化の傾向を一定程度ひきおこしている。しかしながら、こうした独占資本の合理化政策は、若年低賃金労働者の企業内確保をはかり、そのうえで賃金支払総額を削減し、さらに他企業あるいは外国資本との競争意識をあおることによって労働強化をはかることを目的とするものでしかない。産業再編成にともなって労働組合の再編、統一の動きが活発化しているが、それは独占資本にとっては外国資本の侵入にたいする独占資本の産業再編成に労働組合運動を合流させ、労働組合の御用化、労働者階級の意識の体制内化をねらいとしたものである。しかしけっきょくは賞金、労働条件の改悪にるものでしかないのであり、労働者の組織的反抗をよびおこさざるをえない。

 他方、独占資本による搾取と収奪のもとにおかれ、倒産−新設をくりかえしつつ漸次経営を悪化しつつある大多数の中小企業においては、労働者の賃金は低くおしとどめられ、長時間労働、労働強化が強いられている。ことに大企業による若年低賃金労働力の吸収によって、中小零細企業労働者は高年齢化するとともに、さらにいっそうきびしい労働条件が課されている。こうしたことから、とくに未組織の中小零細企業労働者のなかには、一種の虚脱感、刹那主義がうまれ、大企業の組織労働者や既存革新政党にたいする無力感、不信感が醸成されることにもなる。しかし、独占資本と国家の収奪を根拠とするこうした中小零細企業における労働者階級の貧困の深化は、労働者階級の組織力をつよめ、独占資本への階級的対立を認識せしめずにはおかない。
 国家は、その権力による直接的な介入によって独占資本の体制強化をはかりながら、さらに労働者にたいする雇用対策の名のもとに雇用の国家的統制を意図し、インフレーション抑制の口実のもとに所得政策による実質賃金切りさげをはかろうとしている。国家による企業防衛宣伝、労働憲章にもとづく労資協調の思想宣伝は、国家と独占資本の体制的合理化にたいする隠れ蓑である。労働者を生産のパートナーとおだてて企業防衛をはかる独占資本は、これによって労働運動を企業内に封鎖し、労働組合の分断をはかり、労働者をはげしい合理化の嵐にまきこまんとしている。独占資本の利害を代弁し、資本主義体制の維持に総力をあげる国家の階級的本質は、ますますばくろされてきており、労働者階級の独占資本にたいする組織的抵抗が同時に国家にたいする政治闘争と結合せねばならぬことが、労働者階級に明確に自覚されずにはおかない。

五 社会主義革命の主体的勢力

1 革命主体としての労働者階級
日本資本主義の基本的矛盾は、独占資本にひきいられる資本家階級と労働者階級との階級的対立である。したがって、資本主義的社会秩序を打倒し、社会主義革命を実現する主体的勢力は労働者階級である。
 現在の労働者の組織状況は、総評に組織されるもの四二四万、同盟に組織されるもの一七一万、新産別に組織されるもの六万五千、中立労連に組織されるもの一〇三万、その他無所属組合に組織されるもの三三六万、合計して組織労働者は約一千万人であり、全労働者の約三分の一にあたる。未組織労働者の大半は、中小零細企業の労働者である。

 全労働者の三分の一にあたる組織労働者も、その所属する組合の性格、指導方針によって、反体制の意識には大きな差がある。現在の日本における反体制的勢力の中心になりうるのは、指導方針、意識からいって総評を中心とする組織労働者であり、それを基盤としこれを指導する社会主義政党である。独占資本と国家による懐柔策のまえに現在はなお反体制的意識の自覚にたっしえていない他の組織労働者も、独占資本と国家のきびしい体制的合理化攻撃によって、かならずその階級的自覚をよびさまし、意識的な反体制勢力に成長しよう。総評傘下の組織労働者の独占への組織的抵抗のつよさと、これを指導する社会主義政党の政治的実力が、かかる組織労働者の階級的自覚にもとづく組織的統一を実現させうる。
 中小零細企業における未組織労働者においては、独占資本の搾取と収奪によって経営状態が、不断に動揺している状況ではその組織化はかなり困難である。しかし、劣悪な労働条件、低賃金と、雇用の不安定のもとで、その労働者は現状にたいするつよい不満、反抗心を蓄積している。その労働者の不満、反抗心が、組織化されないときには、そこから虚無主義や刹那主義がうまれ、宗教にとらわれる。中小零細企業の動揺と、そのもとでの労働者階級の貧困化の進展は、かならずその基礎にあると国家にたいする敵対関係を自覚させる。反合理化闘争を基盤とした組織労働者による階級的連帯の行動、それらの社会主義政党による政治運動への結集が有効におこなわれるならば、かかる未組織労働者の階級的組織への統一はかならず実現される。

2 同盟軍としての農漁民、中小零細企業者
 社会主義革命の主体たる労働者階級の同盟軍になりうるのは、農漁民、中小零細企業者である。
一千万人以上にのぼる農漁民は、組織的には官製組織たる農協、漁協にくみいれられ、独占資本支配体制の土台とされている。全日農などの自主的農民組織に組織化されているのは推定三〇万程度にすぎない。農民は小土地所有者、小生産者として、中小企業と同様、自然発生的に反独占の自覚をもつことは困難である。しかしながら、独占資本と国家による農業破壊の進行のなかで、農民の大部分は賃労働兼業農民として、資本の直接的な搾取のもとにおかれている。農民にたいするかかる搾取と収奪がすすむにつれて、農民は支配階級にたいする怒りと反抗を増大させ、労働者階級との提携によって、体制を変革し、社会主義を実現せねばみずからの解放がないことを自覚せずにおかない。賃労働者化した貧農は、労働者階級の第一の同盟軍である。社会主義政党は、農民の日常的要求をくみあげ、統一的な要求に集約して、政治的な力へと結集せねばならない。社会主義政党に指導された労働者階級との組織的な協力による反独占闘争の強化こそ、農民を、労働者階級の側に参加させる。

 約六百万にのぼる小経営者は、各業種別に組織化されてはいるが、主にその性格は自己の経営維持をはかる自衛的組織である。中小企業者は、それ自身生産手段を所有する小生産者、小資本家として、その意識は体制内化しやすい状態にあり、容易に支配階級の政治力にくみこまれうる性格をもっている。ことにその上層部にあっては、独占資本に完全に従属し、支配階級の一構成部分となっている。しかし、中小企業の、ことに経営規模の零細な企業者は、労働者階級に敵対するよりも、それらを搾取し、収奪する独占資本にたいして対立をふかめており、国家の政策にたいする大きな不満をいだいている。独占資本の系列支配体制の強化、中小企業分野への進出は、系列外の中小零細企業者の独占への抵抗をつよめる条件となる。ここに、中小零細企業者と労働者階級との反独占への共通の利害がある。
 こうした中小零細企業者を反体制勢力として労働者階級の組織にくわえるためには社会主義政党による中小零細企業者の諸要求のくみあげ、その政治的要求への結集が不可欠であり、さらにこうした政党に指導された労働者階級の独占にたいする組織的闘争を基盤として、未組織の中小零細企業労働者を組織化し、その組織のもとに中小経営者をも結集していくことが必要である。

3 知識階層の性格と役割
 わが国においては、いわゆる知識人が社会的に一定の影響力をもち、現状においては世論の動向、国民の思想、意識に一定程度の影響力をあたえている。もちろん知識人は、多かれ少なかれ、小市民的立場にとらわれてはいるが、しかしわが国においては、マルクス・レーニン主義の立場にたっ知識人階級が比較的厚く、革命主体の意識、運動に直接、間接にかなりの影響力をあたえている。真の社会主義意識をもつ知識人は、資本主義の全体制的な把握をふかめ、現状の基本的矛盾と各階級階層の歴史的、客観的位置づけおよび社会主義革命へのその任務を把握しうる。
 こうした研究の成果をもって積極的に労働者階級さらには中小企業者、農漁民に接触し、その立場と運動の方向を認識させるよう努めることによって、革命主体の階級的意識をたかめることに大きな役割を演じうる。

4 社会主義政党の任務
 労働者階級を中核とする農漁民、中小企業者による反独占・反帝国主義戦争への政治的統一戦線を結集する主体は、社会主義政党である。現在わが国においては、約五万の党員を有する日本社会党、約三〇万の日本共産党が反体制の社会主義政党である しかし 日本共産党は戦前からの理論的誤謬がいまなお払拭(フッショク)できず、戦後の日本資本主義分析に重大な誤謬をおかしており、したがってその革命路線も誤っている。これにたいして、日本社会党は現状においても相対的に正しい現状把握と革命路線をもっており、またマルクス・レーニン主義の正しい思想に武装された多数の党員を擁しておりわれわれは日本社会党を、社会主義革命を担う中核的な政党として強化しうる。
 正しい社会主義的意識によって結集した社会主義政党は、労働者階級を中心として、さらにあらゆる諸階層の日常的な経済的、社会的要求を、政治的要求に組織的にたかめ、国会、地方議会、行政、司法など国家の階級支配機構のあらゆる部面におけるブルジョア的支配の方法をばくろし、こうして反独占・反帝国主義戦争の政治的統一戦線への組織的結集に努めなければならない。独占資本と国家による体制的合理化のもとで、労働者階級の全階級的統一への基盤は存在している。社会主義政党に指導された労働者階級の反独占闘争のもとに、中小企業者、農漁民を結集しうる客観的条件はある。独占資本と国家による憲法の空洞化、帝国主義的政策と、アメリカ帝国主義の侵略政策への加担にたいして、憲法と民主主義の擁護、反帝国主義戦争への広範な国民大衆結集への条件が存する。階級意識に武装された社会主義政党によって労働者階級を中核とする中小零細企業者、農民の反独占、民主主義擁護、反帝国主義戦争の政治的統一戦線を結成しうる機が熟しつつある。
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