国民連合政府綱領と日本社会党の任務7
第三部 国民統一の戦線と政府をめざして
(一) 要求、政策と行動の一致
(1) 「国民統一の基本政策」草案にも明らかなように、今日、広汎な勤労諸階層が反独占・反自民をめざした国民統一の戦線に結集して行く客観的条件は次第に成熟の方向に向っている。しかしこの状況に対応する主体的条件は立ちおくれている。したがって、国民統一の戦線の中心となり、その主導的役割を担当すべき日本社会党の責任は重大であり、党は反独占・反自民の国民戦線結集を推進するため最大限の努力をはからなければならない。
この努力の出発点は、今日の勤労国民が直面している社会的諸矛層に対し、勤労諸階層の諸要求を統一するための討議を広範に且つ大衆的に展開することからはじめるべきである。そしてその要求の一致をさらに政策の一致にまで発展させなければならない。
(2)いま労働者が生活要求として闘っているインフレ・物価・年金・医療・住宅・公害・交通・教育などの諸問題は労働者にとって共通であるだけでなく、国民共通の要求でもある。それは平和と民主主義の問題にしても同様であり、こうした労働者の要求を国民的要求に発展させることは国民統一の戦線を促進するうえで不可欠の条件である。
このような労働者の要求を国民的要求として発展させ、国民の統一した政策要求として、集約するために、革新的諸党派が持つ役割と責任はまことに重要である。
社会主義理論委員会が一九七三年二月党大会に提出した「国民統一綱領」草案に引きつづいて第二次草案を提出したのは、この観点からさらに内外の大衆討議を喚起して、真の国民統一の綱領に発展させるため役立てようとするものである。
(3) 基本政策や重要政策での一致に至らない段階でも、われわれは先ず当面の緊急課題について統一行動や共同闘争の強化発展をはからなければならない。討議と共に先ず行動することが求められるのである。
なかでも将来の国民戦線で中核的位置をしめるのは、勤労国民の六五%をしめる労働者階級であり、このため賃金をはじめ、年金・老後保障などの生活要求で広汎に労働者が結集し、積極的な共闘、統一行動を展開することがとりわけ重要である。
共通の要求を基礎に組織の異なる労働者が共同闘争をすすめるなかで相互の連帯と信頼関係が強められる。これを基盤にして労働戦線の統一に発展させる契機が生れ、国民連合戦線の主柱を形成することができるのである。
(4) また地方自治体のたたかいや住民運動をはじめ国民的諸要求を基礎にしての統一行動、共同闘争が全面的かつ、広汎に展開されなければならない。各種の「国民の足を守る中央会議」「民主教育を守る国民連合」「司法の独占と民主主義を守る国民連絡会議」などの例に見られるように、個別課題にそった勤労諸階層の統一行動組織を多く組織することが大切である。
とくに、数百の革新首長が生れ、革新自治体が拡大された現在においては、その各々の自治体行政の内部で民主化の成果をあげるだけでなく、「革新自治体連絡会議」(仮称)を形成し、住民要求を代表し、あるいは地方自治確立の立場から中央政府に対して、大胆な制度改革要求を提起することが要請されるであろう。
(5)勤労諸階層の統一行動、共闘を政治的に発展させ迫力ある政治要求にするためには反独占反自民の革新諸党派がこの闘争に参加し、その先頭に立って指導的役割を果すことが求められることは当然である。この点における各党の態度と姿勢にはそれぞれに、微妙な不一致が存在することは否定できない。
革新諸党派間の統一行動や共同闘争は、国会内闘争、地方自治体の首長選挙闘争など、いわゆる多角的重層的な形態で一定の成果を収めてはいるが、諸党派問の対立、矛盾もまた深い断層を示しており、未だ革新諸党派の統一戦線の可能性をはっきり展望し得ないのである。
この際、必要なことは、革新的諸党派が相互の相違点を強調して、戦線を分裂縮少することではなく、より大局的な展望に立ち、保守革新の勢力関係や、内外の情勢発展について正しい見通しを持って、行動することでなければならない。
いま望まれることは、性急に革新諸勢力のなかに「線引き」を持ちこむことではなく、一層積極的に反自民の共闘体勢を強化拡大することであり、国民諸階層の諸要求に基く大衆闘争をさらに強化発展させ、それを国民の統一闘争に高めることである。さらに革新連合政府の構想については、各党が積極的にこれを国民の前に公開して活発な討議を巻き起こすことである。独占と政府・自民党の実力は、世論調査の数字に表現される程には、弱体ではないのであり、情勢はそれほど甘くはない。真の革新であるならば反自民勢力のなかに対立と分裂を持ちこむのではなく全力をあげて、正面の敵と対決し、反自民・反独占の闘いを推進することが今日の課題なのである。
(二) 国民共同行動委員会と国民統一戦線
(1) 広汎な勤労諸階層の共同闘争の発展は国家独占資本主義段階にある日本資本主義の社会的諸矛盾の激化が、もはや勤労者個々人で、あるいは革新的諸党派が個別に対応する範囲を超えて拡大していることを示している。このため今日の社会的諸矛盾を構造的にとらえ、統一して闘う場の設定が今ほど要請されているときはないと云えよう。われわれ日本社会党はこの情勢に応えて「新中期路線」において、すべての勤労国民が統一して闘う場を保障するため、反独占・反自民の国民戦線の結成を提唱してきた。
この国民戦線は「国民統一の基本政策」でも明らかなように、日本の勤労国民が直面している社会的諸矛盾を現実的、具体的に解決し、日本の平和的、民主的改革にむけて経済社会改革をすすめる運動体であり、政治的統一戦線である。したがってこの国民戦線は、「反独占・反自民」という基本的性格づけがなされる。
この国民戦線は、「国民統一の基本政策」に賛同し、これを支持し、積極的に活動する意思をもつ団体、個人のすべてに扉が開かれなくてはならない。
反独占・反自民の革新的諸政党ならびに、労働者階級、農漁民、中小企業者、学者、文化人、一般市民などあらゆる勤労諸階層を包摂する国民多数派の結集体である。
(2) この反独占・反自民の国民戦線結成に至るプロセスを明らかにすることは、今日の一つの不可欠の課題である。それにはいくつかのコースが考えられる。各党派が、それぞれの国民統一の政策を示し連合政府構想を提示して、これを討議のなかで調整一致させることも必要とされる。
また同時に労働組合が生活要求闘争として展開しつつある物価、減税、住宅、年金などの諸要求を一層発層させて、広汎な勤労国民の共通の目標として、労働組合組織の枠を超えた統一行動に高め、たとえば「反インフレ、国民生活防衛」を目標とした包括的共闘の展開によって国民戦線形成の中核的役割を果すまで運動を高めて行くことも必要である。さらに革新自治体が制度改革の統一要求を以て政府に対決をせまるまで、自治体闘争を組織的に強化することが国民戦線形成のため、 大きな影響を持つことも明らかである。それ故、われわれは当面先ずこれらの国民諸階層の大衆闘争を有機的に結合させ、これを反独占・反自民の広汎な統一行動に発展させることを目的として「国民共同行動委員会」(仮称)をつくることが必要と考える。
この組織は、未だ政治的統一戦線ではないが、その発展の一定の時期に共通の政府構想をもつ改治的統一戦線−すなわち「反独占・反自民の国民戦線」に改編され、発展する性格のものであり、いうならば国民戦線を準備する持続的な共同行動の司令部というべきであろう。
すなわち、われわれは政党次元においての革新連合政府構想を一致させるための努力を進めることと併行して、広汎な勤労国民の生活要求を主体にした統一行動、共同闘争の組織をつくり、連続的な闘争を活発に展開することが、広汎な勤労国民の支持を得て、国民統一戦線の組織化を成功させる道である。
(3) いまわれわれに求められている重要な課題は、国内の政治、経済、社会のあらゆる面で深刻化している矛盾、対立、混乱、断絶のなかから、新しい国民の統一目標、共通の価値基準を見出し、意識の統一と行動方向の一致をつくりあげることである。
社会主義理論委員会が、この「国民統一綱領」第二次草案のなかで提示しているものは、国民の生活防衛を主体とした国民統一行動の組織化であり、これを反独占・反自民の国民戦線に発展させ、この国民戦線を基盤とし、反独占民主主義の立場に立った「国民統一の基本政策」そしてこの基本政策を実現する国民連合政府の樹立である。
この連合政府は反独占・反自民の国民戦線に基礎をおき、それに支持された民主的な政府である。
このため、国民連合政府は、反自民の革新的諸党派をはじめ国民戦線に結集している民主的諸団体、運動体の代表で構成される。国民連合政府のもとでは、政策と行動の一致を基礎に、諸党派間、諸団体間の利己主義やセクト主義は排除され、平等の立場を原則的に信頼関係の強化、確立が強固な政府の保障となろう。
また国民連合政府の諸機関の決定には、労働者、農漁民、中小企業者、青年学生、婦人、市民などの勤労諸階層がそれぞれの関係分野で参加を要請される。
また国民戦線と国民連合政府に反対する勢力の権利は合法のワク内で尊重されよう。
われわれは国民とともに、真剣な討議を重ね、新しい日本の未来を開く国民連合政府の樹立のため、全力をつくす決意である。