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国民連合政府綱領と日本社会党の任務5
国民統一の基本綱領 第二部 第二章 教育・科学・文化の飛躍的発展
 金力万能・弱肉強食の資本主義社会は正しい人間形成を困難にし、汚職・犯罪・バクチ・麻薬・売春・自殺・精神病などの社会病理現象がはびこる。独占資本の段階には、巨大企業の管理組繊のなかで、個々の労働者の非人間化がすすみ、労働者は機械の一つの歯車にされてしまう。
 また、大量生産・大量販売・大量消費の時代には、消費者の生活様式が画一化され、電化製品・インスタント食品・既製服・プレハブ住宅など衣食住全体が、大企業の操作の下におかれる。
 情報の分野でも、大量マスコミの発展は、国民の自主的思考力を奪い、大衆の思想を個性の失われた受動的なものに変形する。このような独占資本支配のなかでは、政治ばかりか、教育も科学も文化も資本に奉仕するものになってしまう。
 教育は安い質のいい労働力をつくり出すものとなり、科学は資本のため最大の利潤を生み出す役割を負わされ、文化は、大衆を白痴化し眠らせる阿片の役目を果すのである。
 資本主義世界でアメリカについで第二位のわが国は、社会病理現象についてもアメリカと同じ方向に進んでいる。このような社会の腐敗や人間性の破かいは、もとより資本主義を終らせない限り除去することはむずかしい。しかし資本主義のなかでも、われわれは他の経済闘争、政治闘争と同様に、この社会病理現象と闘う文化闘争を行わなければならない。 
 国民連合政府が、民主的改革の一環として社会悪・人間性破かいと闘い、健康な社会と新しい文化創造のために努力することは当然である。
(1) 民主教育の確立
 国民連合政府は、憲法と教育基本法の原則に従って教育の民主化につとめ、国民に対して、幼児教育から高等教育まで、機会均等を保障する。
 従って中央教育審議会答申に示された差別と、選別教育、能力主義、詰め込み教育の方針を採らない。国家の教育支配を行わず、教育委員会の公選制復活など教育行政の民主化をすすめる。教科書の国家統制は行わず、教師の自主的・創造的な教育活動を尊重する。また教師の労働基本権の確立、差別賃金・勤務評定を行わない。また学問研究の自由、大学の自治を尊重する。
(2) 教育施設の整備
 義務教育の普及を世界に誇っているわが国の教育も、教育施設・教育予算の面で他の施設に比し著しくおくれている。
 国民連合政府は教育事業の飛躍的発展をめざし、年次計画をたてて教育機関と施設の整備充実をすすめる。
@ 公立の保育所・幼稚園を緊急(三年計画)に増設し、希望者が全員入れるよう整備する。
A 小中学校など義務教育施設を拡充し備品などについても国庫負担をふやす。また一学級の生徒定数は三十五名以下とする。
B 国庫補助をふやしながら公立高校を増設し、すべての青年が高校入学ができるよう整備し、小学区総合制をとり高校入試をやめさせ、授業料は無償とし、奨学金についてはこれを充実させる。
  定時制高校を整備し、企業には労働時間内有給通学を義務づけ、教科書・給食など働きながら学ぶ教育を保障する。
C 大都市周辺の過密地域の小中高校の増設には、国の特別助成の措置をとり、辺地教育についても、助成を強化する。またすべての障害児に幼児教育と義務教育を実施し、そのための学校施設をふやし、障害児に対しては通商・通学バスなどを無償とする.
D すべての都道府県に総合大学をおくことをめざして大学の拡充を行う。大学夜間部の設置、また公開講座を設けるなど大学を一般に開放する。公開講座は一般及び専門教育を含み、内容を充実させる。私学への国庫補助を増加して、国公・私間の格差をなくし、研究・教育の条件を改善する。
E 社会教育は国民が生涯学ぶことのできる教育制度としてこれを充実する。公民舘・図書舘などの施設をふやし、職員の身分・待遇を改善する。
(3) テスト教育・受験地獄の克服
 現在の受験地獄・進学教育を克服することは、教育最大の課題である。そのためには、社会の学歴偏重の制度と風潮をなくすことであり、先ず公務員の採用制度や職階制に根本改革を行い、民間 企業もこれに倣わせること。高校教育まで義務制とし、また、大学の制度・施設を充実して、進学コースをとらないでも、働きながら高等教育を受けられるよう、夜間部の増設、夜間大学の設置など高等教育機関を整備するとともに、官庁、企業など各職場においても、時間内の通学の便宜を与えることを義務づけなくてはならない。要するに、老若を問わず、就学の機会が用意されているよう、大学と社会を結びつけることが必要である。
 国民連合政府は、進学教育・受験地獄克服のため、各界の代表を含む審議機関を設けて、これを真剣に検討する。
(4) 教育機関の地方分散
 現在の大都市の社会環境は心身の健康にとって最悪の状態であり、青少年の教育のためにも適当なものということはできない。
 中・高校を地方農山村に移し、全寮制の教育を行なうことを検討する。このため国民連合政府は地方の適当な地域に中・高校の学校施設をつくり、大都市の生徒を季節的に移動して教育することを試験的に実施する。
(5) 科学技術の自主開発
 保守政権による科学技術政策は、民間企業による外国からの導入技術の商品化や巨大科学を中心とする大型プロジェクトの推進が主であり、大企業の利益に偏した歪んだものとなり、将来を見通した先駆的技術に乏しく、さらに国民生活への科学の貢献が軽視されてきたことは否定できない。
 この民間企業の利潤に奉仕し、国民の福祉や安全と直結しない科学技術のあり方に検討を加える必要がある.
 国民連合政府は、国民の利益に立脚した科学技術の進歩を基本にして、基礎学術研究を大幅に充実し、各分野の科学研究のバランスのとれた発展を促し、導入模倣の技術から自主開発へ促進するものである。このため、
 @ 自然科学・社会人文科学にわたって有機的に結合された総合機構に再編成し、研究活動と管理運営を自主的に行えるようにする。
 A 科学技術の計画は国の経済計画をはじめ長期的計画に関連しつつ均衡ある発展をなし得るよう配慮してつくられる。
  また原子力の軍事的利用は完全に禁止され、自主・民主・公開の平和目的利用の三原則が守られなければならない。
 B 科学技術者の身分と待遇を向上して国際・国内の研究交流の費用を大幅にふやし、優れた人材が安心して研究し得るようにする。
 C 新技術の自主開発を基礎研究の強化によって推進し、外国技術への依存と安易な実用主義から脱却する。
 D 基礎研究基金制度を創設し、国の研究開発費の一定額を基礎研究に投入する。研究費の配分などの運営については行政の干渉をつつしみ日本学術会議など研究者の組織によって実施する。
 また学術研究者の国内及び海外交流について、十分な助成制度の下に推進し、海外相互交流を活発にする.
 E 国民生活に関係の深い次のような研究プロジェクトの研究を促進する。
  (イ) 公害防止・無公害エネルギー源・廃棄物資源化の技術 (ロ) 地震台風の災害対策 (ハ) ガンをはじめ難病の征圧の医療技術 (ニ) 微生物科学 (ホ) 総合計画技術 (ヘ) 自動機器開発 (ト) 総合交通システム設計 (チ) 毎洋開発 (リ) 安全な原子力利用
(6) 国民文化の発展
 科学技術・芸術・文化の活動が大企業に独占され、個人の知的創造的活動が後退している現状を改めるため、国民連合政府は次のような措置をとらなければならない。
 @ 国民の学芸文化活動に対し大規模な選奨制度(コンクール)を中央及び地方に設ける。
 A 特許制度を拡充し、発明家を保護し、発明実施への援助を活発にし大衆の知的創造的活動を盛んにする。そのために「発明開発振興法」(仮称)をつくる。
 B一般の美術工芸の活動を盛んにするため、研究・教育・指導機関(工芸大学・工芸指導所)、大規模な展示施設などを中央地方に整備する。そのため「工芸振興法」(仮称)をつくる。
 C 文化人・芸能人・職業スポーツマンなどの生活・医療・年金などの共済制度をつくり、これに国が必要な助成措置をとる。
 D 能・歌舞伎・文楽はもとより、民謡・郷土民踊などの郷土芸術や民芸制作など伝統芸能を保護し、その後継者育成のため援助し、有形無形の文化財保護につとめる。
 
(7) 健康なスポーツ・レクリエーション
 国民の健康な体力を保持し向上するため国民連合政府は、積極的な体育スポーツ政策を実施する。国及び地方自治体は体育スポーツの予算を増額し、公営の体育スポーツ施設をふやし、指導教育の機関を強化する。勤労者をはじめ国民の余暇利用は、知的創造的活動・体育スポーツのほか、観光レジャーにむけられるが、国民宿舎・休養村など健康な公営施設を充実する。民間の観光開発など自然破かいと商業主義に毒される危険を防止するため、これに必要な規制を加え、国・公営の開発・施設を推進する。
(8) 未来をひらく青年・婦人
  国民連合政府の民主的改革の事業は、未来をひらき、未来をそだてる青年と婦人の運動によって推進される。
  婦人は職場・家庭・教育等の社会活動分野で制度的にも実質的にも男子と平等の立場が保障され、その社会保障や教育文化の分野で自主的な社会活動を行うため、必要な施設などを充実する。
  青年は、職場に地域に自主的な組織をつくり、国民連合政府の民主的改革の闘いに参加し、社会連帯と民主主義の精神を発展させ若いエネルギーを平和と社会進歩へ燃焼させる。また青年の国際交流が奨励され、平和と文化の国際連帯をきずきあげる。
 
         第三章 国民生活優先へ―経済の民主的改革
 国民連合政府の緊急の課題は、永く続いた大企業中心の経済成長の結果生み出されたインフレ・物価高、富と所得の不平等、公害・事故の激化の諸矛盾の解決と取組み、独占資本支配の体制に徹底した民主的改革を加えて、中小企業の振興、農林漁業の再建、勤労者の生活を守り、大企業優先から国民生活優先の経済に転換することである。
 この経済政策の基本は次の各項を目標として進められる。
(1) 経済民主化、計画化
 自民党政府の下で、国民不在のまま財界と官僚と自民党の結託によって大企業優先の長期経済計画、全国総合開発計画などの基本計画がつくられ、国会の承認も受けなかったが、国民連合政府はこの諸計画策定と運営方式の民主化を進める。
 まず、従来の各種計画審議機関を改編して、学者、専門家を中心とし労働者、農民、中小企業者など各界代表の均衡のとれた民主的構成に改める。
 また長期経済計画、国土保全利用計画、国民生活向上計画、財政金融計画、港外経済協力計画などの基本計画は国会に提出し、その承認をうけるものとする。
 諸計画の進捗状況、計画実蹟については、政府は報告書を国会に提出し、国民に公表する。
(2) 独占支配の制限
 私的独占禁止法を強化して、とくに大企業の合併、カルテル行為、株式保有による系列企業支配を規制し、親企業と下請企業との関係の民主化をすすめる。独占価格、管理価格を規制するため、主要商品についての原価調査、公表を義務づけ、流通関係をふくめて不公正な取引を規制する。
(3) 金融の民主的規制
 国の経済計画に基き、各階層の代表と専門家で構成される「資金計画委員会」が投融資計画をつくり、融資基準を設け、金融機関による信用膨脹を抑え、不要不急な投資を制限し、国民生活関連投資に重点をおくなど、金融の計画化をはかる。
 日本銀行は、政策委員会のなかに中小企業、農林漁業、労働者及び消費者代表を加えるなど、その構成を改め、資金計画委員会の計画に従って、金融機閑の指導に当る。
(4) 企業の社会的責任
  自然環境の保全、交通安全、公害防止、公害・事故による被害者に対する補償責任などについて企業の責任を明確にする。公害発生の場合、閑係住民の企業立入検査の権利、企業内労働者の告発の自由を保障する。
 土地や商品の買占め、売おしみ等の投機行為を制限する。
 労働者に対する一方的な不当解雇を制限し、企業の雇用安定の責任を明らかにする。また労働安全に対する企業責任と労働組合による安全監視の権利を保障する。
(5) 重要産業の民主的規制と管理
 @ 国民経済の安定、国民生活の向上のため、国の経済全体に支配的な影響力を持つ産業に属する企業について、国の民主的規制を行い、とくに必要なものについては、国の管理の下におき、あるいは国の所有に移すなどの措置をとるものとする。この政策はあくまで物価の抑制、過剰投資・二重投資の制限、資源エネルギーの確保と浪費の防止、農産物自給度の改善、公害・事故の防止など経済の安定と国民の生活福祉の向上のため、当面必要な限度において実行せられる。
 A 産業の民主規制と管理の方式は、業種によりまたは規制の目的により、多様な方法で行われるが、その原則は前述の経済民主化の基本原則を定める「経済民主化基本法」、私的独占禁止法、エネルギー基本法その他単独の産業事業法によって規定される。
 B エネルギー産業については、電力部門は広域的運営を必要とする実態、公害対策推進のため九電力、電源開発、原子力発電はこれを統合して特殊法人化する方向で一元的運営をすすめる。
 石炭部門は従来の撤退縮小政策を転換し、国有化し、石炭公社を設けて、抜本的再建をはかる。
 石油については、その大部分が輸入に依存する現況を考慮し、全面的公有化よりも、計画的な原油の確保、産油国との共同開発等を進める。開発の一元化とその輸入業務を担当させるため石油開発公団を「石油公団」に改組する。また、エネルギーの効率的利用を促進し、備蓄を計画的にすすめ、石油廃棄物の回収・再生・利用と需給、消費や価格の規制などを行うため、現行の石油業法を「石油法]に改正する。
 C 食糧自給度向上は緊急の課題であり、これを促進するには、米麦のみならず、牛乳、大豆、飼料など主要農産物の国の管理を強化する。
 D 現在の国鉄、郵政、電々、専売、林野などの国営企業および地方公営企業についてその経営を民主化し、経営に関する労働組合の発言権を保障する。
(6) 中小企業の振興
 国民連合政府は、中小企業を独占企業発展の踏台とし、二重構造を温存して、零細企業についてはこれを必要悪のように扱い、社会政策的救済の対象としてきた。自民党政府の中小企業対策を転換して、中小企業に産業構造のなかでの位置づけを明確にし、積極的施策による安定と発展を進める。
 @ 中小企業省の設置
  中小企業に十分な仕事と事業分野を保障し、総合的政策を推進するため、中小企業省を設置し、中小企業対策予算を飛躍的に増額して積極的施策を行う。
  また、地方自治体にも中小企業対策の権限と財政力を与えて、とくに小規模・零細企業対策を強化する。
 A 事業分野の確保                  
  中小企業は共同化、専門化などによって大企業に対抗する力を養うとともに、下請関係の民主的調整、メーカーから問屋、小売への流通取引の公正化によって、縦と横の取引関係を民主化する。また百貨店、大型スーパーの新増設の規制、繊維、味噌・醤油、製パン・製菓、清酒、理髪、クリーニング、自動軍整備など、中小企業の企業形態に適しているものについては中小企業の活動分野として大企業の進出を制限し、また官公需の一定割合を中小企業のために留保するなどの措置をすすめる。
 B 新業種、新製品の開発については補助・低利融資などで積極的に助成するとともに、中小企業の発明活動を援助し、その特許を保護し、発明実施について援助する。
 C 特に小規模、零細企業に対す税制、金融面の保護政策を強化する。
 D 中小零細企業の労働者の福祉厚生施設の拡充の措置を強化する。
(7) 農林漁業の再建・食糧の自給
 自民党政府の農林業など第一次産業軽視の結果、農林業は経済成長の踏台とされ、食糧と木材の大部分を海外に依存する不安定な状態におちいっている。漁業も沿岸海域の汚染によって漁場を失っている。もし世界やわが国の周辺に異常な事態が発生すれば、国民は直ちに食糧に窮するであろう。
 農林漁業を再建して、速かに国民の主要食糧を確保することは、国民連合政府の基本政策の一つである。
 @ 主要食糧の自給目標を品目毎に定め、米と畜産と果樹を三本の柱として、農業を再建発展させる。
 A 米・麦・大豆・牛乳・飼料など主要農産物の生産需給を計画化し、これらは輸入品を含めて国の管理を強化する。
 G 主要農畜産物の価格は生産費と所得を保障するよう決定するとともに、生産共同化によって経営規模を拡大し、土地改良の全額国庫負担、機械ステーション、サービスセンターの整備、長期低利融資などで、生産コストを引下げ、農業の所得率を引上げる。
 C 農民または農協などによる農産物加工、貯蔵、販売組織を奨励育成する。
 D 政府買入れ米は「もみ」で買入れ、半年分以上の備蓄を行う。食糧の備蓄は米のみならず、他の主要全糧についても計画的に実施する.
 E 農民組合の強化・拡大につとめるとともに、農協など農民団体の民主化をはかる。
 F 国営分収林制度を活用し、国、民有を問わず、林野庁の人員を活用し、地方自治体、森林組合と協力して緊急造林十カ年計画を実施し、国土緑化事業を進める。また、林業労働者の待遇と権利、労働条件の向上をはかり、生活の安定につとめる。
 G 沿岸漁業振興を中心として、漁場の確保、漁港、漁船の改善をすすめ、漁価を安定し、とくに沿岸増殖事業を助成振興する。また水質汚濁防止につとめる。
(8) 平等互恵の経済協力
 @ 貿易構造の是正
  米国に偏った貿易構造を改め、中国、ソ連、朝鮮、ベトナム民主共和国など社会主義国、AA諸国など三つの地域に均衡のとれた貿易構造を確立する。これら三つの地域に対しては、それぞれ自由貿易、管理貿易、経済協力など異った方式をとり、社会主義圏やAA圏に対しては貿易の窓口を一本化するための調整機構を設ける。また輸出入が均衡を失い、輸出が急増する品目については、地域・相手国・時期を限定して輸出調整を行うものとする。
 A 平等互恵の経済協力
 (イ) 海外経済協力は反共諸国の政府テコ入れに傾斜している現状を是正し、教育、医療、技術訓練など民生に結びついた援助またはその国の経済自立に重点をおき、当該国の政府と協議した計画によって協力する。また技術協力を重視し、原則として無償のサービス提供、受入留学生の増員と待遇の改善を行う。
 (ロ) わが国企業の進出については、相手国の経済支配のおそれのある企業進出を抑制し、二国間または多国間の投資協定を結び、合弁資本の五一%以上は現地資本によることを原則とする。
 (ハ) アジア平和経済開発会議を設け、アジアの諸国が平等に参加し、貿易、経済協力、技術交流を拡大する。
(9) 税財政の民主化
 @ 資本蓄積に奉仕し、大企業中心の経済成長の土台となってこれを推進してきた税制、財政の根本的な民主的改革を行い、インフレの阻止、富と所得の不平等の是正、負担の公平化、国民の生活福祉優先を基本目標として、税制、財政の計画的運営を行うものとする。
 A わが国の税負担率が、欧米に比して著しく低いのは、国民大衆の租税負担が軽いからではなく、大企業が安い法人税率、企業に有利な税務会計制度、租税特別措置を中心とする法人の税負担の大幅軽減、財産所得や資産の譲渡所得に対する免税、減税の租税制度即ち大企業法人と大金持に対する至れり尽せりの減税政策によるものである。
  国民連合政府は、これら大企業と大金持に対する税の減免税を整理し、他方勤労所得税をはじめ大衆の税負担を思い切って軽減し、税の不公正を是正する。
 B とくに最近の富と所得の不平等を激化させているのは、土地と株式の異常な値上りによる財産譲渡所得や、保有土地、証券の膨大な含み資産のはげしさによるものである。
  昭和三十年以来土地の値上りは数百兆円に及びそのうち法人所有分だけで約二百兆円の含み資産をもっている。このことが株価に作用し、東証上場株の昭和 四七年の値上りは二六兆円に及ぶ。これら土地や株の一年間の値上りはGNPに匹敵するであろう。
  この巨大なインフレ所得、不労収益は三,四〇〇万人の全労働者の賃金総額をはるかに超え、わずか二兆五千億円の農業所得の数十倍に達するのである。
 法人所有土地の帳簿価格を固定資産評価額まで再評価し、この評価益に課税すること、個人についても大地主に対し同様の土地増価税を課するだけで、われわれは相当額(20兆円以上)の税収をあげることができるであろう。この財源を以て、道路、交通、運輸、都市計画、住宅建設 など行い、これによる余裕財源を生活環境、社会保障、社会福祉、教育文化施設に転用すれば、富と所得の不平等を是正すると同時に、国民の生活福祉を大きく改善することができるであろう。
  国民連合政府は以上のような方法で財政の民主化を実現する。
C 昭和四十八年度で六兆九千億円を超える財政投融資計画の大部分は、郵便貯金、厚生年金、国民年金等の積立金であり、零細な大衆の貯蓄である。これを、新幹線や高速道路、港湾、空港の建設、基幹産業投資から海外経済協力に利用しながら、住宅には一八・一%、文教に二・〇%、 厚生福祉には二・九%しか配分されていない。国民連合政府はこのような投資配分を改革して、大部分を住宅、生活環境、厚生福祉、教育文化施設に配分する。
D 国民連合政府は、国の長期経済計画、社会保障計画、国民生活向上計画、国土保全利用計画などを達成するため、長期の財政計画を策定しこれに従って運営を行う。
E 防衛費は自衛隊の解体にともないその財源の一部を社会保障や国民生活向上の費用に転用する。
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