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国民連合政府綱領と日本社会党の任務・3
●国民統一の基本綱領        第一部 国民戦線の条件
      
(一) 日本資本主義の矛盾の激化と勤労国民の窮乏化
(1) 一九六〇年以来の日本独占資本の「高度経済成長」は、GNP成長率で年率一六・四%という先進資本主義国のなかでも驚異的な速さを記録し、この間、一九六八年にはGNPは資本主義国二位となり、七〇年には経済援助額も資本主義国第二位を記録した。
 だが、この「高度経済成長」の過程は、いうまでもなく労働者階級を中心とする農民・中小零細業者など勤労国民にたいする激しい搾取と収奪の強化のうえにすすめられた。
 こうして、ひとにぎりの独占的大資本と広範な勤労国民とのあいだの対立と矛盾を深め、労働者階級を中心とするいっさいの勤労国民が、独占資本と自民党を政治的に孤立させ、かれらを共通の敵として結集し、連帯してたたかう条件を必然的に成熟させている。
(2)「高度成長」の過程で、ごく少数の独占的大資本による支配が強化され、財閥の復活も顕在化している。たとえば三井、三菱、住友、富士、第一、三和の六大金融資本系列だけで、東証第一部上場会社の総資本の六六・七%、じつに総額三十五兆二千億円を支配するに至っている。企業数でみると、資本金五千万円以上の企業のうち、わずか一・七%を占めるにすぎない大企業が全法人の資本金の八一%を支配していることになる。この資本の集積は今後いっそう顕著となるであろう。
(3) しかし、この独占資本の支配の強化は、労働者階級をはじめとする勤労国民の低賃金と労働強化、長時間労働、低生活水準や劣悪きわまる社会保障を基礎としてなしとげられたものであった。
 この十年間の「高度成長」の過程で、独占的大資本は公表された利潤だけでも七倍のものを獲得したが、労働者の名目賃金は三・二倍にとどまっている。大企業の売上高に対する「人件費比率」は七・六二%で先進資本主義国の二〇−四〇%に比較して極端に低い。
 この事実だけをみても、わが国の独占資本の搾取がいかに激しいものであるかをよく示している。
 労働賃金はアメリカの三分の一、西ドイツの六〇%であり、そこでは健康で文化的な最低限度の生活を維持することが困難となっている。
 急速な技術革新と合理化の推進、それにともなう労働強化と長時間労働は、労働災害と職業病を激増させ、最近の政府統計をもってしても、全国の職場で毎日四千人の労働者が傷つき、一六人が死亡している。それだけでなく、合理化は首切りと要員削減、配置転教などをもたらし、雇用と生活の不安を増大させている。他方で婦人パート・タイマー、高年齢労働者、農民出稼ぎ労働者など新たな低賃金労働者群を劣悪きわまる労働条件でほしいままに搾取している。
(4) 独占資本は「高度成長」を推進するために農民の経営と生活をもふみにじっている。
 このため農業で生活できる基盤が急速に失われ、その結果専業農家はこの十年間に三分の一に減少し、農業就業者は全就業人口の一五%を占めるにすぎなくなっている。
 この農基法農政のもとで、高度成長による独占資本の工場進出やコンビナート造成、肥料、農薬、飼料、農機具など独占的高価格による売りつけ、食管制度なしくずし政策、重税、農畜産物自由化などが農民の生きる基盤を奪い、漁民の漁場を縮少させている。減反政策は土地集中をつくりだし、農民に土地を捨てさせ、出稼ぎや、兼業農家が拡大している。七一年の農業所得による農家家計費充足率は三四・四%にすぎず、日本の農業が頻死の状況にあることを物語っている。
(5) 中小・零細企業者の経営と生活もまた、独占資本によって圧迫されている。企業数の九九.四%を占め、工業出荷額の五〇%、雇用労働者の七〇%をもつ中小・零細企業は独占的大資本の高度成長を支える基盤の一つとなってきた。これらの企業のうち大企業に下請企業化されているものが五割弱にのぼる。
 中小・零細企業は、不況のたびごとに独占的大資本の犠牲にされ、海外貿易における自主規制の犠牲をかぶり、独占的高価格で原材料を売りつけられる反面で、下請価格は極限まで買い叩かれ、そのうえに重税をおしつけられている。企業倒産は六〇年代を通じて増大し、とくに近年は資本金五百万円以下の小零細企業の倒産が拡大し、経営の不安がつのっている。
 独占的大資本の関心はより多くの利潤の獲得であり、低生産性の中小・零細企業は冷酷無残につぶされる。そこでは企業者も労働者もともに被害者となっている。
(6) さらに独占的大資本は自民党と一体となって、インフレ政策、大衆重税などをつうじ勤労国民にたいする搾取をいっそう強めて、拡大している。
 政府・独占資本によるインフレ政策と独占価格、買いしめがもたらす物価騰貴は、ただでさえ低い賃金をさらに切り下げ、また勤労国民の各種の所得をも累進的に低下させている。大幅なインフレ的物価上昇は、勤労国民の貯蓄を大幅に減価させていく。こうして独占資本は莫大な追加搾取をおこなっている。
 また、勤労国民は、政府自民党による社会保障きりすてと劣悪きわまる年金制度のために、とくに老後の生活は深刻な不安におかれ、老人の自殺率は世界一をしめている。病気にさいしてもまともな治療もうけることができず、そのため勤労国民の生活、健康、生命がおびやかされている。その反面で政府自民党は、各種社会保険積立金、郵便貯金などからなる勤労国民の資金を「財政投融資」と称して独占資本のために活用している。
 さらに政府・独占資本は、軍備を次々に増強し、独占資本のための「産業基盤整備」に国民の血税をふるまう反面、勤労国民にたいして住宅難、高家賃などをおしつけている。また、勤労国民の生活にとって切実な学校、病院施設、保育所、幼稚園、遊び場、上下水道などをまったく放置し、そのためにも勤労国民の生活は極度におびやかされている。
 政府自民党は、独占資本にたいしては税負担を軽滅させながら、勤労国民にたいしては重税を課している。労働者は低い課税最低限のもとで重い所得税と住民税が、小零細業者、農民にたいしても重い事業税、固定資産税などが強制されている。また生活必需品にたいする重い間接税も勤労国民の生活を圧迫している。他方、利子配当税、法人税など独占資本や高額所得者にたいしては租税特別措置法などによる減免措置、大幅な優遇策がとられている。
(7) 政府・独占資本による「高度成長政策」は、環境破壊、自然破壊をつよめ、勤労国民の生活条件を悪化させている。
 独占資本の「高度成長」と合理化は、労働者にたいして、労働災害や職業病を強いるだけでなく、さらに各種公害をうみだし、勤労国民の生命と健康をあらゆる面で破壊している。
 都市交通における過密は輸送の限界をこえ、通勤時の殺人的ラッシュは動物以下の扱いであり。遠距離通勤は労働者の疲労度を高めている。野放しの自動車生産は七一年には登録台数が二千万台をこえ、それは交通渋滞を生みだし、年間に百万人を死傷させている。過疎地域における路線の休廃止は農山村の日常生活を一層の苦悩に追いやっている。
(8) 学歴偏重と入学試験制度のもとでテスト万能教育がすすめられ、青少年の自主的、創造的な人間形成が阻害されている。独占資本の労働力政策に対応する能力主義の教育体系は、子供を、父母を、教師を共通の被害者の立場においている。
 独占資本の営利本位の文化投資がはびこり、余暇やレジャー施設、スポーツも独占資本の営利追求の手段とされ、その健全な発展が阻害されている。また、“エロ・グロ文化”に象徹される社会的文化的な退廃現象の進行とまん延は、日本資本主義の腐朽化の反映である。
(9) このように、政府・独占資本による「高度経済成長」は、一握りの独占的大資本の側に巨額な利潤をもたらした反面、労働者をはじめとする勤労国民は、生活のいっそうの窮乏化を強いられ、健康と生命をもおびやかされた。こうして、“国民福祉優先”の「高度成長」という仮面ははぎとられた。
 首切と失業、低賃金、労働強化、長時間労働、職業病と労働災害の激発、くわえて、インフレ政策・投機的買占め・独占価格「公共料金」つりあげによる激しい物価騰貴、各種租税をつうじる勤労国民への重税、社会保障きりすてにもとずく医療の劣悪化と保育、教育条件の放置、公害、住宅難、過密過疎、交通災害など生活環境の破壊―これらによる勤労国民の生活と健康と生命のじゅうりんは、労働者をはじめ農民、小零細業者、その他いっさいの勤労国民の怒りと憤激をかつてなく高め、反独占・反自民をめざす共通のたたかいにかりたてている。
 自民党政府のもとで、独占的大資本の利潤獲得優先の「高度成長」が推進されるかぎり、看板をどうぬりかえようと、それは勤労国民の窮乏化をもたらすのみである。しかし、それは、勤労国民の自覚を促し、反独占・反自民のたたかいをますます前進させずにはいない。
(二) 独占資本の七〇年代路線と軍国主義化の推進
(1) このように、ひとにぎりの独占資本は、自民党政府と一体となって労働者階級をはじめ勤労国民にたいする搾取と収奪をつよめ、その生活と健康と生命を破壊しているだけでなく、小選挙区制の強行にしめされるように憲法改悪と軍国主義化をおしすすめ、勤労国民の平和と民主主義の要求との対立・矛盾をますます深めている。
 かれらは戦後一貫して憲法が保障する平和と民主主義をふみにじってきた。労働者をはじめ、勤労国民の民主的権利の制限、警察など治安機関の強化をはじめ自衛隊の増強と治安訓練の拡大、議会制民主主義の空洞化、形がい化、地方自治の破壊と中央集権化のいっそうの強化、司法制度の改悪や教育の国家統制の推進などをはかってきた。
 勤労国民の不満の増大が、自民党の支持率の傾向的低下となってあらわれるなかで、このような政治反動はいっそう促進されている。そのあらわれが憲法改悪につながる小選挙区制強行の意図である。
(2) 日本の独占的大資本と政府自民党は、世界史的な転換が始まり、両体制間の矛盾・対立が「緊張緩和」に向い、平和共存政策がますます前進のきざしをみせている世界の大勢に逆行して、五兆円をこえる四次防計画を推進している。アジアにおける「日本の中心的責任」を強調したニクソン・ドクトリンの具体的展開は、日米安保条約を堅持しながら、日本の軍事力増強を促進している。それは五次防への発展や産軍複合化の促進に端的にしめされている。
(3) 日本資本主義の諸矛盾の激化のなかで独占資本は資本輸出をいっそう拡大している。
 しかも、国の力による「開発援助」は、独占資本の商品輸出市場を拡大するばかりでなく、援助提供を武器として、直接・間接に「発展途上国」の政治的、社会的政策への介入を強めている。それは異常な外貨準備の蓄積を背景として促進されている。
 それは、「発展途上国」の社会改革を妨害し、民族独立、解放勢力を封じこめるための手だてでもある。「経済援助」は日本独占資本の、新植民地主義政第推進の露払い役をはたしている。日本独占資本の商品、資本の急速な進出にたいして東南アジア諸国を中心に警戒心がつよまり、日本軍国王義の復活という批判の声があがっていることは、そのなによりの証拠である。
(4) また独占資本は、六〇年代の「高度成長」をつうじて形成された独占資本成長の「隘路」の打開をめざして、新たな成長路線の模索にせまられている。いわゆる「日本列島改造」政策もその一つであるが、「知識集約型産業」への指向として喧伝される電子計算機、航空機をはじめ情報管理産業、教育機器、公害防止機器、工業生産住宅、医療機械など高利潤部門への投資の増大もその一環といえよう。
 しかし、これによって日本の国家独占資本主義の諸矛盾はなんら克服できないばかりか、その矛盾はいっそう拡大深化する。たとえば「知識集約型産業」への指向は、反面で低技術・「労働集約型産業」の淘汰をもたらすであろうし、それによる「低開発国援助」という名の資本輸出はそれら諸国の低賃金労働力への依存と日本への商品の逆輸入化に道をひらくものとなる。いわば日本独占資本の「多国籍企業」化であり、日本国家独占資本主義の矛盾の拡大再生産である。
 しかも、注目すべきはこれらが七〇年代路緯にたつ国家政策と不離一体のものとしてすすめられることである。
(5) こうして政府・独占資本、マスコミは、ありとあらゆる搾取の強化、政治反動と軍国主義の推進、新植民地主義的な海外経済侵略にたいする勤労国民の反発をそらし、政府独占資本による反動的諸政策についての「国民的合意」をつくりあげることをめざして、反動的思想攻勢、教育内容の反動化と国家統制、国民的管理の強化をもはかっている。
 その基本をなすのが、企業内における労務管理の強化と思想攻撃である。独占資本によるマル生運動(生産性向上運動)はその典型である。
 それだけでなく、かれらは、国民総背番号制、社会保険制度を利用した国民管理と支配など、新たに大がかりな勤労国民にたいする管理支配政策をもめざしている。国民総背番号制は、まさに勤労国民の所得も、思想も、交友関係も、すべてにわたって国民総管理の体制をつくりあげようとするものである。
 こうして政府・独占資本は、かれらの七〇年代戦略に照応する「国民総動員」体制の戦後版をつくりあげようと策動していることも見のがしてはならない。
(6) 以上の情勢は、わが党の労働者階級が中心となって広範な勤労国民を、護憲、民主、中立、生活向上の課題をもつ反独占、反自民の国民戦線に結集し、その基盤のうえに国民連合政府を樹立し、独占資本を政治的に孤立させる条件と必要性がいよいよ増大していることをはっきりとしめしている。
(三) 憤激は高まり、反撃は開始されている
(1) 社会的矛盾の激化に対して、勤労国民が黙しているわけではない。勤労諸階層の怒りは高まり、拡大し、都市でも、農村でも、職場や地域でも、反撃のたたかいが広範、多面的に展開されている。
 この反撃のたたかいと運動は、独占的大資本の高度成長の矛盾が激化した六〇年代後半に始まり、それは燈原の火のようにひろがっている。
 このたたかいと運動は、いまだ多面的であって、一つの水路に導びかれたものではない。しかし、その流れの終着点が反独占、反自民という同一点にあることからみて、大きな奔流となって怒涛のように流れだす可能性を十分に秘めている。
(2) インフレ、物価、年金、医療、交通、公害、住宅、税金など国民共通の諸課題に対する勤労諸階層を中心とした物価メーデー、年金メーデーをはじめ職場、地域で広範な運動形態を展開させている。
 とりわけ、国鉄運賃、医療保険、米価のたたかいでは、労働者、婦人、農民など広範な階層が戦列を形成し、年金、老後生活をめぐって高年齢者をふくむかつてない統一行動の展開をみている。
 過疎地域における保守的階層をふくむ住民の足を守る運動、公害訴訟の勝利にむけた広範な戦線も形成されている。
(3) 労働者の春闘は、年を重ねるごとに拡大している。賃金要求をはじめ労働時間の短縮、年金、ストライキ権など、労働者の統一要求を基礎とした統一行動の発展は、労働戦線の統一にむけて展望を与えている。
 とりわけ総評が提起している国民的諸課題を中心とする生活要求、制度要求のたたかいをはじめ、労働組合が中核となっている国民的諸課題のたたかいは、労働者階級を広範に結集し、統一行動を発展させる大きな可能性をもつものといえよう。
(4) 農産物自由化反対、減反政策反対、工場誘地反対、安全性無視の原子力発電所反対、工場汚水のたれ流しや廃棄物の海上投棄阻止など、農漁民のたたかいも広範に展開されている。高度成長は農山漁村を急速に変化させ、農漁民の生活基盤を破壊している。このなかで、戦後一貫して保守的政治勢力の社会的基鎧となってきた農漁民の政治意識は急速に成長している。
(5) 日米安保条約と侵略加担、軍備増強に反対する国民世論はかつてなく広範なものとなっている。各地で戦争政策を告発し、これを阻止しようとする新たな特徴をもって前進している。平和と民主主義を守るたたかいは、ベトナム反戦運動や沖縄闘争の経験のうえに、いまや反基地、反安保、反自衛隊の根源的なたたかいとして拡大をみせている。
 日中友好運動は国交回復をかちとり、日朝国交回復友好運動に発展し、保守勢力の一部を転戦列に加えて拡大している。
 司法制度の反動化に反対し、教育の国家統制に反対し民主教育をすすめる運動も、広範な勤労諸階層を結集して進展している.
(6) 地方自治体におけるたたかいも、首長をめぐる選挙では反自民諸勢力の結集によって市レベルで一三〇余、町村で一〇〇以上の革新首長をかちとり、いまや県レベルでも東京、埼玉、京都、大阪、岡山、沖縄と主要な六県において革新知事を実現している。これは多様な形態をとっているものの、地方自治の確立を目標に、反独占、反自民の勤労諸階層、政治的諸党派を結集しえた成果にほかならない。
 この地方自治体民主化のたたかいは、国政レベルでの反自民のたたかいと結合して前進しつつある。
(四) 勝利の展望
(1) 一九七〇年代にはいって以降の国際情勢の進展も、わが国における反独占、反自民の国民戦線のたたかいの前進にとって、きわめて有利な条件をますますうみだしている。
 同時にまた、わが国における反独占・反自民の国民戦嫁のたたかいの前進は、国際的な平和と民主主義の前進に大きく寄与するであろうし、また寄与しなければならない。
(2) 中ソをはじめとする社会主義諸国による平和共存政策の着実な前進、社会主義体制の経済的、政治的、社会的な優位性と国際的影響力の拡大、民族解放闘争の力強い前進は、帝国主義のどのような反動によっても押しとどめることの出来ない世界史の大流であることがますます明らかとなりつつある。
 これに反して、帝国主義の経済的、政治的諸矛盾はますます激化している。経済的矛盾の激化をなによりもしめすのが、戦後国際通貨体制の破綻と混乱である。
(3) 一九七一年八月十五日のニクソン新経済政策の発表は、資本世界に深刻な通貨恐慌をもたらした。それは「スミソニアン」体制による危機の一時的な回避のいとまもなく、通貨不安は確実に進行し、深まりつつある。
 この背景には、イギリスその他EFTA諸国の加盟による拡大ECの形成、日本の高度成長と大幅な円切り上げに象徹される戦後資本主義の不均等発展をみることができる。このため資本主義世界は三極化の様相を深め、ナショナル・インタレストを軸に各国独占資本の問の対立がいっそう拡大している。
(4) 中国の国連代表権の回復と台湾政権の追放は、アメリカ帝国主義を中軸に形成されてきた戦後の反共、反社会主義の政治的、軍事的ワク組みの転換を必然化させた。それはベトナム侵略戦争における敗退と相まち、ニクソンの訪中、訪ソに発展している。
 また、それは日中国交正常化にすすみ、中国と西ドイツとの国交も樹立され、ASEANにおける中立化構想の検討やASPACの解体をも余儀なくさせている。南北朝鮮の自主的、平和的統一の進展も、朝鮮民主主義人民共和国の社会主義建設の実績を背景においているものの、七〇年代の世界史的な情勢変化と無関係ではない。
 とりわけアメリカ帝国主義は、ベトナム侵略戦争において二千億ドル(六兆円)を消費しながら敗退し、この軍事費支出はインフレと物価騰貴をもたらし、国際競争力を弱め、貿易収支の赤字をまねいている。ニクソン・ドクトリンの展開は、世界の警察官としてのアメリカ帝国主義の相対的地位の低下を表現したものである。
 また、イスラエルの一部反動勢力と結託したアメリカ帝国主義を中心とする帝国主義諸国のアラブ民族解放闘争弾圧政策も、アラブ諸国の結束した反帝国主義のたたかいによって大きな後退を余儀なくされている。わが国をふくむ資本主義国の石油不足と石油「危機」(過大な宣伝と投機的売りおしみによる石油価格のつりあげは別としても)は、たんなる「資源問題」ではなく、こうした反動的外交政策の破綻の当然の結果にすぎない。
(5) アメリカ帝国主義が後退を示し、資本主義世界が矛盾と混迷にあるなかで、世界の平和と社会主義の諸勢力のたたかいは着実に前進をみている。ベトナム人民の英雄的な民族独立・解放の勝利をはじめ、アメリカの反戦運動、黒人闘争の発展、また先進資本主義国における労働者階級のたたかいが前進している。
―フランスでも反独占をめざす勤労諸階層の結集がすすみ、CGTはフランス労働者の統一にむけて新たな行動綱領を決定し、フランス社会党と共産党の間では歴史的な「共同の政府綱領」で意見が一致し、現在、その勢力は急速に拡大している。
―イタリアにおける統一戦録も前進を示し、六八年以降の経済社会改革を要求するゼネストが反復されるなかでイタリア三大労組(CGLL、CISL、 UIL)の統一がすすみつつある。
―チリでは社会党、共産党、急進党、社会民主党、人民統一行動運動、独立人民行動の革新的政治勢力が大同団結して人民連合を形成し、そのもとでアジェンデ大統領を中心とする社会主義をめざす政権を樹立し、推進してきたが、米国の強圧と軍部のクーデターによって崩壊し大統領はファシストの殺害するところとなった。しかしチリの社会主義勢力が屈服してしまうことはない。近い将来彼等は立上って軍事独裁政権の存続を許さないであろう。
―スリランカ(セイロン)でもスリランカ自由党、平等社会党、共産党の三党が共同綱領で一致し、バンダラナイケ首相を中心に左翼民主主義政権が進展している。
(6) 以上のべてきた内外情勢が明らかに示すように、反独占、反自民の国民戦線樹立の条件と必然性はますます増大している。この労働者階級を中核とする強固で広範な国民戦線の樹立に成功してはじめて平和・中立・民主・生活向上の日本を実現することができる。
この反独占・反自民の国民戦線とそれに支持された国民連合政府は、まだ社会主義の政権ではないが、独占資本を政治的に孤立させ、勤労国民が当面する生活防衛の緊急課題と民主主義の拡充にとりくみ、こうした闘いの前進のなかで客観的条件の成熟とともに社会主義に移行しうる重要な歴史的段階である。
 いま、われわれ勤労国民に迫られていることは、独占資本の独断と横暴、搾取と収奪の強化に対抗して、労働者階級を中心とする勤労諸階層と革新的政治諸党派が反独占、民主主義の立場で結集し、団結を強化し、要求と政策を一致させ、それをもとに共同の行動と闘争を発展させることである。そうした勤労国民に基盤をおき、統一と団結を強化して共同闘争を展開するなかから展望できるのが、反独占、反自民の国民戦線の結集であり、それに支持された国民連合政府の樹立である。われわれ勤労国民が勝利する展望は、まさにその一点にかかっている。
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