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三 われわれの要求と政策
 日米支配層の展開する核安保、アジア安保と国内反動支配に対し、われわれ革新の側のめざす日本は、第一は平和・独立・中立の日本であり、第二には、民主と繁栄の日本であり、この二つは一つである。
 この新しい体制づくりは、安保廃棄と憲法完全実施により進められる。
 われわれは、日本の全勤労大衆を結集し、アジアの反帝平和の諸民族との連帯の上に次の諸政策を実行する。
(一)日本とアジアの平和と安全
1沖縄・小笠原より核をふくめていっさいの軍事基地の撤去。
2 ベトナム侵略阻止、いっさいの侵略協力の停止、ベトナムからの米軍撤退要求、北ベトナム四原則、南ベトナム民族解放戦線五原則にもとずく解決要求。
3日米安保条約廃棄、在日米軍およびその基地の完全撤退。
4日中国交回復、国連における中国代表権の支持、日台条約廃棄。
5日ソ平和条約締結、ハボマイ・シコタン回復、千島返還要求。
6南北朝鮮の自主的平和的統一支持。統一朝鮮との日朝基本条約で正式国交正常化と懸案解決を行ない、日韓条約を廃棄。
7日中、日ソ、日朝の個別的不可侵条約締結。日本の非核武装宣言とアジア太平洋非核武装地帯および中立地帯設置促進。日米中ソをふくむ集団不可侵平和保障条約締結。
(二)日本とアジアの繁栄
1ドルヘの依存と従属から脱却するため、中朝ソおよびアジア諸国との貿易の飛躍的拡大により、対北米、対中朝ソ、対アジアの貿易量を均分化、また急速な科学技術の自力開発。研究体制の整備と頭脳流出防止。
2 アジア諸国の近代的改革促進とその自主的発展の血肉となる技術、資金の援助、各国の留学生の大量受入れ。
3 アジア諸国の団結と反帝・反植民地の原則によるアジア経済開発会議の設立。多角経済貿易の拡大。
(三)経済の計画化と勤労大衆の生活向上
1民間設備投資規制を中心に、経済計画化の導入、国民経済運営に不可欠の産業に社会化方式の導入。独占管理価格の引き下げ。
2勤労所得、資産所得、法人所得の税負担区分の大改革、租税特別措置改廃、財政の弾力化と健全化、防衛費の削減、国債発行の停止。
3長期資金、短期資金による金融機関の機能区分の明確化、長期資金運用の計画化。以上によるインフレの収束。
4民主的な国土開発計画、土地利用計画の策定にもとずく都市、農村の開発・再開発、とくに公共投資の重点を宅地開発と大量住宅建設へ。これによる住宅難、交通難、公害等都市問題の解決。人間のための都市づくり、町づくりのための総合的な対策の推進。
5農業は自主的に共同化へ、土地基盤整備は全額国費、農畜産物価格は生産費と所得補償。
6中小企業は自主的に共同化へ、共同事業への国の助成、融資は長期低利、無担保無保証融資の拡大、産業分野確保。
7労働基本権の拡充、時間短縮、最低賃金制の確立、家内労働にも最低保障賃金。
8医療保険、年金、心身障害、保育所など社会保障対策の大幅拡充。
(四) 政治の民主化
1国会の国政調査監督機能の強化、公聴会、請願権の強化、国会審議状況の国民への公開の強化。
2公選法、政治資金規止法改正による金権買収選挙の一掃、選挙公営の徹底的拡大。
3地力自治への住民参加の促進、住民による直接請求およびリコール権の強化。
4破防法、スト規制法、公安条例等の反動的諸法規の改廃、軽犯罪法、道交法等の名目による大衆の要求表示の行動抑制禁止、警察機動隊を一般警察業務へ配置。
5自衛隊の縮減解消、漸次民間産業へ転換吸収、また同時に平和国土建設隊、平和共栄隊、国民警察隊の設立。
(五)文化、教育の振興
1義務教育無償の完全実施、憲法と教育基本法にもとずく教育内容形成。
2平和と労働を尊ぶ教育の徹底、また科学技術教育の基礎の引き上げ。
3学歴万能主義の打破、働きつつ学ぶ青少年に労働条件改善と学ぶ権利の保障。
4専門的芸術家、芸能人、スポーツマンの生活保障、同時にアマチュア文化集団、スポーツ集団の育成と施設整備。
5婦人、成人学級等の社会教育の振興、憲法学習の意識的普及。
6 マスコミ、ジャーナリズムにおける表現の自由の保障、平和・民主・社会進歩を求めるマスコミ労働者の発言力の伸長。
7勤労大衆の連帯と共同による新しい道徳の確立。
 以上がわれわれの要求と政策の大要である。
 この政策の浸透にあたって、とくに次の二点の教宣に力を注がなければならない。
 ひとつは、「日米安保条約のおかげで日本の安全が保たれ、また日本経済が繁栄した」という宣伝を打破し、安保体制に代るわれわれの平和と安全の政策を積極的に宣伝することである。安保条約が日本の安全を守るためのものでないことは、ベトナム戦争の現実がこれらを明らかにしている。
 政府・自民党は、安保条約がある以上、日本はベトナム戦争に中立ではありえぬとして戦争に協力し、佐藤・ジョンソン共同生命で、さらに積極的にベトナム戦争に介入しようとしている。
 すでに国民は、ベトナム戦争の火の粉がいつ日本にふりかかるかも知れぬというさし追った危険を実感しつつある。米軍基地下の沖縄県民の生活は、米軍の存在それ自体がいかに基本的人権を侵害し、平和にとっても危険なものであるかを示している。
 われわれは、“日本とアジアの安全の守り主”と弥するアメリカが、実は、アジアの戦争の放火者であり、日本の安全を脅かすものであることを具体的に国民の前に暴露していかねばならない。特に日本の安全保障を論ずる際、保守支配層が安全と平和という問題を故意に切りはなしている点に、国民の眼をむけねばならない。緊張激化の要因を取り除き平和の国際環境を作ることが、日本の安全の前提であり、「平和なくして安全はありえない」ことを国民に明らかにしなければならない。日本が安保条約を廃棄しベトナム戦争への協力を拒否すれば、アメリカはアジアで戦争を遂行することは不可能となり、アジアの平和が回復されるのである。
 憲法第九条の理念を体現した非武装中立は、国際政治の現実に眼をとじた平和の理想といったものでなく、第二次世界大戦後の新たな世界情勢の下で、もっとも現実的な日本の安全と平和の道であり、新たな形態での安全保障の先駆であり、真の自衛の道であることを説得的に国民に訴えねばならない。われわれの非武装中立政策に対し、日本の固有の自衛権をも否定しているかのように宣伝するものがあるが、これは誤りである。わが党の主張は、自衛権行使の手段としての武力を否定しているのであり、むしろ非武装中立の平和外交の手段によって日本の安全が確保される。これこそが現代の国際社会における正しい自衛のあり方である。こうした非武装中立の方針の現実性を体系的に具体化し、国民大衆の無用の誤解をとき、反動の逆宣伝を克服し、国民の真の納得を得る必要がある。
 この点で、例えばわれわれが安保条約の廃棄というとき、それは、社会党政権成立の日に唐突に安保廃棄を一方的に宣言して事足りるというものではない。社会党政権は外交的に対米政府間交渉を行ない、国際舞台に働きかけ、他方、国民の安保廃棄の世論と国民運動をもり上げ、これらの諸活動の結合によって安保条約廃棄と米軍基地の撤去を実現していく。この道すじの展望をわれわれは国民に対して、あらかじめ明確にする必要がある。
 また自衛隊の解体といっても同じように、社会党政権成立早々にいきなり自衛隊解散の法令を出すといった機械的なやり方をとるものではなく、社会党政権の指導による国民の政治的自覚の高揚と、自衛隊員の意識の変革に見合って、その改編が進行するという展望をはっきりさせておく必要もあるであろう。安保条約の廃棄、自衛隊の解消という基本目標を堅持しつつ、その具体的な実現過程を究明することによって、国民大衆に対するわれわれの、政策の説得性を高めていかなければならない。
 非武装中立の運動が、わが党政権が実現する以前にも目的意識的に遂行されねばならないことはいうまでもない。米軍と自衛隊の基地撤去を求めるたたかいをはじめ、このたたかいの内容を総合的に示すことはわが党の緊急の任務である。
 安保のおかげで日本経済が繁栄したという自民党の主張も、まったくの我田引水であり日本経済の戦後の復興と発展をささえた原動力はまさに勤労大衆の血と汗の働きである。しかもわが党を中心とする革新勢力が戦争と再軍備に反対し、国民生活向上による国内市場の拡大、あるいは対中ソ貿易の拡大等を要求して闘ってきたことが、今日までの日本経済の発展をもたらしたのである。それが、いまや安保体制の拡大・強化と再軍備促進の重圧のために日本経済及び国民生活に大きな危機がおとずれようとしている。われわれは、安保廃棄が日本の平和経済と繁栄の道であることを確信をもって国民に教宜しなければならない。ふたつには、「米国即ちドルと結んでおれば日本経済は安全だ」という宣伝を打破することである。
 英ポンドの切下げと、これに続くドル不安はIMF体制を根元からゆさぶり、世界資本主義の新しい危機を表面化している。アメリカがベトナム侵略を止めず膨大な戦費を浪費して、国際収支の赤字を続けるかぎり、ドルの病気はますます進化し、いずれは、ドルの金交換の停止、平価切下げは必至となるであろう。
 これによって、最大の被害を受けるものはドル一辺倒の政策をとってきた日本である。わが国の外貨準備は輸入規模のわずかに五分の一にすぎず、金保有量はさらにその六分の一にすぎず、世界の先進国のうちでも最低である。ドル資本を無計画に導入してもっぱら高度成長に狂奔し、円の基盤強化と経済自立の努力を怠った歴代自民党政府の失敗は、いま厳しく裁かれようとしている。
 国際通貨不安のなかで日本の外貨準備は増大している。その中心は対米輸出の拡大にあるが、これは長期的傾向とは断定できず、またアメリカのベトナム侵略に関連する特需の増大とヨーロッパなどの投機資金の流入をふくみ、その基礎は依然として不安定である。しかも佐藤総理は、日米共同声明でドル防衛と東南アジア経済協力、自衛力の増強を約束し、また、資本為替の自由化、ガットの残存輸入制限の撤廃など、外貨流出要因は増大している。
 そして自民党政府は、ドル危機からくる日本経済の危機を口実に国民諸階層に対する分裂支配の政策を強めようとしている。「財政硬直化」を口実に所得政策を導入し、賃金と生産者米価をおさえ、大衆課税をおこない、社会保障、公共投資を削り、地方財政を圧迫しようとしているのがそのあらわれである。したがって経済矛盾が深まれば大衆運動が政治的に、自然成長的に高まるという期待をもつことは危険である。経済矛盾の深まりに伴なう、国民の怒りや不満を大衆運動として統一的に組織し、発展させるためには明確な政治目標を設定しなければならない。
 それ故、日米安保体制は平和や防衛の問題だけでなく国民の経済と生活と深いつながりをもっており、また貿易自由化や資本自由化ともつながっていることを国民に教宣し理解させることが大切である。安保の闘いは平和と安全と独立の側面からのみ組織され、展開されるのではなく、国民の生活要求と結合され、経済の自立と平和的発展という目標を設定し指導され、組織されなければならない。
 その際われわれは、一般的には資本土義、特殊的には日米安保体制からくる諸矛盾を解決するかのような装いをこらしている福祉国家論と、その政策の欺瞞性を打ち破ることが必要である。
三 われわれの要求と政策
 日米支配層の展開する核安保、アジア安保と国内反動支配に対し、われわれ革新の側のめざす日本は、第一は平和・独立・中立の日本であり、第二には、民主と繁栄の日本であり、この二つは一つである。
 この新しい体制づくりは、安保廃棄と憲法完全実施により進められる。
 われわれは、日本の全勤労大衆を結集し、アジアの反帝平和の諸民族との連帯の上に次の諸政策を実行する。
(一)日本とアジアの平和と安全
1沖縄・小笠原より核をふくめていっさいの軍事基地の撤去。
2 ベトナム侵略阻止、いっさいの侵略協力の停止、ベトナムからの米軍撤退要求、北ベトナム四原則、南ベトナム民族解放戦線五原則にもとずく解決要求。
3日米安保条約廃棄、在日米軍およびその基地の完全撤退。
4日中国交回復、国連における中国代表権の支持、日台条約廃棄。
5日ソ平和条約締結、ハボマイ・シコタン回復、千島返還要求。
6南北朝鮮の自主的平和的統一支持。統一朝鮮との日朝基本条約で正式国交正常化と懸案解決を行ない、日韓条約を廃棄。
7日中、日ソ、日朝の個別的不可侵条約締結。日本の非核武装宣言とアジア太平洋非核武装地帯および中立地帯設置促進。日米中ソをふくむ集団不可侵平和保障条約締結。
(二)日本とアジアの繁栄
1ドルヘの依存と従属から脱却するため、中朝ソおよびアジア諸国との貿易の飛躍的拡大により、対北米、対中朝ソ、対アジアの貿易量を均分化、また急速な科学技術の自力開発。研究体制の整備と頭脳流出防止。
2 アジア諸国の近代的改革促進とその自主的発展の血肉となる技術、資金の援助、各国の留学生の大量受入れ。
3 アジア諸国の団結と反帝・反植民地の原則によるアジア経済開発会議の設立。多角経済貿易の拡大。
(三)経済の計画化と勤労大衆の生活向上
1民間設備投資規制を中心に、経済計画化の導入、国民経済運営に不可欠の産業に社会化方式の導入。独占管理価格の引き下げ。
2勤労所得、資産所得、法人所得の税負担区分の大改革、租税特別措置改廃、財政の弾力化と健全化、防衛費の削減、国債発行の停止。
3長期資金、短期資金による金融機関の機能区分の明確化、長期資金運用の計画化。以上によるインフレの収束。
4民主的な国土開発計画、土地利用計画の策定にもとずく都市、農村の開発・再開発、とくに公共投資の重点を宅地開発と大量住宅建設へ。これによる住宅難、交通難、公害等都市問題の解決。人間のための都市づくり、町づくりのための総合的な対策の推進。
5農業は自主的に共同化へ、土地基盤整備は全額国費、農畜産物価格は生産費と所得補償。
6中小企業は自主的に共同化へ、共同事業への国の助成、融資は長期低利、無担保無保証融資の拡大、産業分野確保。
7労働基本権の拡充、時間短縮、最低賃金制の確立、家内労働にも最低保障賃金。
8医療保険、年金、心身障害、保育所など社会保障対策の大幅拡充。
(四) 政治の民主化
1国会の国政調査監督機能の強化、公聴会、請願権の強化、国会審議状況の国民への公開の強化。
2公選法、政治資金規止法改正による金権買収選挙の一掃、選挙公営の徹底的拡大。
3地力自治への住民参加の促進、住民による直接請求およびリコール権の強化。
4破防法、スト規制法、公安条例等の反動的諸法規の改廃、軽犯罪法、道交法等の名目による大衆の要求表示の行動抑制禁止、警察機動隊を一般警察業務へ配置。
5自衛隊の縮減解消、漸次民間産業へ転換吸収、また同時に平和国土建設隊、平和共栄隊、国民警察隊の設立。
(五)文化、教育の振興
1義務教育無償の完全実施、憲法と教育基本法にもとずく教育内容形成。
2平和と労働を尊ぶ教育の徹底、また科学技術教育の基礎の引き上げ。
3学歴万能主義の打破、働きつつ学ぶ青少年に労働条件改善と学ぶ権利の保障。
4専門的芸術家、芸能人、スポーツマンの生活保障、同時にアマチュア文化集団、スポーツ集団の育成と施設整備。
5婦人、成人学級等の社会教育の振興、憲法学習の意識的普及。
6 マスコミ、ジャーナリズムにおける表現の自由の保障、平和・民主・社会進歩を求めるマスコミ労働者の発言力の伸長。
7勤労大衆の連帯と共同による新しい道徳の確立。
 以上がわれわれの要求と政策の大要である。
 この政策の浸透にあたって、とくに次の二点の教宣に力を注がなければならない。
 ひとつは、「日米安保条約のおかげで日本の安全が保たれ、また日本経済が繁栄した」という宣伝を打破し、安保体制に代るわれわれの平和と安全の政策を積極的に宣伝することである。安保条約が日本の安全を守るためのものでないことは、ベトナム戦争の現実がこれらを明らかにしている。
 政府・自民党は、安保条約がある以上、日本はベトナム戦争に中立ではありえぬとして戦争に協力し、佐藤・ジョンソン共同生命で、さらに積極的にベトナム戦争に介入しようとしている。
 すでに国民は、ベトナム戦争の火の粉がいつ日本にふりかかるかも知れぬというさし追った危険を実感しつつある。米軍基地下の沖縄県民の生活は、米軍の存在それ自体がいかに基本的人権を侵害し、平和にとっても危険なものであるかを示している。
 われわれは、“日本とアジアの安全の守り主”と弥するアメリカが、実は、アジアの戦争の放火者であり、日本の安全を脅かすものであることを具体的に国民の前に暴露していかねばならない。特に日本の安全保障を論ずる際、保守支配層が安全と平和という問題を故意に切りはなしている点に、国民の眼をむけねばならない。緊張激化の要因を取り除き平和の国際環境を作ることが、日本の安全の前提であり、「平和なくして安全はありえない」ことを国民に明らかにしなければならない。日本が安保条約を廃棄しベトナム戦争への協力を拒否すれば、アメリカはアジアで戦争を遂行することは不可能となり、アジアの平和が回復されるのである。
 憲法第九条の理念を体現した非武装中立は、国際政治の現実に眼をとじた平和の理想といったものでなく、第二次世界大戦後の新たな世界情勢の下で、もっとも現実的な日本の安全と平和の道であり、新たな形態での安全保障の先駆であり、真の自衛の道であることを説得的に国民に訴えねばならない。われわれの非武装中立政策に対し、日本の固有の自衛権をも否定しているかのように宣伝するものがあるが、これは誤りである。わが党の主張は、自衛権行使の手段としての武力を否定しているのであり、むしろ非武装中立の平和外交の手段によって日本の安全が確保される。これこそが現代の国際社会における正しい自衛のあり方である。こうした非武装中立の方針の現実性を体系的に具体化し、国民大衆の無用の誤解をとき、反動の逆宣伝を克服し、国民の真の納得を得る必要がある。
 この点で、例えばわれわれが安保条約の廃棄というとき、それは、社会党政権成立の日に唐突に安保廃棄を一方的に宣言して事足りるというものではない。社会党政権は外交的に対米政府間交渉を行ない、国際舞台に働きかけ、他方、国民の安保廃棄の世論と国民運動をもり上げ、これらの諸活動の結合によって安保条約廃棄と米軍基地の撤去を実現していく。この道すじの展望をわれわれは国民に対して、あらかじめ明確にする必要がある。
 また自衛隊の解体といっても同じように、社会党政権成立早々にいきなり自衛隊解散の法令を出すといった機械的なやり方をとるものではなく、社会党政権の指導による国民の政治的自覚の高揚と、自衛隊員の意識の変革に見合って、その改編が進行するという展望をはっきりさせておく必要もあるであろう。安保条約の廃棄、自衛隊の解消という基本目標を堅持しつつ、その具体的な実現過程を究明することによって、国民大衆に対するわれわれの、政策の説得性を高めていかなければならない。
 非武装中立の運動が、わが党政権が実現する以前にも目的意識的に遂行されねばならないことはいうまでもない。米軍と自衛隊の基地撤去を求めるたたかいをはじめ、このたたかいの内容を総合的に示すことはわが党の緊急の任務である。
 安保のおかげで日本経済が繁栄したという自民党の主張も、まったくの我田引水であり日本経済の戦後の復興と発展をささえた原動力はまさに勤労大衆の血と汗の働きである。しかもわが党を中心とする革新勢力が戦争と再軍備に反対し、国民生活向上による国内市場の拡大、あるいは対中ソ貿易の拡大等を要求して闘ってきたことが、今日までの日本経済の発展をもたらしたのである。それが、いまや安保体制の拡大・強化と再軍備促進の重圧のために日本経済及び国民生活に大きな危機がおとずれようとしている。われわれは、安保廃棄が日本の平和経済と繁栄の道であることを確信をもって国民に教宜しなければならない。ふたつには、「米国即ちドルと結んでおれば日本経済は安全だ」という宣伝を打破することである。
 英ポンドの切下げと、これに続くドル不安はIMF体制を根元からゆさぶり、世界資本主義の新しい危機を表面化している。アメリカがベトナム侵略を止めず膨大な戦費を浪費して、国際収支の赤字を続けるかぎり、ドルの病気はますます進化し、いずれは、ドルの金交換の停止、平価切下げは必至となるであろう。
 これによって、最大の被害を受けるものはドル一辺倒の政策をとってきた日本である。わが国の外貨準備は輸入規模のわずかに五分の一にすぎず、金保有量はさらにその六分の一にすぎず、世界の先進国のうちでも最低である。ドル資本を無計画に導入してもっぱら高度成長に狂奔し、円の基盤強化と経済自立の努力を怠った歴代自民党政府の失敗は、いま厳しく裁かれようとしている。
 国際通貨不安のなかで日本の外貨準備は増大している。その中心は対米輸出の拡大にあるが、これは長期的傾向とは断定できず、またアメリカのベトナム侵略に関連する特需の増大とヨーロッパなどの投機資金の流入をふくみ、その基礎は依然として不安定である。しかも佐藤総理は、日米共同声明でドル防衛と東南アジア経済協力、自衛力の増強を約束し、また、資本為替の自由化、ガットの残存輸入制限の撤廃など、外貨流出要因は増大している。
 そして自民党政府は、ドル危機からくる日本経済の危機を口実に国民諸階層に対する分裂支配の政策を強めようとしている。「財政硬直化」を口実に所得政策を導入し、賃金と生産者米価をおさえ、大衆課税をおこない、社会保障、公共投資を削り、地方財政を圧迫しようとしているのがそのあらわれである。したがって経済矛盾が深まれば大衆運動が政治的に、自然成長的に高まるという期待をもつことは危険である。経済矛盾の深まりに伴なう、国民の怒りや不満を大衆運動として統一的に組織し、発展させるためには明確な政治目標を設定しなければならない。
 それ故、日米安保体制は平和や防衛の問題だけでなく国民の経済と生活と深いつながりをもっており、また貿易自由化や資本自由化ともつながっていることを国民に教宣し理解させることが大切である。安保の闘いは平和と安全と独立の側面からのみ組織され、展開されるのではなく、国民の生活要求と結合され、経済の自立と平和的発展という目標を設定し指導され、組織されなければならない。
 その際われわれは、一般的には資本土義、特殊的には日米安保体制からくる諸矛盾を解決するかのような装いをこらしている福祉国家論と、その政策の欺瞞性を打ち破ることが必要である。
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