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 三 大衆闘争に関する若干の重要問題
 
 (1) 国民運動や大衆闘争は、勤労諸階層の平和的、民主主義的な具体的諸要求を実現することを、第一義的な目的とするものであって、これを目的のための手段として取扱ったり、機械的な政治闘争主義に陥ったりすることは、いずれも誤りである。したがって われわれは、これら勤労大衆の要求の実現のために、誠意をもって、献身的に努力しなければならない。そのことによって、大衆の党に対する信頼は高まり、また広汎な大衆をして党の周辺に結 集せしめ、反独占国民戦線にまで発展させることが可能となる。
 
  しかしながら、社会主義革命の歴史的任務を持つわが党としては、国民運動あるいは大衆闘争の中で、低い要求を高い要求へ、局部的闘争を全国的闘争に、経済闘争を政治闘争に発展させる指導とともに、日本独占資本とその政府の政策や本質を、また日本の独占資本が手を結んでいるアメリカの帝国主義政策の本質を正しく批判して、社会党政府樹立、社会主義革命の必要性をつねに啓蒙することが重要である。
 
 (2) 勤労諸階層の闘争を結合して、党の指導力を強め、さらに反独占国民戦線を結集するためには、大衆に対する思想教育と宣伝活動がきわめて重要である。
  われわれは、独占の利益に奉仕する金権政治の腐敗、大資本、大企業の横暴、資本主義社会における不公平と不平等、さらには人間性破壊や社会悪等、その実体を徹底的に暴露批判するとともに、現状変革の必要性を強調し、つねにわれわれの革命方針と施策を具体的に提示しながら、社会主義の優位性を浸透させて、大衆の政治的意識の高揚につとめなければならない。
 
 (3) 国民運動は広汎な勤労諸階層の具体的要求を闘いとる闘争であるが、その中核は組織された労働者である。しかも国民世論の支持が不可欠の要素であるから、労働者と農民の提携を中心として中小企業者、学生、知識層等が広汎にこの運動に参加できるよう努力しなければならない。特に各層の個別的な要求の相互のつながりと平和、中立、護憲等の高度な一般的要求との結合について、不断の努力が払われねばならない。
 
 (4) 大衆闘争の展開の場は、本来、議会外にある。だが大衆闘争をもりあげ、これを背景として一定の成果をかちとるには、議会内のたたかいはきわめて重要な役割をはたす。また議会内の闘いで国民の要求する立法の成立を政府に迫り、あるいは政府の狙う反動法案の成立阻止の抵抗闘争が行なわれるとき、これらの議会内闘争は、議会外の大衆闘争をさらに大きく発展させる役割をはたす。われわれはこうした大衆闘争と議会闘争の有機的結合によって小選挙区法案や警職法案を葬り、また岸内閣を打倒した貴重な経験をもっている。
 
 (5) 現在日本独占資本は、なお、勤労諸階層の要求に対して、もし彼らが過度の資本蓄積をやめるならば譲歩し得る相当程度の余力を持っていることは、西欧の社会保障や労働条件と日本におけるそれとを比較しただけでも明らかである。したがってわれわれは、独占資本に対して彼らの譲歩を積極的に要求して闘い、この闘争を独占打倒の闘争にまで高めてゆかねばならない。
 
  しかしまた、日本独占資本は、その体制の維持のためには勤労者階層の要求に譲歩しえない一線をもっている。また独占資本は、勤労者の要求に一を譲るとみせて二をとり返したり、経済的に譲るとみせて政治的、思想的に革新陣営をかく乱分裂させたりしながら、合理化と反動化の攻勢をしかけてきている。したがってわれわれは、独占資本に対して積極的に改良と社会進歩の方向への政策転換を要求しつつ、同時に、独占資本の分裂策動を排除し、合理化反動化の攻撃に対してきびしく抵抗するたたかいをその基礎にすえて、強力な革命の主体勢力をきたえなければならない。
 
 (6) また、国家独占資本主義のもとでは、すでに国有国営に移されれた鉄道、電信、電話、専売等の産業は国民経済のなかで重要な役割をはたしており、さらに総資本の共通の利益のために国有に移した方が有利とみられる産業や、あるいは独占資本にとって重荷となった産業を、独占資本のイニシアチブで国有化することもあり得る。また独占資本はすでに国有化された産業についても、独占利潤が確保できるものについては民間払下げの陰謀をつねにもっている。
 
   したがってわれわれにとっては、国有化された産業の民主化、民間払下げ反対、財政投融資をはじめとする設備投資資金の運用の民主化、独占的管理価格の規制等の闘争が重要である。しかし また独占資本は、独占資本主義の根幹をなす巨大金融機関や重要な基幹産業については国有化を容認しようとせず、その「私有財産権」を守るために全力を尽すであろう。よってわれわれは、これらの主要な金融機関と基幹産業の国有化を、今からわれわれの政治的要求として提示し、これが実現のために努力するとともに勤労大衆の強い支持を得て、やがてわれわれの政権のもとでこれの全面的達成をはかるよう努めねばならない。
 
 四 大衆闘争・選挙闘争・反独占国民戦線・政権樹立
 
  われわれは、大衆闘争のなかで広汎な勤労諸階層と結合し、信頼をかちとり、国会及び地方議会の多数を獲得して、社会党政権を樹立する。これは平和革命達成への不可欠の道程である。
  この場合選挙闘争はまだきわめて重要な闘いの部面となる。選挙闘争は、自民党の全政策体系に対し、わが党の全政策体系を対置して、日本の運命や大衆の令福をどの方向にみちびくかを公然と論争する闘いである。その意味において一つの重大な政治決戦の舞台である。またこの時こそ国民の政治的関心の最も高まる時である。したがってわれわれは、選挙闘争に党の総力を集中し、自民党との間の政治的争点を鋭く浮彫りにし、自民党の政策の矛盾を具体的に暴露批判して、党の正しい政策を国民のなかに広く浸透させなければならない。またわが党を支持する勤労大衆が、ただわが党ヘ一票を投ずるだけにとどまらず、積極的に政治活動へ参加し、わが党組織が拡大するようつとめねばならない。
 
  また選挙闘争は、日常の大衆闘争と密接不可分であることはいうまでもない。日常の多面的な大衆闘争のなかで、党への信頼を増大させ、大衆を不断に党の周囲に結集させる努力なしに、選挙のときだけ漠然たる雰囲気にのって一挙に党勢を拡大させようと望んでもそれは不可能である。
  自民党は、その金力と権力を背景として大衆を組織的に掌握しようとしている。また彼らは、彼らに有利な選挙法を維持したり改正したりしようと努力している。その他の政党もそれぞれ強力な組織作りや日常活動を続けているのであるから、わが党も断じて遅れをとってはならない。だがわれわれはすでに一千万人を超す固定した支持票があり、国会内ですでに約三分の一を占める議席を獲得している。しかも内外の客観情勢はわれわれに有利であるが故に、われわれにおいて、大衆闘争と選挙闘争と議会闘争を密接不可分に結合して誤りなければ、党の得票と議席を着実に増加させ、やがて自民党を打ち破って、社会党政権を樹立することは可能である。
 
  だが、日本資本主義の内包する矛盾が鋭く、また日本をめぐるアジアの情勢が急速なテンポで流動していることを考慮すれば、社会党政権樹立までの道はかなり動的な過程をへることが予想される。日本独占資本は帝国主義的進出によってみずからの生存を確保しようとして、憲法改悪・安保再改定あるいは東北アジアの反共軍事体制強化の道をすすんでいる。これは勤労大衆ののぞむ平和・中立・民主主義・生活向上の道と鋭く対立する。
 
  かつて、安保改定阻止の大規模な国民運動がもり上り、それと党の強力な国会闘争とが結合して岸内閣をして政局収拾能力喪失の事態へ追い込んだとき、党は広汎な大衆のエネルギーを社会党政権樹立へむけて誘導することができなかった。これは国民運動の中核である労働者階級の生産点における闘いが、なお不足していたこと、われわれの日常闘争のつみかさねが不十分であったため、党に対する国民的信頼も必ずしも高められておらず、その当然の結果として、国民運動が農村や地方都市の住民を反政府の意識でたち上らせる点においても不十分であったこと、および党の政治的指導能力が不足していたことに起因している。
 
  したがって今後われわれが広汎な日常闘争のなかで大衆闘織[ママ]と党組織を強め、その力を動員して大規模な国民運動を展開し、客観的主体的条件の成熟とあいまって、この国民運動が労働者階級の生産点での強力闘争にささえられ、中央地方の大多数の住民を反政府の世論によってたち上らせることに成功するならば、そしてこれを背景として院内で党の強力な国会闘争が行なわれるならば、われわれは時の自民党政府を打倒し、国会解散と総選挙を党のイニシアチブで実現することができる。この場合は、総選挙は鋭い政治的争点をめぐって全国民をわきたたせる真の政治決戦となり、自民党の金力や権力にうちかって、われわれが多数を獲得できる道がひらけるであろう。
 
  われわれは、多面的な日常闘争のなかで、教育、社会保障、物価、税金、地方自治、労働、農業等々の多くの闘争課題にそった大小さまざまの共闘組織の結成を促進する。また、平和、中立、民主主義擁護の闘争の共闘組織をも拡大発展させる。ただし、共闘によってかえって運動が攬乱され広汎な大衆を結集する目的に反し、運動を大衆から遊離させる危険のある場合には、共闘のあり得ないことはいうまでもない。われわれは、右の各種の大衆組織や共闘組織を党の政治方針と政治指導のもとに統合して、広汎な反独占国民戦線を実現する。この反独占国民戦線は、労働者階級を中核とし労働提携を中心とした広汎な勤労諸階層の諸要求め実現をめざすものであるが、それらを貫く中心目標は、憲法擁護による平和と中立と民主主義と生活向上である。党は、反独占国民戦線が社会党政権樹立のための政治的基盤となるよう指導し、さらにまた社会党政権樹立後においては、反独占国民戦線が社会党政権をささえてこれを社会主義政権に転化発展させるための政治的基盤となるように指導する。
 
 五 大衆から信頼される党
 
  日本社会党は、以上のような大衆闘争と議会闘争を通じて、日本における平和革命を指導し、社会主義と国家主権の完全回復を実現する使命をになっている。この使命を達成するには、それにふさわしい指導性をもった強力な党建設がなければならない。
  党は、勤労大衆のあらゆる日常闘争に活発に参加し、もっとも献身的にたたかい、そのなかで新しい党員、党友を獲得して党の量的増大をはかるとともに、優秀な活動家を育成して党の質的向上をはからなければならない。こうして大衆性と階級性をあわせもつ党を建設しなければならない。
 
  党は、高い社会主義の理論と、具体的な政策立案能力をそなえなければならない。そのためには、現実の生活と闘争の経験のなかから理論や政策をくみ上げるとともに、また科学的社会主義の基礎理論を教育学習する機能を強化し、全党員の理論と政策の水準を高めなければならない。
 
  党は、民主的組織運営の模範でなければならない。すなわち党の各級機関は民主的合議制によって運営され、党員の権利は尊重され、義務は一人ひとりの党員に自覚され、決定された事項は確実に統一的に実行されるような指導の集中制を貫ぬかなければならない。無規律、無責任な自由放縦や官僚主義と派閥は一掃しなければならない。また各種大衆組織に対しては、上からの形式的ひきまわしでなく、その組織の自主性を尊重しながら、しかも実質的に党の指導がつらぬかれる体制を確立しなければならない。
 
  党は、機関紙誌を強化し、党の政策方針をつねに機関紙誌を通じて正しく勤労大衆に伝達し、マスコミの歪曲された宣伝を打破しなければならない。また機関紙誌の拡大と党組織拡大、財政確立を結合させなければならない。
  党は、社会主義者の倫理と世界観を確立し、同志愛、清潔、謙虚、不屈の闘志等の気風をやしない、行動力を強め、全党員が人格的に勤労大衆に敬愛される党を建設しなければならない。
 
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