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第四章 大衆闘争の意義
 
一 大衆闘争の重要
 
  すでに明らかにしたように、われわれは日本における社会主義革命を、武力闘争によらない平和的、民主的方法で実現を目ざすものであるが、そのためには党は、労働者階級を中核に、労農提携を中心として、労働者、農漁民、中小商工業者および知識層など広汎な反独占の階諸層の圧倒的多数を組織化し、それを党の周辺に結集させなければならない。これを党を中心とした反独占国民戦線ということができる。
  そして、これらの勤労諸階層を、まずその経済的、政治的、文化的諸要求の実現をめざす日常闘争のなかで、組織化することが極めて重要である。また資本主義の生産力の発展と生産の社会的性格の拡大、交通、通信、マスコミ等の進歩にともなう独占資本の大衆支配様式の拡大、資本主義の再生産過程への国家権力の干渉の拡大等に対応して、現代の大衆闘争は多くの場合全国的規模でたたかわれる傾向をもっている。したがってわれわれは、大衆闘争を、その出発点である職場と地域に、しっかりと根をおろすと同時に、全国的闘争にまで発展させるよう常に努力しなければならない。
 
  大衆闘争はこのように勤労諸階層の要求から出発するが、勤労諸階層の立場からみた民主的権利が広汎に確保されていればいるほど、大衆闘争の拡大と目的達或は容易であり、また逆に、大衆闘争の拡大につれて民主的権利はさらに拡大され、民主主義の諸制度も拡充されるものである。ことに大衆闘争の経験のなかで勤労大衆が体得する階級的自覚と民主的権利の意識は強化される。独占資本の勢力は、勤労者の階級意識をまひさせ、その手から民主的権利を剥奪するためにたえず各種の攻撃をかけてきているが、ひとたび勤労大衆が把握した階級的自覚と民主的権利の意識は、誰もこれを奪うことはできないであろう。したがって、勤労諸階層は、憲法の改悪阻止とその完全実施、反動逆コース反対と民主主義諸権利の拡大、戦争反対と平和擁護、安保反対と中立達成、国家主権の回復、大衆収奪反対と生活向上の闘いなど各種の闘争によって、みずからの手ににぎった民主的権利を守り抜き、またこれを拡大してゆくことが十分に可能である。現代の日本をめぐる有利な内外情勢がこの可能性を保障している。そして、この大衆闘争による民主的権利の拡大こそが日本における平和革命の可能性の重要な基礎的条件である。
 
 二 各種の大衆闘争
 
  大衆闘争は、各種の階級、階層の要求にそって多方面に展開されるのであるが、われわれはこの闘争を拡大発展させるなかで、反独占国民戦線の結集をはかり、党の指導性を強化し、さらに議会闘争と直結させながら、平和革命の基盤と条件を培養発展させなければならない。
 
   (1) 労働者の大衆闘争
  労働組合運動の目的は、第一義的には労働者の経済的地位の向上と労働基本権の擁護拡大である。独占の高度成長にもかかわらず労働者は低い賃金、低い生活水準に苦しみ、独占の政策の結果としてのインフレ、物価上昇はこれに拍車をかけている。また独占利潤の確保、資本蓄積の推進のためのきびしい合理化攻勢の前に、労働者は、首切り、失業、生活不安に悩まされている。われわれは労働者による賃金引上げと全国一律最低賃金制実施の要求、合理化反対と生活権擁護の要求、労働条件改善と労働者福祉充実の要求、全労働者への労働基本権回復の要求等を積極的に支持し、わが党はこの目的の実現に全力を集中する。この闘いのなかで未組織労働者は組織化され、広汎な労働者が組織的隊列のなかに組みこまれてゆくであろう。同時にわが国のように階級的矛盾が鋭く、国家が再生産過程に直接介入している国においては、経済闘争それ自体が政治闘争の性格をもたざるをえない。また安保体制の下においては、特にわが国は第二次世界大戦の苦々しい経験もあって、平和と独立に関する闘争課題がたえず提起されている。したがってわれわれは、大衆討議の中で、労働者階級の十分な理解の下に、経済闘争を政治闘争に結合させるよう努力しなければならない。
 
  労働者階級のこうした闘争は、労働者の歴史的任務に対する自覚と相まって、他の勤労諸階層の諸要求をも大きくあわせとり上げることによって、反独占国民戦線の中核的役割を果すことになるであろう。われわれはまた、そのように指導しなければならない。労働者の大衆闘争は、産業別規模でたたかわれる時に大きな力を発揮する。そのために、現在、公務員共闘、金融共闘、交通共闘等の大産業別共闘への努力が払われている。われわれは、労働組合の企業別組織形態のもとでは、必然的に企業主義のワクを抜けることはできないとの宿命論を排し、労働者の企業主義の克服に全力をあげて努力しながら、次第に労働組合の大産業別組織への脱皮前進を促進しなければならない。これらの運動のなかで、わが党は、とくに経済要求の課題のもとに各種労働組合組織の行動の統一、未組織労働者の組織化、さらには労働戦線の統一をはかるように指導し、すベての労働者の連帯と協力の実をあげるよう力をつくす。
 
  また、労働運動の全国的闘争をささえる基礎を強化するために、職場闘争を基盤として活動家層を獲得し、あるいは地区労組織の強化を促進する。そして労働者階級が地域闘争の中で、他の勤労諸階層の先頭にたち、地域組織の拡大の推進力となるように指導する。
 
   (2) 農民の大衆闘争
  農民層は長い間、自民党をささえる保守的政治基盤を形成してきたが、最近の高度経済成長政策と貿易自由化のなかで、経営の行きづまりと急速な階層分解を迫られ、みずからの生活を破壊するものが独占資本とその代弁者である自民党政府であることにようやく目ざめつつある。多くの農民が兼業労働者化していることも、この農民の自覚を促進している。われわれは全力をあげて農民の日常闘争を促進支援し、自民党の政治基盤を掘りくずして、われわれの影響下に加えなければならない。
 
  われわれは、貿易自由化に反対し、米価闘争を拠点として、主要農畜産物につき生産費所得補償方法の完全実施、とくにその中で農民の自家労働を都市労働者の賃金なみに評価させる闘争や、あるいは自民党政府の農民首切り、構造改善事業の中止と生産法人による共同化への国の援助拡大、国費による農業生産基盤整備、豊富な長期低利資金の供給等の諸要求の闘争を支援し、農民の正当な権利意識を飛躍的に高めることが重要である。
 
  こうした農民の日常闘争のなかで、農業を主たる生活の基盤とする農民層を中心に、各種の要求別、地域別農民組織を結成あるいは拡大して、農民組合の機能を総合的に強化するとともに、必要に応じて、全国的または地方的に、全日農を中心として、あらゆる民主的農民組織の共闘体制をきずくように努力する。
 
  また農民の要求と闘争を背景として、農協組織のあり方を農民的性格に変革させることや、日常闘争の中で、経済的な労農提携を次第に政治的提携にまで前進させねばならない。
  また出稼ぎ農民及び第二種兼業農家対策は、最近の重要課題となってきたが、これも労働者と農民が相提携することによって組織化は進み、その運動の意義は一層拡大する。
 
   (3) 中小企業者の大衆闘争
  中小企業者もまた長い間自民党を支える保守的政治基盤となっていたが、最近の高度成長政策と開放経済体制への移行のなかで、系列化、切り捨て整理、倒産等の未曽有の脅威にさらされた結果、広汎な反独占の機運が急速化に醸成されつつある。われわれは具体的な世話役活動から、金融、減税、事業分野確保、協同化、近代化等の具体的政策の提示、さらには、大企業の圧迫から中小企業を守る反独占の闘争を通じて、中小企業者、特にその中で圧倒的多数をしめる勤労性企業を重点的に組織化しなければならない。
 
  この闘いはわれわれの反独占の民主主義闘争の一環であり、われわれは精力的な活動によって彼らを反独占国民戦線に結集し、保守の政治基盤を掘り崩してゆかねばならない。中小企業者の支援については、とくにその労使関係の二重性に着目する必要がある。すなわち中小企業経営者は、一方においで独占から収奪され、他方において企業内の労働者を搾取するのであって、中小企業労働者は二重の搾取を受けていることになる。したがって、中小企業における労働運動は、経営者にたいして反独占への姿勢を変えさせる闘いと、本来の賃金、労働条件改善の闘いとの二面性を持つ。それだけに中小企業の労使関係については柔軟な戦術姿勢が要求されるのである。われわれは、中小企業者の指導および組織化に際して、この点を十分配慮しなければならない。
 
   (4) 地方自治に対する大衆闘争
  独占資本と自民党政府は、ながい間一貫して地方自治抑圧を進めてきたが、いまや独占の地方進出にともなう、産業基盤づくりにかませて、大きく中央集権と収奪強化の方向へ地方自治体を再編成しようとしており、そのため地域住民の福祉は著しくじゅうりんされつつある。われわれは、地方自治権と住民福祉の擁護の政策のもとに広汎な住民の日常闘争を発展させる。
 
  われわれは、住民闘争を直接に各自治体の運営の民主化要求にむけるとともに、これをさらに意識的に自民党中央政府の政策批判にむける。地方自治六団体は、時に自民党中央政府と対立する姿勢をしめすが、しかし根本的には自民党中央政府の下請けとなって住民要求を下部で分散中和させる役割をはたすが故に、われわれは、地方自治六団体と自民党中央政府との矛盾を利用しつつも、基本的にには個々の住民要求を全国的闘争に拡大させて自民党中央政府へ向けさせるよう努力する。とくに自治体首長に進出したわれわれの代表は、できるだけ民主的な行政の実例をしめすとともに、それと矛盾する自民党中央政府の反動行政に抵抗して、住民の眼を国の根本的政冶へむけさせるよう意識的に誘導する任務をもつ。
 
  こうしたたたかいのなかで、勤労者地域組織、農民組織、中小企業者組織、主婦組織、各種社会福祉を拡大し、これらを全体として地域共闘組織に集約する。
  また、町内会、部落会、民生委員PTAその他の組織の多くが、地域住民を保守反動の手中に掌握する行政の末端機構の役割をはたしているのに対して、われわれは積極的にこれら組織の中にはいり込み、その性格や運営を民主化し、われわれの影響力を増大することにつとめなければならない。
 
   (5) 青年、婦人の大衆闘争
  労働青年、農村青年をとわず、青年は社会の未来をになうものである。また現に青年層は、鉱工業や農業を通じて生産の重要な担い手となっている。そして若年労働力の不足は、社会に対する青年の発言力を強める有利な条件となっている。しかるに現代の青年は、独占資本主義のもっとも安価に搾取収奪できる対象としてしめつけられ、さらに資本主義退廃文化の氾濫のなかでほんろうされ、明るい未来を望む展望を失わされている。このため虚無的な無関心がかなりの青年の心理を支配している。これがまた逆に極左的一揆主義に一部の青年をはしらせる基盤ともなっている。
 
  われわれは青年大衆に対し、憲法擁護、戦争反対、生活向上等のたたかいのなかでこそ明るい未来の社会が獲得されることをよびかけ、これらのたたかいのなかで青年層がとくに先進的役割をはたすことを訴える。また教育、住宅、文化、スポーツ等の施設に対する青年の要求を支持し、健康で生産的な文化の創造と享受を求める青年の努力を支持する。このなかで社青同を中心とした青年の大衆組織の拡大を促進する。
 
  婦人は、生意を生み育てる責任をになう立場から、本能的に平和をのぞみ、また婦人の固有の権利の拡大、職場・農業・家事等の過重労働の軽減、生活の安定、育児教育の保障等の諸政策を要求している。婦人の多数者が現在の社会の矛盾にめざめるとき、その政治変革のエネルギーはきわめて大きい。われわれは日本婦人会議を中心に都市、農村の主婦を、多様な地域組織に結びつけ、また職場の勤労婦人組織とあわせて、生活と民主主義と平和をめざす婦人の大きな結集を促進する。自民党が金力と権力を使って各種社会教育団体を反動的方向へむけて操作しているのを批判し、それらの官制的団体の民主化を促進する。
 
   (6) 平和・中立・生活の権利の国民運動、特に憲法擁護と安保廃棄の重要性
  国民運動は大衆闘争の一つの発展形態である。大衆闘争がその発展につれて勤労諸階層の全体の要求を包含する総合的な目標をもち、またその闘争規模が勤労大衆の大多数をふくむ全国民的性質をおびてくるとき、これを国民運動とよぶことができる。種々の要求、目的にしたがってたたかわれている多面的な大衆闘争のうち、どの闘争題目を国民運動的規模にひき上げて発展させるかの選択は、時の情勢に即して判断されるべき党の戦術指導の問題である。
 
  現在、国民運動としてたたかわれているのは、平和民主主義の憲法擁護、安保条約廃棄と中立実現、日本の非核武装と核兵器禁止、東北アジア軍事同盟反対と沖縄返還、日中・日ソの国交正常化および公害防止・高校全入・物価値上げ反対・交通安全確保等の生活と権利のたたかいである。
 
  これらの諸闘争はそれぞれの時点において、それぞれの具体的課題にそくして、具体的スローガンがかかげられ、単独にあるいは他の諸要求と結合して闘われるのであるが、この際特に憲法擁護と安保廃棄の闘争の重要性を強調しなければならない。何となれば、すでに第二章の「平和革命の条件と移行の過程」の中で、また第三章の「議会制民主主義の闘い」の中で、現憲法を正しく評価し、位置づけていることからみても、さらに独占資本家とその政府が現憲法を空洞化し、改悪しようとして執ような攻撃をかけてきていることから見ても、現憲法を擁護する闘争は、平和的に社会主義革命を遂行しようとするわれわれにとって不可欠の条件である。
 
  また、安保条約はすでに明らかにしたように、日本の独占資本が自らの体制維持のために、アメリカと進んで締結した反共軍事同盟であり、これがために、アジアの平和を乱し、日本を戦争に巻き込む危険性を持ち、日本の主権を著しく制約し、さらに日本の内外政策を反動化せしめる主導的な役割を果していることから見て、この条約を廃棄することなくしては、日本の全勤労大衆が望み、わが党が求めている平和、中立と民主主義の要求は到底達成し得ないからである。アジアの現状をみるならば、インドシナ半島、台湾、南朝鮮、マレーシア等の情勢は刻々と変動し、民族解放運動は大きく前進している。加えて、中国が国際連合のなかに正当な地位をしめるのもおそくとも数年をまたぬうちであろう。こうした情勢の発展は、アメリカの中国封じこめを中心とするアジア戦略の明らかな破綻をもたらすのみならず、アジアにおける日本独占の帝国主義的進出の道をふせぐ結果をもたらすものである。これに対する対抗策として日本独占資本とアメリカは、日本国憲法の改悪と動揺する日米安保体制の堅持に総力を集中している。すなわち、改憲と安保体制堅持は彼らの反動攻撃の主軸である。
  したがって憲法擁護の闘いと安保廃棄の闘いは密接に結びついており、この二つの闘いは、平和的・民主的に社会主義革命を遂行しようとするわが党の戦略の中で、重大な結節点であるということができる。
 
  現在の日米安保条約が一九七〇年で有効期間が切れることから、再びその再改訂が提起されるまで安保体制との決戦を待てばよいと考えるものがあるならば、重大な誤りといわざる得ない。現に安保体制は強化されつつある。国防費の増大、国防省設置の動きから、F一〇五D機の配置、原潜の寄港、日韓条約の強行、東北アジア軍事同盟結成の画策に至るまで、内政外交のすべてにわたって、独占資本とその政府は、アメリカと手を結び、安保体制を強化しているのである。したがってわれわれがすでに展開している各種の具体的闘争を日々に積み上げ、一九七〇年の闘いに結集しなければならないのである
 また、とくに沖縄は、アメリカによって半永久的に占領され、アジア戦略の拠点と同時に日本の主権を制約する拠点として二重に利用され、アジアにおける最大の原水爆基地と化している。したがってわれわれは、安保体制打破のだたかいの最重要な一環として沖縄の返還と基地撤廃の目標をかかげ、沖縄県民と一体になって強力なたたかいをもり上げなければならない。
 
  こうしたねばり強いしかも計画された長期の闘争は、憲法擁護の闘いについても指摘することができる。すなわち、警察予備隊が創設された以後今日の自衛隊の編成に至るまでの経過や、各種反動立法の歴史を見ても明らかな通り、独占資本とその政府は憲法を空洞化することを一貫してすすめてきた。したがって彼らが憲法語査会を作り改憲案を提示して、改憲の宣伝に乗り出した今日、われわれは、憲法九条を守る闘いだけでなく、勤労大衆の生活と権利の闘いを憲法擁護の闘いに直結させ、広汎な国民運動にまで発展させねばならない。
  わが党は、かつて安保反対闘争において、輝かしい役割を果した。また憲法擁護の闘争においても、歴史的に一貫して闘ってきた実績と成果をもっている。自民党政府の打倒、社会党政府の樹立は、この闘いの成否にかかっているといっても過言ではないのである。

 
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