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二 移行過程に対する具体的展望と諸方途
 
   (1) 民主的多数派の結集
 (イ) 以上のように、わが国では革命の平和移行を達成する基本的条件はそなわっており、われわれがわが党を中心として革新諸勢力、組織の質量両面にわたる飛躍的強化の達成と相まって、これらの有利な条件を一層強め、圧しい指導をおこなっていくなら、一定の政治的経済的危機の成熟のもとで、国民の多数を制し、革命の平和的移行を現実のものとする道は開かれている。そのためにわれわれが当面する課題は、憲法擁護と完全実施に総括されるさまざまな平和と民主主義闘争の諸課題を徹底的に遂行することである。この諸課題とは、平和と軍縮、非核武装、安保反対と中立、主権の完全回復、民主主義諸制度の擁護と拡大、国民諸階層の生活向上と経済諸構造の改革、教育、文化、思想改革等々である。民主主義の諸闘争は、搾取を廃絶するものではなく、その目標、要求、内容において社会主義闘争とは区別せられるが、それだけにこれの実現を通じてより広く国民を結集し得るし(反独占国民戦線)、しかもこの要求の実現をはばんでいるものがほかならぬ独占体であることから、その闘争は必然的に反独占闘争へ成長転化する性格をおびており、独占を弱め孤立させていくなかで、ついには資本主義を否定する闘争へ発展する可能性をはらんでいる。
  こうして民主主義闘争の徹底的遂行は一方では民主的多数派を結集するとともに、他方ではこの闘争自体が社会主義闘争へ発展する性格をもたざるを得ない。この発展の可能性を現実のものにするのがほかならぬ社会主義政党たるわが党の任務である。今日の条件では民主主義闘争と社会主義闘争の間には大きなへだたりはなく、民主主義闘争と社会主義闘争は相互に密接な関係をもち、きりはなすことはできない。このことが、今日の社会主義革命が民主主義を通ずる社会主義革命として達成されるといわれる所以である。
 
 (ロ) われわれは、これらの民主主義的諸闘争を通じて、労働者階級を中核とし労農提携を中心とする広範な住民層に対して政治的権威を樹立し、勤労諸階級と新旧中間層との同盟をつくりあげることができる。それは具体的には@経営、職場におけるわが党を中心とした革新的多数派の結集、A地域及び自治体の多数、B行政機構における革新多数派の結集と、Cそれらによる国会の多数派獲得となって実現される。
  これらの民主的多数派の結集は同時に反動勢力を孤立させることであり、それは具体的には、@保守党の後退、A自衛隊、警察の中立化ないし革新への傾斜、B官僚の掌握、Cマスコミの中立化ないし革新への傾斜、D右翼の孤立化、として実現される。
 
   (2) 移行過程の具体的展望
 (イ) われわれが民主的多数派を結集し、まず政府をとり、ひきつづき社会主義へ移行することは決して容易なものではない。
  わが国の保守対革新の対立は日増しに増大している。しかし民主社会主義政党やまた、いわゆる二大政党論者の主張する革新とは、ブルジョアジーの支配のわくを超えない限りでの革新にすぎない。従ってこのような革新野党が政府を樹立した場合でも、その施策はさまざまな社会政策、福祉国家的諸要素の増大という量的相違にすぎない。しかしわが国においては保守、革新両党の対立は、その本質においてブルジョアジーとプロレタリアートという根本的な対立を表現している。わが党の路線は、一貫して独占体と諸階層の対立を追求してきており、党はつねに社会主義実現の不退転の決意を示している。
  このような革新政党に対して現在の支配階級が唯々諾々として政権をゆずる筈はない。このような保守、革新の本質的な階級的対立を体現しているわが国の場合、われわれが政府を組織し、社会主義へ前進する過程においては、平和的移行とはいえ、支配階級はあらゆる手段と機会をとらえて必死の抵抗を試みることは明らかである。おそらくはわが国においては、過渡的政権を実現するためにも、前述した民主主義闘争の過程で、強力な大衆闘争の高揚とさらには政治的経済的な客観的諸条件によって政治的危機が作り出され、その危機に対して新政府樹―の決意と政策を明らかにした指導政党と労働者階級を中心とする反独占諸勢力(反独占国民戦線)が適切に対処し、これを突破することなくしては不可能である。したがってわが国では、基本的な組織の強化と大衆闘争のともなわない、いわゆる選挙闘争のみによっては議席数の拡大そのものが困難であるばかりか、たとえ多数を獲得しても樹立した政権の安定は期しえない。ただ一つ明らかなことは、政権はたたかいとるべきものであるということである。すなわち、われわれが政権獲得以前において質、量ともに真の民主的多数をかくとくしたとき、はじめて政権の移動が比較的平和的に行なわれる可能性が生まれ、政権獲得の時、もしくはその直後に起り得るある種の混乱にも耐え得るものとなるということである。
 
 (ロ)政権獲得の前後に予想される支配層の抵抗、例えば自衛隊や警察による大衆運動に対する弾圧の強化はもちろん、選挙干渉、右翼暴力の介入ないし放任等が予想される。
  反動的官僚群の行政サボタージュ、妨害行動も当然予想される。独占ブルジョアジーの抵抗は、資本の海外逃避、生産サボタージュ、信用流通機構のかく乱など手段をえらばずに行なわれるであろう。マスコミの抵抗もこれを過小評価することはできない。旧中間層内部から反社会主義的ないし右翼的勢力の台頭の危機もあらわれるだろう。職業的右翼のテロの危険はいうまでもない。アメリカ帝国主義を先頭とする国際ブルジョアジー戦線から有形無形の圧迫、干渉の危険性もまた存在する。
  われわれの平和革命の道は、こうした妨害、抵抗、圧迫を無視するところに語られるものではなく、こうした危険な条件をすべて予想しつつも、それらを抑制し粉砕する条件が存在するという確信の上にたつものである。すなわち、われわれにとって何よりも大切なことは、広い国民諸階層のあいだにわわわれの政治的、思想的権威を確立し、ふだんの大衆闘争の高揚と相まって、反動勢力を国民から孤立させることであり、また樹立した政府の行なう段階的諸政策や政治的決断を誤らないことである。これらのことに成功するならば予想される反動勢力の妨害を大きな混乱をともなわずに排除し、その抵抗を粉砕することはけっして不可能ではない。とくに新しい政府を国民の大半が支持するようになり、革新勢力の力がしだいに強化され、官僚を掌握し、警察や軍隊までも中立化ないし革新例へ傾斜し、マスコミも同じ歩調をとり、重要産業の労働者はいつまでも産業防衛に立てる状況になり、解放された大衆の行動が不断に高揚し、反革命の勝利の見込みがなくなり、しかも一方、革命政権が一定の経営者には協力を求めるなど有効適切な諸政策の遂行に誤りがないならば、ブルジョアジーの中には無益な抵抗をやめる者も続出してくるだろう。
  かくて彼らの間に深刻な動揺と分裂が起り、国家権力の最終的掌握と社会主義的改造が平和裡に行なわれることは決して不可能ではない。もちろん平和移行は直線過程ではない。革命の前進は、同時に常に一方では、反革命ファシズムの危機を含むブルジョアジーの立ち直りと逆襲、他方では革命勢力の分裂、あるいは大衆の高揚の停滞という危機をともなう。われわれはこれらの危機をはねかえし克服しつつ社会主義革命を達成しなければならない。
  ここで明らかにしておく必要のあるのは、移行に際して暴力を使うか使わないかは敵の出方によって決まるといういわゆる「敵の出方論」についてである。「敵の出方論」は今日の条件では主体的な選択を放棄する議論である。支配階級は自ら進んで権力を譲り渡すものではないが、しかし暴力を使おうという意志と、それが可能であるかは別のことである。
  たとえば帝国主義者である限り戦争挑発の意志を捨てないが、しかしその実現はきわめて困難になっているのと同じである。問題は、革命勢力の側が大衆闘争と国民的孤立化によって敵の暴力の発動を封殺することができるかどうかである。そして今日では、敵が意のままに暴力を発動して革命に抵抗することは次第に困難になっており、革命の道の選択権は大きく労働者階級の側に移りつつあるといえる。しかもわれわれの平和の道こそ、単に望ましいばかりでなく、もっとも有効に社会主義へ到達する道であることを確信し、意識的にこの道を選択し、追求していくまさにその努力こそが相手の「出方」をも規制していくのである。
 
   (3) 支配層抵抗排除のための措置
  われわれは以下の問題の解決に当って、つぎのことを前提として明らかにしておく必要がある。
  もともと軍事力はそれ自体が宙に浮かんで存在しているものではない。それは支配階級と被支配階級との間に政治的、経済的、社会的、さらにはイデオロギー的な諸関係の全体としての相互の関係の中で存在し、機能しているものである。従って軍事力の発動を抑制し得るか否かはわれわれが支配階級の側からヘゲモニーを奪いとり、国民の圧倒的多数を結集し得るかどうかに基本的にはかかっているのである。また今日、実現の端緒を開きはじめた軍縮をめざす国際的諸動向も、以下の諸課題の実現にとって有利な条件となっている。こうした前提を確認した上で、具体的につぎの諸施策と諸方途を推進することによって、革命の平和移行を実現しうると考える。
 
 (イ) 自衛隊に対して
  根本的には憲法前文と第九条の完全実施として自衛隊の解散を目的とするが、そのための過渡的措置として当面まず自衛隊の国防省昇格など自衛隊の拡大と核武装化を阻止する。さらに@文官統制の強化、A自衛隊員の民主的権利の確保、自衛隊の内部における政治活動、思想活動の自由、B国民警察隊と国土開発、治山治水、災害対策等の平和建設隊への再編成、その可及的速やかな縮小の実現、それにともなう自衛隊予算の逐次縮小削減、C以上のような諸政策を推進する過程でとりわけ重要なことは、政治、思想活動の自由の確保と相まって、わが党をはじめ民主的諸組織や住民組織との交流、接近によるその影響力の拡大によって、自衛隊員の思想改造につとめ、その軍国主義的治安対策的性格を一掃すること。
 
(ロ) 警察に対して
  @わが党は社会の正常な諸秩序維持のために必要最小限にして民主化された警察力はこれを保持する。しかし、機動隊公安警察はこれを解散する。A一般警察の不必要な武装は禁止する。Bさしあたって、中央地方の公安委員会の公選とその権限の強化をはかる。C警察官にたいする団結権の付与、憲法に認められた政治・思想・言論等諸権利の完全な保障、D破防法、公安条例、新暴力法、軽犯罪法等一連の治安弾圧法規の改廃、E警察官の待遇改善、これらの諸措置を通じて反人民的弾圧的性格を一掃し、住民のサービス機能に忠実な警察とするように努める。F警察に対してはとくに自衛隊に対すると同様にわが党をはじめ民主勢力、住民との交流、接近によりその影響力を強めることが必要であり、可能である。G以上のような諸措置、諸活動を通じて、わが党に対する支持を獲得し、とくに政権をとった場合はその社会党政府を積極的に支持するよう指導する。
 
(ハ) 右翼暴力に対して
 ?@暴力を行使する右翼団体は解散させる。?A右翼テロをきびしく処罰する。?B右翼暴力の温床を絶滅、正業への職業転換、?C右翼暴力阻止のための住民監視、摘発を基礎に警察をはじめ政府機関による厳重な措置を行なう。?D革新勢力の自衛組織の問題は、基本的には大衆的な動員力の問題である。
 
(ニ) 官僚に対して
 @基本的には行政官僚諸機構、組織の民主的編成を行ない、国民の監視と要求に可能な限り直結させる。たとえば中央地方における弾がい制の拡大。A官公労働組合の強化とそれによる行政の監視、官公労働組合への民主的諸権利の全面的付与。B官僚の掌握も基本的には革新勢力のヘゲモニーの問題に帰着するが、とくに官僚に対してはその人事の完全な掌握に努め、反動官僚の追放、反動官僚の入替え、新たな人材の登用を実施する。Cふだんから議会、労組その他を通じて官僚の民主化につとめる。D委任立法の縮小、各種委員会の改廃と積極的参加、Eあらゆる面で行政機関に対する国会の優位性を明確にし、国会による行政機関の規制、監督を強化し、立法過程及び実施過程に対する国会の監督を有効に行なうための諸措置をとる。F不要機構、組織の廃止、縮小と必要な機構の新設拡充、以上によって高級官僚のサボをふせぎ、中央地方機構の民主化を実現し、社会主義施策実現の機構に転化することは十分可能である。
 
(ホ) マスコミの中立と自由の保障
 マスコミの中立と真の自由を保障するために、マスコミ内部の労働組合の強化と国民とりわけ文化人、知識人をはじめとする民主勢力によるマスコミの社会的影響力を期待する。
 
(ヘ) 独占のサボタージュに対して
 基本的には重要産業の社会主義的国有を達成することであるが、それにいたる過程での独占のサボに対しては国民的抗議と労組のストライキにとどまらず労働組合による生産、経営の管理によって対抗する。その生産管理は当該企業はもちろんのこと、全産業的規模においてあらゆる必要な措置をとるとともに、樹立した政府及び民主化された行政機構による有効な規制諸措置を実施する。
 
(ト) アメリカの干渉に対して
@ アメリカの帝国主義軍事力の排除は現行安保条約の廃棄にともなう全外国軍隊、基地、施設の撤去によって完成される。
A 日米関係は、社会主義革命の端緒的な段階から権力掌握にいたる一連の過程で、アメリカによるさまざまな干渉が予想されるという点で、革命にとってきわめて困難な問題を提起している。だが今日の国際的な条件の下では、われわれが対外的に内政不干渉、平和友好の態度を堅持する限り、国民が自ら選んだ政権に対して外国が公然たる干渉を加えることは不可能である。
B 特に日本のように国際的に有力な地位を占めている国に対しては、今日の国際条件の中では公然たる軍事的干渉は不可能といってよいが、万一その危険性を想定した場合でも、革新政党及び革新政府を先頭とする日本国民の強力な抵抗闘争と、国連をはじめとする国際批判、とくに社会主義国、中立諸国の集中的かつ強力な批判によって孤立し、その意図を封殺されることは明らかである。
C 経済的干渉、妨害の危険性も存在するが、それはかりにあり得たとしても一時的なものに過ぎず、恒久的に日米関係を断絶することはアメリカ自体の利益からしてもあり得ない。なお経済的干渉に対しては外交的手段によって対処するのが基本であり、さらに他の資本主義国、社会主義国との問の貿易拡大による補完も当然考えられる。
 
  (4) 以上の施策への日常的な接近
 権力の移行過程にともなう敵側の妨害、抵抗とこれに対するわれわれの基本的な対策、措置はほぼ以上のようなものである。もちろん、以上のわれわれの施策の多くは、過渡的政権から社会主義政権に至る過程で実現されうるものであるが、政府樹立以前の過程においても、そのための強力な闘争の展開と部分的接近と実現は可能であり、必要でもある。
 例えば、独占のサボに対する労組の経営は、生産管理のひとつとってみても、これはまさに日常ふだんの労働運動の強化、経営への民主化のだたかいなくしては実現できないし、また予想される軍事的暴力的危険に対する前記の諸方途もまさに今日の日常ふだんの組織運動、大衆運動を強化することによってはじめて実現が可能なのである。前述の自衛隊、警察の思想の自由、あるいは住民との交流、革新勢力の影響の浸透拡大も同様である。これらによってもっとも可能性の多い政府獲得前後におこる危険な事態をかなりの程度抑制することができる。さらに根本的には、国民的多数派の形成とそれにともなう政府の樹立という事態の進行の過程において、国民の圧倒的多数がその政府を積極的に支持するという状況が作り出された場合、その圧力によって、官僚はもちろん自衛隊、警察が革命勢力に対し、同情的または進んで協力する体制をつくりだすことも不可能なことではなく、少なくとも中立におくことは達成できる。
 さらに、最悪の場合として予想される一部の反乱に対しても、圧倒的な国民の批判、きゅう弾、ゼネスト等の必要な対抗措置によって、これを失敗に終らせることはさして困難ではなく、またその場合、すでにわれわれの側に移行した警察力等によって対抗することも考えられる。いずれにしても全面的な武装闘争をさける可能性は十分見透[ママ]されるであろう。
 
三 過渡的政権と社会主義政権
(1) 過渡的政権とは、社会社義政権の確立以前の段階において、それへの移行接近のために樹立される政府であり、われわれはこれを社会党政権と呼ぶ。それはわが党のヘゲモニーの下にあるとはいえ、未だ完全な社会主義政権にまで至っておらず、その政府の基本的施策は護憲、民主、中立におかれ、同時に社会社義的諸施策も端緒的、漸次的に実施される。
 
(2)この政府の構成は、(イ)社会党の絶対多数の単独政権を基本とする。しかしそのほかにも、(ロ)比較多数の社会党に他の会派の閣外協力による単独政権、(ハ)社会党と、保守を除く他の革新的会派との連立政権等の形も考えられる。
 われわれが目標として追求するのはあくまでも社会党単独政権であるが、(イ)の連立政権をも考慮に入れておかなければならない。この場合の連立とは、外交、経済、政治の主要な政策の基本的部分において社会党の政策が基本的に貫かれるという条件の確保、すなわち社会党の完全ヘゲモニーを前提とするものであって、かっての片山・芦田連立政権の再現ではないことはもちろん、ヨーロッパでしばしばみられるそれとも質を異にするものでなければならない。なお、保守党の一部が分裂して、その勢力が、われわれの掲げる主要な政策を支持し、これを忠実に守るという条件があれば(この場合、その勢力は、すでに保守政党からの変質を意味しているといえよう)、これとの連立を、原則として何ら拒否すべきでない。
 
(3) この過渡的政権の階級的、国民的基盤は、護憲、民主、中立のもとに結集する、反独占国民戦線であり、労働者階級を中心とする国民的多数派の結集である。
 
(4) 過渡的政権の基本的性格は護憲、民主、中立という民主主義的性格にあるが、現代における民主主義的諸要求と政策は反独占施策を不可欠のものとしており、そこから不可避的に端緒的な社会主義的諸施策とかさなり合う以上、この政権が端緒的、漸次的ではあっても社会主義的諸施策を実施すべきことは明らかであり、この政権を社会主義政権の端緒的段階と規定することができる。換言すれば、この政権は、民主主義的政権としてうち立てられるが、同時に社会主義政権の第一歩であるという性格をもっている。
 さらに、一般的に、政府は全国家権力機構の一部分であるということはいうまでもない。国家独占資本主義体制にともなう権力の政府への集中を考えるとき、政府の掌握は全権力の移動にとって決定的な契機となるという関係を重視すべきである。
 
(5) この政権の過程は、そのときの主体的、客観的条件によって左右されるが、できるだけ速かに、社会主義政権を樹立する方向に全力を傾注しなければならない。しかし、われわれの革命が、武力革命と異って、あくまでも平和的、民主的諸手段を基調とし、国民大衆の圧倒的多数の支持と同意が必要であること、また社会主義政権の準備段階として、民主主義諸施策の展開、中立の国際的地位の確立、端緒的な社会主義的施策の実施、各種の国家機構の掌握等、いわゆる「護憲、民主、中立」の諸政策が遂行されなければならないことを考慮すれば、過渡的政権は、ある程度の期間の粘り強い闘争が絶対不可欠であることも明らかである。
 
(6) この過程において、社会主義への転化は漸次的に行なわれるとはいえ、少くともつぎの基本的諸指標の確保は必要不可欠である。
 すなわち、@国家の主要な行政、官僚機構、警察等の諸機構を革新勢力が完全に掌握すること、Aアメリカの権力を排除すること、B生産流通の主要な諸部門、諸機構を社会主義的に再編、改造すること、C反独占、民主的多数派内部の労働者階級と社会主義指導政党たるわが党の指導権の確立と、それによる民主的多数派の社会主義的多数派への転化である。この場合、しばしば論議される政治革命と社会経済変革の関係についていえば、社会経済構造の全面的な社会主義的変革は、政治革命すなわち社会主義権力の安定なくしては不可能であるが、同時に政治革命は、一定の社会、経済諸構造に対する変革をともなわずしては行ないがたい。つまり、独占体の経済的社会的支配力を放置しなままで、平和的、民主的に権力に到達することは不可能であり、国民の圧倒的多数を社会主義に同意させることはできない。
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