社青同第31回大会宣言
*2006年10月13日〜15日にさいたま市で開催された社青同第31回定期全国大会の宣言。出典は『青年の声』2099号(2006年10月30日号)。写真は社青同本部提供。
現在、日本資本主義は長期にわたった不況を乗り越え、好景気のなかにあると言われている。しかし、その内実は「金あまり」と言われるほどの独占資本への富の集中であり、企業業績の回復は労働者階級に対する搾取の強化によって生み出されているものに他ならない。
「構造改革」や「規制緩和」の名の下に、民間では企業の合併や分社化が行われ、これまで国や自治体が担ってきた部門の民間開放が急激に進んでいる。このようにして進められる資本の選択と集中、新たな市場の確保、より一層の合理化、搾取の強化は、労働者階級の窮乏化をもたらしている。
あらゆる職場で賃金や人員の削減が行われ、パートやアルバイト、派遣といった雇用形態の労働者も増大した。これら不安定雇用と呼ばれる労働者は、すでに全労働者数の3割を占めるまでになっている。一方では大企業の過去最高益の達成が伝えられながら、他方で生活手段にすら事欠く労働者の状態が生み出されている。こうした現状は、単に労働者が犠牲になっているというだけではない。「現場力の低下」や労働者の士気の低下、本大会においても発露されたような事故の多発などを前に、資本ですら危機感を抱かざるを得ない事態が進行している。
しかし、資本主義社会において、生産は資本の価値増殖こそが目的であり、一方では社会に広く存在する危機を認識しつつも、競争からは降りられず、さらなる合理化を進めるほかに手立てを持たない。そして資本は、強まる企業間競争や赤字を背景に、労働者を説得しながら生産性向上運動を進めている。ますます悪化する実態と、そこに歯止めを掛けることができない運動の現状に、私たちは自信を失いがちにもなってきた。
しかし私たちは、たとえ思うようには進んでいなくとも、同盟員や仲間がどのような状態で働いているのか、どんな思いを抱えているのか、仲間の不満や不安がどこに存在し、どのように表れているのかを集約し、社会の矛盾を明らかにしようと奮闘してきた。それらがこの第31回定期大会に持ちより、ともに学び合おうとした課題であった。
討論の中では、この間社会的に進められてきた合理化の中での苦悩が語られた。4600人を超える人員削減が打ち出された農林職場では、配転できるところなどないのに「意向調査票」を書かなくてはならないことへの憤りと、それでも働き続けなくてはならないが故に動揺する思いが率直に語られた。
また、下請構造が拡大されるなかでのぶつかりも報告された。構成詩では、本体である会社からの出向者と下請会社の労働者という違いはあっても、同じ労働者として団結しようと努力してきたにもかかわらず、厳然と存在する格差を前に打ちひしがれる同盟員や仲間たちの姿が描かれていた。さらに、不安定雇用が増大するなかでのぶつかりも語られた。非常勤職員の仲間が職場を辞めることになり開催された送別会では、「俺たちの不安や不満が分かっていない」という思いが正規職員に対してぶちまけられている。
多くの同盟員が、こうした報告と大きくは違わない職場のなかで働いており、改善が進むどころかますます悪化していく職場実態、表面化する職場での対立、上手くは進まない運動に徒労感も感じてきた。
だが、私たちの感じる困難さや大変さとは裏腹に、青年たちは今の職場で起きている事実の交流に楽しさを感じ、成長していることも報告された。共闘運動の中では「イヤイヤ参加しているのではないかと思ったが、雨の中でも活き活きと走る」青年の姿、組合活動どころか自分の身を守ることで精一杯という状況のなかでも、「共闘運動のなかで交流を深めていくことに意義がある」と学ぶ青年の声が報告された。
そして、合理化が進む職場のなかで不満や不安が絶えず生み出されるとともに、それぞれの働き方や条件の違い、官と民、企業の違いを超えて交流したい、こうした現状がなぜ生み出されているかを考えたい、今の職場を変えていきたいという動きにもつながっている。
保育所民営化の懇談会で意見を述べた公立保育園の仲間は、「民間の保育所が良いというより、安けりゃいいという話に聞こえて、保育士っていう職業がそんなに安く見られているのかと感じた。とっても侮しかった」と自分たちの働き方と、その扱われ方に対する憤りを語っている。同時に、そうした思いから民間の保育士がどう思っているのか聞きたい」と、交流へと向かわせていることが述べられている。
介護施設で働く同志は、結成当初に比べて激減した組合員数、忙しくなる職場と減少し続ける賃金を前に、「限界」と考えていた。しかし、職場の仲間から「組合に入ってもいい」と告げられた。そこには、働き方に報いることのない賃金や職員の努力のみを求め、サービス向上など考えてもいない経営に対する不満が存在していた。
これらは、私たちが自信や展望を失ってしまいそうになるその職.場で、生み出されてきたものに他ならない。私たちがどのように捉えていようとも、仲間たちも職場のなかで日々考え、迷いながら働き、不満や不安が蓄積されているのである。
そして、そのことを明らかにしていくためにも、班会や委員会がより重要になっていることも共通して語られた。仲間との教育のやり方をめぐってぶつかり、「もう知らん」と「分かりあいたい」という思いが交錯する毎日のなかで 「どうしていいのか分からない」と感じていた同志は、班会や委員会の討論から、やっぱり仲間と話をしていこうと変化し、悩みながらも働きやすい職場を作ろうとしてきたことが報告された。
構成詩にも描かれていた下請構造の中でのぶつかりや苦悩についても、現実に存在する「壁」の解消に困難さはあっても、そのなかで起きている事実を委員会討論に持ち込み、社会の矛盾を考え合っていくための「絶好のチャンス」であると総括されている。
このように、報告し学び合う班会、委員会討論の強化と合わせて、より広く事実を集約し学びあうために、専従者配置を進めようと考え、今大会では同盟費の値上げと専従者配置基金の創設が決定された。組織や機関紙の現状に目を移したとき、困難さや不安を感じるのも現実である。しかし、そうしたなかでも運動の展望が存在していることが数多く語られ、私たちの戦線に新たな青年が加わってきている。
学習会を通して加盟してきた同志は、「学ぶことで背景を読み取る力がついてくる、背景が見えてくることで学ぶ楽しさが増す、という気持ちと、そのことに気付いた自分を客観的に眺めることかできるようになった嬉しさ」を報告している。そして、班会を通して職場の実態とその背景をつかんでいく作業を自ら実践していることが活き活きと語られた。そのほかにも、この3日間の討論の中で学習会や『青年の声』読者会、共闘運動を通じて変化し、成長する青年たちが私たちの周りにいることがさまざまに語られていた。
進む合理化のなかで、運動の困難さも生み出されてきた。私たちの働き方も変えられるなかで、集まり討論することができない、そんな気分にならないという状態も生み出され、私たちの組織活動も停滞してきた。
しかし私たちはこの3日間の討論で、誰もが苦悩し不満や不安を蓄積させていること、私たちも仲間も遠くに位置しているわけではないこと、そして、そこに私たちの運動の展望が存在していることを確認しあった。この3日間の討論で得た手応えを胸に、職場で積み重ねられる苦悩や苦労、そこから生み出される仲間たちの声に依拠し、学び、闘い、組織していく実践を強化していこう。
班・委員会活動の再建・強化を進め、職場の事実を集約し、学習し、討論し、学び合おう。職場や地域においても『青年の声』読者会や学習会など、青年とともに学び成長し合う場を組織しよう。こうした実践を通した組織建設をともに進めていくことを誓い合おう。
全同盟員が「科学的社会主義を学び、闘い、組織する」を活動の基本に据え、さらに古典・資本・仲間に学ぶ社青同を作り上げていこう。貪欲に学習し、精力的に交流に踏み出し、大胆に青年を組織していこう。
右、宣言する。
2006年10月15日
日本社会主義青年同盟
第31回定期全国大会