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党問題に関する決議
*社会党解体という情況の中で、社青同が党問題に関して現状では支持政党なしという見解を打ち出した重要決議。出典は『青年の声』第1762号(1997年6月9日)
 社青同中央委員会は一連の党問題を考えるにあたり、この二年間に『進路二十三集』(九五年九月)と『今日の党問題と社青同』(九六年八月)を発行し、全同盟員による総括・討論を深めてきた。
 この間の組織的な討論をふまえ、第二十六回定期全国大会において、今日の党問題に関する社青同の基本認識を決議する。
情勢認識と基本的な態度
 日本社会党は、第六十四回全国大会において、これまでの綱領・規約等を変更し、党名も社会民主党に改めた。これに反対する立場から新社会党が結成された(九六年三月)。さらに「民主・リベラル結集」を柱として民主党が結成された。(九六年九月)。
 党が三つに・分裂するなかで闘われた総選挙は、自民党が議席を回復する一方、旧社会党勢力は大きく後退し、歴史的な敗北を喫した。
 社会党が分裂・解体状況に至った背景には、労働運動全体の停滞がある。それは、二十年来に及ぶ資本の合理化運動を反映したものであり、短時間に生じたものではない。そして私たち同盟員も、長らくこの渦中にあって、ぶつかり・苦悩させられてきた。
  したがって今日の党問題は、「党所属をどうするか」という選択のみに留まる問題ではない。階級闘争全体の問題であり、基本的には「反合理化闘争」を軸として、労働運動強化の展望を明らかにする作業と一体である。それは、職場・地区で社青同自身につきつけられている課題と同質のものであり、党問題は「私たち自身の問題」である。
 歴史発展の原動力となってきた階級闘争は、「社会主義世界体制の崩壊」や「五五年体制の崩壊」など、その対立軸が不鮮明になり、混迷している。職場段階では「生き残り」をかけた労働者間の競争が激しさを増し、「団結して資本と闘う」という労働者の意識も希薄にさせられている。
 こうした状態の下で、労働組台強化の方向性や展望、意欲や自信が揺らぎ、市民運動や「制度・政策」に過大な期待を抱く要素が、労働運動内部からも生まれてきた。
 この現状は、本質的には資本の体制的合理化をめぐる攻防の中でもたらされたものである。そこには、七〇年代半ばの「不況」を契機として、「企業存亡の危機」を説き、労働者階級(労働組合)を「合理化協力」に取り込み、動員してきた独占資本の支配がある。
 特に八〇年代に入り全面展開される技術革新合理化(ME技術の生産現場への採用)と資本の海外展開(アジア生産)の進行は、職場環境の変化を伴いながら、・全社的な競争状態を加速。「生存の不安定性の増大」がもたらされる一方、労働運動の明確な指針が問われるなかで、多くの労働者が「企業防衛」の渦に巻きこまれ、分散させられる状態がつくられてきた。
 今日ではこの延長線上で、行財政改革や規制緩和が言われ、社会的な「例外」や「聖域」を排除するという攻撃性をもって資本の合理化攻撃が展開されている。
 だが、際限のない合理化の進行は、今日、「いくら努力しても一向に報われない」という客観的な事実、激しい競争から脱しようとすれば、その先に実現されるのは、より激しさを増した競争でしかない−−という社会の現実を広範囲に生みだしている。そして多くの労働者が、この矛盾に直面させられ、以前にも増して「不公平感」を募らせ、様々な疑問を抱くようになっている。
 私たちは、この間の「生命と権利の闘い」(総括)を通じ、直接に発せられている青年の不満や反発が、合理化の矛盾の中で作り出されたものであり、そこには、労働者の本能ともいうべき「団結」に向おうとする力が存在していることを学んできた。
 そして試行錯誤を余儀なくされなからも、仲間の自発性や積極性を引き出すなかで、労働運動に期待を寄せる「青年の姿」も掴んできている。
 競争が支配するなかで、これらの声が企業内に押し込められ分散させられているだけに、様々に発せられる労働者の不満を大切にし、企業の枠を超えつなぎあい、その原因を明らかにしていく努力が私たちに問われている。この自覚と運動の広がりのなかで、私たちは党・労働運動強化の展望を検証することができる。
 今日の情勢認識と党問題に関し、社青同は基本的に以下の認識に立つ。
 @今日の社会環境を規定している軸は、依然として合理化運動をめぐる資本家階級と労働者階級の対抗関係である。社会・歴史を発展させる原動力は組織された労働者階級の力であり、労働者こそ社会の主人公である。
 A社青同綱領が作成された七〇年代前後と現在の情勢は大きく変化している。そしてこの過程のなかで、私たち社青同も多くの弱さ、不十分さを抱えていることも自覚・反省させられてきた。
 しかし、社青同綱領に貫かれている基本的な立場・精神には、微塵の「古さ」もないと確信する。変化する情勢を的確に把握し、適応していく能力が要請されているが、青年同盟として科学的社会主義を学ぶ立場は不動である。
 B社会主義革命の達成のためには、科学的社会主義に基づく党の存在と指導が不可欠であるが、今日の情勢では、そうした党が一朝一夕に建設されることはあり得ない。
 しかし、広範な労働者・勤労国民の利益に立脚し、独占資本の支配に対する労働者党の再生・統一は、情勢からも要請されている。そのためにも、社青同は生命と権利の闘いを軸に、大衆闘争路線を同盟員全体のものとし、広範な青年労働物と結び付くための努力を傾注する。
政党と社青同の関係について
 社青同は、科学的社会主義を学び実践する立場から、「反独占・社会主義の戦略をもって、労働者階級を中心とする勤労諸階層の先頭に立ってたたかっている日本社会党を支持」(社青同綱領)し、その結成以来、社会党との有機的な関係を維持してきた。
 しかし、社会党が分裂・解体状態に至ったなかで社青同と社会党との関係はおのずと喪失させられた現状にある。
 今日、旧社会党は三つの党に分裂している。
 この事態のなかで私たちは、この間、党と青年同盟の組織的関係など、その対応にむけた検討・判断が問われてきたが、現状の認識としては、@これまで社青同が日本社会党との間で支持・協力関係を構築ししてきた根拠・条件は、残念ながら存在しない。
 Aしたがって社青同が組織として、責任を持って一つの政党への支持を表明し、組織的・有機的な協力関係を結ぶことは、現段階ではありえないと判断する。
 この判断は、社青同綱領の立場・精神に基づくものである。
 社青同が過渡的な期間にせよ、政党との有続的な関係を持ちえない状態は、青年同盟にとっては大きな損失である。かつて経験したことのない事態のなかで、多くの困難や苦悩も想定される。
 青年同盟としての存在位置や存在意義も問われかねない情勢にある。しかし、私たちの好むと好まざるに関わらず、そうした時期に立たされた以上、これまで以上に社青同の主体性・自立性を強め、全同盟貝の献身性をもって組織を維持する努力が求められている。
 私たちの『主体性』とは、周囲の情勢や様々な運動に積極的に適応しようとする能力である。階級及び階級闘争(=唯物史観、マルクス経済学)の立場で、常に現実の運動を検証し、階級的な労働者の団結を育てあげる態度である。『自立性』とは、このなかで自らが学び成長しようとする努力であり、現存する運動や政治課題から召換する態度とは無縁である。
 したがって社青同が、組織として個別の党との支持・協力関係を持ちえないとしても、共通する個々の課題においては連帯・協力し、立場や首長を異にする場合には、責任を持って批判、意見を述べていくことは当然である。
 少なくとも旧社会党の流れを汲んだ党は、労働者階級を支持基盤としている。大小はあっても、その周辺に青年労働者や活動家が存在している限り、社青同同盟員がそのなかで、あるいはその周辺で、「階級闘争を学び、闘い、組織する」ことも当然である。
 今日の党の現状のなかで、当然にも同盟員個々の党所属は異なってくる。地域の歴史的・運動的な条件の違いもふまえれば、各地本・支部段階で運動上の比重や社青同組織の対応が異なるのも自然である。
 この相違を超え、全国社青同としての存在と機能を維持していくためには「生命と権利」の視点を軸として、その共通した内容を「報告し、集約し、学びあう」ための意識性と自覚が、これまで以上に求められている。
 党の再生・統一の柱は労働運動の強化であり、企業を超えた労働者の連帯である。そのためにも私たちは、旧社会党運動のなかで培われてきた人々とのつながりを大切にし、職場・地域での様々な運動に結びつき、自らの信頼をも勝ち取る努力を追求しなければならない。
 社青同は、この間、青年運動において三者共闘運動(社会党、労働組合、社青同) を追求し、多くの成果を得てきた。この運動形態(正確な意味での三者共闘運動)は、今日の党の現状のなかで構築できなくなっている。
 しかし、企業を超えた連帯と政治闘争との結び付き(労働運動と社会主義運動の融合)が問われている以上、労組青年部運動を軸に、可能な限り旧社会党の周辺に存在する闘いや組織(政党)と連携し、共闘運動を構築する。
 こうした実践的な努力のなかで、私たち社青同は、党が労働者階級を真に代表する組織として、法則通りに統一されていくと、確信する。「プロレタリアは階級へ、したがってまた政党へ組織されるが、それは労働者自身のあいだの競争によって、常にくりかえし破壊される。しかし、この組織はそのたびに復活し、次第に、固く、優勢になる」(マルクス、エンゲルス『共産党宣言』)。
 私たちは現段階で、この具体的な姿を予見することはできないが、そうした時期に至った際は、一つの政党への支持を公然と表明し、青年同盟と党との組織的・有機的な関係を積極的に構築する。
 右、決議する。
 一九九七年五月二十五日
日本社会主義青年同盟
 第二十六回定期全国大会
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