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党改革委員会の経過と問題点(後半)、協会改革の「合意確認書」
3 協会員の名簿提出について
  党改革委員会の決定により、協会改革問題について、それぞれ具体的提案をおこなった曾我委員、山本委員の再三にわたる折しょうにもかかわらず、名簿提出問題にたいする両者の見解にはかなりのひらきがありました。

 曾我案は、@協会は各級党役員、各級議員で協会に所属するものの名簿をすみやかに党へ提出する。Aその他の協会所属の党員名簿は、総評、協会合意確認によって開かれる協会改革のための公開大会(来 年二月末まで)までに提出する(A案)。また党との関係のある党外の理論政策集団にたいし、党が党員管理の必要上、それぞれ党員名簿の提出を求める。そのなかに協会も当然ふくまれる(B案)。A案、B案の選択は山本委員にまかせる、というものでした。
 これにたいし山本委員は、新入党員または党員再登録の場合は、所属団体欄に協会名をあきらかにすることはやむをえない、とするものでした。

 曾我案を中心に協会から名簿提出をもとめる改革委員の主な見解は @協会検討委員会における保証にとって欠くことができない、A協会の秘密性、閉鎖性をといて公開の原則を確立するなによりのうらづけである。B厳重に保管すれば、外部にもれることはなく、そのためとくに実害をうけることはない、C協会は約七割が党員であり、党強化のために貢献しているというマルクス・レーニン主義者集団であるという特殊な団体であり、党や労組に混乱を与えているものであり、これを一般の党と大衆団体の関係におきかえることは出来ない、とするものでありました。

 山本案を中心に協会党員の名簿は、あくまでも党員組織管理の問題として自主申告によるべきものであるとの改革委員の主な見解は、@憲法にもとづく個人の権利、義務にかかわるものであり、自主申告が原則である。A「理論研究団体を逸脱した」ということだけで規約一統制委員会・大会などの決定にもとづかないで「保護監察」のような処分を検討委員会がおこなうことは党員の権利・義務にたいする不当な制約である。B不利益な実害をうける。C厳重に保管しても外部にもれる危険性があり、また協会検討委員会の作業には差しつかえない、とするものでありました。

 この両案をめぐって、改革委員会は七回、長時間にわたる真剣な討議を続けました。
 この過程で多賀谷案(各級役員、各級議員には、党が指示して所属団体名を照合する)、角屋案(曾我案とほぼ同じ。但し協会名簿を協会検討委員会が閲覧する。)村山案(党が党員管理の立場から自主申告させる)等がだされ、一致点を見出すよう懸命の努力がなされました。これらのゆきづまりを打開するため、石橋書記長は九月二十四日、佐藤協会事務局長と会い、協会側の協力を求めました。

 その結果、協会は多賀谷案が限度であり、それには協力するが、一般党員については協力できない、とのことであり、かくて名簿問題については最終的に合意をうることができなかったのであります。
 名簿問題はこんご引き続き検討し、納得のえられる合理的な方法によって解決し、協会改革の保証、検討委員会の機能が充足されるよう努力しなければなりません。

4 役職員の辞任について
 曾我案は、@協会員は自主的に党の役職員を辞任する(ただし「協会検討委員会」が協会を理論集団に徹したと認めるまでの期間)、A協会問題によって不正常な状態にある県本部にたいしては、党中央の指導により正常化する、というものでした。
 この問題については、@項は一般的倫理規定であり、党の各級役員は、協会または党内グループから脱会する、ということで合意をうるべく努力しましたが、最終的には、党内グループと協会とのちがい、および@項の倫理規定で満場一致の決定がえられませんでした。

 しかしA項については事実上、現に協会問題等によって不正常になっている県本部については、自主的正常化への努力をうながすとともに中央本部指導によって正常にもどす、ということで合意がえられているので、もしそういう実態があるとすれば、新執行部の手によって指導し解決されるよう期待するものであります。



附2:協会改革の「合意確認書」

総評・社会主義協会調印

日本労働組合総評議会議長=社会主義協会代表

一九七七年九月一〇日


合意確認事項
T 協会の組織機構・運営について
(1)「社会主義協会テーゼ」は、理論研究集団(いわゆる研究会)の「研究綱領」にふさわしいものに改廃する。

  (改廃の視点)
@ 協会の性格・任務……「科学的社会主義者、すなわちマルクス・レーニン主義者の集団である」を「科学的社会主義、すなわち、マルクス・レーニン主義を研究する集団である」ことを明らかにする。

  (それを基本とする改正)
A「「社会主義協会テーゼ」学習のために」は廃止または全面的に書きかえる。
B 第二部「労働組合運動と統一戦線」は廃止する。

(2) 決議機関(全国大会‐中央委員会−支局大会―都道府県支部大会)及び活動方針は廃止する。
 役員の選出、研究方針(計画)や予算の決定、規約改正などは、支局、支部代表による「総会」(仮称)をもって行う。
 また、研究の成果の発表、討議、交流などのため「研究集会」(仮称)を企画する。

(3) 執行機関(中央常任委員会)は、「研究運営委員会」(仮称)の性格に改組する。したがって、組織部(オルグ)、労働、政治、青年グループなどは廃止し、理論研究の運営に必要な代表、事務局長、次長等の役員と、理論部門、学習部門、編集部門等とする。

(4) 公開の原則を確立する。
 協会の開催する諸会議及び各種出版物、文書類は、社会党員及び党を支持する労働者に対しては原則として公開とする。各種出版物、会合通知など、協会の発刊文書は、社会党、総評及び「協会検討委員会」(仮称)へ送付する。但し、単なる事務連絡文書等はこの限りでない。

(5) 機関誌類及び協会ニュース等のあり方
 すべて理論研究誌・紙の域を逸脱しない編集内容に限定する。いわんや社会党を支持している特定の労働組合や大衆団体及び特定個人を名指しで、ひぼう(誹謗)中傷あるいは悪意にみちた攻撃にあたる執筆、編集は厳に慎む。
 尚「進路」は廃止する。

(6)活動の範囲
 協会の活動は、その性格からして、理論研究とその成果の提言にとどめ、党や労働組合の主体性を尊重し、いやしくも介入、干渉にわたる活動はいっさい行わない。
 協会員である党員及び労組員は、どこまでもそれぞれの機関の決定に従って活動し、党及び労組の決定と協会の提言とが異った場合は党及び労組の決定を優先させる。また、協会は役員人事等には関与しない。

U 今後の改革手続と保証について
(1) 協会は、一九七七年末(遅くとも一九七八年二月末)までに、全国大会(公開)をひらいて、この合意確認を批准し、これにもとづく所要の改革を完了する。

(2)総評は、協会が純粋な理論研究集団として健全な活動がなされることを保証するため、当分の間、社会党本部内に「社会主義協会検討委員会」(仮称)を設置するよう党中央執行委員会に要請する。

  「検討委員会」の構成・任務は、
@ 党中央執行委員会の責任において設置する委員会であるが、その構成員には総評(党を支持する労働組合)代表及び協会代表の参加を希望する。
A 検討委員会は、党及び労働組合、大衆団体の内部から協会の活動に関して問題提起がなされた場合は、速かに実情を調査し、中央執行委員会に報告し適切な措置をとる。
 協会は、「検討委員会」の活動が円滑に行われるよう積極的に協力する。
 総評、協会は、以上の合意確認が相互の誠意と協力によって完全に履行され、社会党、総評、協会の協力関係が確立されるよう努力することを誓約する。

   一九七七年九月一〇日
             総評党員協議会代表幹事(総評議長)
                            槇枝元文 
             社会主義協会代表
                            向坂逸郎

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