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第四回党大会運動方針(後半)
 
第四 革命の方式
 
 一、わが党は、その綱領において「民主主義体制の確立」と「社会主義の断行」と「恒久平和の実現」を期している。しかし、これらをいかにして達成するのか、党の個々の政策はその綱領と如何なる開運があるのか、即ち革命の方式についてはなお明確を欠くものがあった。
 
 二、ここにおいて、まずわれわれの信条とする平和革命とは何かを明らかにする必要がある。
 
 (イ)われわれの社会主義革命の遂行は、あくまでも民主的手段によらなければならない
  即ちわれわれの革命は二重政権主義に表象せられる暴力革命、独裁方式などによらず、国の最高意思の決定機関である国会を通じてこれを行う。
 
 (ロ)資本主義から社会主義への社会革命は政治的革命に集約されるものであって、わが党はかかる政治的革命の達成を目標とする
  けれどもこの目標への到達には、これに結合する経済、社会、生活、文化などの各面にわたり、建設的な過程を伴わなければならない。だから社会革命は客観的並に主体的条件の整うに応じて、合理的に進展させなければならない。
 
 (ハ)だが、このことはわれわれの政策を次から次へと遂行し、その一つ一つを積み重ねて行けばおのずから革命が遂行されることをも意味するものでない。即ちわれわれの掲げる政策と勤労大衆の組織化を通じて広範な大衆の支持の下に政治権力を掌握すること、更にその敬治権力が持続的安定をかち得てこそ、こゝにはじめて社会主義の建設がなされるのである。
 
 三、次にわれわれが平和革命を主張する根拠を明かにせねばならぬ。
 
 イ、まずわれわれは人間生活にとって最高の権利たる生命の維持と自由の確保を要求し、この保障の上に真実の社会的発展のあることを認める。この故に平和革命を主張し武力や暴力にもとずく革命に反対する。そしてこのことによって何よりも確実に国民多数の納得と協力を得ることが出未るのである。
 
 ロ、日本においては資本主義が高度に発達しているという意味において民主主義の経済的基盤があるということができる。これと共に立ちおくれた半封建的要素を内包したまゝに変則的に発展したという意味においてやゝもすればファッショ的革命への危険も含んでいる。従って勤労大衆の民主主義革命の徹底の闘争は必然に社会主義実現の欲求に転換し、そのための条件の整うに応じて社会主義革命の遂行は民主的に達成することが出来る。
 
 ハ、領土を失い、資源に乏しく、人口の過剰に苦しみ、貿易は制限され、しかも生産力が著しく低下している窮乏せる日本では、破壊的暴力革命は、国民経済と国民生活の破綻を意味し、社会主義社会の基盤を自ら失うこととなる。
 
 四、社会主義革命の担当者は労働階級を中核とする勤労大衆でなければならぬことはいうまでもない。殊に、戦争による生産力の破壊と、昂進するインフレーションのために、窮乏化した勤労大衆は、明らかに社会主義社会の実現がその解放の道であることを自覚して来た。
 だがわれわれは今なお強固な保守反動の勢力を過小評価してはならないし、又現在の勤労大衆の主導力を過大評価してもならない。
 
 五、また、敗戦日本においては階級的観念以外に、祖国の独立と再建を希う熱烈な民族意識や愛国心が高まり、また、ヒューマニズムに立つ人格の尊厳と基本的人権の理想が浸透して社会革命の動機に道義的なものを加えようとしていることも見遁してはならない。
 
 六、われわれの主張する民主的な平和的な社会主義革命の進行は、その主体的並に客観的条件の発展に応じて、いくたの段階がなければならない。また、民主主義革命の徹底と社会主義革命との結びつき、経済面における国有化、社会化、或いは計画経済化の進行、各種の協同組合の拡大発展などと社会主義革命との関連、更に、労農組合などの民主的大衆組織の役割など、社会主義革命の平和的方式において明確に打ちだされなければならない。
 
 七、平和革命の方式は、社会革命を中央における政権の獲得に限定せず、あまねく、国民生活の諸地域、諸機能に推し及ぼすところに、その特質がある。そしてここでもまた、社会革命と民主革命とは内面的な連けいをもっている。すなわち、これは社会革命を中央政府にならんで、地方自治体において、政治の面とならんで経済の面において推し進めなければならない。
 
 八、さらに、平和方式における社会主義革命の進展によって絶対に必要なことは、精神部面における社会主義思想の浸透である。社会主義思想が広く勤労大衆の全体の確信とならないでは、社会主義革命の平和的実現は望み難いからだ。このための社会主義政策の研究と社会主義思想の普及とは、進歩的な知識階級にまたなければならぬ。
 
 九、政治権力の掌握やその維持安定は、それ故に単に、絶対過半数を国会に於て獲得し、単独内閣を作りさえすればよいといったような生やさしいものではない。要は社会主義的政策の実績を浸透の基盤の上に勤労大衆の圧倒的な支持が可能となる事であって、そのためには不断の努力と果敢な日常闘争によって裏付けられ、勤労大衆の強大な組織の上に立っていなければならない。
 かくして、掌握せられた政治権力が、民族的に持続安定せられることによって社会主義の建設が可能となるのである。
 
 一〇、以上社会党の平和革命方式を述べたが、それはブルジョア的中道政治の改良方式と本質的に類を異にする。というのは、民主党の資本家的な修正資本主義にしろ、国協党の小市民的な協同主義にしろ、いずれも資本主義の部分的な欠陥を攻撃するが、資本主義そのものはこれを否定せず、むしろこれらの欠陥を改めることによって、その本質を維持温存しようとするからだ。かくて中道政党の改良方式と社会党の革命方式とは、その平和的、民主的な形を同じくし、資本主義の予盾と欠陥の指摘において若干の共通点を有するかに見えるが、資本主義の変革にたいする根本的態度においては本質的に全く異るのである。
 
 一一、社会党は、もちろん、共産党とも本質を異にしている。即ちいかなる場合といえども共産党は国の最高意志の決議機関である国会を民主化し、これを通じて民主的方法によって革命を遂行しようとするわれわれの立場と異り、国会外に別個の権力を作り上げ、このいわゆる二重政権主義に基く非民主的な強力革命をとるものであり、わが党との間に一点の共通点もない。
 
 一二、しかもこうしたかれらの革命方式は人民民主政権の樹立を前提として国営人民管理思想から地域人民闘争、職域闘争と日常闘争の一切を貫いて混乱と破壊の中にその可能性を発見しようとしている。かれらは、実に、われわれによって極めて民主的方法による革命支持の客観的組織として重要なる労働組合をも単なる共産党の動員組織たらしめようとする。
 かくして、組織、機構、人事一切にわたるかれら独特の非民主的なやり方に言及しなくとも社会党が共産党と根本的に異ることは自明であり、社共合同はもちろん、民主人民戦線の如きも共産党がその革命方式を明らかにした今日もとより問題にならない。
 
第五 党の性格と任務
 
 一、わが党が社会民主主義の政党として、民主主義を通じて社会主義革命を遂行することを歴史的使命とし、これを実現するためには、党のよって立つ社会的基盤と組織的、行動的性格を明確に意識し、これを強化発展せしめなければならない。
 
 二、わが党は労働階級を中核とする農民、中小企業者並に知識層などの広汎な勤労大衆の民主的組織体たる政党である。
 
 三、わが党は一般的勤労者の広汎な基盤の上に立つが、社会主義は客観的には資本主義の歴史的な発展を前提とするものであり、近代工業生産力の増大と、殊に、そのうちに、きたえられた近代労働階級の客観的、主観的成熟によって、それが真の担当者となるときにのみ実現されるものであるから、この意味において、わが党が階級的政党であり、労働者政党であるということは当然である
 
 しかしながら、階級政党を単一階級の、そのうちでも、労働者階級のみの政党をさす意味においての階級政党ではない。この点でわが党は「労働階級の組織せられた前衛隊」「労働階級の階級組織の最高形態」をもって任ずる共産党と異っている。即ち共産党はあくまで、単一の階級、プロレタリアートの党であって、しばしば大衆の党、人民の党といっている場合にも、それは日常活動における闘争形態にすぎぬのであってその本質はあくまでもプロレタリアの階級政党なのである。
 
 四、わが党は民主的な大衆政党である。わが党は、あまねく動労国民大衆の前に開放され、すべて党員は、平等の資格で党を構成する。そこには、制度上、組織上、如何なる階級のヘゲモニーも存せず、また許さるべきでもない。と同時に、民主的な党内にあって、労働階級に対して資本主義発展の現段階に照応する中核的な地位と主導的な役割とが承認され、期待さるべきであることも前項の通りである。
 
 五、この期待に沿って、労働階級が勤労大衆の中で中核的な地位と主導的な役割を民主的に獲得し確保するがためには、何よりもまず、大衆の信頼と推服を受けることが必要である。このことはわが党が絶対多数の獲得を志し、労働階級の右に横たわっている広い領野を耕して行こうとする場合、とくに重視されねばならぬ。
 したがってこの要望に応える点からも、労働階級は、社会革命の推進力であるという、世界的使命に不動の確信をもち、機械的行動によって、みずからを孤立化しないように弾力性ある行動をなす必要がある。わけても党内における労働階級の主導性は、独裁的な特権としてではなく、民主的な附託として党内外に確立されねばならない。
 
 六、またわが党は、全国民を包容する意昧での国民政党ではなく、いわんや、ブルジョア政党の考えているような国粋的な要素をもつ国民政党ではむろんない。ブルジョア政党の根本的には少数の資本家、地主その他の特権階級の利益を代表する反動的な階級政党でありながら、新しい日本において国民政党を名乗るのは欺瞞も甚しい。これに反してわが党こそ国民の大部分を占める勤労大衆を基盤としている、しかもこの勤労大衆のみが新日本建設の任務を荷っているのだが、この意味において国民大衆の利益と意欲を代表することのできる真実の国民政党と称しうるのである。
 
 七、再建される社会党は勤労大衆の行動的政党でなければならぬ。わが党の最大の欠陥は議会政党、議員政党、選挙政党に堕し、院外大衆と共に活発に日常闘争を展開し、かれらを掴むことを怠った点にある。更に理論的とりわけ革命に関する理論の欠如も亦看過することができないであろう。
 
八、行動の党として大切なことは、まず第一に党の指導精神の一体化である。というのは指導精神上における対立抗争は行動上における対立抗争を生み、またかゝる党からは、強力果敢な行動を求めえないからだ。同時に、社会民主主義の党であるわが党は、党内においても亦、民主制の確立を期し、公開と、自由と、責任とをその建前とする。その点において、わが党は秘密と独裁と絶対服従とを原則とする共産党とはまさに対蹠的である。
 
 九、第二に、わが党は行動の党たるがため、その日常闘争の場において地方組織を強化し、その活動を敏活化しなければならぬ。この点に関し、わが党は在来忘却されがちであった地方自治体、教育委員会等における党活動にたいして、積極的な関心と努力を払うべきである。そのさい、われわれは地方祖織に責任ある自主的活動の範囲を明確にするとともに、一貫したそして不断の中央からの指導を与えることによって、中央、地方の連絡を緊密にし、民主的統制を強化し、もって党の一体化と末端組織における闘争の推進を図らねばならぬ。
 
 一〇、第三に、わが党は行動の党として、勤労者の諸団体、わけても労農組合と緊密な連携を保たねばならぬ。というのは、われわれの重視する大衆的日常闘争の担当者は、党を支持する勤労者の団体だからである。この点において、全労会議に結集した民主的労働組合が、わが党の再建に異常な関心と協力をよせ、進んで大量の入党を見つゝあることを重視せねばならぬ。
 再建の推進力としてこれを迎え入れることは、わが党にとって社会主義政権としての画期的な発展を約束するであろう。
 
  一一、第四に、わが党は、単に日常闘争においてのみならず、一般政治闘争においても、真実に民主的な諸政党ならびに諸団体と提携して、金融資本家、大産業資本家、ヤミ利得者、上層官僚、残存地主等を基盤とする保守反動勢力にあたらねばならぬ。
 即ち、わが党は、民主的な労働組合や、農民組合の戦線統一を推進し、これと密接に協力することが重要であるばかりでなく、共産党との間に明確な一線を布いた場合の労働者農民党、社会主義政党結成促進協議会その他の良主的諸団体とも提携して一大共同闘争を展開しなければならない。
 
  一二、かような連携と共同闘争とは、祖国の再建と、勤労大衆の生活擁護をめざすものであって、かりそめにも他党を切り崩したり、他団体を隷属化したりするような隠匿された意図をもつものでは断じてない。すなわち、各団体は相互に自主性を尊重するとともに、友愛と信義をもって協力するのである。この場合、わが党によって、特に必要な労農団体との連携の正常的な形態は、組合が党の道具となることでもなければ、党が組合の手兵となることでもなく、両者がそれぞれ独自の領域において、その自主性を保ちつつ、有機的に協力するところの、いわゆる支持協力関係に求めるべきである。
 
第六 当面の方針に対する基調
 
 一、以上の根本的見解に則って、われわれは、当面、いかなる方針、政策をとるべきであろうか、それは、何よりも日本の民主主義的な再建と民族独立に関する一般的な政策と、それとの関連において、勤労大衆の立場を守る方針を確立し、それを最も効果的に実践することである。
 
 二、われわれは従来すでに生産、流通、財産、労働、農民、行政その他各般の諸政策については、それぞれ他に提案が行われている。ここではその中の最も重要な点について述べれば、当面最も中心的な政策は、勤労大衆の立場から経済九原則を推進し、インフレーション処理方策を断行することにある。経済九原則に対する具体的方針についても別に対策が提案されている。この点に関する問題は、これを日本経済の再建−五ケ年計画の遂行−の過程に織り込み、日本経済の積極的な拡大再生産の過程において、民主的な立場から、実行することでなければならない。そして、保守政党や金融資本家の欲するように、これを利用して、勤労大衆のみに犠牲を負わせるような安易な整理恐慌招来政策と断じて闘わねばならないのである。
 
 三、第二に、これとも開連して、われわれは外資導入に対する、民主的政策を確立しなければならない。われわれは外資問題において、共産党と異って、外資を期待する。もちろん、それに伴う制約はできるだけ緩和、軽減しなければならないが、しかし、一般的に日本経済の今日の発展段階と、そのもとにおける動労大衆の成長とは、外資導入を日本の自主的安定と再建に十分に活用しうるものと確信する。
 ただ、問題は、いかに、これを合理的、かつ民主的に使うかにある。この点で、保守政党がこれを反動的に、かれらの利益のために使おうとする政策に対して、反対する立場よりわれわれの具体案を至急作成しなければならない。
 
 四、労働階級の生活の防衛、地位の安定は、根本的には、組合の強化、発展にまたねばならないが、賃金政策を確立すること、天下り的な首切り政策を排除すること、労働組合の発展を阻止する反動的措置を排除することなども極めて重要である。
 
 五、労働組合運動に関しては、民主的な労働組合の急速なる発展を期待する。その点で、党は従来とは異って、ますます積極的に、組合の民主化運動の推進、民主的な組合の発展を支援し、それによって労働組合戦線の統一強化の基礎を作ると共に、その速かなる実現をはからなければならない。
 
 六、農民政策については、土地改革の合理的な徹底、税金闘争の重要なことはいうまでもないが、当面の日本農業に対し、生産、流通価格組織などにわたり、広汎なる発展方策を確立することは、最も根本的であろう。日本の農業はいまや、この特殊な資本主義下にあって、勤労する小農業として、きわめて困難な立場に立たされている。そうした情勢の下において日本の農民大衆はいかなる立場におかれるか、農民はいかに分化し、再編成されるかについて、一応の見透しをつけると共に、何よりも勤労農民の利益を擁護しつゝそのイニシアティヴのもとに、新しい農業の発展を実現しなければならない。われわれは、そうした基本線の上に、農業政策と、農民運動の方針を急速に確立する必要がある。とくに農業団体十六原則に照合して農民の経済的、政治的団結権の強化をはからねばならない。
 
 七、中小企業については、その業種と経営状態に即して、それぞれに対策を必要とするが、それが新しい日本経済のうちにおいて演ずる役割の重大なのに鑑み、その立場を守るよう合理化することが必要であり、原則的には協同組合化によって、能率的な近代的事業に再編成することが、最も根本的な問題でなければならない。
 
 八、わが党は、生活協同組合運動に対し直接には勤労大衆の生活安定と実質賃金の拡充、更にこれを基調として経済民主化と協同化を推進するために、積極的に協力をつゝ゛けている。わが党は更にこの運動の確立のために闘わなければならない。
 
 九、更に、勤労大衆、ことに農業、中小企業においては、悪税の問題、金融の問題、価格の問題、統制の問題などが、ますます重要性を加えている。それに対して、十分その利益を代表して生活、経営を安定、発展させうる方針を確立しなければならないが、この点においてわれわれのインフレーション処理方策は、根本的な対策を指している。
 
 一〇、また、地方においては、特有の経済的、政治的な各種の問題がある、これらの地方問題を、党の地方組織を通じて大衆の立場から解決することもまた大衆政党としてのわれわれの重大な課題でなければならない。
 
 一一、講和会議の促進のための運動においては、昨年夏わが党は最初の提唱者たる光栄を担っている。今年こそ強力に国民運動を展開して、その実現を通じて民族の念願する国家の独立達成へ前進しなければならない。
 
 一二、平和の使徒としてまた、社会主義革命を裏づける文化革命の担い手としてのわが党は更にこの際とくに、党の文化政策、教育政策を強力に推進しなければならない。