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第二章 平和革命と民族独立闘争
 
18 日本の現状からみれば、日本は先進資本主義国と同じような立場において、民主的、平和的に資本主義を変革して、社会主義革命を達成すべき歴史的段階に進んでいる。
  労働者階級を中核とする広範な勤労階級層の結合体である社会党は、政治権力をその手に獲得し、窮極的にこれを安定化する。このような政治変革−革命なしには社会主義は実現されない。この革命をわれわれは、暴力や武力を用いず、民主主義的な方式で、議会に絶対多数を占めることによって遂行する。
 
19 敗戦によって生れた日本の新憲法は、主権を国民に移し、国会が国権の最高機関として、権力をその手に集中できるようになった。民主主義を抑圧する権力は排除され、政府は国会にたいして責任を負っている。枢密院ももはや存在しない。統帥権と称する特権をもち、民主主義をじゅうりんした軍部ファシストはいなくなった。官僚も自衛隊も、今日では民主主義的な国民代表の権力によって、規制される仕組みになっている。ことに行政機関にも民主的組織が活動し、教育やジャーナリズムも国体論や教育勅語の精神から解放されている。こうした制度があり、国民の訓練が行われ民主的な制度が発展したところでは、われわれは労働者の組織を中核として農民、中小経営者、婦人、青年などの組織に加えて、一般市民層、消費者の組織をも整えることによって、われわれの理想通りに平和的に革命を遂行することができる。この点においてわれわれの立場は、戦略として暴力革命を企図する日本共産党と根本的に異なる。
 
20 社会党はこうして政権をにぎり、これを安定させつつ、資本主義社会を社会主義社会に変革しなければならない。その基礎は経済の社会主義化である。われわれ日本では、独占金融資本の直接の支配下にある重要産業の公営と農業、漁業、中小零細商企業の協同組合経営と、その他の資本家的経営の利用、改造によって、この仕事を推進する。この社会革命も、民主的な社会主義政権の指導のもとに、大衆的な社会的組織力と有機的に結合して、はじめて遂行される。生産力の発展、完全雇用、生活水準の引上げ、社会保障および所得のより平等な分配などの政策をともなって、一歩一歩ふみしめながら行なわれるこの変革は漸進的であり、相当永い年月を必要とする。
  社会党は、この長期にわたる社会的変革の過程を忍耐強く指導し、遂行しうる能力をもち、訓練を経なければならない。
 
21 われわれは、さらに、敗戦後の現実として、日本が重大な制約をうけ、独立の実を失なっている事態にあることを知っている。これは日本民族にとり、どうしても解放されねばならない事態である。日本がこの事態から脱却して完全な独立を回復するためには、民族独立の闘争を必要とする。もし日本の資本主義が高度に発達せず、一般後進国の状態にあるならば、日本民族は一致して独立運動を展開し、その目的を達成することができる。しかしながら、日本は資本主義が高度に発達し、日本民族は資本家階級と労働者階級その他利害を異にする階級に分裂している。日本の資本家階級は独占資本に指導されて、アメリカの独占資本と結び、その政策に迎合追随して、独立闘争には極めて冷淡である。
 
  わが国の現実では、したがって日本民族の独立闘争は労働者階級、およびこれを中核とする農民、漁民、中小商工業者、知識層、その他広範な勤労大衆の国民運動として遂行されなければならない。中小資本、零細経営も生活と経営の苦しい現実から労働者階級の圧力に敏感な一面はあるが、同じ理由により民族独立の闘争に参加する司能性がある。農民漁民にいたっては、軍事基地の新設や拡張が、実際にかれらに重要な生活上の打撃を与えている。かれらが独立闘争に参加することは当然である。学生、婦人、知識層などもその立場は浮動的であるが、戦争の危機、再軍備、徴兵問題と結びついて、独立闘争に立ちあがらざるをえない。
 
  日本においては、かくして、社会主義革命を遂行すべき労働者階級を中核とする広範な勤労大衆は、必然に民族独立闘争をも担当する。われわれは、民族独立の運動をば、社会主義革命遂行のための階級闘争を中心とし、基軸として広範に推進する。階級的立場を忘れた社会主義に指導されない単なる民族闘争は、途中においてざ折するか、目標を見失って排外主義やファシズムに転落する。社会主義は、本来国際的であり、偏狭な国家主義や独善的な民族主義とは無縁である。われわれの社会主義によって導かれた民族運動のみが平和と安全と進歩をもたらす、建設的意義をもっている。
  日本における社会主義革命と民族独立は、かかる意味において、労働者階級を中核とし、
とし、広く勤労国民を代表するわが日本社会党が、政権を掌握することによって、はじめて現実に可能となる。わが党の本来の歴史的使命(社会主義革命)と重大なる任務(民族の独立)達成のため、われわれはこの二つの闘争を密接不可分のものとしてたたかいぬく。
 
22 われわれはまず民主的、平和的に、社会党の政権を樹立し、これをできるだけ安定しなければならない。われわれは平和のうちに、広範な国民運動を背景に、種々なる外交施策を講ずることにより、、完全に経済自立を達成し、領土主権を完全に回復し、日米安保条約、行政協定を解消し、あらゆる不平等条約を改定して、外交の自主性を取りもどす。またそのためには現在の国際緊張の緩和と日本を中心とする両陣営を含む安全保障体制の確立につとめなければならない。したがってわれわれの独立闘争は、日本を中心とする国際平和と安全の確立につらなるものであり、頁の独立の達成と確保とはかたくなすばれている。
  要するに、われわれの独立闘争は独自のものであり両陣営のいづれかの権力闘争の具に供せられるものであってはならない。
 
第三章 党の任務と性格
 
23わが党の本来の任務は日本資本主義発達の現段階において、その有する歴史的条件に対応し、この資本主義社会を民主的、平和的に変革し、いわゆる平和革命を遂行することによって、社会主義社会を実現することである。同時にわが党は第二次大戦後の日本をめぐる内外の情勢にかんがみて、あらたに日本の完全な独立の回復と確保という重大な任務をも担当しなければならない。
  この二つの根本的な任務を民主的、平和的に遂行することは、われわれの分析した日本の現状からくる当然の結論であるばかりでなく、われわれ本来の信条に由来するところである。われわれは社会主義実現の過程を通じ、またその後においても、言論・集会・結社・信仰・良心の自由・完全な秘密・平等・自由の選挙など民主主義をあますところなく発揚させる。これらの民主主義的自由は、社会主義においてはじめて完全に保障される。われわれは、国民の自由な批判、反対党の存在とその批判を進んで迎える。政権の帰属と移動とは、あくまでも自由に表明された国民の意志にょって決定される。
 
24 われわれは、わが党の政策が民主的諸団体をはじめ国民の圧倒的多数をしめる動労大衆の理解と支持を得ることによって、われわれの政権とその成果が漸次安定して来ることを期し、このために全力を傾注する。こうした政権と成果の安定は、わが党の政策が、選挙を通じて国民の大多数の支持を獲得することによってのみ達成される。同時に、他方において、この政府の施策を非合法的手段により妨害し制約しようとするものにたいしては、われわれは議会における正当な立法とこれを支持する民主的大衆の組織力、影響力をもって十分対処する。
 
  われわれの、この平和革命が達成される根本的条件は、わが党が日常不断に活発なる大衆の利益を擁護し伸長するための運動や闘争を発展させることによって広く勤労大衆を味方にし、国民世論の支持をうることにあるが、さらに各種の民主的、自発的諸団体を培養育成し、これらの組織と緊密な提携を有機的に強化することが決定的に重要である。このことによってはじめて、平和革命実現の基礎が築かれるとともに、民主主義の方式によって、社会主義制度が、安定的となってくる。この意味において、わが党は単なる議会主義に堕してはならない。われわれは、院外の大衆闘争、院外の民主的組織が、われわれの運動において有する重大なる意義と役割を十分に評価しなければならない。
 
25 日本の現実においては、平和革命たる社会主義のための闘争と同時に民族独立の闘争をも、われわれは担当する。そのためには、まずわが党が政権を掌握しなければならない。われわれの民族独立の闘争は社会主義革命のための闘争と表裏一体をなしている。両者は、きり離された別々のものではなく、これを密接に結びつけてたたかうことによってはじめてわれわれの目的は達成される。
 
  社会主義社会の完全な実現はもちろん、民族独立の完全なる回復もまた一日にしては成らない。われわれの断えざる日常闘争を積み重ねてゆくことによって達成される。日常闘争は毎日毎日の身辺の具体的な闘争である。その題日はわれわれの周囲に横たわっているし、日々わき上がってくる。しかし当面の段階において、これらの闘争を要約すれば、勤労大衆の生活の悪化をくいとめ、できるだけこれを引上げ、安定させるための経済、生活上のたたかいがある。日本の完全な独立を回復し、日本の平和と安全を確保するための政治外交的なたたかいもある。また支配階級の反動的な民主主義にたいする抑圧を排除し、反対にこれを拡充し、自由を擁護するための政治的なたたかいもある。これらのたたかいは直接社会主義をめざす闘争ではない。直接には民主主義を要求する民主的な闘争である。しかも、独立闘争も平和運動も、民主主義を広げ、自由を確茫するいろいろな日常闘争も大衆生活を維持向上させる大衆のせっぱつまった血の叫びや要求と結びついてはじめて現実にその根を張ることができる。
 
26 われわれは、主として三つの点に集約される大きな要求、闘争のこのような関係をまず理解しなければならない。これらの民主的な日常闘争は、根本的には、われわれの目的である。社会主義社会実現のための一つの過程における闘争である。われわれは、不断の日常闘争を常にこの目的と結びつけて把握し、それに到達する一つの段階としてたたかいぬく。すくなくとも、わが党員としてはこの認識を明かにし、大衆闘争の先頭に立って、これを指導しなければならない。これによってのみわれわれは、広範な大衆をわが党の影響下に集め、組織に組み入れるばかりでなく、労働組合、農民組合などとともに、わが党を社会主義政党として育成し、鍛錬し、完成させる。日常闘争による党の十分なる成熟は革命のための主体的な条件の整備である。
 
  他方、資本主義は、労働者階級を中心に広範な勤労大衆にたいし、安定した生活を保証することができなくなれば、その歴史的使命を終って、われわれはこれを変革することができる。今日の日本資本主義は、そのような歴史的段階である。われわれは、われわれの闘争において、時に攻勢をとり、ときに守勢に立つが、要するに上述のような情勢に対応して社会主義を遂行する。
 
27 わが党の任務の規定は、わが党の性格と構成をあきらかにする。日本社会党は民主的、平和的に社会主義革命を遂行する立場から必然に階級的大衆政党である。言いかえれば、わが党は、労働者階級を中核とし、農民・漁民・中小商工業者・知識層・その他国民の大多数を組織する勤労者階層の結合体である。
 
  わが党が労働者階級を中核とすることは、社会主義が本来、労働者階級の歴史的使命である当然の結果であるが、同時に、広く農民・漁民・中小商工業者・知識層その他国民の大多数も、資本主義によって共通に苦しめられている仲間として、すべてわが党に実際に参加し得るし、またわれわれは、その参加を得て、党の十分な発展を期さなければならない。ここにわが党の階級的大衆政党たる特質がある。
  しかも民主主義を尊重するわが党では、党に参加するすべての党員は、その出身階層のいかんを問わず、党内において、平等の権利と義務とをもっている。またわが党は、日本において民主的に資本主義を変革し社会主義を建設する政党として、できるだけ多数の大衆の自発的な参加を期待して、党の目的に共嗚するすべての人々に広く門戸を開いている。
 
第四章 社会主義の目的
 
28 日本社会党はそのように、日本において社会主義の実現を目的とする政党である。われわれはこの社会主義の基本的建て前と立場に立って、つぎのように考え、広く勤労大衆に訴える。
 
29 われわれのめざすところは、民主的、平和的手段により現存する資本主義制度を変革し、社会主義社会を実現し、人間の人間による搾取をなくすため、重要な生産手段を社会化して、生産力を飛躍的に増大させ、もって大衆の生活を物質的、文化的に保障するとともにわれわれの窮極の目標である自由、平等、その他基本的人権を保障し、人間性を完全に解放する社会を実現することである。

  民主主義による社会主義の世界においては、すべての民族と国家が寛容の態度をもち、善良な隣人としてたがいに平和のうちに存在しつつ、自由、独立、平等を保証され、国による国の、民族による民族の搾取、干渉、隷従のないあたらしい国際秩序が創造される。国際紛争は平和的手段によって解決される。侵略は一つの世界の機関としての国際連合の集団保障によって防止される。かくて人類は戦争と破滅の台威から守られ、すべての国民は軍備の重圧から解放され、平和と物質的、文化的の進歩は、国連を中軸とする国際協力によって飛躍的に増進される。これこそ資本主義や共産主義がなし得ないところであり、ひとりわれわれの社会主義のみが保障する。
 
30 われわれの社会主義は、民主主義を通じてのみ達成され、民主主義は社会主義においてはじめて完全に実現される。したがって、社会主義は政権獲得の前後を問わず、言論、集会、結社、信仰、良心の自由および自由なる選挙、代議制度を真に確保するつもりであり、これらの権利は、当然に反対党にも与えられる。
  政治的民主主義の基礎は、民主主義的組織が十分に発達し、政治的民主主義を阻害せんとする勢力にたいしては議会の立法を通じ、またその組織力、影響力を通じて、これを制御しうることにある。
 
31 社会主義は人間による人間の搾取を廃し、私的利潤のためではなくて、公共の利益を中心にして遂行される。そこでは重要産業の公有化と計画経済により、生産力の発展、生活水準の引上げ、完全なる雇用および社会保障ならびに所得のより平等なる分配が実行される。
  社会主義は個人の職業の自由や、所有権の全面的な否定を意味しない。日本ではできるだけ協同化されなければならないが、農業、手工業、商業などにおける個人経営は認められる。社会主義は行政上その他の各方面にわたって官僚主義を排除する。社会主義経済のもとでは、とくに労働者と消費者とが、それぞれの機構組織を通じて、経済の諸過程に参加するよう工夫する。
 
32 社会主義は、資本主義、封建主義と異り、貧困を克服し、社会保障制度を完備して、生活の安全を実現し、自由と民主主義の旗のもとに、ゆたかな新文化を創造する。
  社会主義は、文化の画一化や天くだり式的な統制を行なわない。個性と民族の特性を発展させながら、あらたなる世界文化の創造に貢献する。
 
33社会主義は最初から国際的な運動であった。偏狭な国家主義や独善的な民族主義は社会主義とは無縁である。社会主義は当面、国際連合憲章の諸原則を平和の基礎として擁護する。
  社会主義は、民族の名において偏狭な排外主義に自国の民衆をかり立てようとしたり、民族主義を国際的な権力闘争の具に利用しようとする企てを克服する。
  社会主義は植民地をはじめ後進国域における民族独立運動にたいしては、民族の独立と人間の解放のためにこれを積極的に支持する。
  社会主義は、後進国域における極度の貧困が、文化、民主主義、平和の脅威であり、その国民生活の引上げは、政治的独立の基礎であることを確認し、その実現のためにたたかう。社会主義はまた、世界におけるいちじるしい経済的不均衡を是正するためにたたかう。
 
 
 

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