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第三部
 
 日本社会党は、広く勤労大衆の日常の利害のための闘争を集積しつつ、その
組織と有機的に結合し、その力を基礎として、民主主義的原則によって平和革
命を遂行する。この任務に耐えるためには、わが党は、団結せる党員の統一さ
れた意志をもつ強固な組織に成長し、厳格な党内規律をつくりあげねばならな
い。わが党の組織とその運営に関する原則もこのなかからみちびきだされる。
 かくして、日本社会党は、勤労大衆の利害を直接に代表する階級的大衆政党
である点において、資本家階級の支配のための道具である保守政党とその性格
を本質的に異にする。
 勤労大衆の利害に反するいかなる企てもわが党を動かすことを許さない。そ
れゆえにわが党の活動は民主的に運営されねばならぬ。
 
 労働者階級の歴史的使命のための闘争は、上部組織と下部組織との関係にお
いても、議会内と議会外の関係においても、つねに綱領に表現されたただ一つ
の党の意志によって動かされる広範にして弾力性のある日常闘争の連続であ
る。かかるたたかいは、党の強力で機動性ある組織によってのみ可能である。
 党組織の強さと機動性は、それぞれの場面で行動する個々の党員の規律の厳
守によってのみ実現される。
 
一 党の階級性堅持と党内民主主義の確立
 
 日本社会党は、社会主義政党であるという意味において、労働者階級の歴史
的使命を代表する政党であり、現実的には労働者階級を中核とする農民、独立
小経営者、知識分子、学生層など、広範な勤労大衆の階級的大衆政党である。
したがって日本社会党は、原則として、これら広範な勤労大衆の出身者にして
党の綱領と規約を認め、すすんで党の目的達成に献身せんとする明確な意識を
もつ党員によって構成される。党員は、その出身階層のいかんを問わず、等し
く党の歴史的使命の遂行に邁進するために、すべて平等な権利を有するととも
に等しい義務を負わなければならない。すべての党員は、大衆討議を通じて多
数意見に服従し、少数意見を尊重し、党の各種機関の統制にしたがい、党内規
律の維持に努めるなど、党内民主主義の鉄則を厳守しなければならない。かく
して党の階級性は堅持される。
 
二 党組織の活動分野
 
 国会はわれわれの革命のためのたたかいの場として、欠くことのできない重
要性をもつ。それゆえに党は、国会に多数を占め、その勝利を確実にするため
に、さらに地方議会にきょくりょく多数の議員をおくる。これらの選挙闘争に
党は全力を傾倒しなければならない。
 だが党は、選挙のための組織となり、議員のための政党となってはならな
い。なぜなら、第一に、わが党は保守政党のごとき少数の職業的政治家の組機
ではなく、階級的大衆政党であるから。第二に、党本来の目的は社会主義の実
現にあり、議会において絶対多数を占めることは、一つの手段にほかならない
からである。第三に、資本家階級は議会のみならず、他のいっさいの権力機構
をも掌握している。したがって、革命の段階において、彼らの手に残されたい
っさいの力を反革命に動員するおそれがあることはいうまでもない。これを先
制するには、勤労大衆のいっさいの組織が党と有機的に結びつき、その政治行
動を自分自身の意志で積極的に支持するまでに成長させなければならない。第
四に、国際政局の現状から見るなら、日本の独占資本はアメリカ帝国主義の支
持の下に強力な抵抗を試みるであろう。
 
 これらいっさいの抵抗を排除して平和革命を完遂するためには、議会外のあ
らゆる日常闘争と教育活動を通じて、勤労大衆のなかに党のゆるがざる指導を
確立しなければならない。選挙闘争の成果は、このように勤労大衆の組織的支
持によって獲得されないかぎり、一時の泡沫的な人気に終わり、持続性の乏し
い世論に左右されるにいたる。したがって、議会に絶対多数がえられたにして
も、これを革命の舞台とすることは不可能である。かくてわが党の努力は、議
会内と議会外の日常闘争を有機的に結びつけ、党の一元的指導力を確立するこ
とに集中されなければならぬ。
 
 いうまでもなく、かかる一元的、有機的な党の運営が強力に行なわれるため
には、上部組織の指導方針が敏速に末端に浸透すると同時に、党の諸任務を直
接実践する下部組織の活発な行動が必要である。またそのためには、もっぱら
下部組織の要求が正確、かつ迅速に上部組織に伝わり、それが党の統一された
意志の決定に反映しなければならぬ。
 かくして党は、民主的中央集権制の下に組機中枢の指導力を発揮し、党組織
を完全に掌握するとともに、党の基盤たる下部組織のたえざる拡大強化を通じ
て、党にあたえられた最終の目的を達成するまでに成熟することができる。
 
三 労農提携は党組織を中心に
 
 社会的地位からみて労働者階級にもっともちかく、しかも人口比率からみて
もっとも多数を占めるものは、ごく少数の保守的分子を除いた農民層である。
社会主義政党は、その目的を達成するためには、農民層のあらゆる進歩的要求
を代表することによって、これら両階級の提携を強化しなければならない。
 だが、かかる労農提携は、労働者階級と農民層のたんなる機械的な政治同盟
をつくることによって実現されるものではない。真の労農提携は、農民層のな
かにわが党が深く浸透し、それを中心に広範な農民層が動員されるところには
じめて実を結ぶのである。すなわち、わが党の根が農民層のなかにおろされ、
進歩的分子が党員として活動するにいたるばあいに、はじめて労農提携が可能
となる。もとよりわれわれは、一定の問題によって労働者階級の組織たる労働
組合と農民の組織たる農民組合とのあいだにつくられる共闘組織や、また両者
に共通な問題による広範な力ンパ闘争などを積極的に展開しなければならない
が、それらの諸闘争も、農民層内におけるわが党員の不断の積極的な活動によ
ってのみ効果をあげることができる。この点、独立小経営者、知識分子、学生
層のばあいにおいても同様である。
 
四 党と大衆団体との関係
 
 わが党は社会主義革命を、したがって社会主義政権の樹立を目的としてい
る。だが、労働組合、農民組合、独立経営者の企業組合などの大衆団体は、日
常生活における経済利益を守ることを目的としている。もちろん、わが党は大
衆の日常生活利害のためにたたかうが、しかし、かかる闘争は社会主義革命へ
の一過程として行なわれる。労働組合、農民組合、企業組合なども、生活利害
のため政治闘争もなす。だが、社会主義政党なくしては、それら諸階層の解放
は不可能である。それゆえに党として、これらの団体を構成する階層の人びと
につねに影響力をもたなければならないし、また党の成長をはかるためには、
これらの諸団体のなかにつねに一人でも多くの党員を獲得しなければならな
い。もらろん、このことによってこれら諸団体の自主性をおかすようなことが
あってはならない。
 
 党員はその所属する団体のためにもっとも果敢に闘争して大衆の信頼と支持
を受け、その精神的影響力を通じてこれらの団体の闘争を指導する。
 かくして党は、これらの諸団体との間に積極的な共同闘争を展開するととも
に、両者の闘争を調整する。
 
五 他政党との共同闘争について
 
 だが、以上のような日常生活利害のための闘争における大衆団体とわが党と
の関係は、他の政党、とくに他の社会主義を標榜する政党および政治団体との
関係と混同されてはならない。なぜなら、これらの政党はそれぞれ独自のプロ
グラムをもっているし、日常の闘争といえどもそのようなプログラムと結びつ
いている。したがって政党に関しては、恒久的な共同闘争や共同戦線はありえ
ない。それがなされるにしても、あくまでも一時的なものであり、かつ戦術的
なものである。
 わが党は、わが党の綱領のみが正しいものであり、全勤労大衆の利益を代表
する唯一のものであると確信し行動する。したがって共同闘争をなすべきか否
かは、この立場から有利になるか不利になるかという尺度によって決められる
べきである。
 
六 国際的団体との関係
 
 社会主義は、元来インターナショナルなものである。だが世界経済が分割さ
れ、しかもその間に対立がある現段階においては、社会主義革命の主体もま
た、それぞれの国における社会主義勢力とならざるをえない。この意味におい
て、われわれは国際団体との連繋強化をきわめて緊要なものとするのである
が、それとともに、われわれがいかなる団体といかに連繋するかはわれわれの
革命の利益を標準にして決められる。なかんずくわれわれの革命のためには、
戦争を回避し、平和を確保することが絶対であり、この立場からすべての国際
的連繋が決定されなければならない。
 
七 党と民族闘争組織との関係
 
 日本の現状においては、わが党の最終の目的を達成するには、民族独立と平
和のための闘争をたたかいぬくことが要求される。かくて階級的立場にたって
民族闘争を敢行すべき任務を課せられているわが党は、積極的にこの民族闘争
を担当するとともに、広く国民大衆の指導的役割を演じなければならない。
 かくして、わが党は、わが党の階級的立場にたって民族運動の中核をつく
り、その上にたって、できるだけひろいカンパを組織することが必要である。
これは、直接社会主義勢力を動員するばかりでなく、社会主義的ならざる勢力
を一人でも多く共同の陣営に同調させることができる形態であるからである。
 
八 党組織の本隊強化
 
 日本社会党は平和革命を遂行するために、まず第一に、党員にたいしてわが
党のこの目標を明確に把握することを要求する。わが党の日常闘争は、かかる
目標と党綱領の把握のうえにたつ党員の理論的武装によってはじめて強力に推
進される。第二に、党内結束と党内民主主義による規律の厳正化、あらゆる反
資本主義的階層内における党員の増加、党費納入の義務履行など、あらゆる党
組織の強化を必要とする。第三に、労働組合、農民組合、独立小経営者の企業
組合、その他の大衆的団体などにたいして、党員の努力を媒介とする指導を確
立しなければならない。第四に、各種地方自治団体、その他地方機関にたいす
る積極的な進出を必要とする。
 最後にわが党は、あらゆる選挙闘争が組織の拡大、強化という目的をもって
裏づけられていなければならないこと、またたえざる日常闘争こそは選挙闘争
における確実な勝利を保障するものであることを確認する。
 
 このように広範な、しかも強固な党員の組織と、労働組合、農民組合、その
他の勤労大衆の組織における党の有機的結合の基礎のうえに、はじめて選挙闘
争は真の効果をあげ、わが党の議会勢力の絶対多数も安定し、永続する。
 したがって、日本社会党の平和革命を実現しようとする強固な意志は、党員
がそれぞれの活動分野において、議会外の党組織を根幹とし、それを強化する
ことに献身的な努力をなすことを要求する。
 
 日本社会党が万一、かかる党の根幹の強化に力をそそがないで、たんなる選
挙政党となるなら、党組織の中心はおのずから議員となるばかりでなく、階級
的大衆政党としての資格を失うにいたるであろう。
 かくては、国会は、革命の舞台としての重要性を否定されるばかりでなく、
議員の個人プレーの場へと堕落する。議員は、議会外に基盤をもつ党組機の議
会部門として、党の規律の下に積極果敢に闘争しなければならない

 
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