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社民党宣言を堅持し社民党と生きる選択
 
全国連合常任幹事 服部良一
2020年9 月30 日提出
 
*社会民主党常任幹事(当時)服部良一氏が社民党中央常任幹事会に提出した文書。立憲民主党への合流に反対する理由が体系的に述べられている。出典は管理者所有の原本。転載にあてって服部良一氏の了解を得た。長文のため2ページに分けて掲載。   テキストPDF
 
(1)「社民党宣言」を継承するためには
(2)党内議論の進め方について
(3)社民党の再生ビジョン
 
 
はじめに
 昨年12月6日「会派代表者会議」で立憲民主党から政党合流のよびかけがあって以降、翌20年2 月22-23日の定期全国大会を経て合流の是非を巡り党内の議論が続いている。党内には、「もし立憲民主党と合流したら」と。いう仮定で立憲民主・社民両党幹事長間の協議の報告が社会新報号外として議論の材料として配布されているが、一方で党の存続や解消がかかっている重大な議論であるにも関わらず、残念ながら党を残す選択肢についてのビジョンが示されているとは言えない。しかも党内の実態は合流の賛否を巡りて様々な意見が出されており、悩み迷っている多くの党員がいることも事実である。
 従って、全国連合としては、「合流したら」という説明と同時に、「党を残す」選択肢についでもその基本的考え方を示すことが、党員の公正・活発な議論に資するものと考え、一常任幹事の立場から論点を整理し、更には将来の党のビジョンについても思いを述べることにした。
 そもそもこうした合流の議論が出てくる背景には、再三の奮起のよびかけと努力にも関わらず社民党の長期低落に歯止めがかからず、それに伴って財政面など党の運営も厳しくなり、また党員の高齢化も相まって活動量も低下傾向になり、党の再建の展望が描けていないことにある。国民・市民・有権者からも 「社会民主主義」という言葉白身が古い過去の「遺物」の如く受け止められているかも知れない。

 
 しかし一方で、まさにコロナ禍で明らかになったように競争原理と自己責任を強調する新自由主義の限界が見え、新自由主義の「破綻」や資本主義の「限界」論までが論壇に踊る時代となった。格差や貧困が広がる中で、これまでも欧米では「1%対99%」のオキュパイ運動や「民主的社会主義運動」が若者を中心に広がり、社会的公平を求める声は世界中に広がってきた。また気候危機に敏感な若者によって緊急の地球温暖化対策や地球環境との共生を求める声は大きなうねりとなってきている。客観的な情勢は日本でも「社民主義」の理念にあらためて脚光が当たってもおかしくないものであり、むしろその声を組織仕切れていない我々自身への突きつけでもあるのではないか。
 まず最初に強調しておきたいのは、「社民主義」の出番だという客観情勢と、そこに立ち向かって行く熱い思いを今こそ我々は持ちたいと思う。「社民主義」は死んではいないし、日本に「社民主義」の理念を掲げる政党が無くなってもいいのだろうか、皆様と議論したい。
 
 以下、(1)「社民党宣言」を継承するためには
    (2)党内議論の進め方について
    (3)社民党の再生ビジョン
の3点について、意見を述べる。
 
(1)「社民党宣言」を継承するためには
 立憲民主党・国民民主党や野田・岡田無所属議員グループなどの合流新党「立憲民主党」が9月15日に結党されスタートした。党内では第一野党である新立憲民主党(以下、新党)という大きなステージに入って、「社民フォーラム」という党内組織を立ち上げそこを軸に社民主義の政策の実現を図っていくという主張がなされているが、それが果たして可能なのか、しっかり見極めて行かなければならない。
 新党がめざす日本の将来についてのビジョンは、綱領や連合も含めた「共有する理念」にまとめられており、まずはこれまでの社民党の理念・政策と相違点がどこにあるのが明確にしておく必要がある。以下6点において述べる。
 
1,憲法および社民党が掲げる「平和主義」とは何か
    ー「日米同盟基軸」で政策実現は可能か?
 護憲の党、平和の党として長年活動してきた社民党にとって、新党で「平和」の中身がどう解釈され安保外交政策がどう立案されるのかは、極めて大きな問題である。
 
新党 綱領案(キ)世界の平和と繁栄への貢献
 私たちは、国際協調と専守防衛を貫き、現実的な安全保障や外交政策を推進します。
 私たちは、健全な日米同盟を軸に、アジア太平洋地域とりわけ近隣諸国をはじめとする世界の国々との連携を強化します。
 
 ここで言う「現実的な安全保障」「健全な日米同盟を軸に」とは日米安保条約を前提としたものであり、憲法の理念とは異質であることは明らかである。
 
社民党宣言には以下の通り唱っている。
 
社民党宣言
(6)世界の人々と共生する平和な日本
 国連憲章の精神、憲法の前文と9条を指針にした平和外交と非軍事・文民・民生を基本とする積極的な国際貢献で、世界の人々とともに生きる日本を目指します。核兵器の廃絶、対話による紛争予防を具体化するため、北東アジア地域の非核化と多国間の総合的な安全保障機構の創設に積極的に取り組み、「緊張のアジア」を「平和と協力のアジア」に転換します。現状、明らかに違憲状態にある自衛隊は縮小を図り、国境警備・災害救助・国際協力などの任務別組織に改編・解消して非武装の日本を目指します。また日米安保条約は、最終的に平和友好条約へと転換させ、在日米軍基地の整理・縮小・撤去を進めます。
 
 すなわち求められるのは「憲法の前文と9条を指針にした平和外交」であり、「日米安全保障条約は、最終的に平和友好条約へと転換させ、在日米軍基地の整理・縮小・撤去を進め」ることである。
 日米同盟の現状は日米地位協定の存在を含め、極めて対米従属的なものであり、アメリカの世界戦略の補完でしかない。従って当面日米地位協定の改訂を実現すると同時に、将来的には軍事同盟主軸でなく、安保条約を破棄して対等平等な平和友好条約に転換しなければならないのであって、これこそが「健全な」日米関係であり、新党の日米軍事同盟を基軸とする綱領は、社民党宣言とはもちろん憲法の理念にも反していると言わざるをえない。
 
 合流新党を語る前にそもそも立憲民主党が2017年12月に発表した綱領には「日米同盟を軸に」と書かれており、社民党は以下の様に批判をしてきた。
 
「社民党は、日米同盟の強化に反対し、日米安保条約の平和友好条約への転換を目指しています。一方、18年9月に訪米した枝野代表は、『健全な日米同盟が日本外交の基軸』であり、『日米関係のさらなる健全な発展を目指していく決意であることを約束する』と発言しており、日米安保と日米同盟の重視が既定路線となっています。(2019年3月22日全国連合発「社民党に自信と確信を持つために〜立憲民主党と社会民主党の違い〜」)
 
と社民党との違いを強調している。
 
 今回の両党間の協議では残念ながらこの点は極めてあいまいになっていると言わざるをえない。
 
○20年1月17日付「立憲民主党からの回答について」
「とりわけ、基地問題や安全保障政策等については、政権交代をめざす政党として、外交安全保障政策の一貫した立場を堅持することに留意する必要があり、慎重な検討が求められる。」
○6月23 日「立憲・社民両党幹事長の協議について」
「立憲民主党綱領をベースとして検証した結果、綱領については、概ね共有できることを確認した。憲法や安全保障などの課題での相違は具体的運動の中で検証・克服していくことが大切であるとの認識で一致した」
 
とあり、一応違いを認めた上で、先送りする判断となった。
 どういう立場の人も、日米関係が重要である事には異論はなかろう。だからこそ外国軍軍隊が一世紀にもわたって駐留するような異常事態を解消し、軍事条約・軍事同盟を軸とする従属的二国間関係でなく、経済や文化、人的交流を軸とした当たり前の日米の平和友好関係に転換することこそが、党の理念とされるべきである。
 
2,基地のない平和な島、沖縄を!
 
 まず、新党の綱領に一言も沖縄に関する言及がないのは驚きだ。
 社民党にとって沖縄の基地問題は極めて重要な課題であり、2010年辺野古の新基地建設の是非を巡り鳩山政権を離脱した苦々しい経験を想起する。当時民主党・社民党・国民新党3党の沖縄基地問題の検討チームの一員として関わってきた私はその経過をつぶさに見てきたが、10年5月までに代替え地案が見つからなければ辺野古に戻すとする当時の政権の舵取りの失敗によって、当時の福島大臣が罷免され鳩山政権が1年を待たずもろくも崩壊したことは、極めて大きな禍根を残すこととなった。あれから10年が経過し、今日辺野古の基地問題は沖縄の皆さんの長い不屈の闘いの中で立憲民主党も「辺野古の新基地建設については直ちに中止し普天間基地の早期返還を実現」とするに至った。それは大きな一歩であるのは事実だが、米軍基地問題は辺野古だけではない。沖縄に集中する米軍基地全体の撤去に向けてどのようなシナリオで実現するのか、大田県政では20年で米軍基地を閉鎖するアクションプログラムも96年発表されたが、今までも現在も今後も国政の大きな課題である。また昨今強化されている南西諸島の自衛隊配備も北東アジアの対立の連鎖に陥り脅威を煽る危険な動きであり、反対行動を強化しなければならない。
 結論として、「日米同盟基軸」では沖縄の基地問題は解決しないことを強調しておきたい。
 
 もちろん沖縄だけではない。強化される岩国基地、ミサイル防衛システム、オスプレイ配備、低空飛行訓練、あるいは米国から爆買いしている武器群などなどあげればキリがない。その現場現場で一番体を張って闘っている人々の中に常に社民党がいるではないか。
 全国連合は合流議論のスタートにあたり以下の文書を出した。
 
2019年12月19日「立憲民主党・枝野代表からのよびかけについて」
「護憲・平和といった主要政策を含む理念を清算することがあってはならない。脱原発や基地反対、反差別・人権をはじめとする国民運動、大衆運動を引き続き展開していかなければならない」
              
と我が党の方針が示されている。
 「日米同盟基軸」の綱領下、そのような運動がほんとに可能であろうか?「具体的な運動」の中で綱領を「検証・克服」することが可能であろうか?「綱領」、とは党の理念と原則であり、行動原理の指針となるものであって非常に重たいものであるはずだ。「日米同盟基軸」の綱領が制約となって政策と行動が狭まることになりかねず、今後沖縄や全国で闘われている反基地運動などの展開が困難になる局面が出てくるのではないか懸念される。再度繰り返すが、鳩山政権の失敗から、社民党が政権党(政権をめざす野党)とのスタンスの取り方についてどうするのか、教訓としなければならない。政権奪取はともに共闘・奮闘しつつも、政策には是々非々の立場を留保しないと鳩山政権の時と同じ失敗の繰り返しになるのではないか。
 
3,憲法改正への姿勢について一憲法を変えるのか活かすのか
 憲法を巡っては6月2 3日両党協議では以下のとおり
 
「社民党からは、憲法を活かし、9条の改定に反対するとともに、改憲発議そのものをさせないために全力を尽くすべきことが提起された。立憲民主党としては、現政権に対峙して、社民党と同様な立場から取り組みを進めているが、将来にわたって、どんな内容であれ、憲法議論は一切しないというスタンスには立たないことも表明された」
 
とあり、立憲民主党は「いわゆる護憲と改憲の二元論とは異なる、『立憲的憲法論議』を基本スタンス」(HPより)とするとしている。具体的には「国会解散権の制約」「文民統制のあり方」「同性婚」など「積極的提案」を促すとしている。
 また、新党の綱領案では、「立憲主義を深化させる観点から未来志向の憲法論議を真摯に行います」とある。「未来志向」の意味がよくわからないが、憲法審査会の安易な始動によって与党の国家主義を強める改憲一緊急事態条項や9条改憲の論議に荷担させられかねない危うさも感じるところである。憲法96条の手続に従っても恒久平和主義・主権在民・人権不可侵といった基本原理を潰えさせる改正はできないことを肝に銘じ、今は憲法論議を入り口で止める必要がある。
 社民党宣言には以下の記述がある。
 
 (社民党宣言)
 私たちは目指します。憲法の理念が実現された社会を。それは、戦争の放棄を明確に 決意した憲法が、その前文で「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有する」と位置づけた平和的生存権を尊重し、誰もが平和な環境の中で暮らすことのできる社会です。
 
 私たちは目指します。格差を是正した生活優先の社会を。それは、競争こそ万能として規制緩和をやみくもに進め、「小さな政府」と称して福祉や医療、教育などの公共サービスを切り捨てていく社会ではありません。子どもを生み育て、学び、働く機会を公正に保障し、不安なく老後をおくることができるよう、生活条件の向上を最優先とした社会です。
 
 私たちは目指します。人々が支えあい、尊重しあう社会を。それは、あらゆる差別をなくし、人権と社会参加の条件を等しく保障することで、誰もがともに生きていくことができるよう、連帯を柱に据えた共生社会です。
 
 すなわち、せっかく憲法の規定がありながら、実際の社会では平和が壊され、格差・貧困が放置され、事実上違憲状態と解釈できる現実があるなかで、いかに憲法を暮らしや政治に活かしていくかが喫緊の課題である。立憲民主党が論憲としてあげている課題も、現憲法下で充分対応出来るものであり、国民・市民から改憲の必要性や緊急性が指摘されているものではない。「改憲議論」ではなく、憲法をくらしに活かす−「活憲」こそが時代の要請ではないか。
 
4, 「原発ゼロ」はどうなるのか!
 合流新党の結成を巡って「原発ゼロ」が揺れる局面があった。新党の綱領案は
 
 (新党綱領)
私たちは、地域ごとの特性を行かした再生可能エネルギーを基本とする分散型エネルギー社会を構築し、あらゆる政策資源を投入して、原子力エネルギーに依存しない原発ゼロ社会を一日も早く実現します。
 
 となっている。しかし、「原発ゼロ」に反対の電力総連や電機連合などの連合系国民民主党所属議員を新党に引き込むために、立憲・国民両党は8月27日連合と「共有する理念」をまとめ、そこでは「原発ゼロ」には触れずに「低炭素なエネルギーシステムを確立する。その際には二項対立的思考に陥ることなく。科学的的知見に依拠する」という曖昧模糊な表現に後退させた。結局、電力総連など民間大手組合の一部は新党には現時点合流しなかったが、今後とも連合を仲介役として綱引きが続くのは間違いがない。
 
 社民党は原子力の「平和利用」も含めて一貫して核のあらゆる利用に反対してきた歴史があり、「3・11」の後もいち早く「脱原発アクションプログラム」を発表してきた。「原発ゼロ」法の共同提出なども実現してきた。原発立地県のネットワーク「脱原発脱プルトニウム全国会議」の活動も含め、闘いをリードして行かなければならない。決してぶれることなく、脱原発、自然エネルギーへの転換、更には気候危機への対策を実現して行こう。
 
5.伊勢神宮参拝は何を意味するのか
 2020年1月当時の立憲民主党、野党第一党の代表・幹事長はじめ党三役がそろって伊勢神宮に参拝する行動は一体何を意味するのだろうか?そもそも伊勢神宮とは天皇家の皇祖神と言われる天照大御神を祭神とする神社であり、靖国神社と同様に行政の長である総理大臣が参拝することは特定の宗教を援助・助長することになり憲法20条3項政教分離原則に違反する行為であることは明らかである。政権交代をめざす野党第1党の代表が参拝することは、政権交代した暁には総理として参拝する意思表示とも受けとられかねない、すなわち憲法違反行為を容認した準備行動だと言われても仕方がない。保守層にウイングを広げたい思惑があったのか、保守政党であることをアピールしたかったのか真意はわからない。近畿でも小学校の修学旅行などの伊勢神宮参拝に反対して声をあげてきた教育労働者の闘いがあることも忘れないでほしいし、何よりも、首相の靖国神社参拝に対して「違憲」の判決が出されていることを与野党を問わず国会議員が重く受け止め・なければならないのは当然のことだ。
 
 新党の綱領の冒頭2.私たちがめざすもの(ア)立憲主義に基づく民主政治の項に、「象徴天皇制のもと」と謳い、新党結成大会の壇上に日の丸が掲揚されていることにも大きな違和感がある。象徴天皇制とはすなわち、大日本帝国憲法下で多大な戦争被害を生ぜしめた絶対主義的天皇制との決別であり、それゆえ日本国憲法は象徴天皇の存立を主権者たる日本国民の総意に基づくと定めるのである。象徴天皇制は憲法の規定にもあり、また国民に定着しているという立場がある一方で、身分差別とも言える王政の是非については世界的に議論されてきた歴史があり、各国で王政が廃止されてきた歴史がある。また戦前の天皇制ファシズムと皇民化教育の中で戦争が遂行されアジアでも日本でも多くの犠牲者が出たにも関わらず、戦後天皇の戦争責任が不問のまま米国の日本占領統治に利用されたとする歴史学者の指摘もあり、国内にも天皇制を巡り多様な意見がある。教育現場では「日の丸・君が代」の強制に対し反対運動や処分撤回闘争が今も続いている。また即位の礼などの神道行事に対して政教分離違反の裁判所の判断も出ているのは承知の通りである。
 今国政のテーマとして天皇制が争点になっているわけではない。そもそも自民党でさえ、「立党宣言」及び「綱領」(1955年)、「新絹領」(2010年)いずれにも「天皇」の語は記載していないのである。
 それだけに新党の綱領にあえて「象徴天皇制のもと」と明記する必要があるのか、甚だ疑問である。多様性のある社会をめざすなら、多様な意見がある事を認めるべきではないだろうか。
 
6,日韓関係をどうするめか一立憲野党の役割とは
 徴用工問題の解決など過去の歴史清算問題から二国間の経済・安保問題にまで拡大した日韓の亀裂をどう修復して信頼ある2国間隣国関係を構築していくのか、まさに自公政権にはできない立憲野党の役割が問われてきた。ところが、立憲民主党の枝野代表は2019年10月23日李洛淵首相との会談で、「日韓請求権協定という重たい歴史があることを踏まえ」解決してほしいとボールを韓国側に投げ、「日韓条約で解決済み」という当時の安倍政権と変わらない意見を表明し、韓国側はもちろん日本の多くの市民を失望させた。1965年日韓条約に反対する闘いに当時社会党が先頭で頑張った歴史を忘れたのではあるまい。日韓関係を一日も早く正常化し、日本社会に蔓延する排他的反韓・嫌韓ムードを払拭することが重要であるにも関わらず、あたかも安倍政権に同調するかのような言説が安倍政権に対峙すべき野党第1党党首から出てきたことは極めて残念である。
 安倍政権はそもそも1910年韓国併合条約を合法、すなわち朝鮮半島の植民地支配を合法とし、1965年日韓条約も正当化するが、社民党は社会党時代通じて日本の侵略植民地支配に反対し、韓国軍事独裁政権下で締結された日韓条約にも反対、徴用工や日本軍慰安婦問題など戦争の被害者としっかり向き合いながら和解と謝罪、補償に取り組んできた。過去の歴史に真摯に向き合うことが真にアジアで信頼される日本の在り方であるのは当然であろう。そもそも日韓条約・日韓請求権協定に照らしても個人請求権は認めるという従来の政府見解に基づき解決を模索することは可能であり、ボールは日本側に投げられているのであり、何よりも被害者一人一人に国の謝罪の意思が伝われば大きく和解の流れが、未来志向の関係が構築されていくのだ。
 社民党は引き続きそのために努力していかなければならない。そのためにもしっかりした歴史認識と時代認識を持つことが必要で、そうした認識を立憲野党全体で共有することが重要ではなかろうか。その上で具体的積極的な野党外交に踏み出さなければならない。
 今は足踏み状態だが、この2年間朝鮮半島の非核化と平和構築へ向け大きな流れがあった。まさに土井ドクトリンで示された北東アジア非核地帯構想の実現の時であり、日朝国交正常化と合わせて粘り強く実現のために努力していかなければならない。
 
 以上6つの論点について述べたが、どれも政党の理念や憲法解釈、政策の根幹に関わる重要な論点である。これを小異とみるかどうか、社民党宣言や過去現在の党の政策に照らして検討する必要があるのではないか。そのうえで党を解消して合流するのか、党の理念を大切にし党を維持するのかの判断をするべきである。党を残した上で、立憲新党など立憲野党との連携や野党共闘の道を探るべきであろう。
 安保外交問題など6つの論点が今後の「具体的運動の中で検証・克服」できるとは私は到底想像できない。合流する場合には社民党の理念が合流新党でほんとに実現できるのか、その覚悟が必要である。
 もちろん、新党の綱領のすぐれた点も多い。2012年消費税増税国会で3党合意で言われた「自助・共助・公助」ではなく、新自由主義と決別する立場から「公」の役割、すなわち政治の役割を強調しているのは大きな前進であることは付言しておきたい。
 しかし今我々が直面しているのは、日本に社会民主主義の理念が消え去っていいのか、その受け皿の政党がなくなっていいのか、重要な選択が問われている。コロナ禍の中で新自由主義の破綻が見え、あらためて公共の役割、社会連帯経済の役割が見直される時代に入った。むしろ本来今からが社会民主主義の理念や存在価値が注目され見直される時代ではないのかと感じる。そのためにも立憲民主党の綱領と社民党宣言とを比較検討して頂きたい。党員の皆様のしっかりした議論を期待したい。
 
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