真の独立としあわせのために
−労働者農民党の新しい綱領(草案)−(2)
独立民主革命の道
わが国民はいまのくるしみをなくすために、どうしても祖国をアメリカ帝国主義の支配からすくい、真の独立を達成しなければならない。そのためにはアメリカにしたがい、その支配と干渉をうけいれている日本の売国的支配層を孤立させ、弱化させ、これをうちたおさなければならない。
日本の売国的支配層は、数で見ればきわめてわずかな勢力である。ほんのひとにぎりの独占資本家と、これにあくまでむすびつく一部の大資本家、「自由民主完」の大幹部、反動的な高級官僚ともとの将軍連中、および、いまも半ば封建的な支配力をもつ大山地主や、天皇の勢力などである。かれらば、それぞれのあさましい欲望だけでからみあっており、たえず、かれらどうしのなかで、競争と対立をつづけている。いまの「自由民主党」とその政府は、このような売国勢力の代表であり、アメリカ帝国主義の支配をささえる道具となっている。したがって、わが国民が真の独立にすすむためには、何よりもまず「自由民主党」政府をうちたおし、それによって、国家権力を国民がつよくにぎらなければならない。
すべての愛目的な国民が団結して、独立民主の強大な力をつくりあげる以外に、そのための道はない。それは国民的な統一戦線でなければならない。この統一戦線は、アメリカ帝国主義にささえられる少数の売国勢力とその政府にたいし、圧倒的な国民の力でたたかい、かれらの支配をうちくだくための組織である。それは、すべての地域を単位にして、全国的に統一される、大衆的政治闘争の組織である。
独立民主の統一戦線には、労働者階級と農民、漁民の組織がすべて参加する。小商人、家内工業者、および中小企業家の組織、さらに失業者の組織と青年、婦人の組織、そして民族の誇りにめざめた一切の大衆組織が、これに参加する。この統一戦線にはまた、アメリカと日本の独占資本に圧迫され、国民の側に立とうとするすべての資本家、すべての個人が参加する。そしてまた、進歩的な政党のぜんぶと、あらゆる愛国的な政治家が参加する。
わが産業のおもなにない手であり、国民の圧倒的多数を占めている労働者階級と農民の同盟は、同じくるしみのなかでたたかい、たくましくきたえられたすべての勤労階層を加えて、この統一戦線の主力となるだろう。また進歩的な各政党は、統一幟線の先頭で、指導的な役割につくであろう。これらの政党がそのために一致することは、統一戦線を成功的につくり、強めるためのカギである。
統一戦線に参加するすべての政党と大衆組織、および個人は、共通の目標と利益のもとで、それそれの自主性を充分に尊重され、たがいにゆずりあい、たすけあうことによって、かたく結束するであろう。
このようにして、独立民主の統一戦線が、何百万、何千万の国民を結果し、わが国民のほとんどを味方にするならば、もはや何もおそれるものはない。世界の平和と独立の勢力は、わが国民にとって、かけがえのない有力な友である。その強大なあゆみは、わが国民がみずからすすもうとする変革の道を、日ましに新しくおしひろげ、かつてないたしかな勝利の条件をきずいている。
このなかで、独立民主の統一戦線が強まるならば、わが国民は、反動支配層をひどく動揺させ、幾つかの、かなり重要な、国民の要求をみとめさせることができるであろう。ある程度、自主的で平和的な政見をかかげ、それを実行する政府を実現することさえ、できるであろう。
これにともなって、反動どもの危機はいよいよふかめられる。かれらは、その妥協の他面で、統一戦線にたいする反動の政策を強化するであろう。だが、支配層内部の動揺と対立はますますはげしくなり、その一部が、かれらの陣営をはなれることさえ、さけられないであろう。
このとき、わが国民は、独立民主の統一戦線を基礎にして、真の国民政府をうちたてなければならない。統一戦線が充分に強大であり、さらに国会と地方議会のなかで安定した多数を占めているならば、わが国民は、組織的な大衆行動を背景として、議会を利用しながら、平和的に政権をにぎることが可能である。われわれは、この可能性をおしひろげるために努力しなければならない。
このためには、統一戦線が、選挙制度の合理化と議会の民主化を、あらかじめかちとっておくことが必要である。さらに、統一戦線の強力なたたかいによって、また、世界の平和と独立の勢力から強く支持されることによって、アメリカに軍事的干渉の余地をゆるさず、あるいは、その軍隊をほとんど引上げさせ、同時に、日本の軍隊や警察にたいする反動どもの支配を、十分に弱めておくことが必要である。アメリカ帝国主義が、国際舞台で時とともに動きがとれなくなっており、そして資本主義諸国のなかで、最も弱い足場に立つ日本の支配体制が、ますます破産にせまっているという基本的な条件は、この革命の平和的発展に、道をひらいているのである。
独立民主の統一戦線が、このようにして国家権力をにぎり、うちたてる政府が、独立民主国民政府である。
この国民政府は、世界の平和・独立の勢力と強く手をつなぎ、わが国民すべての一致した力で、日本を、アメリカ帝国主義の支配から、完全に解放するための政府である。この政府は、わが国で人民民主主義的な変革を達成し、平和と繁栄の政策を実行する政府である。そして、統一戦線を支持した一切の国民から、納得と同意をえながら、社会主義の達成にむかってすすむ政府である。
労働者農民党は、わが国民のすべてが、つぎのような要求のもとで、大きく、つよく独立民主の統一戦線に結集し、アメリカと日本の反動勢力の支配をうちくだき、独立民主国民政府を樹立して、これを完全に達成するよう心からうったえるものである。
真の独立と平和のために
1 民族主権の完全な回復。サンフランシスコでむすばれた「平和条約」、「日米安全保障条約」をはじめ、一切の軍事的・従属的条約と協定を破棄する。全面講和を達成する。
2 アメリカ軍隊を全面的に撤退させ、その基地と施設を回復する。沖縄と小笠原諸島をとりもどす。
3 日本経済の発展をはばむ、アメリカ資本を没収し、不当な債務を破棄する。わが国民を侮べつする文化、教育活動の禁止。
4 社会制度のいかんをとわず、すべての国々と平和な共存関係を確立する。このために、貿易、交通の自由をみとめ、文化、技術を積極的に交流する。
5 日本は、いかなる軍事同盟にも参加しない。ソ同盟、アメリカを含むアジアの全般的集団安全保障条約のてい結につとめ、また、すべての国々に原子兵器、その他大量殺人兵器の禁止を要求する。
6 「自衛隊」を廃止、解体する。頁の独立達成後、必要におうじ、最低限度の民主的な国防軍を創設する。
7 一切の軍国主義的な活動と、好戦的な教育、宣伝活動の禁止。平和政策の積極的採用。
人民民主主義的変革のために
8 売国的な巨大資本を没収し、国有とする。
9 土地改革を徹底し、大山地主などの所有するすべての山林、原野、水利権、ならびに保有小作地、および漁業権を解放する。
10 天皇制の廃止。天皇とその家族に一切の特権をゆるさず、かれらの不当に巨大な財産を国民に解放する。
11 その他の企業家は保護をうけ、経営活動の自由をみとめられる。
12 言論、集会、出版、結社、住居の自由。良心と信仰の自由。示威と官公労働者を含むストライキの自由。個人的な秘密の尊重。
13 一院制国会。その選挙制度を全国一区比例代表制とする。
14 地方自治制度の民主化。
15 自治体警察に重点をおく警察制度の民主化。
16 裁判と裁判所の民主化。教育刑制度の採用。
17 性別、資産、門地、民族の相違による差別扱いの廃止。すべての封建的な風習、慣行の打破。
勤労者の生活改善と平和経済の発展のために
18 完全雇用の実現。働く者を尊重する社会体制、企業体制の確立。
19 すべての労働者にまともな生活を保障する最低賃金制の採用。同一労働、同一賃金。歩合給制度の廃止。
20 一日拘束八時間、船員、地下労働者、高熱作業労働者には六時間の労働制。一年にすくなくとも三週間、航洋船員には六週間の有給休暇。
21 完全な権利を保障をされた労働組合運動の奨励。
22 国費で大規模な農地造成をおこない、まずしい農民にあたえる。
23 生活の困難な農民、漁民にたいし、滞納税金の免除。政府、銀行、大山地主、大網元、高利貸からの借金の棒引き、減税と長期低利資金の貸付。
24 肥料、農機具、農薬などの独占価格を引下げ、生産費をつぐなう農産物価格を保障する。
25 完全な権利を保障された自主的な農民組合運動と協同組合運動の奨励。
26 小商人、家内工業者、および中小企業者にたいして、減税と長期低利資金の貸付。協同組合運動の奨励。
27 高度な累進所得税。直接、間接を問わず、一切の大衆課税の減免。
28 すべての勤労者に完全な社会保険の適用。母子家庭と困窮者、被災者にたいする援助制度の確立。
29 病院、療養所、托児所の充実と増設。
30 勤労者住宅、学校、図書館、休養施設の充実と増設、自民体育増進策の採用。
31 教育費の全額国庫負担。科学・技術の積極的な振興。学生と研究者、芸術家にたいし研究費と生活費の保障。民族文化の保護。
32 平和産業の無制限な拡大。重化学工業を中心とし、平和的産業構造を目的とする産業計画、農業、漁業、畜産の総合的増産計画の樹立。
33 原子力の平和的利用を積極的に推進する。
34 国土資源の大規模な開発、治山、治水、災害復旧事業と、農業近代化をめざす大土木事業。
35 アジアに重点をおく平和的貿易の無制限な拡大。
党
労働者農民党は、以上の綱領を、ゆるぎない確信をこめて全国民諸君に提出し、ここにしめされた独立民主革命の道を、断乎としてたたかいすすむものである。
このたたかいと変革の道は、同時にまた、わが国で社会主義の達成にむかうただ一つの道である。労働者農民党は、労働者階級を中核とした、たたかうすべての勤労者大衆の党として、その究極のしあわせを、完全な社会主義においてかちとるため、さらにたゆみない前進をつづけてゆく。
日本における社会的変革は、歴史がおしえているように、あくまで日本独自の道でなされなければならない。わが国の歴史と風土にそだてられた固有の社会的条件と、第二次世界大戦後における世界の歴史的条件が、いまわが国民に、新しい独自の革命の道をひらいている。わが国の資本主義は、「明治維新」後非常な速度で発展した。わずかのうちに、高度な資本主義的独占が成長し、そして、この独占資本は、封建的な大地主の勢力と共に、絶対主義的、軍事的天皇制とむすびついて、わが国民を、極端な抑圧とさく取のもとにくるしめてきた。敗戦は、かれらの支配にかなりの変化をあたえたが、かわりに新しくアメリカ帝国主義の支配を加え、勤労者大衆の悲惨な状態は、いっそうひどいものとなった。だが、このことは、反面で、わが勤労者大衆の革命的な力をたかめ、これを中心に、広範な国民が統一する条件をきずいてきた。
とりわけ、労働者階級と農民、漁民、進歩的知識層、小商人、家内工業者、その他一切のはたらく大衆は、当面の独立民主革命と、そして社会主義への道で、偉人な、一つの使命をになっている。革命の道は、いまや、はたらく大衆みんなのものである。わが国では、労働者のすくなからぬ部分が農民の家族であり、その他の勤労者の家族ではないか。はたらくものは、すべて、くるしみと願いを一つにする兄弟なのである。
さらにいま、世界のもはやすくなからぬ国々が、社会主義の道で、かくれもない平和と繁栄の成果をきずいている。この道への希望は、全世界的に、人類の心をしっかりとつかんでしる。わが勤労者大衆は、これらの友人たちに力強くまもられ、はげまされているのである。
わが国のはたらく全階層が、一致した利益と要求と信念のもとに、労働者階級を先頭にして、民主主義の原則と中央集権の秩序のもとに一つの勤労者政党に結合し、真の革命的役割をはたす条件が、いいまや、はっきりとあらわれている。わが労働者農民党こそ、まさにそのような使命をになった、たたかう大衆の党である。労働者農民党はいまこそ、ゆるぎない確信と誇りをこめて、このことを強く宣言する。
労働者農民党は、科学的社会主義の法則にしたがい、それをみずから見出し、みずからためすことによって、党と国民のあやまりない針路をきめてゆくであろう。そして、この党に結集し労働者階級の最も革命的な意識と実践が、党のやぶりがたい指導精神をきずいてゆくにちがいない。何ものもおそれず、いかなる妥協もしらない勇敢さと、かおりたかい良識にみがかれた党風が、この党に、国員の愛と信頼を、大きくあつめてゆくにちがいない。
労働者農民党こそ、わが日本で、最も広範な革命的大衆を結集できる党である。そして、その故にこそ、当面の独立民主革命と社会主義の道で、労働者農民党の強大な発展が、何よりの基礎となるのである。
全勤労者大衆諸君!
全国民諸君!
労働者農民党とかたく結合し、労働者農民党のまわりに、広大な戦列をしこうではないか。
附帯決議
労働者農民党第五回全国大会は、大会に提出された新しい綱領草案を審議し、これを基本的に支持することについて完全に一致した。大会は、この草案によって、党の確固たる思想的基礎がうちたてられたことを確認する。
全党員は、広範な活動家大衆と共にこれをふかく討議し、また草案にもとづく党の諸活動をとおして、新しい綱領の完壁を期さなければならない。この草案は、つぎの如く取扱う
一、本大会における新しい綱領草案の採択にともない、党の旧綱領はこれを廃棄する。従って、今後の政策、方針、諸活動は、すべてこの草案にもとづいておこなわれる。
二、党中央は、大会の討議にてらして草案の字句的修正を検討した後、できるかぎり早急に、ひろくこれを発表する。
三、新しい綱領の最終的決定は、次期大会においておこなう。
右決議する。
一九五六年五月二七日
労働者農民党第五回全国大会