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社会主義協会第六回総会文書(2)
一九六四年度運動方針
[第六回社会主義協会全国総会決定]
 協会は過去三年にわたる組織活動をつうじて、日本の社会主義運動、労働組合運動の右傾化を阻止し、国家独占資本主義の下で複雑化し、混迷している人民の闘いに、展望を切り開くという困難な任務に耐えうることを立証した。しかし、協会員の間には、卒直にいって、つぎのような疑問がみられる。
 第一は、協会が江田ビジョンを粉砕したり、社青同内の構改派指導部を打倒しても、社会主義運動、労働組合運動全体にわたる右傾化の潮流をおしとどめることがなぜできないのかという疑問。
 第二に、運動の右傾化を阻止する闘いのなかで、運動の各分野において、協会の理論活動がなぜ百花燎乱と咲き競わないのか−−という点。
 第三に、協会自体の組織的な体制がなぜもっと質的にも量的にも強化されないのか−−ということ。
 われわれは、困難な時期の運動について意思統一する以前に、以上の三点についてまず意思の疎通をはかる必要がある。
 第一点については、今目の運動における右傾化が、国家独占資本主義の一切の権力と機構を動員して行なわれているという点を、みきわめなければならない。国家独占資本主義はその世界的な動向をみても、インフレ抑制に名をかりて、所得政策とよばれる賃金の抑圧政策にのりだしており、労働組合の賃金闘争について国家権力の介入が露骨化している。とくに日本資本主義はその国際競争力の弱さの一切を、労働者をはじめとする被抑圧陪級の犠牲によって乗りきろうとしており、このためには手段をえらばぬ労働者抑圧放策が一切の権力機構を動員して、強引にまた巧妙に行なわれている。
 一方、日本の革新勢力の中核である労働組合の運動は、日本共産党の「政治主義的引きまわし」や、日本社会党の企業連の上にアグラをかく姿勢のために、労働組合運動と社会主義の思想とが結合されずに終わり、この結果、労働組合の階級的性格がきわめて弱いという点にも原因がある。
 労働組合運動と社会主義の思想との結合に成功しているのは、ほとんど協会の活動のみという状況にあり、しかも、運動全体の中での協会の影響力はまだ弱いということである。
 第二点の協会の理論活動であるが、構改派の安易な、実践から遊離したはなばなしさに眼を奪われてはならない。構改派の理論活動は、社会党の右傾化、労働組合運動の戦闘性の喪失を期待するマス・コミに乗って再生産されている“仇花”にすぎないからである。
 協会の理論活動は、科学的社会主義を最も正統的に継承し、摂取し、しかも、現実の運動の主体的条件をも十分に考慮して開花する。書斎にすわって具体的な闘いの方針をあみだすような、器用だが観念的な方法を、協会はとらない。したがって協会の理論活動が、構改派等に比較して鈍重にみえるのは、止むをえない一面がある。
 しかし、反合理化闘争にせよ、憲法闘争にせよ、ようやく協会の理論的な活動は活発化しはじめている。協会の活動が、現実の運動との接触面を大きくするにつれて、協会にたいする理論的な要請が強まってくるのも当然である。
 協会の理論活動は、科学的社会主義の原則をふまえて、これを階級闘争の具体的な諸問題に適用する過程のなかで、マス・コミにもてはやされるはなばなしさはなくとも、人民の闘いの指針を明らかにしていくであろう。
 第三の問題については、まず協会という組織のもつ特殊性を考慮に入れなければならない。協会は運動体ではあるが、明確な政治集団ではない。このことは、協会が利益集団でないことと同様に、再確認されなければならない、協会は日本社会党を階級的に強化しようとする集団であり、思想的には科学的社会主義で統一されているが、独自の政治活動をめざしているわけではない。日本社会党の綱領にしたがって、日本社会党の運動を、階級的に高め、同時に社会党の影響力を広汎な国民のなかに浸透することに、その活動の主眼がある。
 むろん、このためには、社会党の内部だけでなく、労働組合、社青同、理論戦線等の各分野にあって、協会員は組織的に努力しなければならない。そしてその意味での協会員相互の連携は、もっともっと強化されなければその機能を十分に発揮しえない。運動における混迷と困難性の増大は、運動の発展のために協会活動の一層の強化を要語してくることも間違いない。
 協会はこの三年の活動を通じて、運動の右傾化と闘うなかで、じょじょに協会の組織的な性格をつくりあげてきた。しかし、協会員のすべてが、つねに協会の具体的な任務をもつという所までには、未だ程遠い。協会の組織活動方針(第二回中央委決定)は、このため、まず機能別に横の連繋を強化する必要を明らかにしている。そして、これが不十分である最大の理由は、協会が機関紙を持たないこと、協会の本部、支局段階における専従体制の弱さにあるといっても過言ではない。
 われわれはまず以上の点を確認し、平和革命論の第二次草案と重複する点をできる限りさけながら、本年度のわれわれの中心的な任務と、その具体化のプランを明らかにしてみたい。
 (一)憲法闘争をはじめ諸闘争について
 日本独占の憲法改悪の狙いが、その帝国主義的復活に伴う、日本人民にたいする支配体制の再編、強化であり、したがって、憲法闘争が現段階における階級闘争の政治的な集約点であることについては、いまさらいうまでもない。またそれが、日米軍事同盟を主軸とする、いわゆる安保体制の継続をめざすものであり、いわゆる安保体制打破の闘いも、改憲阻止闘争の一翼として闘われることによって、真に強力な闘いに発展しうるという点についても、第二回中央委で明らかにしたとおりである。
 したがって、今後の平和と民主主義と生活と守る闘いは、政治的には、憲法闘争として集約される。
 憲法闘争は、単に「明文改悪阻止」の闘いであるばかりでなく、「なしくずし改憲」を阻止する闘いである。この観点から、われわれは憲法闘争の中核的な地位をしめる労働者の反合理化闘争の意義をとらえかえし、これを一層強化しなければならない。また、国家独占資本主義下の政府、独占の政策が生みだす、独占と広汎な国民諸階層の矛盾の激化に注目し、諸階層の生活に直結する要求を労働者階級のイニシアによって多面的にとりあげ、憲法闘争の広汎な戦線を築きあげなければならない。
  (1)憲法闘争について
 協会の憲法闘争にたいする基本的な考えは、およそつぎの三点に集約される。
 第一に、憲法闘争は、現行憲法改悪を阻止する闘いであり、したがって社会主義革命のための闘いではなく、あくまで資本主義の枠内の闘いであるということ−−これは、われわれの当面する憲法闘争の性格に由来している。
 第二に、当面する憲法闘争の、階級闘争上の位置づけである。この点については、労働者階級のイニシアのもとに国民の要求をとりあげ、広汎な反独占の戦線を結集して保守の基盤を崩壊させ、帝国主義的ブルジョアジーの孤立化をめざす闘いであるということ。このことは、われわれの憲法闘争の戦術のあり方をも規定している。
 第三に、この闘いの中核は社会主義の勢力であり、この闘いの発展をつうじて、日本社会党の体質の階級的な強化を図らなければならないということ。このことは、憲法闘争が平和革命の主体的条件を強化する闘いであることの中心的な内容である。
 われわれは、以上の三点をふまえて、改憲阻止の広汎な共闘をきづきあげるために努力する。
@ このため、中央において、協会の主帳する改憲阻止国民共闘会議の線に沿った強力な指導機関が設置されるよう努力する。
A地域においては、それぞれの条件にみあって、改憲阻止の共闘の結成に努める。
  この際、福岡等の先進的な経験を十分にとり入れ、活動家の結集と組織化に格別の配慮を払う。
B政治戦線の統一については、各々の運動のもり上りをつうじてこれを強化していくという方針をとる。中央で、機械的に共闘の方針をきめ、上からおしつけるという方針では具体的な戦線の統一はすすまないとの判断にたつからである。
C当面する原潜寄港阻止の闘いを憲法闘争の一翼として、強力にとりくみ、広汎な戦線の結成に努力する。
@「憲法闘争」に関する理論活動を強化し、憲法闘争の理論的なイニシアを握るよう努力する。
  (2)反合理化闘争について
 反合闘争の意義、闘いの基調等については、協会のなかでは、すでに意志統一が行なわれている。しかし、三井三池の闘いをはじめとする、諸闘争の経験をどのように一般化するかという点で、まだ不十分なところがある。
 たとえば、産業によって、資本の側の合理化の形態、合理化攻撃の具体的なあらわれに多様性があり、これをうけて立つ労働組合の側にも、それぞれの歴史と主体的条件の差異がある。したがって、先進的な闘いの経験のうち、全産業にわたって一般化しうるものと、そうでないものとがある。しかも、合理化は急速に強行されるため、多くの場合、闘いのなかで組織づくりも行われざるをえない。合理化は会社の提案によってはじまるのではなく、その以前に日常的に周到な準備が行なわれ、生産点における“なしくずし合理化”が進展しているが、多くの組合では、これを日常的に反撃する体制がきわめて弱いからである。
 われわれは、今日、労働組合運動の基調が反合理化闘争でなければならないこと、また反合理化の日常闘争なしには、賃金引上げの闘いにせよ、時間短縮の闘いにせよ長期のストライキ体制をきづきえないことを、更に強調していく。また、反合理化の日常闘争が職場活動(世話役活動を含む)、職場闘争として展開されなければならないことを明らかにし、その組織化に努力する。
 以上の立場にたって、本年度は
@反合闘争の具体的な経験を研究し、反合闘争の理論を一そう深める。このため、各支局、支部の段階で、合理化の研究集会を企画する。
A反合闘争の意義、闘い方等について、出版活動を強化する。具体的には、一九六五年二月段階における九州支局を中心とする「反合闘争」の第一集につづき、東京段階で第二集をだす努力を行なう。機関誌「社会主義」においても、ひきつづき特集を企画する。
A反合闘争の思想をひろめ、闘いの火を拡大するため、職場の中核的活動家を対象に、小集会(研究・討議を中心)をつみあげる。これは、協会の全国的な統一行動の形態として、各支部は春闘をめざして直ちに行動を開始する。(その経験の交流は、中央委員会や「社会主義」誌上で行なう。)
   (3)原水禁運動について
@運動に積極的にとりくみ、運動をつうじて、われわれの運動と核禁会議との路線の相違を明白にする。
A日本の原水禁運動が、日本における核武装阻止の課題を荷なうことを明らかにし、あわせて憲法闘争との関連をつよめるよう努力する。
B「核兵器対全人類」の理論と思想を、理論的にも実践的にも克服する。
C原水禁運動のもつ、国民運動といわれる独自性を認めようとしない極左主義の思想と行動を排除し、その克服をめざす。
 われわれは、国民諸階層と活動家とが、もっと密接に接触することによって原水禁運動の大衆的基盤を拡大するよう努力する。
Bその他、第二回中央委で明らかにした、これまでの運動にたいするとりくみの欠陥を改める。
  (4)理論活動の強化
 理論誌「唯物史観」の発刊を急ぎ、この編集を中心に、協会内の理論戦線グループの日常的な連絡を緊密にする。なお、年一回程度、必ず、このグループの全国的な規模での研究集会を行なう。
(5)「新情報」の新聞化(略)
(6)社青同運動にたいする、協力、指導、支援体制の強化について
 社青同の運動が、社会主義運動の右傾化を阻止する上で、大きな役割を果していること、更には、社会党の階級的な強化の基礎であるとの認識を更に深め、本部、支局、支部、班等の各々の段階で、社青同の運動を支えるため、組織的な協力、指導、支援を強化する。
(二)協会の組織体制の強化(略)
(三)会費制確立と、その完全納入について(略)
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