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社会主義協会第五回総会文書(2)
●社会主義協会一九六三年度運動方針
社会主義協会第五回全国総会決定
一九六三年一〇月二二、二三日京都府宇治市
(一)はじめに
 昨年の全国総会で、われわれが日本における右翼改良主義を運動をつうじて粉砕し、社会主義運動と日本社会党を強化することをわれわれの中心任務に設定して以来、社会党や労働組合や青年運動等のなかに、協会の影響力は急速に拡大しはじめた、平和革命をめざす全国の社会主義者と戦闘的な労働組合活動家、青年活動家は、階級対立の一層の激化のなかで、その思想と運動の支柱を、協会に求め、協会とその周囲にぞくぞくと結集してきた。この過程で協会の機能は多面的となり、社会主義運動の現実の流れの中で、最も光栄ある地位と役割を与えられた。
 日本の独占資本は、資本主義の一般的危機の進行のなかで、その本来もつ脆弱性のために、その動揺を一層深めている。彼等が体制的な危機を乗り切るために、労働者階級と働く国民の生活と権利を圧迫する反動政策に狂奔すればするほど、労働者階級のみならず国民一般との矛盾を激化させ、自らの墓穴を掘る結果とならざるをえない。
 池田内閣の高度成長政策の破綻、アメリカのドル防衛と貿易自由化のなかで日本の独占資本とその政府は、労働者階級に対する、全藍業的規模での合理化攻撃によって、日本の労働結合の全面的な武装解除をめざしている。また、日米軍事同盟をつよめ、日本の核武装を推進し、戦争政策に反対する広汎な国民の運動を分断し、おしつぶそうとしている。
 これに対し、日本社会党と労働組合の体質は、非常な立ちおくれを示している。このため、独占資本の合理化攻撃は、日本の労働組合の企業主義的体質の弱点を突いて、なだれのごとくおしまくってきている。原水禁の国民運動は、日本共産党の誤った路線を克服することができず、分裂は固定化し、運動の低迷を続けている。そして、労働者階級に正しい指導の方向を示す任務をもつ日本社会党は、いまだに構造改革論的な便宜主義とムード主義にわざわいされて独占資本と本格的に対決する姿勢を確立しえないでいる。
 本年度は、われわれは、以上の諸点を克服することに、とくに力―注いでいく。昨年の第三回全国総会で採択した「当面の基本方針」と、昨年の第四回全国総会で決定した「一九六二年度運動方針」は、ともに、その基本的な部分については、本年度も変更する必要はないので、ひきついでいく。
 協会の主体的条件についていえば、昨年一年の情勢と協会運動の推移は、協会の果すべき役割を、全協会員の前に一層明らかにした。
 本年度の課題は、その役割を、各支局、支部、班の条件に応じて具体化し、実践することである。また、協会全体としては、運動の前進に対応する機構と体制を急速に整備することである。
 これらの方針と、当面の活動計画をつぎのように提案する。
  (二)合理化反対闘争の強化を基軸とする労働組合運動の強化
 炭労をはじめ、全産業に加えられている独占資本の合理化攻勢は、現段階における日本国家独占資本主義の体制の危機と深く結びついており、したがってわれわれの合理化反対闘争は、労働者の生活と組織の防衛にとどまらず、体制そのものをゆすぶる闘いである。
 われわれの合理化反対闘争の進展は、憲法改悪反対を頂点とする反動政策との全国民的な規模での対決の展望とも、深くかかわりあっている。労働者階級の指導的役割をぬきにしては憲法改悪阻止の闘いを考えることはできないし、労働者階級の団結と行動は、合理化に対決して職場からつみあげた団務(ママ)と抵抗なくしてはありえないからである。
 独占資本の復活とその支配体制の強化は、労働者階級と、その運動の安易な前進の可能性をまったく奪い去っている。したがって、労働者の闘いも、この独占の体制に対応して、明確に階級闘争の観点に立ち、職場から団結を一つ一つ積みあげながら、組織的な前進をかちとらなければならない。
 われわれは、日本労働組合運動につきまとっている、独占の復活以前の、安易な習性と堕性を一つ一つ運動のなかで克服しなければならない。
 いま、資本主義的合理化の必然的にもたらす矛盾は、全産業の生産点で、労働者の抵抗をよびおこしている。安保、三池の闘いをくぐってきた全国の活動家は、闘いの方向と、闘いを支える正しい指導理念を切実に求めている。
 昭和三五年一月、総評労働者同志会は、当時の情勢(安保闘争の息切れ、大幅賃上げの闘いの停滞、西尾新党ー民社ーの発足にともなう組織の動福など)を背景に、いわゆる「日本的組合主義」の指導理念をうちだした。これは、独占資本の復活、強化にともなって、国労新潟闘争にみられるように、組合否認の政策が開始されたにもかかわらず、日本労働組合の企業主義的体質が容易に克服されず、経済闘争での前進も停滞していること。しかも、このような実情のもとで、社会党の主体性の弱さから、総評が政治闘争を代行せざるをえないというイビツな形が、総評の組織にはねかえって、組織問題を惹起しているーという情勢に対処するためのものであった。
 「日本的組合主義」は日本労働組合の企業意識の物質的基盤である二重構造の解消をめざす、未組織労働者の組織化と、労働者の身近な要求と政治要求の結合による、労働組合の政治闘争の強化を、二本の柱とするものであった。
 この理念は、一定の積極的役割を果し、総評は組織の防衛と拡大においてかなりの成果をあげた。しかし。日本社会党の階級性と指導性の弱さ、労働組合の企業主義的体質、さらには共産党の政治主義的組合指導に対する反撥から、「組合主義」にまつわる否定的側面を克服することができなかった。安保、三池闘争以後の、運動の停滞と独占資本の支配体制の強化、全産業にわたる合理化攻撃のなかで、構改論が登場し、党の組合内の新しい右派の行動を合理化する役割を果した。こうして「組台主義」にまつわる否定的側面は拡大され、労働組合運動は低迷をつづけている。
 われわれは、「日本的組合主義」の『組合主義』にまつわる否定的側面を、思想的にも実践的にも克服する必要に迫まられている。われわれは、生産点での労働者の要求に固く密着して抵抗闘争を強化し拡大する。この闘いを指導する幹部と活動家は、社会主義の理論で武装され、大衆性と行動性を持つように訓練されなければならない。幹部と活動家は、われわれの平和革命論と現段階における合理化反対闘争の有機的な関連を明確に把握しなければならない。つまり、現段階における反合理化闘争のもつ、運動上の意味をわきまえながら、実際の運動を進める場合は、組合員の要求と感情から出発しなければならない。
 炭労三池では、三井独占の「階級闘争至上土義」の攻撃に対応して、組合も階級的な対決の観点から闘いを組み、今日、日本の労働者階級の反合理化闘争を導びく燈台となっている。
 われわれは、炭労三池だけが決して例外ではないことを知らなければならない。このことは、三池でわれわれの同志が闘ったように、真に階級的な観点に立って闘いを組まないかぎり、現段階における合理化反対闘争を組織し発展させることはできないということである。
 いうまでもなく、われわれの路線は、共産党のような政治主義的な傾向や、いわゆる革命的労働運動とは、根本的に異なる。われわれの労働組合運動は、平和革命路線に導びかれた運動論と組織論に立つものである。
 われわれは、合理化のもたらす矛盾から必然的に湧きおこる労働者の抵抗のエネルギーを、正しく汲みあげて組織しなければならない。このため、大衆路線の作風に立って、組合民主主義を上から下へ、下から上へと、生々と躍動させなければならない。
 階級対立の尖鋭化は、必然的に極左空論主義的傾向をうみ、共産党の政治主義的指導をはびこらせる。われわれは、これをきびしく警戒するとともに、そのあらわれに対しては、断固として、その誤りを大衆的に暴露し早期に破産させなければならない。もしことを怠たれば、われわれの運動が大衆性を失い、労働者のなかに浸透することか阻まれるからである。
 われわれは、「社会主義運動、労働運動における大衆性」をたゆみなき実践のなかで、自らのものとしなければならない。
(三)原水禁連動の性格と今後の方向
 日本における原水爆禁止の運動は、最も国民的な基盤の広い、国民運動である。この運動は、その底辺の広さのゆえに、日本の核武装を阻止し、世界の平和を守る上で、大きな役割を果してきた。
 広汎な国民諸階層をこの運動の中にくみ入れ、日本の核武装阻止と、世界の全面核停、完全軍縮をめざす運動を拡大すると共に、運動の実践を通して社会の基本的矛盾を大衆的に明らかにし、平和革命の根本的条件である、党と労働者階級にたいする広汎な国民大衆の信頼と支持を獲得するために努力することが、われわれの任務である。
 日本共産党と、われわれの原水禁運動にたいする根本的な相違点は、構改論者のいうように、単に内外情勢の分析(部分核停の評価など)や、中ソ論争に対する見解の差異にあるのではなく、革命路線の相違に由来する、国民運動の位置づけと指導方向における相違である。日本共産党の立場は、国民運動に結集する全体の国民諸階層を運動をつうじて高めていくことが問題ではなく、運動の方向を、反米帝の方向にむけることが彼等の綱領に沿った至上命令となる。日本共産党が原水禁運動のなかで、「平和の敵を明らかにせよ」と主張し、「いかなる国の核実験にも反対」に反対するのは、そのあらわれである。
 日本共産党とわれわれの、原水禁運動の進め方に対する差異は、たしかに『方向』での差異であって、「程度」の差であるとはいえない。したがって、政党次元の政策では、両者に歩みよりの余地はない。
 しかし、国民運動、しかも最も底辺の広い原水禁のような国民運動では、このような方向の差異があるからといって、共闘の条件がないとはいえない。この運動は宗教団体から自民党支持者までも含みうるし、現にこれらの人々との間に共闘が行なわれてきた。
 したがって、第六回大会からはじまり、本年の第九回大会をめぐって頂点に達した、原水禁運動内部における共産党と社会党の対立と、運動における分裂は、国民運動にとってきわめてセクト主義的な考えをもって指導してきた共産党が十年のキャリアを持って、指導権を握っていたという不幸な事実に基いている。このことは、うらがえしていえば、総評、中立労連等の労働組合に有力な幹部党員を持つ社会党が、原水禁運動では、とりくみが立ちおくれ、いまだに運動を通じての指導権の確立をなしえないでいることによるのである。社会党が原水結運動のなかで真に指導権を確立することができれば、共産党をふくめても、運動全体の基調を正しい路線ですすめることができるであろう。
 われわれは原水県大会の総括にあたっても、今後の原水禁運動の再建にたいしても、この点を正しくふまえなければならない。そのことが、社会党の平和革命の路線に立つ原水禁運動を、党員が先頭に立ってつくりあげ、運動における主体性を確立するみちである。われわれは運動の実績をつみあげることによって、国民のなかに党の支持と信頼をきづき、運動をつうじて共産党路線のあやまりを国民の眼に明らかにしなければならない。
 また、われわれは、構改論者の主張する、階級性ぬきの「核兵器対全人類」の主張が、平和運動の現実からまったく遊離しており、社会党の平和革命路線の前進にとって有害であるばりでなく、原水禁運動を核禁会議の線まで右傾化させる理論であることを、運動のなかで大衆的にバクロしなければならない。
 われわれは、現在の内外情勢のなかで平和共存路線のもつ階級的な意味を正しくつかみ、日本の核武装を阻止し、全面核停と全面軍縮を闘いとるという、日本の平和運動に課せられた客観的な使命を正しく遂行する観点から、原水禁運動の再建にとりくまなければならない。
(四)憲法改悪阻止の闘い
 労働組合の合理化反対闘争の強化と、原水禁運動の再建は、ともに、近い将来予想される憲法改悪阻止の闘いの支柱であり、基盤でもある。
 憲法改悪阻止の闘いは、まだ啓蒙を主とする段階であるが、われわれは、少くともつぎの諸点について、意志の統一を図らなければならない。
 第一に、憲法改悪阻止の闘いは、現行憲法(ブルジョア憲法)の改悪を阻止することによって、われわれのめざす、日本における平和革命の条件を守る闘いであるということ。
 第二に、憲法改悪阻止の闘いは、現行憲法の改悪に反対する国民のあらゆる層を一つの戦線に結集して闘わなければ、その目的を達しえないということ。したがって、この運動の展開のなかでは、社会主義革命をめざす高いスローガンをうちだして、運動の幅を狭いものにしてはならず、このような極左空論主義を、運動をつうじて粉砕するよう努力しなければならない。
 第三に、現段階では、労働者の生産点における反合理化の抵抗闘争と固く結合して、闘いを組織労働者の中に浸透することに力点をおかなければならない。
 第四に、この闘いが独占資本と労働者階級の、階級決戦的な闘いに発展することが予想されるので、その事態に対処する長期的かつ本格的な体制の整備をめざして、当面社会党の全党的なとりくみを強化し、運動のなかで党のゆるぎない指導権を確立できるよう努力していくこと。
(五)日本社会党の強化
 日本における平和革命は、日本社会党の強化なくしては達成することはできない。したがって、協会の一切の活動は、社会主義運動の強化をつうじて、日本社会党を階級政党の方向に強めることに集約される。社会党の階級政党としての主体性の弱さを克服しえないのは、われわれの責任でもある。
 労働組合運動は、独占資本のはげしい合理化攻撃に対決するために、日本社会党の指導を強く求めている。農民も、農業構造改善という名の合理化に直面して、党の指導を待望している。日本社会党は、労働組合運動、農民連動にたいする指導のために、全党をあげて闘わねばならない。
 昨年度は、われわれは、党の機関の決定の一〇〇%実施運動を提起したが、本年度は、党組織の細分化を契機に、党の日常活動を末端から強化するために努力する。
 さらに、われわれは、今日、三万の労働者党員をもつ、総評党員協議会(各産業別、県別の党員協議会をふくむ)活動の立ちおくれを抜本的に改善し、労働組合運動の階級的な強化をつうじて、党の指導性と活動家の信頼を確立するよう働きかける。
 社青同の運動については、その独自性を正しく把握して、運動をすすめなければならない。民青と共産党との関係を、社青同と社会党との関係と同一視してはならない。社青同は、青年運動を階級的に高める役割と共に、その志向する社会主義社会を実現するために、日本社会党を強化しなければならぬという、二重の任務をもつ。民青の場合は、歌と踊りで組織しても、その中の活動家は、スムーズに共産党に入党していく。その程度には、共産党は前衛的な組織体制をもつからである。
 社青同の場合には、逆に、活動家が社会党に期待を失い、あるいは入党をためらう場合が多い。
 したがって、われわれは、社青同の内と外から、社青同の活動家が社会主義者に成長するよう働きかけ、進んで日本社会党に入党して、党の強化に協力するよう導かなければならない。
 社青同の同盟員は、近い将来、党と労働組合の中堅幹部として、運動を担う人々である。われわれは党や労働組合の幹部養成の観点から、長い目で、その成長を援助し、指導しなければならない。
(六)むすび
 社会主義協会の平和革命論と、労働者階級の戦闘性とが運動をつうじて結び合わされるとき、日本の社会主義運動は飛躍的に前進し、日本社会党の階級的性格が確固たるものとなる。
 労働組合の当面する合理化反対闘争の強化、原水禁や憲法改悪阻止等の平和と民主主義を守る闘いの正しい展開のために努力し、労働組合運動と社会主義運動、平和革命路線と日常活動の正しい結合によって、日本の社会主義運動を強化する任務が、われわれの双肩にかかっている。
 運動上部における右傾化の流れのなかで、われわれの闘いは、いくたの障害と困難にぶつかるだろう。これを一つ一つ突破していく科学的社会主義者の根性が、今日ほど要求されているときはない。
 われわれは、われわれ自身の未来を、日本の労働者階級の闘いと固く結びつけ、労働者階級の戦闘性と革命性に深い信頼をおいて、果敢に前進しなければならない。
 <附記>
 総会では、この方針を肉づけする経験の報告がありました。その内容は議事録で別途に発表の予定です。
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