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社会主義協会第五回総会文書
『社会主義』1963年12月号掲載  
●社会主義協会一九六二年度一般経過報告
社会主義協会第五回全国総会承認
一九六三年一〇月二二、二三日京都府宇治市
(一)
 われわれは、昨年十月末の第四回全国総会で、協会運動における理論と実践の統一の立場を明確にし、協会創立以来はじめて、年間運動方針を決定した。これは、社会主義運動のなかで果すべき協会の役割が高まり、単なる思想団体の立場を乗りこえて運動体に傾斜せざるをえない状況に対応するものであった。
 運動方針では、社会主義運動の右傾化を阻止することを中心任務に設定し、協会活動のすべてを日本社会党の強化に向けて集約し発展させる方向を明確にした。また、社会党、労働組合その他の大衆団体のなかでの協会員の基本的任務を明らかにした。
 この一年の協会活動の経過は、四回総会の基本方針が正しかったことを実証するとともに、協会の機能が急速に多様化するなかで、協会の体制が量的にも質的にも立ち遅れていることをも明らかにした。
 昨年十二月、党大会で江田ヴィジョンを粉砕し、本年一月の社青同全国大会で大衆化路線の欠陥を余すところなく暴露して以来、構造改革論との対決は長期戦にはいった。構造改革論の右翼改良主義的な本質は、大衆的に明らかになったが、社会党の体質的な弱点にそれが結びあっていく傾向は依然として続いている。したがって、単に理論的な対決にとどまらず、運動を通じて構造改革論の誤りを明らかにしていくことが重要になっている。
 炭労の政策転換闘争の過程は、生産点における抵抗をぬきにして、政策を掲げさえすれば前進がかちとれるかのような幻想をふりまいた構改論の、労働組合運動で果した否定的役割を誰の目にも明らかにした。しかし資本の合理化攻撃の激しさの前に、労働組合運動は対決の姿勢を確立しえないままに低迷をつづけている。
 協会は雑誌『社会主義』を中心に、炭労の政転闘争を生産点の抵抗を強化することによって前進させるべきであると主張した。また炭労を包む全労働者の支援体制を強化する必要を繰り返し主張した。しかし、昨年の十二・一四ゼネストの失敗以後、遂に政転闘争の高揚はみられなかった。
 内閣の憲法調査会の改憲作業の進展のなかで、協会は『社会主義』五・六月合併号で憲法闘争の展開のために運動史的な解説を行い、憲法改悪阻止闘争の位置づけを明確にした。続いて、九月号では向坂代表の手によって憲法闘争の原則を明確にした。
 本年の原水禁世界大会は、大会のずっと以前から紛糾が予想された。協会は、雑誌の七月号で「平和運動論の再整理」を特集し構改論的な平和運動論の実際運動からの遊離を明らかにするとともに、平和運動に対する社会主義者の原則的な態度を究明した。総じて、本年度の特徴は、構改論の理論的な批判から当面する運動の理論的解明に編集の重点が移行したことである。
 七月末の総評大会では、協会代議員は一様に資本主義的な合理化と正面から対決する必要を訴え、総評全体の場で姿勢を正す必要を主張した。これらの主張は混迷している反合理化闘争を前向きに進める方向を明らかにし、大会の討論はこれを軸に進められた。しかし、反合理化闘争に対する大会討論は充分に掘りさげられないままに終った。
 八月の原水禁大会は、中央段階での話し合いがつかず、現地広島に持ちこまれたが、この過程で専ら社会党・総評対共産党の対立となった。また大会にのぞむ態度についても意志の統一が充分にできなかった。このため、協会の動きも制約され、結局中央段階で構改派の分裂的な動きをチェックし、現地広鳥では、総評・社会党と同一歩調をとる結果となった。
 協会の組織は、この一年間急速に伸長した。これは、社会主義運動全体の右傾化のなかで広範な活動家層が、正しい運動の支柱を求める動きの現れにほかならない。協会組織の拡大は、九州支局内各支部の結成、大阪支部の結成と関西連協の設立、東京支局内の地域支部結成、新潟県内における支部の結成が目立っている。
 このような組織の拡大に比較して協会運動に対する各支部の取組みは、まだまだ弱かった。これは、雑誌および『新情報』の二倍化運動、三千円カンパに対する取組みの立ち遅れ等に集中的に現われている。中央の常任委員会も昨年度に比較すると数段の前進を示したが、本部に対する支局・支部の要請の増大に比して充分の指導性を発揮することができなかった。
 われわれは、全国総会の論議を通じてこのわれわれの弱点を克服する具体的な方策を明らかにしなければならない。
(二)
 昨年の全国総会以後、日韓会談、原子力潜水艦寄港、F一〇五Dの配置に見られるように、政府独占のアメリカの枝戦略体制に呼応する動きは一層強まった。また、OECDへの加盟や特定産業振興法案の提案に見られるように、独占の新産業体制という名の支配体制の強化は進み、労働組合に対する合理化攻勢は更に激しくなった。
 このような階級対立の激化は、独占資本の策謀とあいまって、社会党や労働組合内の一部幹部の動揺と右傾化を促進した。また、労働者階級に対する集中的な合理化攻撃は労働組合の企業主義的な体質の弱点を巧みに突いて、反合理化闘争の停滞をもたらした。構改論的発想は、運動のこのような停滞を合理化し、労働者の戦闘性を撹乱し、にぶらせ、資本の合理化の進展に奉仕している。ここに、構造改革論の果した運動上の実害が明白に現われているが、同時にその寄生する土壌もたえずつくりだされていることに注目しなければならない。
 社会党や総評の中央に対する下部段階からの指導性の要望はかつてなく激しい高まりをみせた。そして、社会党、総評の指導にあき足りない活動家は、協会にその期待を向けた。このため、協会の機能は多様化せざるをえず、協会に対する活動家の与望(ママ)と協会の体制との間にギャップが生じてきた。協会組織の独自性からして協会の機能に一定の限界があることも事実であるが、しかもなお、協会の体制を飛躍的に強化する必要が増大している。
 本年五月の九州支局総会は、労働運動を階級的に高める方向を明確にするとともに、激しい資本攻勢と対決する協会員自身の土性骨をきたえあげる必要を明らかにした。協会員の思想的な統一の基礎である日本における社会主義革命論と協会員の実践的な戦闘性の結合はまだまだ充分ではない。独占支配に対して、体で対決する気魄と根性なしには社会主義運動の全体的な右傾化を阻止することはできない。運動の上層部における右翼的ムードに敢然として挑戦する闘志こそ、われわれ協会員のものでなければならない。
 この一年の運動のなかで、協会員が思想的には統一されていても実際運動の方針では若干の意見の幅があることも明らかになった。これは、本年八月の原水禁大会の問題で現われた。この問題に限らず、具体的な運動の進め方については思想団体である協会の場合にも一定の見解の振幅があることは当然であり、相互の討議を通じて意見の統一に努力すべきこともまた当然である。われわれは、相互の討議の機会を増して、少くとも基本的な方針での食い違いをなくするよう努力しなければならない。
(三)
 本年度は、協会が本格的に運動体に傾斜した最初の年であった。本部の指導体制、オルグ体制に比して、協会に対する運動上の要請は予想以上に激しかった。しかし、各支部の段階では、若干の凹凸はあるが全体としていえば、支部段階での協会の機能、その運動形態を充分に把握することかできず、これが三千円カンパをはじめ、あらゆる活動に反映した。協会の持つ組織的な力量は、まだ、ほんの一部しか発揮されてはいない。
 来るべき一九六三年度こそ、協会の全国にわたる組織を機能させ、日本における社会主義運動の前進と日本社会党の強化をかちとるべき年であるといえよう。
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