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社会主義協会一九六二年度運動方針
     (第四回全国総会決定)
    (一)はじめに
 過去一年間の協会の活動は、協会が組織的な活動を行ないうる体制をつくるための、過渡的な準備活動の段階であった。
 各地における協会支部(或いは準備委)の結成と、これに呼応する中央における常任委員会事務局制の確立によって、協会全体が組織的な活動を開始するための体制と、意思の統一は、ほぼ完了した。
 いまや、協会員全体が、一人のこらず、協会の活動方針にそった具体的な任務をもって、活動を開始するときである。
 昨年の第三回全国総会で、われわれは「当面の基本方針」を決定した。
 その内容は第一に、改良主義との闘い、第二に、安保・三池の歴史的な闘いの経験をふまえて、広く大衆を統合していく統一戦線理論の解明、第三に、協会自体の組織的拡大と整備………であった。
 われわれは、この「当面の基本方針」に沿って、来るべき一年間の協会活動の基本方針を明らかにしてみたいと思う。
(二) 当面する運動上の諸問題
 現在、日本の社会主義運動、労働運動のなかには、いくたの混迷があり、それが独占資本とアメリカ帝国主義にたいする日本人民の闘いを阻害している。これらの混迷をときほぐし、労働者階級を中核とする人民の闘いをもりあげるなかで、日本社会党を強化することが、協会の中心的な任務であることは、いうまでもない。
 われわれが、組織的に、本年度の運動にとりくむに当っては、どうしても、つぎのような若干の問題について、われわれの意志を統一してかからなければならない。
 むろん、これまで、われわれの共同討議は決して十分でなかったし、一きょに、全面的な意見の一致をみることについては、困難な問題も少なくない。したがって、ここでは、当面の運動を進める上でどうしても同志間の意思の統一が必要である問題に限定して、その基本的な点での一致をはかりたい。
 当面の諸問題は、(一)社会党の運動に関するもの(二)総評を中心とする労働組合の運動にかかわるもの(三)その他の諸運動、に大別される。
 われわれは、(一)と(二)に対するわれわれのとりくみに、次元の差があることを、あらかじめことわっておきたい。なぜなら、階級政党の展開すべき運動と労働組合の運動との問には、その組織原則にもとづく運動の次元と形態の差異があることは当然であり、これを混同することは、運動を真に強めることにはならないからである。
    [I] 社会党の運動について
 社会党の連動にたいする協会の任務は、今筏も、構造改革論をはじめ、一切の右翼改良主義との闘いを通じて、科学的社会主義の思想と理論の普及、浸透をはかり、社会主義運動の右傾化を阻止しつつ、社会党の思想の統一と理論武装の強化に貢献し、生々とした行動の党を建設することである。
 われわれは、この基調にたって、当面する運動を、つぎのような観点にたって発展させる。
(1) 本年八月の第八回原水禁大会における混乱が、いまなお日本の平和運動、国民運動全般のなかに尾を引いており、例えば当面の緊急課題である日韓会談にたいする闘いの構えが非常な立ちおくれを示している。
 本年の原水禁大会で、日共や中国代表団のとった態度は、国民運動の原則を無視したイデオロギーのおしつけであり、社会党、総評等が、昨年の大会以来、一貫して努力してきた「原水禁運動の基本原則」をふみにじるものであった。
 国民運動は、活動家次元での多数をうることによってのみではなく、広汎な国民大衆の結集に成功するかどうかによって、方針の正否が実証される。したがって、日共が現在の方針を改めない限り、原水禁をはじめ、国民運動全般のなかで孤立化していくことは必然である。
 日共は、原水禁大会のあと、高姿勢で社会党にたいする批判をつづけているが、これは混乱の責任を社会党に一方的に転化しようとするものであり、独善主義にもとづく彼等の常套手段を一歩もでるものではない。
 社会党は、最も底辺の広い国民運動である原水禁にたいし、「原水禁運動の基本原則」を一貫して推進した点では正しかった。しかし、社会主義政党としての原則的な立場を、国民運動の次元の中に解消してしまうという誤りをおかした、また、各地域の原水協で、日常的に、「基本原則」に沿った運動を系統的に組織する積極的なとりくみに欠けていた。
 社会党は、米ソ両国の核実験の再開に際し、その現象の奥にある本質の差異について、社会主義政党としての原則的な立場を明らかにすべきであったし、運動の展開のなかで、人民から遊離することな、それを明らかにする可能性は十分に存在した。それは、政党の運動と国民運動との次元の差異を明確にし、米ソの核実験にたいするうけとめ方の本質的な差異を、少なくとも全党員にだけは徹底させるという方法によって達成できたはずである。
 社会党中央は、その努力すら示さなかったし、未だにその点の反省はみられない。また、核戦争を阻止するためにどうしても必要な軍事基地反対闘争にたいするとりくみも、決して十分ではなかった。日共は、党次元の運動を、そのまま国民運動に持ちこんだことに対する一片の反省もみえないまま、今日にいたっている。
 そして、原水禁大会後の日共と社会党の泥試合の間隙をぬって、日本独占資本とアメリカ帝国主義は、日韓会談の妥結を急いでいる。
 われわれは、原水禁運動の「基本原則」の線にそって、ねばりづよい運動を展開しなければならないが、原水禁大会の混乱を、いま直ちに原水禁の機関のなかで解決する努力を払うことよりも、日韓会談にたいするとりくみを確立すること、具体的には、日韓会談の問題を安保共闘(平和と民主主義を守る国民会議)のレールにのせることが緊急であると考える。
 われわれは、われわれの運動路線に確信を持つと同時に、国民運動を強化拡大するうえで共産党との共闘の効果を冷静に判断する態度を失ってはならない。
 (2) 社会党の外交方針のなかで、中国問題にたいする考え方が、余りにも統一を欠いている。その結果が、自民党をして名をなさしめる結果さえ招いている。
 最近、社会新報の紙面その他で、中国にたいして悪い印象を与えるような宣伝が原水禁問題がとからめて無軌道に行われているが、この傾向は改めなければならない。
 われわれは、「アメリカ帝国主義は日中両国人民の敵」という原則を堅持しつつ、同時に日本社会党の自主性と国民運動における柔軟さを保持するという態度が必要であると考える。
 また、中ソ間の、運動上の意見の喰い違いはあるにせよ、少なくとも、中ソ間の矛盾をあばきだすことに専念するような態度は、複雑な今日の国際情勢のなかでは厳につつしまなければならない。なぜなら、そのことは、われわれの敵に利用される公算がきわめて大きいからである。
 (3) 江田書記長などの「新しい社会主義」「国民の社会主義」は社会主義理論の大衆化ではなく、社会主義の核心である階級闘争の原則を忘れた、大衆追随の改良主義的理論である。同時に、それは選挙政党的な現在の社会党の組織の実体のなかに、その胚胎する要因をもっている。
 われわれは、社会主義運動をもりあげ、社会党の組織を末端から改革していく運動をつうじて、社会主義とは縁もゆかりもないこのような思想の影響を一掃していかなければならない。
 最近社会党内にみられる、いわゆる政権獲得構想についても、それが党の日常活動の抜本的な強化を基軸として進められない限り、安易な方向に流れる危険が極めて大きいことを指摘しなければならない。
    U 労働組合の運動について
 労働組合運動については、その企業主義的な体質を組合運動の推進と政治教育をつうじて、思想的に高め、克服していくことか、われわれに課されている任務である。
 われわれは、この基調にたって、当面の運動を、労組の内と外から強めていく。
 (1)総評が本年の大会で、政治闘争にたいする労働組合のとりくみの姿勢を明らかにし、政党運動との混同をなくするような方針を採択したことは正しい。しかし、このことは、日本における社会主義運動の現状からみて、社会党の党性と指導性が飛躍的に強化されなければ、労働運動はもちろん、社会主義運動全体の右傾化を促進する危険をもあわせもっていることに注目しなければならない。
 われわれは、政党の運動と労働運動との次元の差異を明確にとらえ、両者の運動形態の相違を意識して運動をすすめ、労働組合における経済闘争と政治闘争の結合に努力する。
 同時に、われわれは、現実の運動のなかで、労働組合の運動と政党の運動とが重なりあい、関連しあっている点、労働組合も広義の階級的な組織である点に注目し、とくに労組内の政治教育と活動家の育成に努力しなければならない。
 (2) 総評は、未組織労働者の組織化と共闘の強化を、日本の労働者階級の当面の戦略的方針として闘いをすすめている。
 このため、本年はとくに地区労の強化をめざし、地方オルグの配置をいそいでいる。
 ここ数年の日本の労働運動、引いては社会主義運動のひろがりはこの成果に負うところがきわめて大きい。
 われわれは、この方針を全面的に支持し、総評の組織方針案にいうように、地評、地区労の予算措置で地方オルグの増員がかちとれるよう努力する。
 (3) 総評は、これまでの闘いの反省と情勢のきびしさから、労働組合の国民運動における行動は、政党員や活動家だけの活動でなく圧倒的多数の組合員の参加するものでなければならないという方針をだしている。
 そして、そのために大衆運動を組織するに当って、「行動の目的、限界、効果を十分に考え」(総評組織方針案)なければならないという意見にわれわれは賛成する。
 平和憲法改悪を頂点とする反動攻勢が強化されている現在、国民運動のなかで果たすベき労働組合の任務はいよいよ重大となっており、労働組合のこの面での組織的なとりくみのいかんは、護憲闘争の成否にかかわる問題である。
 われわれは、つねに大衆運動の先頭にたつなかで、実践を通じて大衆行動の一本調子を克服して、多様な様式を創意的に生みだしていくよう努力し、労働組合を全体として階級的に高めるよう配慮することが必要である。
 (4) 独占資本の日本の労働者階級にたいする攻撃の集中点である合理化にたいして、総評をはじめ、労働組合の反合理化のとりくみはまだまだきわめて弱い。
 この対策については、産業別に条件の相違があり、資本の攻撃も多様な形をとっているので、一がいに闘い方をきめることはできないが、少なくとも、職場活動を基礎に、産業別の統一闘争で対決できる構えをつくるよう努力しなければならない。
 このような努力をぬきにして、政策転換や労働プランの闘いを成功させることはできない。
 われわれは、職場活動の中核となって活動すると共に、このような観点から反合理化闘争の主体の強化に努力する。
 炭労などの政転闘争については、労働者階級全体の共闘体制をつよめると共に、社会党が全党的なとりくみを強化し、労組より一段高い立場で政治闘争へ高めていく指導性を発揮するよう推進する。
 (5) 共産党の「四中総」にみられる指導方向は、「二つの敵」論にもとづく統一戦線理論を、そのまま労働組合運動におしつけようとするものであり、日本の労働組合運動を混乱と分裂に導く危険がきわめて大きい。
 われわれは、労働組合における経済闘争と政治闘争の正しい結合によって、日共の誤った指導の影響を克服し、労働組合の統一と団結を一層かためなければならない。
    (V) その他の運動について
 (1) 農民運動については、長野、新潟など直接農業にたづさわる協会員の多い支部を中心に、中央の農業部会と連絡をとりつつ、その強化のための具体策を検討していく。
 (2) 青年運動については、社青同の強化、発展のために努力する
 (3) 社会党の文化活動にたいするとりくみの弱さは、基本的には党の思想的不統一に根ざすものであるが、われわれは科学的社会主義の思想を浸透させていくなかで、社会党系の文化活動家(文化工作者)の結集をすすめるよう、党に働きかける。
 当面(一)全国の職場、地域における文化活動の経験の交流を、雑誌及び新情報を通じて行なう(二)その過程で社会党系の文化活動家の組織化を、支局、支部の協力のもとにすすめる。(三)このため、本部事務局に文化活動担当者(兼任)をおく
 (4) 月刊社会党及び社会新報については、その内容について読者の批判の声を組織し、編集方針の根本的改善をめざして努力する。
 われわれは、以上の意志統一のもとに、各自の分野で、われわれの運動を展開する。
    (三) 党建設にたいするとりくみ
 われわれは、われわれの所属する社会主義運動の各分野で、以上の方針にそって活動をつづけるのであるが、われわれの組織的な努力の集中点は、日本社会党の強化であり、選挙政党から、階級的政党への体質改善である。
 日本社会党は、不幸にも、その出発において、思想的な統一がなかった。しかし、十六年の闘いの歴史のなかで、科学的社会主義の方向へ、一歩一歩前進してきたということはたしかである。
 われわれは、党の発展を弁証法的にとらえる。つまり、党内の思想的な不統一が、固定的にいつまでも続く宿命をもつものであるとは考えない。
 同時にわれわれは、党の組織的な前進は、党の指導する大衆闘争の発展と密接不離の関係があることにも注目しなければならない。そして、このことは、われわれが、社会党の組織を改革する場合の改革のし方と深い関係がある。
 全国の地域や職場で、社会党が直面している問題にたいして、協会員が先頭にたって、党組織の指導の下に大衆闘争をもりあげること、闘争のなかで姿勢の正しい人々を、どしどし党に入党させること−−これらの活動をねばりづよくつみ重ねることによって、党組織の改革のための条件がつくられる。その条件の上にたってはじめて党の体質が改善されていく。
 このようなやり方でなく、思想闘争をナマのままだしてゆき、大衆運動と党組織との相互関係を念頭におかないならば、われわれの闘いは、単なる反幹部闘争に流れ、党内派閥の餌食になるか、或いは孤立して自滅する危険がきわめて大きい。
 構造改革論が社会主義運動や労働運動に一定の影響を与えたのは安保・三池闘争後の独占資本の右翼化攻撃や、社会党、労組の体質の弱さにのみ起因するものではない。
 党活動の停滞や、労組の企業主義的体質に苦悩しつつあった活動家にたいして、構造改革論が恰もこれを脱皮しうる新しい発想や具体的な戦術の提起であるかのような錯覚を与えたところにある。つまり、階級政党以前ともいうべき党の体質、労組における官僚主義的運営にたいする活動家の反発に、たくみに便乗したからでもある。
 したがって、われわれは、構造改革論の理論体系の矛盾と、その内包する改良主義的本質を徹底的にバクロすると同時に、当面する党活動、労働運動の前進のために、一層具体的な指針を明らかにする努力をたえず払わなければならない。
 われわれは、社会党の階級政党への発展に確信をもつ。したがって長期のかまえで党の改革にとりくむ。性急な“前のめり”の態度は、われわれのとるところではない、
 われわれは、党の機関が、当面する問題にたいする党としての方針を出しているところでは、原則として党の指令指示の100%消化運動を末端から展開する。
 党機関が、問題にたいする方針を出すまでに至っていないところでは、まず党としてのとりくみをきめさせ、ひきつづき、方針の1〇〇%消化運動を実践して、党の自信を高めつつ、もう一段高い実践へと進んでいく。
 こうして、現在の社会党に共通する行動力の欠如を改め、党勢を飛躍的に拡張しつつ、党の思想性を高めていく努力を、忍耐づよくつづける。
 協会員の拡大も、このような努力をつうじでこそ可能である。
     (六) むすび
 われわれは、ここに、協会創立以来はじめて、本格的な運動方針を提案し、全協会員の組織的な討議をよびかける。
 日本の社会主義運励のなかで協会の果たす役割がいよいよ重大となり、協会の組織もこれに対応して全国にわたって拡大した。
 社会主義協会は、文字どおり、日本の社会主義革命を志向する協会員一人一人のものであり、したがってまた協会の運動も、協会員一人一人の自覚と責任の上にたって展開すべきものである。
 全国の同志の白熱的な討議によって、この方針案が一層豊かなものとなることを、心から期待する。
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