前のページへ          
三、非武装中立の現実的根拠
 以上のように、われわれが安全あるいは防衛の論理ではなく、平和の論理、緊張緩和の論理をあくまで追究していく立場は、けっして空想的ではなく、確たる現実的根拠がある。
   (一)非武装中立の一般的条件
 第一は熱核兵器の出現である。熱核戦争がひとたび勃発すれば、勝者もなければ敗者もありえず、戦争手段そのものが戦争目的を全く無意味と化してしまう状況が生れており、世界の平和の維持という問題を離れて自国の安全を確保することが不可能となったからである。だからこそ戦争に至らない前に、平時において戦争のない世界へ向って、積極的に働きかけることが、核時代において人類が生き残るための基本的な原理となったのである。
 第二には、世界の力関係の根本的変化である。平和を望む諸国民の力すなわち社会主義諸国の拡大、民族独立闘争の発展、資本主義国の労働者階級の闘争、非同盟中立諸国の存在、反戦平和の国際世論のもりあがりによって、帝国主義戦争を必ずしも不可避としないところまで成長したことへの認識である。
 とくに今日の国際政治の状況を考える場合に、アメリカと中国との関係のような特殊な敵対関係にもとづいた世界だけを頭に描き、何故アメリカとカナダの間のような相互防衛を必要としない国際関係を本来的な世界の姿とみないのか。軍縮会議が決裂せずに続いているのは何故なのか。このような現代世界がようやく当面しようとしている真の平和共存、軍縮の可能性を追究する姿勢をとることによって、その可能性をいつそう強めていくことが必要である。
   (二)日本における非武装中立の条件
 第一には、いうまでもなく戦争のない世界への理念をうたった平和憲法の存在である。憲法九条こそは、戦争のない未来世界を創造するうえで、日本が世界の革命的根拠地になり得る誇るべき内容をもつものであり、まさに核時代に人類の到達した崇高な原理といえよう。同時にこのような平和憲法が生れたこと自体、人類史上はじめて原子爆弾の洗礼をうけた国民として、ふたたび戦争はすまじという国民的合意を内包しており、さらに明治以来の日本のアジア諸国への侵略の歴史、軍国主義への反省を含み、それらは非武装中立を志向する日本国民の民族的精神的条件である。
 第二には、日本の地理的条件、日本をとりまく国際環境、民族形成等の条件がある。日本が地理的に海にかこまれていることは、自らが危険な紛争の原因をつくらない限り、海をこえてこの国が侵略を受ける可能性はほとんど発見できない。また民族的にこれほど統一された国家であることも、民族問題や宗教問題に端を発する紛争の可能性を少なくしている。日本が米・中・ソの谷間に位置していること、アジア諸国が日本の非軍事化を望んでいるという国際環境も非武装中立にとって見逃すことのできない条件である。
 最近、非同盟諸国がおちいった困難をもって、非武装中立の非現実性が立証されたとする説があるが、たとえばインド・アラブ連合の非同盟主義の困難はいずれも自国が国際紛争の当事者となり、しかもそれを武力解決に走ったこと、自国の経済的な存立や軍備強化のために大国の援助に依存せざるを得なかったことにある。このことは日本の場合には国際紛争のおそれがなく、たとえ隣接国の紛争にまき込まれても武力解決に訴えないこと、独立の経済的基礎をもっていること等、非武装中立政策の維持に必要な条件を備えているといえよう。
 第三には高度工業国としての日本の経済的基礎にかかわる条件である。世界第三位の国民総生産を誇っているわが国の経済構造は、国内資源の決定的な貧弱さのゆえに、原材料資源を他国に依存し、それを輸入し、加工したうえで輸出するという基本的な構造をとっている。このことは、日本経済を維持、発展させるためにも、互恵平等にもとづく輸出入市場の確保を必然的な前提においており、それは国際紛争や侵略戦争とは基本的に矛盾するものである。これは中東紛争に際してわが国の石油備蓄が危機に瀕した一例をあげるだけで十分である。さらに輸出入市場を特定国に過度に砺存させることは、その国の経済変動や外交政策によって、日本経済が左右されることになり日本経済の健全な発展を失なわせることになる。
 従って、日本経済の自主性を確立するためにも平和五原則に基礎をおく外交政策が必要であり、われわれの非武装中立政策こそが、日本の経済発展を保証するものである。
 第四には、各種世論調査で明かなように、日本国民の大多数が絶対平和を志向する憲法を支持しているということは、それ自体、重大な政治的現実であり、重い意味をもっている。しかも各種世論調査にあらわれている自衛隊の必要を認めるものも、その大多数は戦争と殺りくを目的とする自衛隊ではなく、災害出動など国民生活と密着した役割りを期待して認めているという事実を見逃してはならない。
四、日本の平和保障への道
 日本の安全保障の道は、他国との軍事同盟を結んである特定の国ぐにを仮想敵視し、これら諸国との間に軍事緊張をつくり、また核対立の一方に組して他国の戦争に自動的にまきこまれたり、核攻撃の危険を負担することではない。
 「護憲・民主・中立」政府のとるべき安全保障の道は「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、安全と生存を保持しよう」と決意し、そのために一切の戦力と交戦権を否定した日本国憲法の精神に立って、非武装中立を基本的国是とし、何れの軍事同盟にも参加せず、諸国との友好関係の樹立と発展を通じて、世界の平和維持に寄与し、そのなかで自らの平和と安全を確保することにある。すなわち軍事力によって国家の「安全」を守ろうとするのではなく、話し合いを基調とする平和と友好の外交によって、国民の生命、生活、権利を守ろうとするのである。
 このような非武装中立の基本的国是と平和外交は、現在の自民党政権の外交から大転換をとげることであり、侵略の基地としての日本ではなく、平和と友好の砦としての立場を築き、追従外交ではなく、自主独立の外交を、アジアに背を向けた外交ではなく、アジアの一員としての自覚をもち、アジアの平和確保と善隣友好、発展途上国の“貧困”からの脱却に真に貢献できる新しい日本外交を展開することである。この外交によってこそ、日本は軍事的対立の緩和と解消、国際紛争の平和的解決、核軍縮の達成、異なる体制間の平和共存を推進し、また平和五原則による国家関係を基礎とする世界の平和維持に貢献できるのである。
 そして「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏見を地上から永遠に除去しようとつとめている国際社会において名誉ある地位」を占めることができるのである。
   (一)安保廃棄と平和友好外交の展開
 「護憲・民主・中立」政府は、憲法と国連憲章にそって相互友好条約を締結する。
(1) その外交活動の第一歩として直ちにアメリカに対して日米安保条約の解消を通告し、外交交渉をへて条約を廃棄する。
(2)日台条約を破棄し、中華人民共和国と平和条約を結び、日中国交回復を実現する。
(3) 日ソ共同宣言にもとづいて、日ソ平和条約を締結し、ハボマイ、シコタン諸島の返還を実現する。
 千島列島の日本帰属については日ソ交渉を継続し、その間日本は返還を保障する条件として極東の平和確保と日ソ友好関係の発展に努力し、このなかで解決する。
(4)朝鮮に対しては、日韓条約を廃棄し、統一朝鮮との問に正式な国交関係を樹立する。
 それが実現するまでの間日本は暫定的措置として朝鮮人民と全般的友好関係を発展させるとともに、可能な限り南北朝鮮との間に平和五原則に立つ外交関係を樹立する。
 日本は日朝の歴史的経過と独立自由の統一朝鮮を保証したカイロ宣言ならびにポツダム宣言にもとづき積極的に朝鮮の平和的統一の達成に貢献する平和外交を展開する。「朝鮮問題は朝鮮人民にまかせるべきである」という民族自決の原則に立って、南朝鮮における一切の外国軍隊の撤退を要求する。
(5)以上の外交的諸方策をもって日本の中立を完成し、日本の平和保障を確立する。
   (二)平和保障体制と平和地域の確立
 日本は日米安保条約を廃棄し、自らの中立宣言と非核武装宣言に立って、関係諸国によびかけ、次の課題を実現する。
(1) 日本の中立と不可侵を保障する米中ソ朝等関係諸国による個別的集団的平和保障体制をつくる。
(2) アジア・太平洋非核武装地帯の設置に努力する。
(3) 何れの軍事同盟にも参加せず、他国の軍隊および基地をおかないアジア中立地帯の拡大に努力する。
   (三) 経済協力
 日本は各国との間に国家主権の尊重と平等互恵の原則に立った経済外交を展開する。とくに社会主義国を近隣諸国としてもつ目本にとって、これら諸国の計画経済建設と結びついた安定した経済関係を維持することは重要である。
 アジア、アフリカ、ラテン・アメリカの発展途上国に対してはこれら諸国との貿易の拡大に努力するとともに、
(1) 被援助国の主権を尊重し、いかなる附帯条件もつけない。
(2) 被援助国の自力更生、経済的独立の達成に協力する。
(3) 被援助国の負担を軽くする経済援助の方式をとる。
等の立場に立った経済協力を強化する。
   (四) 核軍縮への貢献
 日本は中立宣言と非核武装真否を基礎として、国連の内外において核軍縮の達成のために積極的役割を果たす。
(1) 核不使用協定
 核戦争を回避するために核保有国間による核不使用協定の締結は緊要である。
 とくにアメリカのベトナム侵略戦争をめぐって核兵器を使用する危険性の存在している以上、少なくとも不使用協定への第一歩として、非核保有国(核兵器を製造せず、所有せず、持込まれていない国)に対していかなる種類の核兵器による威嚇および攻撃を行わない、核兵器を先に使わない等を相互に確認する国際的とり決めを結ぶ。
(2) 核拡散防止条約
 核拡散防止条約は単に核保有国の増加のみを規制するのでなく、核保有国の核軍縮への義務を規定する。そのため、(イ)核兵器の他国への配置、移動の禁止、(ロ)非核保有国に対する核兵器の不使用を明らかにする。
(3) 地下核実験および核兵器生産の禁止協定
 現在進行している核軍拡の悪循環をたち切るために地下核実験と核兵器生産を禁止する協定を結ぶ。
(4) 核兵器の全面禁止と完全廃棄
 以上の諸協定を基礎として核軍縮を段階的に押し進め、最終的に核兵器の全面禁止と完全廃棄を実現する。
   (五) 平和機構としての国連の強化
 日本は国連が世界の平和と安全を維持し、社会的、経済的進歩を維持する普遍的平和機構として正しい機能と役割を果すよう努力する。
(1) そのために国連における台湾政権の議席を除外し、中華人民共和国の正当な代表権を回復する。
(2) 分裂国家に対しては、国連はすべての内政干渉を排除し、これら諸国の自主的・平和的統一達成のために協力する。
(3) あらゆる形の植民地支配と人種差別を一掃し、民族独立を支援するとともに、発展途上国に対する国運の経済開発協力と援助を強化する。
(4) 国連の平和維持機能強化に貢献する。国連が、真に世界の普遍的平和機構として確立されたあかつきには、世界の平和維持と公正な国際紛争処理機関として国連警察隊を設置する。
   五、非武装中立の国内的措置
 国の外交政策と国内体制とは、表裏一体の関係にあるといわなければならない。従って、日本が非武装平和、中立を国是とした外交政策を展開する以上、これに即応した国内体制の民主化が同時併行的に推進されなければならない。
 その基本は、国連憲章、日本国憲法ならびに国際的な平和主義の発展に基礎をおく非武装中立政策との対応関係において確立されなければならず、いねば平和と民主主義の憲法原理の具体化であり、その完全実施にほかならない。それはまた歴代の保守党政府によって空洞化されてきた憲法原理の復活、再生であり、非武装中立政策の国内的、主体的な保障措置である。さらに非武装平和中立の思想は世界人類の共有財産であることを深く認識するならば、これが世界の反戦平和運動によって支えられるべきことと同様に、国内においても勤労大衆による民主主義のたたかいによって支えられるべきものである。
 このため憲法の精神にそった「平和基本法」を制定し、国の内政、外交における平和的民主的活動の義務を集約し、憲法精神を徹底させる。
   (一)平和外交推進、平和中立維持のための国家機関
 社会党政権は、日米安保条約を廃棄し、日本の平和中立を確保する外交散策と併行し、国内においては広範な国民大衆の支持のもとに、自衛隊の解体をはじめとする反動立法、機構を廃棄して諸制度の民主化を推進する。この段取りについては二つの側面がある。一つは、保守政権の憲法空洞化の既成事実によって積み重ねられてきた軍事的、非民主的諸法律および機構の廃棄あるいはその非軍事的、民主的な改編という消極的側面であり、他は、憲法に内在する平和主義、民主主義の理念を徹底的に追究するための諸機構の設置という積極的側面である。しかしこの両面は相互補完的な関係にある。
(イ)国防会議、防衛庁、防衛施設庁、公安調査庁等は廃止し、新たに内閣のもとにおいて日本の平和保障に関連する基本政策の立案、世界平和推進に関する諸施策を検討する。
(ロ)平和思想による人間形成を重視し、憲法と教育基本法にそった教育行政および教育内容の中立性を確保するため、文部省を改組し、全教育課程において「平和教育」を必須科目として義務づける。また防衛大学校を廃止する。さらに国の学術、文化の諸機構を通じて平和思想の発展、平和運動の強化のために不断の努力を続け、日本を世界平和の砦とする。
(ハ)従来の中央集権的な警察制度を民主化し、これを都道府県自治体警察に切りかえるとともに、公選制の国家公安委員会のもとに国民警察隊を設置する。
(ニ)建設省、北海道開発庁、国土地理院、気象庁その他関連機構を統合して「国土開発省」としてて冗化する。そのもとに「平和国土建設隊」を設置し、国土の平和的総合開発、軍事基地の平和転用、災害防止、救助などについて強力な施策を展開する。
(ホ)その他各省庁、政府機関について必要な民主的改革を推進する。
   (二) 自衛隊の解体計画
 社会党政権はその成立とともに、ただちに防衛庁設置法、自衛隊法、国防会議に関する法律、その他防衛関連法規の改廃に着手する。さらに自衛隊員の募集、戦闘訓練、武器購入を停止する。
 自衛隊の解体にあたっては、基本的には社会党政権の安定度、自衛隊掌握の度合、国民意識、平和中立外交政策の進展度などの条件を勘案しつつ、人員、装備の両面にわたってこれを実施する。自衛隊解体計画の立案にあたっては関係各省、学識経験者とともに、自衛隊員代表を含めた機関において策定する。
 自衛隊員の職業転換と生活保障については、基本的にはそれぞれがもつ特殊技能を生かしつつ、個人の希望をいれて国または地方公共団体、民間産業への再就職を保障する。同時に、新しく設置される(イ)国民警察隊、(ロ)平和共栄隊などに一部を採用する。
(イ)国または地方公共団体、民間産業への就職転換は、今日の技能 労働力の不足状況からみてきわめて有望である。たとえば行政事 務の近代化、合理化にともなうコンピューター操縦者をはじめ、都市高層化にともなう化学消防の拡充、離島間航空の確保、積雪豪雪地帯における緊急連絡、救難ヘリコプターの設置、民間航空のパイロット、整備員、遠洋漁業における漁群探知、海難救助、貨客航路の拡大にともなう通信士、機関士など、日本経済の発展と国民生活の・向上に寄与する分野で、個々の技能が誇りをもって最大限に発揮されることになる。
(ロ)国民警察隊は、警察制度の民主化による都道府県自治体警察への改編にともなって、広域警察を主たる任務として国内秩序維持にあたるとともに、もっぱら国民の生命と財産を守ることに専念する。国民警察隊は、中央本隊のほか全国九ブロックに配置する。
 このほかとくに海上警備については、海上保安庁を拡充し、海上を通ずる不法出入国、密貿易、密漁、海難救助、漁船保護などの対策を強化することとし、攻撃用武器を廃棄した自衛艦その他ヘリコプター、航空機を転用する。
(ハ)平和国土建設隊は、高度の技術を駆使して国土改造計画にもとづく都市再開発、土地利用、交通建設、河川建設、通信輸送、国土調査、気象、航空連絡、海洋資源調査などの任務とともに、地震、風水害、火災、大事故などの災害に際して、その救援出動、復旧作業に従事する。このため中央に本部ならびに教育、技術、補給などの諸機関を設置するとともに、全国九ブロックに地方本都をおき平常の国土改造計画の遂行と緊急任務に万全の体制をは かる。
(ニ)平和共栄隊は、発展途上国の要請に応じて平和的な国土開発とくに農林、機械、医療技術などの協力を主なる任務とし、また日本における非武装平和中立の思想と経験交流をあわせもつものとする。とくにかつて日本がアジア諸国を侵略し、植民地支配を行なった反省のうえにたって、互恵平等の原則にもとづく平和共栄の理念を基本とするもので、仮りにも「新植民地主義」的意図をもつことがあってはならない。それはむしろ反帝・反植民地を基礎に発展途上国の自力更生に資する平和的活動である。
 六、結語−国民的合意のために
 以上われわれの平和と安全保障に対する基本的な考え方と非武装中立の条件とその実現の過程を明かにしてきた。
しかしその基礎にある平和と安全の理念は、ひとり日本社会党の独創でも、その独占物でもない。これこそ日本国憲法がさし示す道である。それは世界最初に原子爆弾の洗礼をうけ、太平洋戦争の廃墟から立ち上った日本民族の歴史的な所産であり、世界の平和愛好者の共通の悲願であり、また新たな世界史の創造にとって先駆的な役割を担うものである。
 戦後二十三年ここにかくも、わが国が戦火に巻き込まれることなく、経済の急速な繁栄を見たことは、政府自民党が強弁するように、日米安保条約によるものではなく、平和憲法とこの憲法を守り続けてきた日本国民の護憲、平和の運動の結果であると言わねばならない。
 昭和三〇年に社会党の支持によって実現した日ソの国交回復、これに引き続く国連加盟がなかったら、国際社会のなかにおける現在の活動はなかったであろう。
 また昭和三一年の憲法改悪を企図する小選挙区法案を粉砕することができなかったなら、憲法改悪、徴兵制と海外派兵が強行せられ、恐らくベトナムに自衛隊が派遣されていたであろう。
 日本社会党は、昭和二十六年以来平和四原則(全面講和、軍事基地反対、自主中立、再軍備反対)の旗を高く掲げ、護憲、反安保の闘いを続けてきた。
 全面講和は今日、日中国交回復を目標として継続され、軍事基地反対闘争は各地で執拗に続けられている。
 当初われわれの中立政策を批判した勢力も、今日では中立の方針に転換し、国民の大多数が、中立政策を支持している。また、わが国の非武装については、政府自民党の二十年に亘る違憲の既成事実のつみあげ、強力な世論指導にもかかわらず、今日においても、多数の国民が依然としてこれを支持している。
 このようななかで、われわれは、平和四原則の発展である「非武装中立」の目標をかかげて、さらに前進することを決意するものである。
 われわれは右の見解に立ち、非武装中立の基本的な思想とその諸原則について、国民的合意を求めるものである。
 第一は、日本国憲法の平和主義∴氏主主義の崇高な理念を国民的に再確認し、これを基調として内外政策を推進するとともに、この精神を世界におし進め、戦争の絶滅、軍備の完全廃棄の実現のために前進することである。
 第二は、恐怖の均衡、軍事力による安全保障、核抑止力に対する信仰などの幻想を打破して、平和外交の手段による安全保障の道を開き諸国民と友好と親善を進め、平和五原則に基く、国際関係を樹立することである。
 第三には、開国以来百年、欧米帝国主義を模倣して、戦争につぐ戦争のエスカレートによって、他国を侵略した路線を断乎として放棄し、日本が真のアジアの一員としてアジアの諸国諸民族と友好、協力の新しい連帯関係をつくりあげることである。この意味でも、安保条約をアジア安保に拡大し、アメリカの極東戦略の尖兵として、再び下請的帝国主義の道を進む政府自民党の政策に反対することは当然である。
 第四には、国土、国民の生命財産を守ることと、現在の独占資本の支配体制擁護とを厳格に区別し、防衛の美名の下に体制を守ろうとするゴマ化し政策を断乎粉砕することである。資本主義か社会主義か、いかなる社会体制を選ぶかは、それぞれの国民が大多数の意思によって民主的に決定すべき問題であり、他国に特定の政治体制をおしつけ、あるいは革命を輸出するために、武力に訴えることは許されない。
 自衛隊が、独占資本を守るために、反体制の国民運動に銃口を向けるような事態が生ずることをわれわれは全力を以て阻止しなければならない。
 第五はわが国が平和のなかでのみ繁栄し得ること、日本国民がその資質と能力を有することに確信を固めることである。
 軍事的政治的な背景を以て勢力範囲を拡大する過去の政策は破綻した。
 狭い国土で、工業原料の大部分を海外に仰ぎ、平和な経済交流の上に貿易の発展を期待し得るわが国の自然的地理的社会的条件を考えても、わが国こそ世界のなかで、「絶対平和」を生存の条件とする国であると確信する。
前のページへ