日韓条約不承認宣言
党中央本部
一九六五年一二月一一日
*日韓条約成立にあたって社会党がおこなった宣言。これにより社会党は実質的に韓国を承認しない状態が八十年代末まで続いた。出典は『資料日本社会党四十年史』(1985)
佐藤内閣と自民党は、本日、日韓条約、協定及び関連国内法案が成立した、と称している。しかし、日韓条約案件の審議の経過、その内容を見るに日韓条約、協定及び関連国内法案は無効であり、日本国憲法に違反し、また議会制民主主義の原則からみて不当なものである。
従って、日本社会党は、その成立を承認しない。
第一に、日韓条約案件は、審議の経過からみて、無効である。
衆参両院の審議において自民党は、国会法・両院の規則・慣例に違反して、日韓条約案件を強行した。自民党が主張している両院における「議決」なるものは、実際には存在せず、実は、彼らが、事後において勝手に作り上げたものに過ぎない。
第二に、日韓条約の内容は、日本国憲法に違反する。
日韓条約は、南北に分断されている朝鮮の南半部の政権を、事実上、全朝鮮を代表する唯一つの合法政権と見なして締結されたものである。そのねらいは、韓国との国交正常化を通じて、アメリカを中心とし日本、韓国、台湾などを結ぶ軍事同盟を実質的に結成させ、さらに、韓国市場への日本の独占の進出の道を開くことにある。日本は、これによって、朝鮮の南北分断の現状を一層固定化し、三十六年に及ぶ日本の朝鮮に対する植民地統治を清算するどころか、逆に、日本、朝鮮両民族の友好を妨げることになる。これは、軍事同盟への参加を禁止し、日本の安全を国際間の信義に委ねた日本国憲法に違反する。
第三に、日韓条約は、議会制民主主義の原則に照らし、日本国民に対し、権威と拘束力とを持たない。
国会が、憲法の規定するごとく、真に国権の最高機関としての機能を果すためには、国の平和と安全及び民主主義の根本に触れる重大問題は、国会において、その全貌が明らかにされ、徹底した審議を通じて国民が充分に納得した後はじめてその当否をきめることが、絶対不可欠である。しかしながら、自民党政府は日韓会談の全過程及び国会の審議において、終始一貫、その核心にふれる事項は、ことごとく、これを国民の眼から隠し、日韓条約に対する国民の疑惑が深まりつつあるその最中に、審議を一方的に打切ってしまった。これは重大問題については、国会において充分な審議を行ない、意見が対立する時は、国会を解散して国民に信を問うという議会制民主主義の基本原則に反する。
日本社会党は、以上述べた理由により、日韓条約、協定及び関連国内法案は、無効であり、日本国憲法に違反し、また議会制民主主義の原則に照らし、不当である、と断言する。
社会党は、日本、朝鮮両民族の永遠の友好、日本の平和と民主主義のために、以上の立場を堅持して、今後も南北両朝鮮に対し、平等互恵の立場に立って、交流を続け、朝鮮統一の実現を支援し、将来統一政府との間に、日本と朝鮮との正式かつ完全な平和的外交関係を確立するために奮闘する。
日本社会党は、日韓条約、協定及び関連国内法案の不承認を、ここに厳粛に宣言する。