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日本社会党第一次訪中親善使節団と中国側との共同声明
日本社会党=中国人民外交学会
一九五七年四月二二日
*日本社会党と中国との友好関係の原点となった声明。出典は『資料日本社会党四十年史』  
 
 日本社会党訪中親善使節団は、日本と中華人民共和国の親善友好を増進し、両国の国交の正常化を促進するために中華人民共和国を訪問した。
 日中両国の国交がまだ回復していないにもかかわらず、中華人民共和国政府と人民は使節団を歓迎した。
 
 使節団の浅沼稲次郎団長、団員の勝間田清一、佐多忠隆、曾禰益、穂積七郎、山花秀雄、成田知己、佐々木良作氏ら八氏は、訪問期間中に、中華人民共和国の毛沢東主席、周恩来総理に敬意を表するとともに長時間にわたって会談した。使節団はまた彭真北京市長、張奚若中国人民外交学会会長、李徳全紅十字会総会長、王震農墾部長、葉李壮対外貿易部長、許徳エン水産部長、薛暮橋国家計画委員会副主任、雷任民対外貿易部副部長、王子鋼郵電部副部長、塗長望中央気象局長、喬冠華外交学会副会長、廖承志全国人民代表大会常務委員会委員、楊U漁業協会主任および、その他各界の関係ある人びとと数回にわたって会談した。会談では、つぎの問題について率直に意見を交換した。
 
(一) 日中国交回復に関する基本方針
(二) アジアおよび一般国際間における共通の問題
(三)日本と中国の経済協力
(四)貿易のいっそうの促進
(五)漁業面での協力
(六)技術交流
(七)文化交流
(八)気象および郵政業務についての協カ
(九)居留民の相互往来と遺骨の相互送還
 
 会談は終始友好かつ誠意ある空気のなかでおこなわれた。
 会談は多くの具体的成果をあげ、両国の親善友好の増進にとってきわめて重要な役割を来した。双方は以下の各点について発表することに同意した。
 
一、日中国交の正常化について
 1 両国の地理的歴史的関係と当面の情勢にかんがみ、双方は日本政府が中華人民共和国政府との間にできるだけ速やかに正式に全面的な国交を回復すべき段階がすでに到来し、日中両国間の長期かつ積極的な協力関係の確立が各種の懸案を友好的に解決する基礎であると考える。
 日本社会党使節団は日本社会党の基本方針について、つぎのように説明した。
 「二つの中国が存在することは認めない。台湾は中国の内政問題であり、台湾をめぐる国際間の緊張状態が平和的に解決されることを望む、国連の代表権は中華人民共和国に属すべきものである。」
 中国政府はこれらの主張にたいし歓迎の意を表明した。
 2 各種の困難と障害を克服して、両国間の人的、経済、技術的、文化的交流を拡大すべきであり、両国間の現在の民間協定とその他協定に達しうる問題はできるだけ速やかに政府間の協定に発展させるべきである。
 
二、アジア・アフリカの平和と友好協力について
 1 あまねく知られている二大陣営のほかに、アジア・アフリカ地域には、一切の植民地主義に反対し、民族の独立のために新たな経済建設と平和を守るために勇敢に闘っている多くの民族主義国家があり、これらの国家が多数を占めてさえいる。
 これらの国家の正義の要求は尊重され、積極的に支持されねばならず、かれらが世界の平和にたいして果している貢献は重視されねばならない。
 2 各国の社会制度やイデオロギーにちがいがあるにもかかわらず、平和共存は必要であるばかりでなく、可能でもある。五原則とバンドン精神は尊重され、植民地主義は反対されねばならず、国際関係においては、国の大小にかかわらず等しく平等であるべきである。アジア・アフリカ諸国間の経済・技術・文化の協力を強化することは重要である。
 3 できるだけ早く第二回アジア・アフリカ会議を開くことは意義がある。
 4 アジアにおける対立的軍事ブロックを解消し、中国、日本、ソヴィエト、アメリカを含む太平洋および極東諸国の集団平和を保障する条約を締結することを希望する。
 
三、国際平和について
 1 国際情勢についての双方の意見は完全には一致しなかったがしかし、双方は、世界にはいまなお戦争の危険が存在しているにもかかわらず、全般的な国際情勢が緩和にむかっており、この方向をより一層発展させねばならないと一致して認めた。
 2 大幅な軍縮をおこない、対立的な軍事ブロック(外国軍隊の駐留をもふくむ)を解消させ、話合いをつうじて緊張を緩和させ、戦争を防止しなければならない。
 3 とくに核兵器、熱核兵器の製造、保存、使用を禁止しなければならない。そのため米、ソ、英など核兵器を掌握している国はすみやかにしかるべき協定をむすぶべきである。
 これらの協定が締結されるまでは、これらの兵器の実験を禁止する協定を結ぶべきである。核兵器、熱核兵器の実験禁止協定が結ばれるまではあらゆる努力をはらって実験禁止をうながさねばならない。
 原子力の平和利用を積極的に促進すべきであり、アジアにおいて原子力の平和利用について協力することがとくに必要である。
  一九五七年四月二十二日
北京において