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                社民党第18回臨時全国大会(11月14日)第1号議案
                                      10月22日 党全国連合常任幹事会決定
            「立憲民主党・枝野代表からの『よびかけ』」への対応(案)
 
出典は『社会新報』No5105(2020年11月11日)号。出席代議員167人中、賛成84人、反対75人で、議案は可決された。可決されたので、厳密には(案)は削るべきだが、出典の通りとした。

                         
1.「よびかけ」後の経過
 @昨年1 2月6日、立憲民主党・枝野代表より、「安倍政権(当時)に代わって政権を担いうる政党を築き上げ、次期総選挙での政権交代を現実のものとする」ため、「立憲民主党とともに行動し闘っていただきたい」として、政党合流の「よびかけ」が行なわれました。社民党は「よびかけ」を重く受け止めて持ち帰り、党内議論を経て結論を得ることとし、同月1 9日、討議資料「立憲民主党・枝野代表からの『よびかけ』について」を作成し、党内議論を開始しました。
 A今年2月2 2日、2 3日の第1 7回定期全国大会では、「合流の是非の判断は次期臨時党大会で行うこと」とし、党内議論を継続し、丁寧に積み上げることとしました。あわせて、疑問や不明の点に応え、かりに合流を選択した場合どうなるのかなど具体的内容についての協議を行い、一層の情報や資料の提供に努力することを確認しました。
 B大会決定に基づき、4月から、社民党と立憲民主党の両党幹事長間の協議を再開し、計3回の公式会談を経て、6月2 3日に一定のとりまとめを行ないました。これをもとに、「立憲民主党・枝野代表からの『よびかけ』についての討議資料(2)」を作成し、昨年1 2月の討議資料の内容を補強するものとして、党内議論をさらに深めていくこととし、9月末を目途として集約を図ることとしました。
 Cなお、7月1 5日、立憲民主党は国民民主党に対して、新党結成を含む提案を行ないました。両党幹事長間で取りまとめた文書の前提や内容が大きく異なってくる際には、あらためて追加の資料を作成し、党内議論の素材として送付し議論を要請することにしていましたが、立憲民主党の福山幹事長は7月2 1日の吉田幹事長との会談で「社民党との関係については、いささかも思いは変わりません」と述べ、また、新党結党後の9月1 8日の会談でも、新・立憲民主党の執行役員会と常任幹事会で、「社民党との協議の継続」について全会一致で了承されたとの説明がありました。
 
2.党内議論で確認された共通認識
 この間の各級党機関の努力と全党の皆さんの真摯な議論では、以下のような認識を共有することができました。
(1)社会民主主義への確信
 @私たちは、社会党以来、護憲の旗を掲げ、平和と民主主義、働く者と社会的弱者のために活動してきました。そして、「平和・自由・平等・共生」を日本における社会民主主義の理念として位置付けた「社会民主党宣言」の方向性こそ、行きづまる日本社会を立て直す、最も有効な処方箇であるとして実践してきました。
 A気候変動危機や格差・貧困の拡大で「資本主義の再定義」が求められているのに加え、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)に見舞われています。競争原理と自己責任を強調する新自由主義の限界が明らかになり、あらためて公共の役割、社会の支え合いの役割が見直され、重視される時代に入っています。こうした危機と社会の大きな転換点にある今だからこそ、いのちとくらし、尊厳を守る政治が必要であり、誰一人も取り残さない、持続可能な社会をめざす社会民主主義自体の理念や存在価値が今以上に脚光を浴びていく必然性と理由があります。
(2)自公政権の暴走政治に終止符を打つ
 @自公政権の暴走政治に終止符を打つため、野党の大きな塊をつくることが必要です。新自由主義・新保守主義に対抗する社民・リベラル勢力の総結集をめざしてきた、私たちの果たす役割が大きくなっています。
 A安倍政権は、世論に耳を傾けず、違憲の「戦争法」を強行するなど「戦争する国」へと大きく舵を切るとともに、財界のための「世界で一番企業が活躍しやすい国」づくりをめざしてきました。しかし、安倍首相は、アベノミクスや外交の行き詰まり、森友や加計問題や桜を見る会問題をはじめ、公文書廃棄や改ざん、隠蔽、虚偽答弁、政治の私物化、河井克行前法相夫妻や菅原一秀前経済産業相、I R等の疑惑からリセットするかのように突如退陣しました。
 B安倍政権の継承・発展を明言する菅首相は、めざす社会像として、「自助・共助・公助、そして絆」を掲げ、「規制改革を政権のど真ん中」に位置づけ、新自由主義的な構造改革に邁進しています。
 C衆議院議員の任期は2 0 2 1年10月までであり、いつ解散があってもおかしくありません。菅政権と断固対決し、「安倍なきアベ政治の暴走」をストップさせ、政権交代を実現するための態勢づくりを急ぐ必要があります。次期衆院選では、立憲野党と市民が共闘し、共通政策や政権構想など自公政権に代わる新しい対抗軸を形成し、政権交代の道筋を切りひらく闘いが求められています。
(3)社民党を取り巻く危機的な状況
 @党員数や自治体議員数、機関紙誌部数、党財政などの推移をみると、党勢は依然厳しく、国政選挙における立候補者と得票数の減少による政党交付金の大幅な減少は、全国連合ならびに地方組織の維持、選挙闘争資金の確保に大きな困難をもたらしています。党員の高齢化も相まって活動量も低下傾向にあります。
 A衆院選で「5議席以上・得票率3%以上」を獲得することが不可欠だとして努力してきましたが、党の再建の展望をどのように描くことができるか、各地で厳しい現実と議論に直面しています。このままでは、国政政党としての社民党の維持・存続は、きわめて困難な現状にあるといわざるをえません。
 B社会民主主義が注目され、政権交代に果たす社民党の役割が求められるこのときに、党を取り巻くさまざまな危機的状況を打開していかなければなりません。労働者や社会的弱者の要求実現や政治的課題の解決、平和と民主主義、国民生活を守る責務がますます重要さを増す中にあって、いかにして社会民主主義の理念、政策、運動を継承していくのか、その道筋を真剣に探求する責任と使命があります。
 
3.「よぴかけ」への社民党の対応とその理由
 @常任幹事会は、9月末までに各都道府県連合における議論の集約を求め、ブロック事務局長会議(10月1日)、全国幹事長会議(10月9日)で党内議論の集約を行ないました。
 そして、「合流の是非の判断は次期臨時党大会で行う」とした第1 7回大会決定に基づいて、「よびかけ」に対する社民党の態度として、つぎのように対応していくことを提案します。
 A「よびかけ」に対しては、その趣旨を十分理解しつつ、この間の党内議論と共通認識を踏まえ、「社民党を残し、社会民主主義の実現に取り組んでいく」という選択と同時に、「『よびかけ』に応えて、立憲民主党へ合流し、社会民主主義の継承・発展をめざす」という選択のいずれ七理解し合うこととします。
 B「合流の是非の判断は次期臨時党大会で行う」としてきましたが、今回の「社民党の対応」は、いずれの選択お認め合うものであり、合流の是非、賛否自体を問うして)とぼかしていません。これは、この間の党内議論や全国幹事長会議で出された皆さんの真摯な意見と集約に基づくものです。
 C私たちは、社会民主主義への確信、政権交代に果たす党の役割、党を取り巻く危機的状況について、共通の認識を得ることができ、社会民主主義の理念・政策、運動、組織を次世代に継承し、広げ、しっかり日本社会に根付かせていくために何か必要なのかについて、お互いの議論を深めることができました。
 D党内議論では、2 0 2 2年までは政党要件が維持できるのだから、全国津々浦々で因難に耐えて踏ん張っている党員の皆さんとともに、苦しくても今以上に頑張り、次に備える戦略があってもいいのではないかなどといった意見が出されました。また、仮に合流するのであれば、「社民党がなくなるならば自分の政治活動に区切りをつけよう」と、これまで活動してきた党員が霧散してしまわないかということを心配する声々、長年社会党・社民党を応援してきた支持者が離れてしまうのではないか、などといった懸念も示されました。
 E他方、社会民主主義を残し、今後広げていくとした場合、残念ながら今のままでは厳しいのではないか、党が危機にあること自体を直視し、「社会民主主義の灯」を消してはならないのでないかなどとして、「よびかけ」に応えて、立憲民主党へ合流し、新しいステージで活動の場を確保し、社会民主主義の継承・発展をめざしていく決意を固めた党員、党組織があります。
 Fさらに、「厳しい中守ってきた党の団結は財産であり、前回のような党の分裂は避けるべきだ」、「執行部は党を分裂、混乱させる方針を出すべきでない」、「賛否を激突させる手法をとることは、どのような結論になろうと党内に大きな禍根を残すことになる」、「対立や混乱、遺恨を招かないよう、英知を絞るべき」などの意見が出されました。「違いを強調して相手を批判する」文化から「違いを認め合ってお互いをリスペクトする」文化への転換を図るべきとの問題提起もありました。
 Gこうした党内議論の積み重ねに基づき、合流の是非を問うのではなく、いずれの選択も理解する対応をとることとしました。今回の対応は、社会民主主義の理念や政策の実現をめざす実践の場の拡大であり、それぞれが否定・対立するものではありません。登山道は違っても、改憲を阻止し、人々のいのちとくらしを守り、社会民主主義の継承・発展をめざすという共通の頂上に向かう道です。
 Hこの間、「社民党の党員・党組織が団結し、まとまって行動できる環境整備に最大限努力する」との第1 7回大会決定に基づき、尽力してきました。残念ながら、党全体がどちらかの方向へ、「まとまって行動」するには至りません。しかし、これからも、党内議論でつかんだ共通認識に立って、社会民主主義の継承・発展をめざす社民勢力の同志として、同じ目標に向かって、それぞれの道を選択して行動していきます。
 
4、これからの取り組みの方向性
(1)社民党を残し、社会民主主義の実現に取り組んでいく
 @「今こそ社会民主主義の出番だ」という情勢を積極的に受け止め、日本から社会民主主義の理念を掲げる政党を無くしてはならないという思いで、社民党を残し、社会民主主義の実現に取り組みます。
 A「新しい社民党」へのイメージ・チェンジを図り、国民から信頼され選択される社民党をめざします。グリーン(原発ゼロや環境)や非正規労働者、女性、ジェンダーなどのテーマをより重視します。ネットやSNSの強化などで発信力を強めます。「すべての99%の大衆」のために働くなど、市民と一緒に行動します。
 B党を取り巻く危機的状況を乗り越えるには、今まで以上の努力が求められます。党内外の様々な皆さんと一緒に、決意を新たにして奮闘していきます。
 
(2)「よびかけ」に応えて、立憲民主党へ合流し、社会民主主義の継承一発展をめざす @立憲民主党へ合流して、新たな党の中で活動の条件を確保し、私たちの闘いを持ち込みます。運動はつくるものであり、平和フォーラムなどと進めてきた運動の継承・発展に全力をあげ、立憲民主党全体の取り組みにしていきます。
 A労働組合や市民運動に今以上に働きかけ、社会民主主義の理念や政策、運動に共感する仲間を拡げていきます。そして候補者擁立を積極的に行い、私たちの仲間を今以上に当選させる可能性を開きます。立憲との違いは、社民党の強みでもあります。双方が力あわせをし、相乗効果をあげ、社民・リベラル勢力の共同戦線党の構築をめざします。
 B社民勢力が一定の影響力を持っていくには、社会民主主義への確信と主体性を持って、新たな決意で粘り強く努力していく必要があります。「討議資料」(2)で組織化を検討するとした「社民フォーラム(仮称)」については、立憲民主党への合流を選択した都道府県連合、党員などが社会民主主義の理念や政策、運動を継承し、相互交流や情報交換などを進めることを目的に設立します。地方組織だけでなく、地域のフォーラムの活動を全国につなげ、支え合うためにも本部組織も立ち上げます。詳細は臨時大会後に立憲民主党
への移行を決めた都道府県連合などと協議し決定します。
 
5.社会民主主義を次世代へ、ともにがんばろう
 @全国連合は、党員・党組織が、「立憲民主党へ合流し、社会民主主義の継承・発展をめざす」選択をすることも、「社民党を残し、社会民主主義の実現に取り組んでいく」選択をすることも、いずれも理解し、円滑に進むようにします。
 A社会民主主義の理念や政策、護憲、原水禁、脱原発、非核・平和、反戦・反基地、国民生活擁護などの運動を継承・発展させるため、それぞれの立場でこれまで以上の努力を行ないます。
 Bいずれの道を進むにせよ、次期総選挙において、白公政治に終止符を打ち、改憲を阻止し、政権交代を実現するとともに、憲法と社会民主主義の理念にもとづく政治を全力でめざしていく必要があります。社民勢力全体として、できるだけ多くの候補者を擁立し、志を同じくする議員を一人でも増やしていきます。社会民主主義を次の世代に引き継ぐため、全党の皆さんの一層の奮起をお願いします。
                                     以上