はじめに
「第4回全国青年議員・青年党員合宿交流会in愛知」での議論をもとに、党再建計画に関する青年からの要望を作成いたしました。再建案(二次案)への追加・修正要望という形で、下記に青年からの提案をまとめさせていただきます。
これまで社会党・社民党を築いてこられた諸先輩方に敬意を表するとともに、諸先輩方の「想い」を受け継ぐべく、だからこそ必要な社民党再建に向けた要望を提案させていただきます。
●「社民党再建への道筋は、『社民党宣言』に書いてある」。これが青年の共通認識です。よって、この『社民党宣言』を具現化できるかどうかに、党再建はかかっていると考えます。
●運動の強化だけで党再建をするのは、ここ何十年の党衰退傾向が示すように限界です。今こそ、党消滅の危機であると真摯に受け止め、人事や組織、政策も含めた抜本的な党改革をのぞみます。
●そこで青年は、「よそもの・若者・ばかもの」との連帯をメインにした党再建計画の構築を要望します。高齢化・過疎化した地域を活性化するのは、「よそもの・若者・ばかもの」だとよく言われます。まさに社民党も、高齢化・過疎化しているというのが実態ではないでしょうか。
今の党にとって青年は「よそもの」かもしれません。またこれから掲げる提案を見ると「ばかもの」だと思うかもしれません。しかし、議員数・得票数・党員数のすべてが減少し、党が消滅の危機に直面している以上、今度こそ、思い切った改革をする必要性があると考えます。
●同質で異質なものを排除する「美しい」組織は必ず衰退します。また社民党は、「正しさ」を主張し続ける党ではありません。その「正しさ
」とは、あくまでも身内や支持者の中での「正しさ」でしかありません。『社民党宣言』にはこう書いてあります。
「私たちは、人々の現状に対する不満や不安を出発点とした大衆的な運動を重視し、固く連携しつつ、議会制民主主義の機能を通じて社会民主主義の理念に基づく政策を実現させていきます」と。
すなわち、社民党は自らの「正しさ」を主張する前衛党ではなく、人々の不満や不安を出発点とする政党のはずです。そして多様な人々の不安を受け止めるには、内輪で固まるのではなく、外部の「よそもの」やこれまで排除してきた「ばかもの」とも連帯していくという寛容さこそが必要不可欠と考えます。
●よってこの党再建計画においては、これまで信じてきた自らの「正しさ」をこそ問いただし、抜本的に改革する必要があると考えます。
T 党の現状についての認識
●参議院選挙に惨敗し、そして遅くとも3年以内に衆議院・参議院の選挙があるのにもかかわらず、党内において、解党的状況であるとの認識が十分に共有されていないことにこそ、青年は大変な危機を感じています。
●自民党ですら、若手の思い切った人材登用の動きが見られます。広報や宣伝物に関しても、若手の意見が取り入れられているようです。にもかかわらず、かつての革新政党である社民党が「変わる」ことへの意識を有せず、硬直化していることに大変な危機を感じています。
●辻元清美衆議院議員(前・党女性青年委員長)の離党は、青年にとって残念でなりません。これまで社民党の女性青年委員長として、社民党の青年議員増加のために尽力された辻元氏の離党の原因は何だったのか、徹底的な検証が必要と考えます。
●辻元議員の離党だけでなく、青年の中には無所属での立候補を決意した者もいます。このような流れに対し、「去るものは追わず」ではなく、その原因を相手に求めるのでもなく、社民党の組織としてのあり方について、自らを問い正ししていく姿勢こそが必要と考えます。
●2011年に統一自治体選挙を控える青年予定候補者にとって、社民党の現状はとても厳しいものです。特に20代・30代など同世代からの支持を得られていないことを痛感しています。さらに、女性を大切にする党であるにもかかわらず、若い女性からも支持されていません。たとえ政策が近くても、若い女性は「無所属・市民派」で選挙に出てしまいます。さらに、非正規雇用の人は、正社員労働組合への「敵視」が大変強いです。よって、非正規雇用の人の支持もあまり得られていません。すなわち、「社民党でなければ応援する」「社民党は古臭い」といったネガティブなイメージを持たれています。「ヨーロッパ社民」のような早急なイメージづくりが必要です。
●一定の支持者をもっている現職議員と違い、新人候補者や青年候補者は、新たな支持者を発掘しなければなりません。だからこそ、社民党がマイナスイメージを持たれていることを痛感できます。党再建のためには、支持者のいない、現場の厳しい有権者の反応を知っている青年の声をこそ、党運営に反映させる必要があると考えます。
●遅くとも3年以内に、衆議院・参議院の選挙があります。現状では、国会議員が5人以下になり、政党要件を満たせなくなる可能性は大です。今回の党再建計画こそが、全国政党としての社民党が生き残れるかどうか、最後のチャンスと位置づける必要があると認識します。
●今回の再建計画が空文化した場合、多くの青年議員・党員は党の希望ある前途を見いだせません。
●党再建のためには、運動の強化だけではなく、人事や組織改編・規約改正・政策面の見直しなどをも含めた、タブーなき議論こそ必要と考えます。過去の栄光にすがることなく、今こそ抜本的な党改革を断行すべきと認識します。
U 政治・経済情勢の特徴と社民党
●新自由主義のもとで格差が拡大し、そうした人々の不安を新保守主義がたくみに吸収するという偏狭なナショナリズムが台頭しています。このような情勢の中で、「護憲平和」ばかりを訴えることは、自ら支持を減らす行為であると党全体で認識する必要があると考えます。
●もちろん「護憲平和」を否定するものではありません。なによりも人々の生活の不安を取り除く具体的な政策体系をつくり、社民主義政党としてのイメージを確立する必要があります。それはつまり、護憲政党から社民主義政党への発展です。さらに言いかえれば、『社民党宣言』を党内で徹底させることです。
●21世紀の現在においては、「生活」が一番です。人々の安心・信頼を取り戻す社会が構築されてこそ、平和は実現します。「護憲平和」を守るためにこそ、まずは現状の格差社会のゆがみを是正することが必要です。
●もちろん沖縄など地域事情においては、とりわけ平和が重要であることは言うまでもありません。ただし、党全体としては、『社民党宣言』にあるように、社民主義政党としてのアイデンティティを明確にすべきと考えます。
V 三党連立政権・政権離脱・10年参院選
●社民党は、『社民党宣言』第W章(改革の道筋)において、「新自由主義・新保守主義の政治の転換を求める政治勢力と連携し、主体性を維持しながら具体的な政策課題の実現を目指す、緊張感ある連立政権の形成」とうたっています。ここで規定されているように社民党が連立政権の一翼を担ったことを青年は評価します。
●したがって、普天間基地の辺野古移設問題で、連立離脱にいたったことは残念でなりません。ただし、このような流れになることは想定できたはずです。参議院選挙を控え、連立からの「出口戦略」をも含めた選挙戦略があったのかどうか検証すべきと考えます。
●また連立からの離脱が、党中央と地方の幹部のみで決定されたことに疑問を感じています。連立離脱に至る過程も、党員にすら「見えない」党運営がなされ、不明瞭であったと言わざるをえません。
マスコミベースの報道で党の情報を知るという状況が続きました。党内の情報共有、透明な党運営がなされたのか検証すべきと考えます。
●「スジを通した」福島党首への評価は高まりました。しかしこれを参院選につなげられなかったのは、党の基本的スタンスと選挙戦略の不明確が大きな原因と考えます。他党であれば当然なされる選挙敗北の責任を明確にし、党内を活性化させるためにも、やはり今回の「党再建計画」においては、タブーなき改革こそを実施すべきと考えます。
●党内対立を恐れる声も多く聞かれます。しかし、社民党は解党的危機にひんしているのです。このまま自然消滅を選択するのか、あるいは「党再建」を目指して議論するのか、まさに社民党の選択が問われています。党の団結のためにこそ、恐れず議論をすべきです。
W 政権へのスタンス
●『社民党宣言』に従い、「新自由主義・新保守主義の政治の転換を求める政治勢力」との連携、この一点において、党の主体性を大切にしつつ、時には妥協し、政界再編も視野に入れた、あらゆる選択肢を模索すべきと考えます。
●国政における政権構想がないかぎり、国会議員の減少と相まって政党要件を消失し、ローカルパーティになっていく可能性は大であると考えます。
X 党勢拡大に向けた行動提案
●これまで党勢拡大・組織強化策が幾度となく立案されてきました。基本的に、これまで提起されてきた運動方針はすべて実施すべきです。しかしながら、成果を上げることなく今日に至っているのも事実です。その原因をさぐることが「党再建」につながると考えます。
●「党再建」の道は、運動の強化だけでなく、党の組織のあり方や政策を含めた抜本的に改革して実現すべきです。
●政策実現で一致する政治勢力と連携するためにも、透明な党運営・党内での情報共有は必要不可欠であり、そのためにもこの党再建計画において、人事や組織改編・規約改正・政策面の見直しなどをも含めた、タブーなき議論こそ必要です。
党組織の強化・拡大について
●まずは大前提として、党のイメージを変える必要があります。党の現状のイメージを変えない限り、特に青年、特に女性層への党勢拡大は限界であると考えます。
1 大胆な人材登用:青年常任幹事の抜擢
●『社民党宣言』第W章(改革の道筋)では、「『もう一つの日本社会』を実現させる挑戦に、若い世代から高齢者まで、すべての人々が参加してくださることを呼びかけます」と規定しています。
●しかし現状、党運営に関し、この社民党宣言の理念が徹底されていません。
●高齢化している党組織・党運営に対し、「若い世代」は参加できているとは言えません。
●「青年クオータ制」を導入するとともに、青年を全国連合常任幹事に抜擢を希望します。
2 外部評価委員会(有識者懇談会)の設置
●『社民党宣言』第W章(改革の道筋)では、「私たちは、労働運動と働く人々、中小企業や個人商店、第1次産業に従事する人々と固く連帯します。そして生活者の立場から様々な課題に取り組む市民運動、非営利団体(NPO)などの活動、さらには社会の進歩と改革を担う学者や文化人とネットワークを結び、改革を進めます」と規定されています。
●よって「党再建」のために、内部での閉じた議論から脱却し、外部との多様な連帯を構築するためにも外部評価委員会(有識者懇談会)を設置すべきです。
3 政策のタブーなき検証
●政策実現で一致する政治勢力と連携するためにも、消費税の増税を含む財源論、社会保障のあり方、貿易自由化と農業の将来など、タブーなき政策の検証が必要です。
●そのために、前述のとおり外部評価委員会(有識者懇談会)を設置すべきと考えます。
4 「見える社民党」を目指して
●記者会見のフルオープン化を通じて、社民党を取り上げるメディアを増やすことが必要不可欠です。またそれに伴い、機構や機能、人員配置などの改編を実施すべきです。
●党の主要会議、中央常任幹事会、党三役会議などの議事録を公開し、党運営の透明化を図ることが必要です。
5 情報発信力を高めよう
●党の看板である国会議員のホームページを早急にリニューアルすべきです。支持者が高齢者であり、ネットを利用していないという声をよく聞きますが、党の「顔」としてネットによる情報発信を強化してほしいと思います。
●党も議員も「その日のことは、その日のうちに」を原則にし、ホームページ上で情報発信すべきです。
●広報・宣伝物に関し、青年・女性の意見を反映させ、デザインを一新することは絶対に必要です。この点でも外部評価委員会(有識者懇談会)を設置すべきと考えます。
6 青年組織の見直し
●孤立化している青年議員の連帯を深めるためにも、党青年議員団全国会議の創設を求めます。
●支部単位、県連単位では青年が孤立している状況です。全国レベルの青年組織の設置が必要不可欠と考えます。
7 専従職員に関して
●非正規の専従職員に関し、早期に「正規職員」化すべきと考えます。財源面などから難しいというのであれば、まさに現在の新自由主義と同じ論理になります。さらに、オルグとして重要な役割である専従職員が「非正規」であるならば、モチベーションの低下だけでなく、社民党としての説得力がなくなります。早急に、身内からの改革が必要です。
8 財政基盤に関して
●党主催の集会等を開き、党財政を支える仕組みの構築を図るべきです。
●「青年支援基金」を設立し、新人青年予定候補者を財政的に支援する仕組みを構築すべきです。
●ネット献金や、ネットを通じた物販活動を強化すべきと考えます。
Y 自治体議員・国会議員の増大に向けて
●まずは離党した現職の議員に対し、「再結集」を呼びかける必要があると強く考えます。もちろんかつての党内抗争や民主党・新社会党への分裂など、過去の経過があるということを青年は承知しています。しかし今、社民党こそが、しなやかに変わらなければならないと思います。「党再建」に向けて、過去のわだかまりを捨て、対話を通じて連帯していくというのは、まさに平和外交を信奉する社民党員の使命であると考えます。
●支部任せの候補者発掘は限界と考えます。多くの党が実施しているように、少なくとも自治体議員選挙における、青年層・女性層を対象にした「公募」を実施することが必要と考えます。また「公募」における面接等の実施や選挙区の割り当てなどに関しても、全国規模で取り込むこととし、女性青年委員会や自治体委員会の機能・連携を強化することで対応すべきと考えます。
●新人青年予定候補の育成のためにも、党独自の地方議員・国会議員のもとでのインターン制度を導入すべきです。
●前述の通り、青年候補者の発掘には、党のイメージを変え、青年層・女性層の支持を拡大していく必要があります。まさにこの党再建計画を実行できるかどうかが、その試金石であると考えます。
おわりに
以上、社民党を愛する青年からの社民党再建に向けた真剣な提案です。
これまでの伝統や栄光から抜け出すことは、そう簡単なことではないと思います。しかし現状は、党消滅の危機であることは間違いありません。
社民党が消滅することを青年はのぞみません。それは何より、『社民党宣言』にあるように、「社会のあらゆる分野で格差と不平等が依然として存在する中、私たちは働く人々、子ども、高齢者、障害を持つ人々など、弱い立場に置かれている人々の利益を実現することが、社会の安定と進歩に不可欠だと考え」るからです。
我々青年は、社民党を愛しています。社会党・社民党を築いてきた諸先輩の思いを受け継ぎます。しかし現状はどうでしょうか?今こそ、「よそもの」であり「ばかもの」であり「若者」である我々の意見が党運営に反映されることを、心から希望いたします。