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新党問題に問する報告
社会民主党全国連合幹事長 佐藤観樹
*出典は『月刊社会民主』1996年11月号全文(zip)
(1)
 私は、全国連合常任幹事会を代表して、本日の都道府県連合幹事長会議を開催するに至った経過と、全国連合幹事会が選択した新党問題に関する結果について報告致します。
 すでに、九月一三日の都道府県連合幹事長会議でも報告致しましたように、新しい政治勢力結集の動きは、通常国会の閉幕とともに、政党の枠を超えた国会議員の政策協議が始まり、個人の責任と決断で新しい政党をつくろうという方向で展開してきました。この動きは、新党さきがけの鳩山由紀夫代表幹事の離党によって促進され、今日に至っておりますことは、ご承知のとおりであります。
 この状況の推移に対応して、社会民主党と新党さきがけの首脳会談では「社民、さきがけ、鳩山グループを軸に自民党でも、新進党でもない政治勢力の大結集をはかろう」ということで合意しました。
 新党さきがけは、九月五日の臨時総務会において、「広範な国民の期待に応えるための新しい理念・政策のもとに、個人の判断で結集し、とくに行政改革を最も優先とする新しい政治勢力をつくりあげるべく、鳩山グループや杜氏党と相談していきたい」という方針を定め、わが党にも、その方針内容が提示されたのであります。
 さらに、新党さきがけからは、党に対して菅・鳩山会談を開くことへの理解を求める要請がありました。党は、この要請に理解を示し、新党さきがけとの首脳会談を開くなど菅・鳩山会談の成功に向けた環境づくりに努めて参りました。
 菅・鳩山会談は、九月七日から九日にかけて、断続的に開催され、九日未明、「衆議院の解散前後に大きく結集し、新党を結成する」ということで合意したのであります。この合意に基づいて、九月一一日には岡崎トミ子、菅直人、鳩山由紀夫、鳩山邦夫の四氏による「民主党設立委員会結成」に向けた共同アピール、および基本理念・基本政策が発表されました。
 これらの動きを受けて、「社民党と連帯する労働組合会議」と「民主リベラル推進労組会議」は、九月一二日、民主党への期待感をにじませつつ、「広範かつ選別・排除なき民主リベラル勢力の大結集」を展望した「見解」を発表して、民主党に対する基本スタンスを明らかにしたのでありまず。
 一方、党は九月一二日、党内外の情勢を総合的に判断して、民主党設立委員会の基本理念および基本政策は、党の理念と政策に合致していること、「排除の論理をとらず、すべての人々に、結集を呼びかけ、理念と政策の一致による大きな流れをつくろうとしていること−−などを肯定的に評価したのであります。その上で、国会議員が自らの責任と決断で、新しい政党に参加することを了承し、「次期総選挙では民主党立候補者を推薦して戦う」という見解を表明しました。この見解は、九月一三日の都道府県連合幹事長会議に報告し、同日から発効されたのであります。
 しかし、その後、民主党設立委員会呼びかけ人の一部から、衆議院候補者の選考問題に関連して、「選別公認」「特定政治家排除」の発言などがあって、新党さきがけは、不信を持ち「幹部不参加」の方針を決めたのであります。
 党見解発表直後もなお、「選別公認の発言」が続くことを懸念した村山党首は、九月一四日秋田市内の記者会見で、一二日の常任幹事会で決定した見解について「排除の論理が残っているなら、真剣に議論して結論を出さないといけない」と言及されました。これを受けて、九月一七日から断続的に聞かれた常任幹事会では、民主党設立委員会幹事会と正式に協議すべきであるとの意見も出され、さらに「社民党と連帯する労働組合会議」及び「推進労組会議」との協議の場でも同趣旨の要請がありました。これらの意向をふまえ、常任幹事会として民主党設立委員会幹事会と会談しましたが、「排除・選別」の懸念を払拭することができず、一八日未明、別紙配布の「新党及び総選挙に関する見解」をまとめたのであります。
(2)
 私たち社会民主党は、日本社会党時代から民主リベラル勢力が大きく結集して、自民党でも新進党でもない新しい政党をつくることを基本方針として掲げてきました。この方針に基づいて、市民・リベラル層と連携した地域政治勢力やローカルパーティーの形成をはじめ、新党さきがけとの協議など、さまざまな角度から、真剣な努力を積みあげてきたのであります。しかし、日本社会党−−−社会民主党への信頼感の問題や党内事情などから、総選挙前にその努力を実らせることはできませんでした。
 私は、わが党が一定の役割を果たしつつ、総選挙前には志を同じくした政治勢力を結果するという構想が実現できず、直近の総選挙で社民、さきがけ、民主党の三つに分かれて戦わざるを得ない結果になったことを、まことに残念に思うのであります。
 今回の「見解」は、苦しいなかでのやむを得ない選択でありましたが、支持者の不安を募らせ、支持団体の政党支持に大きな変動をもたらし、総選挙準備の混乱を招くなど、党は現在、未曽有の危機を迎える結果となっております。
 直面した現在の危機を乗り越え、政治に対する責任を果たすために、私はいま一度、「第三極」の大結集をめざす接着剤となって、懸命に汗を流したいと考えております。無党派層は依然として自民、新進党以外の政治勢力が、小異を残して、大同につくことを求め、多くの有権者や労働界も民主リベラル勢力が一つにまとまることを期待しているからであります。この世論に応えることが、私たちの最大の課題であり、政治に対する責任であると考えるのであります。
 お手元の「見解」でも、党は社会民主党所属の予定候補者が「自らの責任と決断で民主党に参加することを拒まない」という立場を明確に選択しております。私はこの選択は、諸勢力が大同団結するための重要なプロセスの一つであると考えるのであります。
 新党さきがけ、民主党は理念や政策の方向性で一致しており、政治に共同の責任を負うことのできるパートナーであります。この認識に立って、総選挙を通じ、また総選挙後の予想される政界再編において、諸勢力が大きく結集できる基盤をつくりあげるため、総選挙では社会民主党の旗を掲げて堂々と戦わなければなりません。
 以上の経過と結果から、常任幹事会は総選挙態勢の確立を急ぎ、機関会議は総選挙後にあらためて招集する−−という判断から、全国代表者会議の中止と都道府県連合幹事長会議の開催を決定したのであります。
資料 新党及び総選挙に関する見解 一九九六・九・一八 社会民主党
(1)わが党は、諸勢力が広く大きく結集して、自説党でもない、新進党でもない、もう一つの新しい政治勢力を形成することを目標に掲げて真剣に努力してきたが、残念ながらこの努力を実らせることができなかった。
(2)次の総選挙は、社会民主党として全力をあげてたたかう。
(3)わが党所属の衆議院議員選挙の予定候補者が、自らの責任と決断で民主党に参加することを拒まない。
(4)わが党は、諸勢力が大きく結集し協力し合える関係を築くために、引き続き努力する。
(5)この見解は、九月二三日の全国幹事長会議に報告する。
資料「民主党創設」に対するわが党の見解 一九九六・九・一二 社会民主党
 一、昨日、民主党創設に向けた「民主党設立委員会」結成の呼びかけと「基本理念」「基本政策」が発表された。呼びかけ文は「未来に責任を持つ政治を志す全ての人々に結果を呼びかける」と鮮明にうたいあげ、「基本理念」は「社会構造一〇〇年目の大転換」など改革姿勢を打ち出している。「基本政策」は「信頼と協力のネットワークを拡げる」など一二項目を掲げ、自立と共生の市民中心社会をめざすものとなっている。この「理念と政策」は、私たち社会民主党の理念と政策に合致しており、評価できる内容となっている。
一、党は、呼びかけ文が排除の論理をとらず、全ての人々に結果を呼びかけ、理念と政策の一致に上る大きな流れをつくろうとしていることを歓迎する。
一、また、個人の責任と決断で結果する方針を掲げたことも、個人の意思で政党がつくられてきた目本の政党の歴史と現実に照らして当然のことである。従って、社会民主党所属の国会議員が自らの責任と決断で、新しい政党に参加することを了承する。なお、この方針は機関会議で承認を求める。
一、呼びかけ文は、「民主党設立委員会」の発足と「民主党設立総会」を開催し、総選挙前の民主党結成大会の段取りを明らかにしている。党は新しく誕生する民主党と密接な連携をとり、共に総選挙を戦い勝ち抜く決意である。
一、党は党員、参議院議員、自治体議員が自主的な責任と決断に基づいて、総選挙後、民主党に参加することを展望しつつ、社会民主党は存続する。従って、当面の新党参加者は総選挙立候補予定者を原則とする。
一、党は、次期総選挙では民主党立候補者を推薦して戦い、支持・協力関係にある団体、個人の支持者に対して理解と支援を訴える。
一、以上の対応を基本に党組織、財政、職員、事務局などの諸課題については常任幹事会のもとに関係委員会を設置して検討する。