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総評結成大会宣言   全文テキストファィル*大会宣言、基本綱領とも出典は、日本労働組合総評議会編『総評三十年資料集』上(労働教育センター 1986.2)。字体も使用テキストのまま。
画像は総評結成大会ポスター。法政大学大原社会問題研究所所蔵。転載にあたっては法政大学大原社会問題研究所の許可を得た。
 今や内外の情勢は極めて重大なる段階に直面し、われわれ労働階級の力強き団結と奮起を要請してやまない。南北朝鮮の戦火は直に第三次大戦に発展すると即断し得ないが、之を転機として米、ソを中心とする国際的対立は新たな様相を呈し、大戦の危機が一段と深刻化していることは否定し得ない事実である。

 かかる国際情勢の激化に便乗した吉田内閣は民主々義の基本原則たる言論集会の自由を弾圧し、労働者の団体交渉権までも剥奪するなど、その反動的性格を露骨にあらわして来た。更に又政府の強行するデフレ政策は低賃金、首切り、重税等労働者に対する一方的犠牲を強要し、その生活を窮乏のドン底に追い込みつつある。加うるに労働委員会、人事院、裁判所の公的機関の権威を蹂りんして新憲法の精神を無視し反動攻勢を熾烈に展開して来た。

 この秋に当ってわれわれは日本共産党の組合支配と暴力革命的方針を排除し、労働階級の永き要望に応え、自由にして民主的なる労働組合に依って労働戦線統一の巨大なる礎をすえたのである。

 しかしながら総評議会の任務の限りなく重大であることと、この任務達成の道の容易ならざるを知る。しかしてこの困難なる闘いを通じてのみ日本の民族的再建と労働階級の解放がなされることを確信し、総評議会に参集した四百万労働者の同志的結集を固め、より広汎なる統一をはかり、国際自由労連に連なる全世界の労働者と提携し、民族の平和と独立のためにあらゆる妨害を排除して、自由にして民主的なる労働組合の闘いを堂々と進めんとするものである。

 右宣言する。

  一九五〇年七月十二日
                      日本労働組合総評議会結成大会


附:日本労働組合総評議会基本綱領

 日本労働組合総評議会は、日本のあるゆる自由にして民主的な労働組合の結集された力によって、労働者の労働條件を維持改善し、その経済的政治的社会的地位の向上を図り、日本の民主々義革命を推進するとともに、社会主義社会の建設を期し、経済の興隆と民族の自主独立を達成して、自由と平等と平和の保障される人類社会の建設に貢献せんとするものである。この基本理念を推進するに際してわれわれは次の諸原則を確認し宣言する。

一、労働組合は、労働者が自らの経済的社会的共通の利益を維持増進するため自主的に組織した固体であって、政治権力の獲得を直接の目的とし特定の政治理念を基軸として結成される政党とはその機能と性格を全く異にするものである。
 この故に労働組合は政府企業経営者等外部からの如何なる支配干渉をも絶対に排すると同時に政党からも完全に独立し自由でなければならない。
 しかしながら、資本家階級が支配的地位を擁している状況下においては、労働運動のすべて経済的分野のみに留り得るものではなく必然的にその活動は政治的分野にも及ぶものであるが、政党と労働組合との性格と立場を混同し、労働組合をもって政治権力獲得の行動部隊の如くみなす理念とは、明らかに相容れないものである。

二、労働者の生活安定は生産復興の根底であり経済安定の基礎的條件である。これを無視し、資本の保全と企業の維持を労働者の一方的犠牲にのみ求め、労働さく取と大衆収奪の上に経済の資本家的安定を計画するが如き反動的企図に対しては、これを粉砕するために、固結権罷業権その他労働組合が有する一切の闘争力を発揮してあくまで闘わなければならない。
 しかしながら労働組合の経済諸活動はすべて建設的に行われなけばならない。
 この闘争をおし進めるに当っては、労働者の諸要求は国民経済力との正しい関連のもとに打立てられ、且つ労働者自からの建設的計画の上に推進さるべきであって、この建設的努力に逆い経済の安定と社会の繁栄を故意に阻害せんとするが如き破壊的極左労働運動は、絶対に容認さるべきでない。

三、労働階級の利害は基本的に資本家階級と相対立するものであって、この原則は、公私の如何にかかわらず階級的さく取を伴う雇用関係の存在する限り、歴史を通じて確認されるところである。特定の條件のもとにおいては労資協同の行動が存在するが、勿論これは労働運動の一般的原則ではない。また労働者相互間の利益は現実的に一致すべきものであって、時に生ずる利害相反するが如き現象は、卑近の事象のみとられた偏狭な利己心乃至は特定のイデオロギーによって偏向された運動のもたらすものである。この故に労働組合はその利害の本質は同一であるとの原則により信義と友愛を基調として協力提携し、相互に緊密な援助を行わなければならない。

四、労働階級解放のためには、政治権力を労働階級の手中に確保することが極めて重要である。しかしながら、その間の政権の獲得はあくまで立憲的手段によって図らなければならない。この故に労働組合は、労働者が憲法と法令の秩序を通し且つそれらの内容のより民主的な前進を闘いとりながらこの最終目的に達するため、労働者の政治的関心と意欲の高揚に不断の努力を拂いつつ独自の政治活動を展開するとともに、平和的民主的手段によって社会主義社会を実現せんとする政党と積極的に協力提携して闘わなければならない。また組合と政党とのこの協力関係は相異なる機能の明確な認識と相互の自主性尊重の上に置かれるべきであって、その間に両者の立場が混同されるようなことかあってはならない。

五、恒久的世界平和のためには、人民の大多数を占める働く大衆の自由と経済福祉の増進を基調とする民主々義が諸国に確立され、あらゆる民族と国家の自主と独立が相互の理解と信念と友愛の上に尊重され保障されなければならない。
 この世界平和への途を開くものは、自由にして民主的な労働組合による国際的団結の力である。この故にわれわれは、如何なる外部の支配からも独立し、全世界の働く人民の自由と福祉の増進を図り、相互信頼を打ち立てるために有効にして強力な活動を展開する国際労働組織の拡大強化に進んで参画し、志を同しくする全世界の労働者と緊密に提携しなければならない。

 以上の諸原則を通じて推進される自由にして民主的な労働組合の諸活動は、保守反動勢力を封殺し、左右両極からの全体主義の擡頭を防ぎ、民主々義革命を達成するための最大要素である。この故にわれわれは、如何なる意味においても、労働者個有の権利であり労働組合存立の基礎である労働者の言論思想結社の自由の制限に反対する。

 われわれは、これらの諸権利に対する制限を排除し、この権利のすべてを国家社会との関係の中に合法的に確保するために闘い、且つそれらの諸権利の活用によって、基本的人権を確立し民主主義に不動の基礎を與えるために闘う。

 われわれは、以上の原則とその理念を、日本の総ての労働組合の上に具現し、堅実なる労働運動を盛々発展せしめ、人間の尊厳がすべての人間によって尊重される理想社会確立の終局的目標に向って瞬時も挑むことなく前進を続けようとするものである。