*出典は社会主義協会新入会員用パンフレット『労働者運動を建て直すために−社会主義協会とは何か−』(社会主義協会 2007年10月)、「一、社会主義協会の歴史」第六節。なお、第一節〜第五節は『提言補強』「序章 社会主義協会の歩み」第一節〜第五節とほぼ同文のため省略。全文(zip)
社会主義協会は一九九八年二月に第三一回全国総会を開催し、再建運動をスタートすることになった。協会再建の基本方針は、一九五六年四月、創立五周年で「協会の任務を果たす協会の組織と会員のあり方」を定めた次のことに立ち戻ることにした。
「社会主義協会は労働者団体および社会主義的な諸団体にたいしては積極的、建設的、協力的な立場をとるとともに、いずれの団体とのあいだにも、協会の自主性を妨げるような特殊な関係をもたないものであります。また協会員は、各自の責任において自主的にそれらの団体にあって積極的に活動するものであって、各自の所属する政党、組合、またはその他の団体員としての行動にはなんら協会の制約を受けないものであります」。これは社会党も総評もなくなり、協会自体も危機的事態に直面している時に、協会の任務を再確認して労働者運動を建て直すには、協会発足の原点に帰って再建運動に踏み出そうという提起であった。「協会発足の原点に帰る」ということは、ある程度協会のあり方を変える、一定の軌道修正を行なうというもので、協会と政党との関係は、かつての協会と社会党との関係とは変わってくることを意味する。
第三一回全国総会で確認した「協会の組織と会員のあり方」は、社民党、新社会党、民主党という三つの党に協会員が所属していることを踏まえ、そのもとで協会組織を守り役割を果たしていくという、今日の情勢と運動の実体に適合したものであるとの判断であった。
その上で再建運動の柱に置いたことは、科学的社会主義の立場に立った理論的、実践的な研究、調査、討議を通じた労働者運動の階級的強化であることはいうまでもない。すなわち協会の再建のためには、理論研究活動、学習活動の建て直し、活性化が何よりも大事であると考え、「理論活動の再構築」が最優先された。そのために、一九七〇年以降(「協会の提言」では、六〇年代までの分析で終わっている)の日本資本主義の現状分析、総評、社会党解体総括、そして、ソ連・東欧社会主義崩壊などの総括を深めながら、現在の労働者運動の階級的強化に向けた社会主義協会の役割と課題を明確にしていくことが重視された。この議論を具体的に進めていくために、六つの小委員会を設置し総括運動を全国的に組織し、これをまとめた三冊の出版物(『二〇世紀の社会主義とは何であったか』、『二一世紀の労働者運動』、『日本資本主義の現状と改革課題』)を発行し、会員相互の学習、討論を強化した。
さらに、年間を通じた重点研究活動方針を策定し、例えば二〇〇七年度は、@アメリカ帝国主義の世界戦略とそれが引き起こす矛盾の分析(アジア・中国を中心に)、A改憲阻止闘争の方向と日本政治のゆくえ、B「構造改革」市場主義路線の分析と対抗策の検討、C社会民主主義と社会主義の研究(理論および西欧などの労働運動を含めた実践)などを掲げている。これに基づいて理論、政治、労働、青年、女性運動研究部会の中で、研究活動を進める態勢が確立している。なかでも理論研究部会は、直属の研究会として、マルクス理論研究会、社会主義研究会、労農派歴史研究会、情勢分析研究会の四つの研究会を定例的に開催し、また、対象者を拡大した現代社会問題研究会を立ち上げ、毎年夏季研究集会として幅広い学者、研究者の参加で開催するようになっている。労働運動研究部会は、独占資本と政府が進める構造改革、規制緩和のもとで悪化する労働者状態と闘いの課題を学びあう全国交流会を毎年開催し、連合運動、産別、単組の運動強化を交流し、学びあう場として重要な役割を果たすようになっている。また、協会員が所属する政党の違いがあるなかで、運営の困難さがある政治運動研究部会は、社民党グループを中心に闘いの節々で情報交換、活動の交流を中心に開催している。
そして、こうした部会の研究活動を月刊誌『社会主義』編集に結実させ、理論と実践の統一にむけた「武器」として全国津々浦々で、広げる努力が追求されてきた。
また、現在の労働者運動の現状に照らして協会の性格と目的、任務を再確認する必要性も生まれ、二〇〇四年の第三七回全国総会で協会規約改正を行なった。規約第二条−「協会は世界の平和と日本の社会主義革命を達成するため、理論的・実践的な研究・調査・討議を行い、日本社会党、労働組合、農民組合、社青同、日本婦人会議等の階級的強化に努力する」を「日本における国家権力の平和的移行を通じた社会主義社会実現のために」と変え、強化の対象を「日本の労働組合と大衆運動、社会主義運動の発展、階級的強化」とした。次に規約第七条を規約六条と改め−「一、マルクス・レーニン主義の理論の学習につとめる」を、「一、科学的社会主義の理論(マルクス、エンゲルス、レーニンなどの思想・理論)の学習に努め、協会の目的を積極的に果たす」とした。
規約七条の「マルクス・レーニン主義」から「科学的社会主義」に用語を変更した理由は、「レーニン主義は帝国主義の時代に受け継がれ発展させ適用されたマルクス主義という一般性と、ロシア革命の戦略・戦術を定めるためにロシアの社会的歴史的条件に適用させたマルクス主義という特殊性(ボリシェヴズム)を含んでおり、われわれはレーニン主義を前者(一般性)の意味で使用してきました。だが協会の外からは、そのように受け止められておらず、無用な誤解を避けるために『提言補強』の作業の際の議論を踏まえて、変えるものである」(二〇〇四年二月、第三七回全国総会)としている。つまりマルクス・レーニン主義の理解の仕方、協会がこの用語を使ってきた意味について、全体の共通認識を図った上で、その一致点に立って変えたのである。
さらに、年間重点研究テーマの一つに挙げている「社会民主主義と社会主義の研究」について、「提言補強」では(二○○二年三月、第三五回全国総会)次の三つのことを整理している。「一つは、社会主義社会の実現をめざす社会主義と、資本主義の漸進的改革をつづけるという社会民主主義との理論上の違いは明確である。すなわち生産手段の私有制のままでは、搾取と階級対立をなくすことはできないという真理は、マルクス・エンゲルスに始まる科学的社会主義の理論が明確だ。二つは、しかし、理論上の違いは明確であるが、どちらも主に労働者という基盤の上に立ち、当面の課題では一致できる。また広範な支持者からも運動の統一が求められ、そうしなければ独占資本の政治勢力には勝てない。三つは、生産手段を国有化して計画どおりに動かせば、諸々の矛盾がおのずから解決するというほど社会主義建設が簡単なことではないことは、これまでの社会主義諸国における経験が教えている。生産力の発達とともに、ますます社会化されている生産手段を、社会的に所有し活用しなければならないのは当然であるが、社会化の内容と方法を具体的にどのようにするのが最適かという問いへの回答はこれからの研究課題である」としている。こうした研究活動を踏まえて、「社会民主主義と社会主義の関係整理」については、「科学的社会主義の立場からすれば、社会民主主義は資本主義を改良する改良主義、改良運動であることは事実であるが、改良主義を批判するからといって、改良を否定するものではない。資本主義の限度内であってもギリギリで可能な改良闘争は積極的に組織しなければならない。その際に大切なことは、闘いを通じて『改良』と『革命』を弁証法的に統一し、労働者階級を中心とした主体を強化、物質的な力にしていくことである。他方では、社会民主主義政党は、改良主義の強い思想的影響のもとにあり、この党を思想的、組織的、運動的に強化していくことは、大変、困難を伴うが、いかに困難であろうとも、成し遂げなければならない課題である。このことは理論上からそうでなければならないだけでなく、現に社会民主主義政党が労働者多数を組織し、影響を及ぼしていることからもいえる。また、社会民上主義政党、労働運動との共同闘争をはじめ、幅広い統一戦線を抜きには社会主義社会を実現することはできないからである」(二〇〇六年二月、第二八同全国総会)と整理している。
こうした協会の理論研究活動を進めるための組織基盤の強化も、この一〇年間、全国で献身的な努力が追及された。分裂によって、県支部機能が停止したところも生まれ、脱会、整理した会費、『社会主義』誌代滞納に伴う欠損処理は多額をきわめた。中央に設置された組織財政強化委員会は、組織財政の改革案を策定し、全国的な取り組みで(三回にわたる全国カンパなど)再建六年目(二〇〇四年度)には、ほぼ健全財政を達成するに至った。
会員、『社会主義』の現状は一進一退であるが、拡大運動の中で新しく入会した会員は四〇歳代を中心に三桁に達する。だが会員の多くは団塊の世代であり、組織の高齢化は否めず、若い会員の拡大運動がこれからの協会の存続、発展には絶対に欠かせない。
協会の躍進はたゆまない自らの研究活動の強化が重要であることはいうまでもないことであるが、それは現在の労働者運動の中で追及され、この運動の前進の中で勝ち取られていくことを忘れてはならない。
われわれは協会の目的(規約第二条)、任務(規約第六条)に沿った研究・調査・討議を積極的に進め、資本主義の発展から作り出される矛盾が、必ず労働者運動の前進を作りだすという法則性に確信を持ち、ここにしっかりと結びついて労働運動の階級的強化を柱に広範な統一戦線を担う社会主義政党の再確立を展望して全力をあげる。
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