*アピール、社会主義協会の再建・強化について、とも『社会主義』1998年3月号掲載。社会主義協会提言の見直し作業開始などを決めた重要な総会。一部の役員・会員はこの総会に参加せず、まもなく別の社会主義協会を創設し(坂牛哲郎、上野建一代表、いわゆる再建協会または坂牛協会)、『科学的社会主義』を創刊した。 
 全国の協会員、「社会主義」読者の皆さん。
 われわれは、本日、東京で社会主義協会第三一回全国総会を開催した。本総会の任務は、全国の支局、県支部、支部、会員の意見をもちより、昨年の第三〇回総会で課せられた協会の再建・強化を果たすことであった。本総会には困難を克服し、結集した全国三七都道府県の代議員、傍聴者の参加をえて、われわれは力強く再建のスタートを切ることができた。
 本総会では協会創立の原点に帰ることが強調された。その意味する所は、発足の精神に帰り、理論研究活動を協会活動の中心におくということである。わが協会は、一九五一年の創立にあたって、労働者階級の組織と運動とを極左主義と右翼反動から守り、その階級意識を明確にすることを任務の一つにした。ソ連・東欧社会主義体制が崩壊し、日本社会党・総評がなくなった今日、社会主義運動、労働運動の混迷は深い。それゆえに、科学的社会主義者の全国組織である社会主義協会に課せられた任務はかつてなく大きい。その任務を遂行するためには、全会員の英知を結集し、総括を深め、協会の伝統である「理論的・実践的な研究・調査・討議」を抜本的に強化しなければならない。
 本総会の交流、討議を通じ、不況の深刻化と世界的な競争激化の中で、一段と冷酷になった独占資本の攻撃も明らかとなった。全国のあらゆる職場で、官民を問わず、リストラ、行革、規制緩和の嵐が吹き荒れている。金融破綻など企業倒産が増え、失業率は過去最高の三・五%に達した。賃金は抑制され、勤労国民の消費は低迷している。労働法制は改悪が企図され、福祉は後退している。政財官の癒着、汚職は後をたたない。資本主義の腐朽、矛盾は深まり、労働者、勤労国民の生存の不安定性は増している。この点からも、資本主義批判の理論を磨き、日本における社会主義への展望を切り開く社会主義協会の任務はかつてなく大きくなっている。また、各会員が所属する政党、労働組合、大衆団体での献身的な努力が求められている。
 本総会の交流、討議を通じ、困難な条件下で、すべての参加者が社会主義運動、労働運動の炎を燃やし続けるために奮闘していることが確認できた。運動上の困難は大きくとも、活動に注ぐ熱意と粘り、仲間との結びつき、学習と交流があれば、再び前進することも不可能ではない。理論と実践の検証と自己批判のみがわれわれの運動の発展を約束する。
 全国の協会員、「社会主義」読者の皆さん。
 われわれの進む道が坦々たる大道ではないことは多くの先達が教えているし、われわれの内部にさまざまな意見があることもわれわれ自身が最もよく自覚している。だからこそ、お互いの意見を謙虚に聞き、全同志の結集と協会の組織、財政を強化し、進まねばならない。全国の支局、県支部、支部、会員、「社会主義」読者が力を合わせ、反独占・民主主義擁護、日本と世界の平和を目指して、共に前進しよう。
  一九九八年二月一四日
社会主義協会第三一回全国総会参加者一同
社会主義協会第31回全国総会(98年2月14日)
附:社会主義協会の再建・強化について
社会主義協会の任務、協会と協会員のあり方
 社会主義協会は一九五一年に、講和条約後に予想される反動期を前にして「労働階級の民主主義=社会主義の運動と民主主義=社会主義の勢力とを」反動の波からまもり、反動期を乗切るために「労働階級の戦線の統一と社会主義勢力の結集」を目標として、平和を守り民主主義を拡大し社会主義の実現をはかる運動に協力することを任務として発足した。
 協会は一九五六年四月、創立五周年にあたって、この任務を具体的に次のように述べた。
 1、労働組合運動の方面では、組織のそとに取り残されている広範な労働者大衆のあいだに組織を拡大し、組合の組織形態を整備し、戦線の統一によって全国的組織を確立し強化する努力に協力すること。
 2、(略)
 3、あらゆる社会分野と職域にある進んだ要素を社会主義政党に結集し、大衆の生活に根ざした党組織を確立すると同時に、社会主義政党の意識的理論的水準を高めるさまざまの努力を助けること。
 4、実践運動のあらゆる分野において、以上のような目標のために闘っている活動分子に、その活動に必要な理論と実際問題の知識についての研究を助け資料を供給することによって、自信を与え、確信をもって行動しうるように協力すること。
 さらに、このような任務を果たす協会の組織と会員のあり方を次のように定めた。
 「社会主義協会は労働者団体および社会主義的な諸団体にたいしては積極的、建設的、協力的な立場をとるとともに、いずれの団体とのあいだにも、協会の自主性を妨げるような特殊な関係をもたないものであります。また協会員は、各自の責任において自主的にそれらの団体にあって積極的に活動するものであって、各自の所属する政党、組合、またはその他の団体員としての行動には、なんら協会の制約を受けないものであります。」
 いま協会の再建にあたって最も大事なことは、このような協会発足の原点に帰ることである。
 一九六八年の協会再建第二回大会で採択し、七八年の協会第一一回総会で改正した「社会主義協会テーゼ」(「社会主義協会の提言」)は、一定の見直しをおこなうが平和革命の戦略・戦術をはじめその基本は、これを堅持することはいうまでもない。さらに「提言」のなかの「社会主義協会員は社会主義者としてなによりも誠実かつ純潔でなければならない。協会員は、理論的・思想的にも、組織性や規律の面でも、人間としてその品性、モラルの面においてもマルクスやエンゲルスやレーニンのようにつねに自己をきびしくきたえ、日常の生活とたたかいのなかで目的意識的に自己をたかめる努力をしなければならない。そして、一人ひとりのおかれている具体的条件のなかで、いかにたたかい、いかに行動すべきかを、自分の頭で考え正しく判断する能力を身につけなければならない。」という言葉を、一人ひとりの会員が重くうけとめ、真に自分の血とし肉とする努力をたゆみなくつづけることか重要である。
協会再建の基本方針
 科学的社会主義者の思想集団としての協会の基本性格、基本組織、研究部会は大枠従来通りとするが、協会活動の基本は調査・研究(学習)、討議にあることを再確認し、理論的・実践的な研究・調査活動に重点をおき強化する。
 理論的・実践的な研究(学習)・調査活動の強化は、主として思想的・理論的な仕事に従事する協会員と、主として政党や労働組合など実践団体で活動する協会員との協力、両者の「有機的統一的活動」によって、協会員が科学的社会主義者として自らを高め成長させていくために必要であるだけでなく、一方で資本の思想攻撃が激化し他方で職場闘争やストライキ、デモなど大衆行動か弱まっている現在、労働者一人ひとりの階級意識と行動力を高め、労働者運動を活発にする思想的・理論的協力をレベルアップするためにも不可欠である。
I、理論活動の再構築
イ、調査・研究・学習活動の主要な課題
 a 科学的社会主義、マルクス、エンゲルス、レーニンの思想・理論、マルクシズムの世界観
 b 現代帝国主義(独占資本主義)−1多国籍企業、新保守《自由》主義、七〇年代以降の資本主義世界経済の不均等発展と矛盾の深まり、政治的上部構造の変化、労働者運動の後退、社会主義勢力、社会民主主義勢力の動向など
 c 現代帝国主義下における階級闘争の戦略・戦術、社会主義政党論
 d ソ連・東欧社会主義の崩壊の総括
ロ、「提言」(テーゼ)の見直しは、諸情勢の変化や通用しない用語などあるので、再建委員会の「論点整理」を参考にしながら検討し当面は「提言」についてはそのまま残し、「提言作成委員会」を設置し、向こう二年間で基本的見解をまとめる。現提言の取り扱いはその際検討する。
ハ、その間は情勢分析にもとづいて「当面の活動指針」、理論部会の研究テーマなどを中心に理論活動を強化する。その成果を研究資料や「社会主義」に発表し、会員と読者の研究・学習活動の活性化をはかる。学習合の持ち方、議論の仕方、調査研究のおり方などについても広く意見を求め改善をはかる。
ニ、理論部会を中心に『社会主義』誌、出版物への執筆、研究活動などを通じて協会内外の学者、研究者(とりわけ若年層の)の結集に積極的にとりくむ。
ホ、『社会主義』誌の購読者拡大により協会の理論的・思想的影響力の拡大に努力する。
2、組織、財政の「再建強化」
イ、協会の組織活動(会員の学習会や会議参加を中心に)の再建強化に努力しながら再結集を図るが、政党の違いでの違和感の拡大や排除の論理はとらない。
ロ、新入会員の拡大に努力する。
ハ、長期滞納者へのねばりづよい説得や、オルグなどに努力し、協会活動に参加できる、参加しやすい状況づくりに努力する。
ニ、その実現をはかるため「組織・財政強化委員会」を総会で設置し、活動計画を作成し、運営委員会の承認をえて活動にとりくむ。
3、協会規約の取り扱いについて(別掲載)
 全国総会終了後、半年を目途に移行・整理期間(専従者問題、事務局の任務分担等)を設け、その間に準備作業を終了し実施に移す。
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社会主義協会第三一回全国総会アピール