*社会主義協会が同人組織から運動組織へと脱皮を開始した総会の宣言と報告。「社会主義」1961年9月号掲載

 社会主義協会は、創立十周年を記念して、ここに全国大会[ママ]を開催した。それは、ただ、十年間存続したということを祝うためではない。われわれは、わが協会が、社会党や総評を中心とする労働者階級の運動に、また社会主義理論の確立と発展に、寄与するところ少なくなかったことを信ずる。しかし時の流れは、とどまるところを知らない。
 世界および日本の情勢は、十年の昔とはちがっている。資本主義の崩壊と社会主義の勝利の不可避性は、単に理論的にでなく、現実的に証明されている。資本主義の危機感が痛切となるほど、各国の資本家階級は、あらゆる手段で、国際的連繋すら保ちながら、新しい社会の実現と歴史的進歩とを妨害する。
 わが社会主義協会は、創立に当たって、労働階級の組織と運動とを、極左主義の破壊的影響から守るとともに、右翼偏向と反階級的勢力の動きとを克服して、階級意識を明確にすることを任務の一とした。いまわれわれの前に現われ、早急なる克服を必要とする危険は、「右翼偏向」、特に、「現実的」という言葉の欺瞞で、労働者階級の目を歴史的目標からそらさせる改良主義である。同時に、極左主義の、無理論で無責任な闘争至上主義の危険も、支配階級の狡猾な挑発にのって、増大してくる。改良主義は、このようにして意識のおくれた労働者と意識の高い労働者の問に故意に溝をつくる分裂主義である。極左的闘争至上主義は、それがヒステリックになればなるほど、労働大衆から先進分子を孤立させる。このようにして二つの分裂主義は、労働者階級の攻撃力を分散させて、独占資本に奉仕し、その手先ファシストの苗床になる。
  この危険は、われわれの社会主義の理論が、働く大衆の組織と結合することによってのみ取り除かれる。大衆との結合は、単なるお説教で実現されるのではない。社会党や総評の労働者が階級意識を高め、その組織を拡充することに、各部署にある社会主義協会員が、全力をあげ、その闘いの先頭に立つことによってのみ、理論は大衆の組織と有機的に結びつく。労働者階級の組織の土台の上にのみ行なわれる平和革命の理論の正しさは、このようにして実証される。
 さらに、われわれには、労働者階級を中心とし、広く農民、中小市民、知識階級を結集して、アメリカヘの従属から完全に独立する中立政策を実現し、さらにこの結集した力を社会主義実現の力に転化する任務が与えられている。すなわち、社会主義協会は、新しい事態に適応した統一戦線の理論の展開という新しい課題をもっている。
 最後に、わが協会十年の経験は、協会をして機動力をもって新しい事態に即応する体制をつくり上げる必要を訓えている。
 社会主義協会創立十周年記念第三回全国総会は、これらの緊急な問題を真剣に論議し、解決する緒を見出した。われわれは十年の活動を通じて、われわれの理論と活動方針の正しさに深い確信をもった。わが社会主義協会はここに勇躍して、その使命達成のために闘う新たなる決意を表明する。
一九六一年八月九日
社会主義協会第三回全国総会

附:社会主義協会第三回総会報告
◇社会主義協会創立十周年を記念する第三回全国総会は、去る八月八・九日の両日、東京神田の全電通会館で行なわれた。北海道を除く全国各地からの代表約八〇名が出席。二日間にわたる活発な討論の中から、今後の協会の進むべき道を明らかにした。
 開会にあたって、向坂協会代表は
「世界の情勢は、今や社会主義の勝利が理論の問題から現実の問題となったことを示している。協会創立来一〇年のあいだに、社会主義の勢力はぐんぐんと地球上に拡大し、その優位性は明らかとなった。一方世界の反動屋の支柱であるアメリカ資本主義は、修正資本主義と言おうと何と言おうと、矛盾を深め自信を失っている。
 このような中でわれわれは十周年を迎えたわけだが、独占資本は危機感を持てば持つほど様々な手口をもって、社会党を自からにとって無害なものに仕立てようと試みる。彼等は社会主義という言葉を使わずには労働者をつかみ得ないということを知っているので、社会主義の装いをこらした改良主義を社会党の中にしのび込ませようとしている。
 われわれの重要な任務は、したがって改良主義とのたたかいである。真の社会主義とは何かということを常に労働者に教えていかなければならない。このことは単に演壇で語ることによってははたし得ない。正しい思想をもって、大衆の先頭でたたかう以外にはない
 社会主義協会は思想団体である。しかし、その思想は実践と切り離れたものではない。社会主義の思想をもって労働者の中で生きるということが創立の主旨だった。
 協会の思想はこの十年に広く各分野に浸透した。しかし、われわれはこれをもって満足するのではない。十年のたたかいの基礎の上に、さらに飛躍するための体制を作る時に来ている」との挨拶を述べた。
 協会十年の活動の土台の上にいかにして組織的な飛躍を試みるか、このことが今大会の中心課題であった。
◇総会は相原茂氏を議長に選出、まず、二つの研究発表が行なわれた。
一、「労働者教育の問題点」川口武彦氏(九州支局)
二、「世界史的にみた社会主義の現段階」新田俊三氏(東京・国際部会)
 詳しい内容については本誌に再録するので参照されたい。
◇つづいて、三三年六月第二回総会以後の活動報告が、本部、支局、支部より行なわれた。
 本部報告においては、西尾派との闘争、三池闘争、構造改革論争についての基本的な取り組みの経過が述べられた。われわれはこのたたかいで、多くの重要な役割をはたしたが、この成果をさらに発展させるためには、研究体側、組織体例の整備が要求され、総会までの体制として事務局制をおき、一方部会を発足させたことが報告された。また「社会主義」については岡崎編集長より財政報告ののち、「発行の遅れをとりもどすこと、誤植をなくすこと」が当面の課題として報告された。
 多くの代議員より、雑誌が遅れることの原因、原稿料の問題、内容がむつかしすぎること、同人誌的性格の脱皮等の質問、意見が出された、
 支部報告は、東京、八幡、福島、静岡と九州支局。九州支局の報告は特に注目を集めた。三池闘争に総力をあげて取り組んだ九州支局の活動は日刊社会主義二〇〇号の発行によく示されている、さらにこの一年、三池を除いて九州、関西に延三五〇人の講師を派遣し、新聞社会主義の発行を独自に行なっている、九州支局の下に支部を確立したもの四、準備中のもの四となっている。
 現在百名の同人を擁し、活動家の増加にともない、研究体制と運営体制を整備し、活動家の要求にそえる組織体制を確立している。
◇議事に入り、本部より「協会の基本方針・協会の性格と当面の任務」「組織方針」が提案された。
 提案者木原実幹事は「基本方針・性格と任務」について次のような説明を行なった。
「一、協会創立にあたって三つの任務を規定した。労働運動の中心的指導部を確立すること、極左冒険主義から運動を守ること、右翼偏向と反階級的な勢力とたたかい、階級意識を明確にすること。これらの任務について少なからぬ役割を協会ははたし得たと思う。これらの十年の活動の足がためをする必要がある。
 二、まず、運動の発展にともなって協会の性格を明確にする必要がある。協会は思想団体であるが、それは、十年の歴史が示すように、明確に社会主義運動の一翼をになうものである。すなわち、(イ)協会は科学的社会主義の理論を追及し、これを各分野の運動の中に実践的に拡げていく集団である。(ロ)協会は社会主義運動の各分野につながり、協会と会員の努力を通じて、社会主義運動全般の前進に役立とうとするものである。
 具体的に言えば、社会党総評の中に入ってマルクシズムの理念を実践的に浸透させる集団である。
 三、そのことの当面の課題としては、第一に改良主義とのたたかいがある。第二には統一戦線論の解明がある。反動期に入ろうとしている独占資本の分裂政策に対して、労働者階級の統一と団結をかため、かつ広く国民諸階層を結集しいかに独占に対決するかという理論的実践的課題が協会に与えられている。
 四、これらの課題に答えるには協会自からの体制を整備する時に来ている。協会の会員は各所に拡がったとはいえ、組織的な結合はきわめてルーズな点があったし、特に地方と中央の連絡に欠け、多くのわれわれの周辺にいる同志を結集する体制に欠けていた。全国に散在する同志の結集をはかり、会員相互の結合を組織的に高める体制を作らなければならない。」
 つづいて四に対応する組織方針が水原輝雄運営委員より提案された。
「われわれは常に社会党に対しゲリラ戦であってはならないと組織的な行動の重要さを強調して来た。ひるがえって、われわれの活動を見る特、必ずしも組織的だったとは言えない。運動の発展とその中ではたす協会の役割が大きければ大きいほど、機動的に、組織的に対応し得る体制が必要である。この一〇年協会は多くの若い活動家を得て来た。これらの若い活動家のエネルギーを充分に配置すること、また、協会をとりまく多くの有能な人材を組織的に協会に入れていく必要がある。労大卒業生や、社青同や、組合の中の若い幹部の中には多くの関心を協会に寄せる人がいる。この人たちを協会に入れ、学習し、研究し、ともに実践する体制が必要だ。
 以上の観点に立って@協会機構の機動化をはかるために、運営委員会を少数にしぼり、責任をもたせる。その上に評議員会をおく。
 A中央、地方の結合を深めること、研究体制を発展させるために部会制をおく。B新たに組織対策部をもおけ、専任の組織部長をおく組織部員は全国オルグを兼ねる。
 今回の提案のポイントは、この全国オルグの設置にある。オルグが全国をまわり、中央と地方の連絡を密にし、運営を全体的に拡げていくことになろう」
◇本部提案の「協会の基本方針・性格と任務」「組織方針」は若干の表現上の問題を新運営委員会にゆだねて、万場一致の賛成を得た。特に全国オルグを中心とする組織体制の前進については、多大な希望が寄せられ、各代議員から積極的な提案が行なわれた。財政的な裏づけについては旅費さえもってくれれば支部では宿泊を見よう、一日も早く誌代を完納して協力しよう等々の声があった。本部と支部の緊密な連絡、運動の相談、交流その他一切がこのオルグにゆだねられたといってもよい。また雑誌「社会主義」については、再三、定期発行、内容を活動家にも魅力あるものをという声が出され、組織者としての役割を担うべく要望された。代議員側より、拡張計画の目標提出が要求され、当面四割の拡大をめざすこととなった。
◇二日間にわたる真剣な討論と同志的な交流の中で、社会主義協会第三回総会は、一〇年の歴史の上にさらに組織的な活動の一歩をふみ出すこととなった。
 総会は新しい規約を定め、新役員を選出し創立十周年記念、第三回全国総会宣言を発して二日間の討議を終えた。
(立山記)
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社会主義協会十周年記念第三回全国総会宣言