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社会主義協会の任務について*『社会主義』62号(1956年4月)掲載
 「いまから二十年前の昭和六、七年の時期には、戦争の危機と近づき来たる反動の陰影がしだいに濃厚となり、ファシズムの運動はまず組合運動の内部からおこり、やがて無産政党をも分裂させました。来るべき反動期を乗り切るために、労働階級の戦線の統一と社会主義勢力の結集の必要が叫ばれたが、不幸にしてそれは実現されなかったのであります。こうして労働階級は、ほとんどなんらの準備なしに戦争と反動の時期に突入した。その結果がいかにさんたんたるものであったかは、われわれの記憶にいつまでも刻みこまれているところであります。
 「このときから二十年をへた今日のわが国は、制度のうえではある程度に民主主義化され、労働階級の組織と政治上社会上の勢力も当時とは比較にならぬほど大きくなったとはいえ、民主主義勢力が国の主導権を握るというところからはまだはるかに手前の段階で、はやくも反動期に入ったのであります。
 「今日わが国の支配者層の構想しているような講和が成立したならば、どのような日本が再現するかはあまりにも明瞭で、われわれは講和を転機として本格的な反動時代が来ることを覚悟しなければなりません。
 「この来るべき反動期に、われわれは準備なくして投げこまれ、労働階級の民主主義、社会主義の運動と民主主義、社会主義の勢力とを、もういちど反動の波におし流されるにまかせてよいでしょうか。断じてそういう事態が再び起ってはならないでしょう。もし今日われわれが、来るべき反動期を見とおしつつも、これに備えることを怠るなら、われわれの時代は、過去の体験から何事をも学ぼうとしなかったという批判をまぬがれないでしょう。
 「では、われわれが来るべき反動期を乗り切るためには、なにをなすべきでしょうか。 「それは今日も二十年前と同じように、基本的には、労働階級の戦線の統一と社会主義勢力の結集ということ以外にはありません。ただ六百万の労働者が組織され、そしてこれらの組織労働者の多数によって支持される政治運動の組織がすでに存在する今日は、具体的な方集はおのずから二十年前と異るものがなければなりません」
 わが社会主義協会は五年前、その発足にあたり、以上のようにわれわれの目標を明らかにしたのでありますが、五年後の今日は、さらにこれを強調して繰り返えさなければなりません。もし訂正の必要があるとすれば、五年前には「来るべき反動期」と云ったのでありますが、講和条約と安保条約とによってわが国の政治が方向づけられ、さらにそれを推進する保守勢力の結集が実現されて、日本の独立と平和が脅かされ、民主主義に逆行する気運が高められている今日は、まさにわれわれの予測した反動時代のただ中にあるということであります。このような情勢のもとに、わが社会主義協会の任務と努力の目標とは、基本的にはなんら変るところはなく、民族の独立と平和を達成し、民主主義を拡大して社会主義の実現をはかる運動に協力することであります。
 すなわち具体的には
 (1) 労働組合運動の方面では、組織のそとに取り残されている広範な労働者大衆のあいだに組織を拡大し、組合の組織形態を整備し、戦線の統一によって全国的組織を確立し強化する努力に協力すること。
 (2) 土地改革によって生じた農村の新らしか条件に対応した農民の組織と農民の運動の推進に協力すること。
 (3) あらゆる社会分野と職域にある進んだ要素を社会主義政党に結集し、大衆の生活に根ざした党組織を確立すると同時に、社会主義政党の意識的理論的水準を高めるさまざまの努力を助けること。
 (4) 実践運動のあらゆる分野において、以上のような目標のために闘っている活動分子に、その活動に必要な理論と実際問題の知識についての研究を助け資料を供給することによって、自信を与え、確信をもって行動しうるように協力すること。
 社会主義協会は労働者団体および社会主義的な諸団体にたいしては積極的、建設的、協力的な立場をとるとともに、いずれの団体とのあいだにも、協会の自主性を防げるような特殊な関係をもたないものであります。また協会員は、各自の責任において自主的にそれらの団体にあって積極的に活動するものであって、各自の所属する政党、組合、またはその他の団体員としての行動には、なんら協会の制約を受けないものであります。
 社会主義協会は、いま創立五周年を迎へさらにその活動の強化を計画しています。全国の同志諸君がふるって協会に参加され、協会の活動に積極的に協力されることを望んでやみません。
    一九五六年四月                 社会主義協会
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