歴史上のおのおのの変革ないしは革命の時期には、人間がこの変革の意識的な要素となるやいなや、そして意識的な要素となった度合につれて、おおかれ少なかれ明確にして特定された革命理論がある。

 政治上または社会上の変革がどのような速度をもって、どのような道すじをとり、またどのような方式でおなこなわれるかは、この変革過程をおしすすめる主体的な條件をふくめてのあらゆる條件によって決定される、変革期における行動の理論とは、これらの具体的な條件によって特定された変革の過程と方式とを発見することである。

 それゆえに、おのおのの変革の道はつねに前人未踏の道であって一つの変革には一つの変革理論がいり、一つの革命は一つの革命理論をうみだす。それは出来あいの革命理論によってではなくて、変革の過程そのもののなかに探求され発見された新しい理論によってみちびかれなければならぬ。

 いま吾々の遭遇している変革は民主革命とよばれ、この革命はまた平和革命だとされている。吾々の革命を必然的に平和革命たらしめる條件は何であるか?革命が平和的におこなわれるということによって、具体的にはどのようなことがらが意味せられるか?平和的であることのためには革命は必然的にどのような形態と方式とをとるか?この問題が科学的な明確さをもって答えられたとき、勤労階級の政党も、労働組合運動も農民組合運動もその他のいっさいの民主的、勤労者的の運動−−要するにこの平和革命の過程に主体的な役割をもついっさいの革新勢力ははじめて共通の革命理論をもち、その行動の方向と方式とをさだめ動揺のない運動方針を立て、そしてこれらの諸勢力のあいだの行動を調整する基準をもつことができる。

 いかんながらわれわれはまだこの問題に充分に答えていない。この問題えの真実の答は何人かによって、外から持ちこまれるものではなくて、この変革期の激動のなかに呼吸し、考え、そして行動しているわれわれ自身の集合的な努力によってのみあたえらるべきものである。報誌「前進」はこの事業に関心をもつすべての人々にとって共同の仕事場となり、共同の研究室となることを希うものである。

編集委員代表
山川均
向坂逸郎
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      『前進』創刊のことば
     *1947(昭和22)年8月創刊の労農派グループによる月刊誌。発行所は板垣書店。終刊は1950(昭和25)年9月。底本は社会主義協会創立30周年記念出版の復刻版。電子化しにくい一部の仮名遣いは改めたところがある。 画像は『前進』創刊号表紙。