『労農』発刊に就いて
*『労農』一巻一号(昭和二[1927]年十二月六日発行)より。使用した
テキストは社会主義協会創立30周年記念出版の復刻版。原文の旧漢字は常用
漢字に改めた。かなづかいはそのまま。太字は原文も太字。
ブルジョアジーはいま吾々の眼前において、強大な反動的・帝国主義的政治
勢力の大規模な結成を急いでゐる。独占的今融資本に率ゐられ、封建的残存勢
力を同化してその力を増大したブルジョアジーは、地主階級をその同盟者とし
て鞏固な結合を遂げ、小ブルジョア上層を完全にその指導の下におき.さらに
普通選挙の実施を通ほして、プロレタリアと農民と小ブルジョア下層とを含む
広大な社会層の上にまでその政治的指導を拡大し、帝国主義的目的のために利
用し得る一切の要素を動員してこれを強大な反動的政治勢カに結成しつゝあ
る。今やブルジョア政党とその政府との一切の政策と努力は、かかる階級的・
政治的目標に集注せられてゐる。
反動的・帝国主義的勢力の拡大と結成との作用の急速な展開を前にして、プ
ロレタリアと農民との前衛は如何なる根本戦略の上に、如何なる戦術を取り、
如何なる陣形を立て、如何にして大衆をこの戦線に動員すべめきあらうか。正
しき左翼的見解の確立と正しき左翼的先述の不僥不屈の追求とは、無産階級の
全運動に課せられた当面の任務である。
ブルジョアジーの政治上の戦線に行なはれていることは、経済上の戦線にお
いても進行しつつある。わが国資本主義の上向的趨勢に力を得、この趨勢を永
久化しやうとするブルジョアと地主の努力は、労働者と農民とに對する経済上
の攻勢を益々激烈ならしめてゐる。ブルジョアと地主の経済上の統一戦線に對
して、吾等はいま、如何なる陣形と戦術とを以つて有効に抗争し得るであらう
か。正しき左翼的見解と正しき左翼的戦術との追求確立は経済戦線において
も、同じく無産階級運動に負はしめられてゐる課題である。
雑誌『労農』は、固より独力を以つてこの重大な問題を解決しやうとし、又
は解決し得るかの如く考ヘるものではない。いな反対に、『労農』は、かくの
如き傲慢と僭上と幻影とを、極力排撃しやうとするものである。たゞ『労農』
は、この問題の解決に協力するがために生まれたものであり、また多少の貢献
をなし得ることを確信するものである。
のみならず雑誌『労農』は、これらの問題を、狭隘な宗派的見地から解決し
やうとするものではない。プロレタリアと農民との前衛は、この問題を大衆の
前に提起し、これを大衆的なスケールにおいて実践的に解決した時にのみ、初
めて真実の解決に到達することが出来る。『労農』は労働者と農民の大衆と共
に、この重大な任務に協力せんがために生まれたものである。
正しい左翼意識の確立ヘ! 正しい左翼戦術の展開へ!
政治的統一戦線の形成ヘ! 組合運動の全国的統一へ!
宗派的分裂主義との闘争ヘ!